アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~アリスタ、アルベマール、マリオットほか中小型の好決算銘柄~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~アリスタ、アルベマール、マリオットほか中小型の好決算銘柄~

投資情報部 榮 聡

2022/08/08

先週は金融当局者の発言、予想を上回ったISM非製造業景気指数、非農業部門雇用者数などを受けて米10年国債利回りが反発、株式は強含みのもみ合いとなりました。今週の株価材料として、米国の物価指標、機関投資家の動き、半導体の米国内生産を促す「CHIPS法」の成立、などが注目されます。

今回は先週決算を発表した中小型の好決算銘柄から、アリスタ ネットワークス(ANET)アルベマール(ALB)マリオット インターナショナル A(MAR)モノリシック パワー システムズ(MPWR)ON セミコンダクタ(ON)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

「雲」の上限で下値が支持されました。この水準を保って推移するようだと、機関投資家による株式ポジション引き上げの買いが期待できそうです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
情報技術 1.9% 10.6% 4.5%
一般消費財・サービス 1.2% 12.8% 5.5%
コミュニケーションサービス 1.2% -0.9% -2.7%
資本財・サービス 0.6% 9.3% 0.7%
公益事業 0.4% 6.3% 2.9%
S&P500 0.4% 6.3% 0.5%
生活必需品 0.1% 2.3% -3.2%
金融 -0.1% 4.9% -3.0%
ヘルスケア -0.7% 0.4% 1.3%
素材 -1.3% 5.6% -8.7%
不動産 -1.3% 6.1% -2.4%
エネルギー -6.8% 3.1% -11.5%
騰落率上位(5日) 騰落率
ペイパル・ホールディングス 10.2%
チャーター・コミュニケーションズ 7.1%
CVSヘルス 6.9%
アドビ 5.7%
メタ・プラットフォームズ 5.0%
騰落率下位(5日) 騰落率
エクソンモービル -8.7%
イーライリリー -8.6%
キャタピラー -6.5%
シュルンベルジェ -6.4%
シェブロン -6.2%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.4%の上昇、NYダウはエネルギーが足をひっぱって0.1%の下落、ナスダック指数はグロース株に対する物色が続いて2.2%の上昇となりました。

8/1(月)は材料を欠く中で先々週の上昇に対する利食いが優勢となって反落、8/2(火)は複数の地区連銀総裁が利上げの継続について発言して市場の利上げ観測後退をけん制、米10年国債利回りが反発して株価は下落しました。ペロシ米下院議長の訪台に伴う米中の緊張の高まりも警戒されました。

一方、8/3(水)はISM非製造業景気指数が予想外の改善となって経済のソフトランディングが可能なのではとの見方が台頭、株式は急反発しました。8/4(木)はアマゾン、AMDなどグロース株への物色が続きましたが、エネルギー株の下落が相殺して小幅安でした。8/5(金)は7月非農業部門雇用者数が予想を上回る大幅な増加となって、FRBによる利上げ強化につながるとの思惑から、S&P500指数は前日比1.1%安までありました。しかし、同時にリセッション懸念も後退して、終値は小幅安まで戻しました。

業種指数では、グロース株に対する物色が継続したことから、グロース株の寄与が大きい「情報技術」「一般消費財・サービス」「コミュニケ―ションサービス」が優位でした。一方、原油価格(WTI先物)が今年2月以来の90ドル割れとなり、「エネルギー」が大幅な下落となりました。個別銘柄では、ペイパル ホールディングス(PYPL)が上昇トップでした。4-6月期決算は売上が前年同期比9%増、EPSが同19%減で市場予想を上回りました。さらにエリオット・インベストメント・マネジメントが大株主になったことが明らかになり、今年9億ドルのコスト削減に取り組むとして好感されました。

経済指標では、7月雇用統計の非農業部門雇用者数が前月比52.8万人増と、前月の同39.8万人増から加速、市場予想の同25.0万人増を大幅に上回りました。また、平均時給は前年比5.2%増と前月と同水準で、低下を想定していた市場予想の同4.9%増を上回りました。いずれもFRBの利上げ姿勢強化につながる内容で、米10年国債利回りは2.8%台に急反発しました。

今週の米国株式市場

市場予想を上回ったISM非製造業景気指数、雇用統計の非農業部門雇用者数を受けて米10年国債利回りの低下は一服となる可能性が高そうです。S&P500指数の予想PERは、2022年予想基準で16.9倍、2023年予想基準で18.2倍まで上昇しており、EPSが下方修正されつつある環境下では十分戻ったとの評価になりやすいでしょう。

一方、注目は機関投資家の動きです。リセッション入りの可能性を考慮して株式ポジションは低位に抑えられていたとみえ、相場が容易に反落しないとなると、ポジション引き上げに動く可能性がありそうです。これがもう一段の相場上昇を引き起こす可能性があるでしょう。

今週の株価材料として、米国の物価指標、機関投資家の動き、半導体の米国内生産を促す「CHIPS法」の成立、などが注目されます。

米国の物価指標は、8/10(水)に7月消費者物価指数、8/11(木)に7月生産者物価指数が発表されます。消費者物価指数のヘッドラインは前月の前年比9.1%増から同8.7%増への減速、エネルギー・食品を除くコア指数は前月の前年比5.9%増から同6.1%増へ加速が予想されています。また、生産者物価指数のヘッドラインは前月の前年比11.3%増から同10.4%増へ、コア指数は前年比8.2%増から同7.7%増へいずれも減速の予想です。

これまで株式市場はインフレのピークアウトを想定して戻ってきたわけですが、これを確認する内容になるか注目です。消費者物価指数のコアの加速が小幅にとどまるか、生産者物価指数のコアの減速が続くかがポイントになりそうです。

来週8/15(月)には米国の機関投資家の株式保有状況報告(フォーム13F)の提出期限を迎えます。3月末から6月末にかけてどのように動いたかが明らかとなります。期限前から提出が始まり、著名投資家の動きがニュースになります。

「CHIPS法」は、8/9(火)にバイデン大統領のサインによって成立の見通しです。同法律に基づく予算は合計2,800億ドル(約38兆円)で、そのうち520億ドル(約7兆円)が米国内で半導体を生産する企業への財政支援に用いられます。米国内で生産される半導体の比率は1990年には37%でしたが、現在は12%にまで低下しています。今回の支援によってこの流れを反転させようとしています。

経済指標では上記のほか、8/12(金)に8月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)(前月の51.5から52.5に改善の予想)の発表が予定されています。

企業イベントでは、パランティアテクノロジーズ、アップスタートホールディングス、ユニティソフトウェア、コインベースグローバル、ウォルトディズニー、マルケタ、リビアンオートモーティブ、ニオ(E)、イルミナなどの決算発表が予定されています。また、サイバーセキュリティの業界コンファレンス「Black Hat USA 2022」が8/10(水)、8/11(木)にラスベガスで開催されます。

今週の5銘柄

先週決算を発表した好決算銘柄を図表3に抽出しました。今回は中小型株に好決算のものが多く含まれています。

ここからアリスタ ネットワークス(ANET)、アルベマール(ALB)、マリオット インターナショナル A(MAR)、モノリシック パワー システムズ(MPWR)、ON セミコンダクタ(ON)を選んでご紹介いたします。

図表3 先週の好決算銘柄(S&P500指数採用銘柄対象、データは8/4(木)時点)

銘柄(コード) 事前予想比サプライズ 前年同期比成長率 株価騰落率
(5日)
(%)
株価騰落率
(1ヵ月)
(%)
売上増加率
(%)
EPS増加率
(%)
売上増加率
(%)
EPS増加率
(%)
アリスタ ネットワークス(ANET) 7.4 18.2 48.7 58.8 6.7 28.0
アルベマール(ALB) 3.4 13.5 91.2 287.6 -0.6 17.2
モデルナ(MRNA) 18.1 15.3 9.1 -18.8 22.8 24.8
マリオット インターナショナル A(MAR) 6.3 14.6 69.5 127.9 0.6 14.6
エクスペディア グループ(EXPE) 6.5 28.1 50.7 黒字転換 -3.0 5.2
モノリシック パワー システムズ(MPWR) 7.2 10.6 57.2 79.6 15.4 44.0
ON セミコンダクタ(ON) 3.4 6.1 24.9 112.7 5.4 43.9
ジェネラック ホールディングス(GNRC) 2.5 14.2 40.4 25.1 -5.2 12.4
ペイコム ソフトウェア(PAYC) 2.5 12.4 30.9 29.9 10.5 15.2
ガートナー(IT) 5.5 35.6 19.9 27.2 10.7 21.6
シェブロン(CVX) 16.9 17.2 82.9 240.4 0.5 5.9
オクシデンタル ペトロリアム(OXY) 7.2 22.1 79.2 1071.9 -8.3 -2.8
インガーソールランド(IR) 3.2 4.6 12.6 17.4 3.4 20.1
コルテバ(CTVA) 4.4 10.9 12.9 17.1 -3.1 6.0
リパブリック サービシーズ(RSG) 4.2 11.6 21.4 21.1 3.1 9.2
ケロッグ(K) 6.1 11.0 8.7 3.5 0.8 2.1

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(8/5)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートアリスタ ネットワークス(ANET)126.68ドル31.7

【データセンターの需要が好調】

・データセンター向けネットワーク機器、関連ソフトウェアを販売する会社です。高速スイッチ(イーサネットスイッチ)やLinuxによるネットワークOSに強みをもちます。データセンターの需要が好調で、売上・EPSとも市場予想を上回り、7-9月期の売上ガイダンスは10.25~10.75億ドルで、9.96億ドルの市場予想を中央値で5%以上上回りました。

・4-6月期の売上は10.5億ドルで初めて10億ドルを突破、前年同期比49%増に加速、1-3月期との比較でも20%増加しました。EPSも前年同期比59%増と好調です。半導体不足が売上の制約になるリスクはありますが、いまのところうまく運営されているようです。2022年12月期通の売上は前年比39%増が予想されています。

買付チャートアルベマール(ALB)237.99ドル13.3

【リチウムの需要拡大から恩恵】

・特殊化学品の老舗で、2021年12月期の売上構成比は、リチウム41%、臭素特殊品34%、触媒23%、その他2%からなります。EVバッテリーに使われるリチウムと、難燃剤として使われる臭素の価格上昇によって業績が大幅に伸びて、市場予想も大きく上回りました。

・主力のリチウム売上は前年同期比2.8倍に伸びました。販売価格が市場価格の上昇に加えて顧客との契約価格見直しによって同2.6倍に上昇、数量もチリの設備拡張で同18%伸びています。通年の販売価格は前年比3.25~3.50倍となる見通しで部門の調整後EBITDA(利払い、税金、償却前利益)は、従来予想の前年比4.0倍から6.0~6.5倍の見通しに引き上げています。臭素特殊品の売上も前年同期比35%増と好調です。

買付チャートマリオット インターナショナル A(MAR)157.01ドル25.0

【パンデミックからの回復】

・世界最大のホテルチェーン。マリオット、リッツカールトン、ウェスティン、シェラトンなどのブランドで7,000以上の施設を運営、ホテル資産を保有せず、運営を受託するアセットライトの経営に特徴があります。パンデミックの克服によりビジネス客、レジャー客とも回復しつつあります。

・4-6月期のグローバルRevPAR(一日あたり販売可能客室数あたり客室売上)は、前年同期比71%増で、パンデミック前の2019年4-6月期との比較では3%減の水準まで回復しました。海外市場に比べて回復が進んでいる米国&カナダでは2019年の4-6月期比で1%増となっています。業績回復を受けて自社株買いを再開、4-6月期に3億ドルを実施しています。6月末時点の開発中の案件は2,950プロジェクト、49.5万室に及びます。

買付チャートモノリシック パワー システムズ(MPWR)532.33ドル42.3

【電源ソリューションの会社】

・電源モジュール、DC/DCコンバータなど半導体ベースの電源ソリューションを提供している会社。最終需要市場の売上構成比は、ストレージ&コンピューティングが26.5%、コンシューマー21.1%、エンタープライズデータ14.2%、自動車13.2%、通信12.9%、産業機器その他12.1%と幅広く分散されています(2022年4-6月期)。機器の小型化が進む中で省スペース化が得意なことで需要が拡大している模様です。

・4-6月期の売上は前年同期比57%増、1-3月期比でも同22%増と好調です。最終需要市場別には、ストレージ&コンピューティングが同2.1倍とけん引、その他の主要市場も拡大となっています。7-9月期の売上ガイダンスは4.8~5.0億ドルで、前年同期比48~55%増相当です。

買付チャートON セミコンダクタ(ON)67.63ドル13.2

【自動車・産業機器向けの需要が拡大】

・アナログ半導体の中堅メーカー。モトローラの半導体部門が前身で、その後買収(三洋電機の半導体部門を含む)を重ねて成長しました。同社によると、自動車と産業機器向けの半導体需要は半導体市場全体の3倍の成長率で伸びているとしています。4-6月期売上の38%が自動車向け、28%が産業機器向けで、合計66%に達して、市場拡大の恩恵を受けています。

・4-6月期の売上は前年同期比25%伸びて、粗利率も49.7%と前年同期の38.3%から大幅に改善、調整後EPSは同113%増と好調です。7-9月期ガイダンスは、売上が20.7~21.7億ドル(前年同期比19~25%増相当)、EPS(調整後でない)は1.25~1.37ドル(同78~96%増相当)です。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2022年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
8(月)   パランティアテクノロジーズ、アップスタートホールディングス
9(火) ・日本工作機械受注(7月)
・中国資金調達総額(7月、15日までに発表)
・半導体の米国内生産を促す「CHIPS法」が成立へ
・NFIB中小企業楽観指数(7月)
ユニティソフトウェアコインベースグローバル
10(水) ・中国生産者・消費者物価指数(7月)
・米消費者物価指数(7月)
・シカゴ連銀エバンス総裁の講演
・ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の講演
・サイバーセキュリティコンファレンス「Black Hat USA 2022」
(ラスベガス、11日まで)

ウォルトディズニー
マルケタ
11(木) ・米生産者物価指数(7月)
・米新規失業保険申請件数(8月6日に終わる週)
リビアンオートモーティブニオ(E)、イルミナ
12(金) ・ユーロ圏鉱工業生産(6月)
・米ミシガン大学消費者信頼感指数(8月、速報値)
 
15(月) ・日本実質GDP(4-6月期、速報値)
・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(7月)

・中国調査失業率(7月)
・ニューヨーク連銀製造業景気指数(8月)
・NAHB住宅市場指数(8月)
 
16(火) ・ドイツZEW景気指数(8月)
・米住宅着工・建設許可件数(7月
・米鉱工業生産(7月)
 
17(水) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、改定値)
・米小売売上高(7月)
・FOMC議事要旨(7月26日、27日開催分)
ターゲット、シスコシステムズ、ロウズ
ジムインテクレーテッドシッピング
18(木) ・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(8月)
・米新規失業保険申請件数(8月13日に終わる週)
・米中古住宅販売件数(7月)
アプライドマテリアルズ、エスティーローダー
19(金)   ディア

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。 ※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

免責事項・注意事項

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