アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~テスラ、ブッキング、アドビなど反発局面の上昇上位銘柄~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~テスラ、ブッキング、アドビなど反発局面の上昇上位銘柄~

投資情報部 榮 聡

2022/09/12

先週はジャクソンホール会合後の株価下落に行き過ぎ感があったところに、米10年国債利回りに上昇一服期待もあり、週央から急反発となりました。今週の株価材料として、米国の8月消費者物価指数、証券会社主催のコンファレンス、トリプルウィッチング、などが注目されます。

今回は9/6(火)終値~9/9(金)終値の株価上昇率が大きい銘柄から、テスラ(TSLA)ブッキングホールディングス(BKNG)アドビ(ADBE)セールスフォース(CRM)ネットフリックス(NFLX)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

「雲」の下限にタッチしたあと、3連騰となりました。9/9(金)には50日・100日移動平均線も突破しており、目先は少なくとも一目均衡表の基準線の4,100ポイント辺りまでは到達しそうな勢いです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(5日の騰落率は9/1(木)終値~9/9(金)終値によります。)

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
素材 4.8% -4.0% -4.3%
一般消費財・サービス 4.7% -3.6% 14.4%
金融 3.5% -3.6% 5.7%
ヘルスケア 2.9% -2.5% 4.0%
公益事業 2.6% 0.6% 8.6%
S&P500 2.5% -5.0% 4.3%
エネルギー 2.4% 2.4% -8.7%
不動産 2.4% -5.7% 4.6%
資本財・サービス 2.4% -4.8% 4.9%
情報技術 1.9% -9.0% 4.9%
コミュニケーションサービス 0.9% -7.6% -2.1%
生活必需品 0.5% -2.0% 3.2%
騰落率上位(5日) 騰落率
テスラ 8.1%
シュルンベルジェ 7.6%
ゼネラル・モーターズ(GM) 7.1%
ブッキング・ホールディングス 6.9%
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン 6.7%
騰落率下位(5日) 騰落率
コムキャスト -4.0%
チャーター・コミュニケーションズ -3.4%
クラフト・ハインツ -3.3%
AT&T -2.7%
コルゲート・パルモリーブ -2.2%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で3.6%、NYダウは2.7%、ナスダック指数は4.1%と4週ぶりの大幅反発となりました。

8/26(金)のジャクソンホール会合でFRBのタカ派姿勢を確認して相場下落の流れができましたが、先々週末には売られすぎ感も出ていたとみられます。9/7(水)に米10年国債利回りが前日比低下したことを契機に反発に転じ、その後3連騰となりました。ドル需要の高まりで、米国債に資金が流入しているとされ、長期金利の上昇が一服するとの期待もあるようです。

9/8(木)にはパウエルFRB議長がインフレ抑制に「強くコミットしている」と表明し、今月のFOMCでは0.75%ポイントの利上げになるとの見方が強まりましたが、その中でも株価は上昇となり、相場の足腰の強さが感じられました。

業種指数(騰落率は9/1(木)終値~9/9(金)終値のデータです)では、相場が急反転したことから「素材」「一般消費財・サービス」「金融」など景気敏感の業種が優位となりました。

「素材」をけん引したのは、同期間で16.8%上昇したアルベマール(ALB)や5.5%上昇したFMC(FMC)でした。両社とも電気自動車のバッテリーに使用されるリチウムを生産してします。テスラも上昇率トップで電気自動車関連を物色する動きがうかがえます。

経済指標では、8月ISM非製造業景気指数が前月の56.7から56.9へから予想外に改善、先週の8月製造業景気指数も前月の52.8と横ばいで予想を上回ったことと併せて、企業の景況感の底堅さが確認されました。

今週の米国株式市場

米国株式市場は、9/13(火)の8月消費者物価指数でネガティブサプライズがなければ、戻りを試す展開となりそうです。

レイバーデーの休場後には、投資家が市場に戻ってきて出来高が増加して相場が上昇することが多いとのアノマリーがあるようですが(先週テレビ東京のモーニングサテライトで紹介されていました)、そのパターンにあてはまりつつあるようです。

S&P500指数の予想PERは8/16(火)直近ピーク時の19.0倍から9/6(火)には17.3倍まで調整した後、9/9(金)には18.0倍まで戻っています。

今週の株価材料として、米国の8月消費者物価指数、証券会社主催のコンファレンス、トリプルウィッチング、などが注目されます。

8月の消費者物価指数は、総合指数が前月の前年比8.5%増から同8.0%増に低下の一方、コア指数は前月の同5.9%増から同6.1%増に上昇の予想です。9/21(水)に発表されるFOMCの結果が0.5%ポイントの利上げになるのか、0.75%ポイントになるのか、議論が高まることが予想されます。

コア指数は前月から伸び率が高まる予想となっていますが、要因としては図表3の通り、寄与度の上昇が続いているサービスの影響が想定されているようです。中でも住居費の上昇が主因とみられていますが、これについては広く知られているとみられますので、予想を上回らなければ、相場にネガティブにはならないと想定できそうです。

証券会社主催のコンファレンスは、4-6月期、5-7月期、6-8月期の決算発表が一巡する、この時期の開催が多くなります。企業の中期業績見通し、中期経営計画が好感される可能性もあります。例えば、ゴールドマンサックスは、「Communacopia + Technology」と題するコンファレンスを開催し、通信やテクノロジー企業が参加します。

9/16(金)に株価指数先物・オプションの取引期限満了日が重なるトリプルウィッチングを迎えます。出来高が増えるため、株価がぶれ易い日になります。相場は依然として不安定要素を抱えているため、注意が必要でしょう。

経済指標では上記のほか、9/14(水)に米国の8月生産者物価指数(前年比8.8%増の予想、前月は同9.8%増)、同コア指数(前年比7.1%増の予想、前月は同7.6%増)、9/15(木)の米国の8月小売売上高(前月比0.0%の予想)、9/16(金)に中国の8月鉱工業生産(前年比3.8%増の予想、前月も同3.8%増)、小売売上高(前年比3.2%増の予想、前月は同2.7%増)、米国の9月ミシガン大学消費者信頼感指数(前月の58.2から60.0改善の予想)、などの発表が予定されています。

企業イベントでは、オラクル、アドビの決算発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は3連騰となった、9/6(火)終値~9/9(金)終値の株価上昇率が大きい銘柄をS&P100指数採用銘柄からご紹介いたします。

図表4に抽出した騰落率上位10銘柄から成長銘柄を中心に、テスラ(TSLA)ブッキングホールディングス(BKNG)アドビ(ADBE)セールスフォース(CRM)ネットフリックス(NFLX)を選んでご紹介いたします。

図表3 米消費者物価指数の主要品目別寄与度

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 9/6(火)終値~9/9(金)終値の株価上昇率上位銘柄(S&P100指数採用銘柄対象)

コード 銘柄名 9/6(火)終値~
9/9(金)終値の
株価上昇率
来期売上高
予想増収率
(%)
来期EPS
予想増加率
(%)
TSLA テスラ 9.2 40.5 40.8
BKNG ブッキング・ホールディングス 9.2 13.5 27.8
DD デュポン・ド・ヌムール 7.6 6.2 16.6
BK バンク・オブ・ニューヨーク・メロン 7.3 4.2 12.1
ADBE アドビ 7.2 14.1 17.5
CRM セールスフォース 7.2 14.7 18.7
NFLX ネットフリックス 7.0 7.7 7.5
NVDA エヌビディア 6.8 14.4 29.6
META メタ・プラットフォームズ 6.7 10.4 14.7
GM ゼネラル・モーターズ(GM) 6.7 5.9 -6.3

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(9/9)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートテスラ(TSLA)299.86ドル77.7

【エコカー控除の拡大から恩恵】

・8/16(火)に成立した「インフレ抑制法」によってメーカー当たり20万台の控除の上限が2023年1月から撤廃されます。このため、EVの生産台数が大きいテスラがエコカー控除の恩恵が大きくなります。また、同社は太陽光発電関連の事業を保有しており、同事業も恩恵を受けます。

・4-6月期は売上が上海工場のロックダウンで1-3月期からは13%の減収となったものの前年同期比では42%増、EPSは同57%増と伸びました。粗利率も25.0%と前年同期の24.1%から改善しており、原材料高による利益率悪化の圧力をかわしています。営業費用は同13%増に抑えられて、利益は市場予想を大きく上回り、通期のコンセンサス予想EPSが引き上げられています。

買付チャートブッキングホールディングス(BKNG)1,981.0321.2

【旅行規制解除の恩恵が期待される】

・ホテル予約の大手で宿泊世界首位、傘下に旅行比較サイトのカヤック、レストラン予約のオープンテーブル。米国売上が13%に対して欧州を中心とした海外売上が87%を占めます(2021年12月期)。民泊市場への進出や、航空券予約、アトラクション予約、決済サービスへの展開によるホテル予約客へのクロスセルによって長期的な売上成長が期待されます。

・高いブランド認知と欧州でのホテルの品揃えの幅広さにより、パンデミック終息時のペントアップ需要を獲得できる立場にあります。ドル高ユーロ安が業績にマイナスですが、足もとでユーロ安の勢いが低下していることから株価の反発につながっている可能性があるでしょう。4-6月期の売上は前年同期比99%増、グロスの旅行予約は同57%増と旅行需要の回復は順調です。7-9月期については、「非常に忙しくなる見通しだ」とコメントしています。

買付チャートアドビ(ADBE)394.78ドル24.8

【デジタル化投資に欠かせないツールを提供】

・画像処理・文書編集のソフトウェアを手がける世界的企業で、企業がデジタル化を進める際に欠かせないツールを多数提供しています。企業からの旺盛な需要により、今後3年のオーガニック(企業買収・事業売却などの影響を除いた)の売上成長率は年率13~15%が見込まれます。

・株価は昨年11月の高値から4割以上の調整となっていますが、株価調整によって予想PERは26倍台まで低下して、投資のチャンスと注目する投資家も増えているとみられます。3-5月期の決算は売上が前年同期比14%増、調整後EPSが同11%増で市場予想を上回りました。一方、6-8月期のガイダンスは売上・調整後EPSとも市場予想を下回り、2023年2月期のガイダンスを引き下げました。為替の向かい風やロシア事業の停止などが理由として言及されています。9/15(木)に6-8月期決算を発表の予定です。

買付チャートセールスフォース(CRM)162.5934.3

【PERの調整が進んだとみられる】

・ 企業向けに販売支援(顧客関係管理)、顧客サービス支援、マーケティング支援などのソフトウェアをクラウドで提供する企業です。顧客関係管理ソフトウェアでは世界最大で、2位企業に売上で5倍以上の大差を付けています。企業のクラウド採用拡大を受けて成長が続いており、コミュニケーションツールのスラック買収も中期的な成長が高めると期待されています。

・PERの水準が高かったことから、株価は昨年11月の高値から5割近く下落しています。予想PERは34倍まで低下しました。足もとの企業景況感の悪化は懸念材料であるものの、中期的には高い成長が期待できることには変わりはないとみられます。5-7月期の売上は前年同期比22%増(為替の影響を除いて同26%増)と高い伸びが続きました。一方、8-10月期の売上は前年同期比約14%増(為替の影響が3.6%ポイントのマイナス)、2023年1月期は前年比約17%増(為替の影響が3.0%ポイントのマイナス)のガイダンスです。

買付チャートネットフリックス(NFLX)233.57ドル22.1

【契約者純増がプラスに転じる見通し】

・7-9月期ガイダンスは売上・EPS・契約者純増とも市場予想を下回りましたが、契約者数純増が1-3月期、4-6月期の減少から7-9月期は増加に転じるとの見通しに市場は反応、株価は大きく反発しました。契約者純増は4-6月期の97万人減(ガイダンスは200万人減)から7-9月期は100万人増のガイダンスです。

・7-9月期の業績ガイダンスは、売上が前年同期比5%増に鈍化、EPSは前年同期比33%減です。従来から同社の株価は業績動向よりも契約者純増に反応する傾向がありましたが、今回は減少が続くかもしれないという恐怖から、底入れしそうだとの安心感へ極端に動いているようです。市場シェアを拡大しつつある「ディズニー+」などとの競争激化はあるものの、予想PERは20倍台前半まで低下しており、成長性を勘案すると割高感はないとみられます。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、アップルが2023年9月期、その他は2022年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
12(月) ・日本工作機械受注(8月) オラクル
13(火) ・ドイツZEW景気指数(9月)
・NFIB中小企業楽観指数(8月)
・米消費者物価指数(8月)
 
14(水) ・米鉱工業生産(7月)
・米生産者物価指数(8月)
 
15(木) ・上海協力機構首脳会議
(ウズベキスタン・サマルカンド、16日まで)

・米新規失業保険申請件数(9月10日に終わる週)
・ニューヨーク連銀製造業景気指数(9月)
・米小売売上高(8月)
・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(9月)
・米輸入物価指数(8月)
・米鉱工業生産(8月)
アドビ
16(金) ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(8月)
・EU27ヵ国新車登録台数(8月)
・トリプルウィッチング
(株価指数先物・オプションの取引期限満了日)
・ミシガン大学消費者信頼感指数(9月)
 
19(月) ・米NAHB住宅市場指数(9月)  
20(火) ・米住宅着工・建設許可件数(8月)  
21(水) ・米中古住宅販売件数(8月)
・米FOMC政策金利
 
22(木) ・日銀金融政策
・米新規失業保険申請件数(9月17日に終わる週)
アクセンチュア、フェデックス、コストコホールセール
23(金) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(9月) カーニバル

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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