アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~株価が上昇しやすい10-12月期の相場反発に期待~
投資情報部 榮 聡
2022/10/03
先週は長期金利の上昇基調が続く中、景気減速・企業業績悪化に対する懸念が高まり、株式は大幅続落となりました。今週の株価材料として、9月雇用統計、金融当局者の発言、企業景況感、などが注目されます。
今回は財務体質が良好で配当利回りが高い銘柄から、US バンコープ(USB)、エクソン モービル(XOM)、シスコ システムズ(CSCO)、コカ-コーラ(KO)、テキサス インスツルメンツ(TXN)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数のローソク足(週足、3年)
先週は6月17日の安値3,636.87ポイント前後でもみあった後、この水準を割り込み、2020年11月以来の水準に下落しています。長い期間のチャートをみると200週移動平均にタッチしており、2020年3月安値と2022年1月高値の仲値近辺でもあります。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 1.8% | -9.2% | -0.3% |
素材 | -0.7% | -8.3% | -8.3% |
ヘルスケア | -1.4% | -2.9% | -6.7% |
資本財・サービス | -2.4% | -9.8% | -6.0% |
一般消費財・サービス | -2.4% | -8.1% | 2.1% |
金融 | -2.4% | -7.5% | -5.0% |
S&P500 | -2.9% | -8.6% | -6.3% |
コミュニケーションサービス | -3.0% | -11.4% | -13.5% |
不動産 | -3.9% | -12.5% | -13.3% |
生活必需品 | -4.0% | -7.7% | -8.5% |
情報技術 | -4.2% | -10.5% | -6.7% |
公益事業 | -8.8% | -11.8% | -9.0% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
バイオジェン | 35.0% |
ネットフリックス | 4.0% |
イーライリリー | 3.8% |
シュルンベルジェ | 2.6% |
ホーム・デポ | 1.8% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ナイキ | -14.3% |
デューク・エナジー | -10.3% |
エクセロン | -10.1% |
フィリップ・モリス・インターナショナル | -9.6% |
ゼネラル・モーターズ(GM) | -9.6% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で2.9%、NYダウも2.9%、ナスダック指数は2.7%の続落となりました。9月月間ではS&P500指数は9.3%と、2020年3月以来の大幅な下落です。
9/13(火)のCPIショック、9/21(水)のFOMC結果発表を受けた株式の下落基調は先週も継続しました。FRBのタカ派姿勢を受けて米10年国債利回りは一時4%台をつける一方、同時に景気悪化への懸念も高まったことから、株式は下落基調が続きました。
9/28(水)には米10年国債利回りが反落して株式が大きく反発しましたが、これは急落して市場の不安定要因となることが懸念された英ポンドの安定に向けてイングランド銀行が長期国債の買い入れを開始すると発表したことが要因でした。
9/26(月)~9/29(木)は、6月半ばの安値近辺を意識したもみ合いとみなせますが、9/30(金)にはこれを明確に下回って引けました。ただし、同日は四半期末にあたるため、一時的な需給要因が影響した可能性もあり、9/30(金)の下げが実態を反映するものか、注意してみる必要があるでしょう。
業種指数では、週間で原油価格が上昇したことから、「エネルギー」のみ上昇となりました。個別銘柄でトップのバイオジェン(BIIB)は、エーザイと共同開発している「レカネマブ」が早期アルツハイマー病患者を対象とした第3相試験で疾患の進行を遅らせることが確認されたと発表して大幅な上昇となりました。エーザイは、2022年度中の米国フル承認申請、日本、欧州での承認申請を目指します。
経済指標では、7月のS&Pコアロジック住宅価格指数が前年比16.1%増と前月の同18.7%増から低下、前月比では0.8%減と2019年来初めてマイナスを記録しました。住宅価格の変動は、数ヵ月のラグをもって消費者物価指数の住居費にあらわれます。消費者物価指数を押し上げている住居費の先行きのピークアウトにつながる指標と言えるでしょう。
一方、8月個人消費支出物価指数のコアは、前年比4.9%増と前月および市場予想の同4.7%増を上回りました。前月から上昇率が拡大した消費者物価指数のコア指数と同様の傾向で、当面のインフレは高止まりする可能性が高いことを示しました。
今週の米国株式市場
ここ2週間は筆者の想定以上の長期金利上昇、株式市場の下落となっています。しかし、年末にかけてインフレピークアウトが見込まれる大きな流れは変わらないとみており、株式相場底入れの見方を変える必要はないのではないでしょうか。
また、10-12月期は1年のうちでも、最も株価が上昇しやすい時期です。図表3はS&P500指数の1992年からの月間騰落率です。9月は株価が下落しやすく、10月~1月の時期は1年で最も上昇率しやすい傾向があることがわかります。10月が2.1%、11月が2.0%、12月が1.7%、1月が1.5%と上昇率の上位4ヵ月がこの時期に集中しています。
また、この時期に株価が上昇しやすい要因として、予想EPSの基準が今期から来期に移行していくこともあると考えられます。2022年のS&P500指数の予想EPSは224ポイント、2023年の予想EPSは242ポイントとなっています。今期予想基準では、予想PERは16.0倍ですが、来期基準なら14.8倍とかなり割安感が強くなっているとみられます。
今週の株価材料として、9月雇用統計、金融当局者の発言、企業景況感、などが注目されます。
9月雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比25万人増で、雇用増の鈍化傾向が示されると予想されています。また、平均時給は8月の前年比5.2%増から同5.1%増へやや上昇率の鈍化が予想されています。
今週は金融当局者の発言が多数予定されています。アトランタ連銀ボスティック総裁、リッチモンド連銀バーキン総裁、カンザスシティ連銀ジョージ総裁、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、ダラス連銀ローガン総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁などです。
特に注目されているのが、FOMC(米連邦公開市場委員会)でタカ派をリードしていると目されるクリーブランド連銀のメスター総裁です。同氏は、10/4(火)の決済システムのコンファレンスに出席、10/6(木)には経済見通しについて講演の予定です。
企業景況感では、9月ISM製造業景気指数が前月の52.8から52.1へ、9月ISM非製造業景気指数が前月の56.9から56.0へ、いずれも若干の悪化が見込まれています。ただ、景気動向の分水嶺となる50を上回っていることから、市場の景気懸念を和らげる可能性が考えられるでしょう。
経済指標では上記のほか、10/5(水)に9月ADP雇用統計(前月比20.5万人増の予想)などの発表が予定されています。
企業イベントでは、バイオジェン、ラムウェストンホールディングス、マコーミック、コンステレーションブランズなどの決算発表が予定されています。
今週の5銘柄
本レポートの9/12(月)号、9/20(火)号(9/26(月)号は休載です)では、相場の底入れを想定してテスラ(TSLA)、ブッキングホールディングス(BKNG)、アドビ(ADBE)、セールスフォース(CRM)、ネットフリックス(NFLX)を今週の5銘柄として掲載しました。
相場底入れの見方は変わっていないため、引き続きこれら成長の要素をもつ銘柄群の押し目を買うのは良い戦略と考えています。ただ、筆者の想定に反して相場の下落が続いているため、今回はこれ以外の選択肢も提案いたします。
米国の株式啓蒙家ジム・クレーマー氏は、9/30(金)の「Mad Money」(経済専門チャンネルCNBCの株式番組)で、「インフレ鎮静化が恩恵となる、良好なバランスシートと高い配当を備えたクオリティの高い銘柄をもちなさい。なぜなら、インフレ鎮静化がこれから起きることだから。」とアドバイスしています。
このアイデアに沿って、以下の条件でS&P100指数構成銘柄についてスクリーニングを行いました。
1. 予想配当利回りが2.5%以上
2. S&Pの長期信用が「A+」以上
3. 今期予想EPSの3ヵ月修正率が-5.0%以上
図表4に抽出された銘柄から、以下の銘柄を今週の5銘柄といたします(今回、銘柄のご紹介は簡略化いたします)
US バンコープ(USB)・・・全米4位のリテールを中心とした銀行です。バークシャーハサウェイの保有銘柄でもあります。
エクソン モービル(XOM)・・・世界的な総合エネルギー大手で、業績は原油価格の動向に影響を受けます。
シスコ システムズ(CSCO)・・・企業のIT投資関連です。サプライチェーン問題の影響から抜けつつあります。
コカ-コーラ(KO)・・・経済再開の恩恵を受けて業績は回復基調です。
テキサス インスツルメンツ(TXN)・・・アナログ半導体が主力のため、半導体銘柄の中では業績は堅調とみられます。
図表3 S&P500指数の月間騰落率(%、1992年1月~2022年9月)
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 信用力と配当利回りが高い銘柄(S&P100指数採用銘柄対象)
コード | 銘柄名 | 株価 (9/30) (ドル) |
予想PER (倍) |
S&P長期 信用 格付け |
実績配当 利回り (%) |
来期EPS 増加率 (%) |
今期予想 EPS修正率 (3ヵ月、%) |
USB | USバンコープ | 40.32 | 8.6 | A+ | 4.6 | 18.3 | -0.7 |
XOM | エクソンモービル | 87.31 | 7.2 | AA- | 4.1 | -14.3 | 8.5 |
CVX | シェブロン | 143.67 | 7.7 | AA- | 4.0 | -9.1 | 1.0 |
CSCO | シスコシステムズ | 40.00 | 11.4 | AA- | 3.9 | 8.0 | -0.8 |
KO | コカ・コーラ | 56.02 | 22.4 | A+ | 3.1 | 5.8 | -3.3 |
TXN | テキサス・インスツルメンツ | 154.78 | 17.0 | A+ | 3.0 | -6.4 | 3.3 |
PG | プロクター・アンド・ギャンブル | 126.25 | 21.4 | AA- | 2.9 | 7.7 | -4.2 |
PEP | ペプシコ | 163.26 | 23.5 | A+ | 2.8 | 8.4 | -1.2 |
CL | コルゲート・パルモリーブ | 70.25 | 22.5 | AA- | 2.7 | 8.8 | -1.8 |
JNJ | ジョンソン・エンド・ジョンソン | 163.36 | 16.2 | AAA | 2.7 | 5.2 | -4.8 |
注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
10月 3(月) |
・日銀短観(7-9月期) ・米ISM製造業景気指数(9月) ・米自動車販売台数(9月) |
|
4(火) | ・クリーブランド連銀メスター総裁の講演 ・米製造業受注(8月) ・米求人労働異動調査(8月) |
バイオジェン |
5(水) | ・米ADP雇用統計(9月) ・米ISM非製造業景気指数(9月) |
ラムウェストンホールディングス |
6(木) | ・クリーブランド連銀メスター総裁の講演 ・米チャレンジャー人員削減数(9月) ・米新規失業保険申請件数(10月1日に終わる週) |
マコーミック、コンステレーションブランズ |
7(金) | ・米雇用統計(9月) | |
10(月) | ||
11(火) | ・米NFIB中小企業楽観指数(9月) | |
12(水) | ・日本機械受注(8月) ・ユーロ圏鉱工業生産(8月) ・米生産者物価指数(9月) ・FOMC議事要旨(9月21日に終わる週) |
ペプシコ |
13(木) | ・米消費者物価指数(9月) | デルタ航空、ブラックロック |
14(金) | ・中国貿易統計(9月) ・中国生産者・消費者物価指数(9月) ・米小売売上高(9月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(10月、速報値) |
TSMC(台湾セミコンダクター)、JPモルガンチェース シティグループ、ウェルズファーゴ、モルガンスタンレー |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
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