【アメリカNOW!】AI・半導体株の下落の裏で上昇しているヘルスケア株

投資情報部 榮 聡
2026/10/19
先週の米国株式市場は、半導体株の大幅な下落が続いて他のAI投資関連銘柄にも波及し、ナスダック指数は4.5%の下落でした。一方、AI・半導体株以外には上昇するセクターもあり、ダウ平均はプラスとなりました。今週の株価材料として、7-9月期決算発表、AI・半導体株物色の行方、中東情勢が注目されます。
今回は、AI・半導体株が下落する中で安定して上昇しているヘルスケアセクターから、メドトロニック(MDT)、マケッソン コーポレーション(MCK) 、イーライ リリィ(LLY)、モデルナ(MRNA)、iシェアーズ バイオテクノロジー ETF(IBB)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
先週筆者は「上放れの機会をうかがっているように見える」としましたが、全く反対の結果となりました。相場下落をリードしたAI・半導体株に対する市場の懸念が、安全資産へのシフトによって長期金利が低下するほどに深いものだったことは非常に意外でした。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
| S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
| 生活必需品 | 5.0% | 7.3% | 4.1% |
| エネルギー | 5.0% | 7.0% | 19.1% |
| ヘルスケア | 3.4% | 5.2% | 9.7% |
| 素材 | 2.5% | 2.6% | 2.4% |
| 公益事業 | 2.0% | 3.4% | -6.5% |
| 金融 | 1.4% | -0.5% | -1.3% |
| 不動産 | 1.2% | -0.4% | -7.0% |
| 資本財・サービス | -0.9% | -1.0% | -6.5% |
| コミュニケーションサービス | -1.6% | -0.4% | 0.6% |
| 一般消費財・サービス | -1.9% | 0.4% | -2.1% |
| S&P500 | -1.9% | 0.1% | 2.7% |
| 情報技術 | -6.4% | -2.3% | 5.8% |
| 騰落率上位(5日) | 騰落率 |
| アクセンチュア | 9.9% |
| コノコフィリップス | 9.3% |
| ロッキード・マーチン | 8.3% |
| ベライゾン・コミュニケーションズ | 7.5% |
| スターバックス | 7.5% |
| 騰落率下位(5日) | 騰落率 |
| アプライド・マテリアルズ | -19.3% |
| ラムリサーチ | -17.2% |
| マイクロン・テクノロジー | -14.6% |
| インテル | -14.2% |
| アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | -13.0% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で1.9%、ナスダック指数は4.5%の下落でした。一方、ダウ平均は0.7%の上昇でした。
先々週から始まった半導体株の下落が続き、フィラデルフィア半導体株指数は8日連続で下落し、週間で11.4%の大幅下落となりました。半導体株下落のきっかけは、中国のDRAMメーカーCXMT(長鑫存儲技術)が「4F²設計」のDRAM開発に進展があったと発表し、AI向け次世代DRAMとサーバー向けDDR5を2026年末までに市場投入する計画としたことです。
さらに先週には、AIデータセンターを運営するコアウィーブ(CRWV)の社債が額面1ドルあたり80セントを下回る水準(ディストレス水準と言われる)で取引され、信用不安が高まりました。既にブロードコム、オラクルの資金調達計画で神経質になっていた市場の懸念を強める結果となり、AI関連銘柄の株価下落に波及しました。
半導体関連のASML、台湾セミコンダクターの両社の決算では、半導体需要が非常に強いことが示されましたが、市場の疑念を払拭するには至りませんでした。
経済指標では、9月の消費者物価指数、生産者物価指数とも市場予想を上回る伸びとなり、成長企業の株価にはマイナスに作用しやすい環境でした。
業種指数では、ディフェンシブの生活必需品とヘルスケア、原油価格上昇が恩恵となるエネルギーなどが上昇しました。半導体株が売られた情報技術は6.4%の大幅な下落でした。
今週の米国株式市場
米10年国債利回りが物価指標の上振れにもかかわらず低下したのは、テクノロジー株から安全資産へシフトする動きがあったからだと考えられ、市場のテクノロジー株への懸念はそれほどまでに深いのだと言えます。
筆者にとっては、前回四半期決算の好調を確認した後でもそのような疑念がもたれていることは非常に意外です。しかし、債券利回りに影響が及んでいることから、米国の主要な機関投資家がそのように動いていると推定されますので、そういう意味では、この動きを軽視してはいけないのだと考えられます。
7-9月期の決算発表が進むにつれて、AI・半導体株は好決算によって見直されると想定していますが、当面は警戒感をもって臨むべきでしょう。
今週の株価材料として、7-9月期決算発表、AI・半導体株物色の行方、中東情勢が注目されます。
7-9月期決算発表では、ネットフリックス、メタ、テスラ、IBM、AT&T、P&Gなどの発表が予定されています。メタの設備投資額は、AI・半導体相場に影響を与えそうです。4-6月期決算時には、従来予想の1,250~1,450億ドルから1,300~1,450億ドルへ下限が引き上げられました。
なお、S&P500指数採用銘柄のEPS(発表済み企業の実績[9%の企業が発表済み]と未発表企業の予想の混合)は前年同期比29.0%増が予想されています(FactSet社の集計、10/16(金)時点)。
半導体株指数のSOX指数は、直近相場の安値である9/14(月)終値と同水準になっています。ここを勢いよく下抜けるようでは、相場は相当弱いということになりますので、注視する必要がありそうです。
中東では、米国とイラン間の紛争に加えてイエメンとサウジアラビア間で攻撃の応酬が続いており、情勢が複雑化していて予断を許しません。原油のWTI先物価格(11月物)は先々週末終値の91.85ドルから先週末終値の101.41ドルまで大幅に上昇しました。
経済指標では、10/20(火)に米国の9月住宅着工(前月比+1.6%の予想)・建設許可件数(前月比-1.3%の予想)などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は、このところパフォーマンスが好調となっているヘルスケア株をご紹介いたします。
S&P500指数採用のヘルスケアセクター株は60銘柄ありますが、時価総額が500億ドル以上の30銘柄について、過去5日のパフォーマンス上位を図表3に抽出しました。
ここからメドトロニック(MDT)、マケッソン コーポレーション(MCK)、イーライ リリィ(LLY)、モデルナ(MRNA)を選び、また、ヘルスケア株に広く投資するiシェアーズ バイオテクノロジー ETF(IBB)も併せてご紹介いたします。
なお、先週まで取り上げてきたAI・半導体関連銘柄については、市場センチメントの悪化で売られているものの、ファンダメンタルズは強固であるため、弱気に見る必要はないと考えています。
ただ、7-9月期の決算発表を通じて、市場のセンチメント悪化が徐々に解消されると考えられ、モメンタム回復には時間がかかる可能性もあるため、今回はヘルスケア株をご紹介することとしました。
図表3 主要ヘルスケア銘柄の上昇上位(時価総額500億ドル以上、10/8(木)から10/15(木)までの株価騰落率)
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 今週の5銘柄の投資指標
注:予想PERは今期予想EPSに基づいて計算しています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
| 取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (10/16) |
予想PER (倍) |
ポイント |
| 買付 | メドトロニック(MDT) | 94.75ドル | 15.9 | 【PFAが売上増をけん引】 ・医療機器メーカーの大手です。電池式体外型心臓ペースメーカーの先駆けとなり、ペースメーカーで世界首位です。パルスフィールドアブレーション(PFA、不整脈の治療に用いられるカテーテル治療)、「Micra」ペースメーカーなどがけん引して売上成長が高まる見通しです。 ・9/1(火)に発表された5-7月期決算では、売上のオーガニック成長率が前年同期比13.7%増と好調でした。PFAの売上がグローバルで同88%増、米国で同139%増となって全体をけん引し、米国の市場シェアが9%ポイント上昇しました。 | |
| 買付 | マケッソン コーポレーション(MCK) | 1,004.84ドル | 22.5 | 【医薬品卸の大手】 ・医薬品卸売大手で、ドラッグストアのCVSヘルスが最大の顧客です。事業が景気変動の影響を受けにくく、医薬品価格引き下げの影響も受けにくいことから、現在の市場環境にフィットしているとして物色されているようです。 ・2027年3月期は、売上が前年比7%増、EPSが同33%増と堅調な見通しです。医療外科ソリューション事業の分離を進める一方、在宅輸液療法のOption Care社を買収して、事業ポートフォリオの入れ替えを行っています。 | |
| 買付 | イーライ リリィ(LLY) | 1,257.03ドル | 26.6 | 【肥満治療薬の成長続く】 ・注目の肥満治療薬では、現在の主力であるゼップバウンド(注射薬)の海外での伸びが期待されます。また、経口の「ファウンダヨ」(物質名:オルフォルグリプロン)が4月から投入されています。開発中で大きな体重減少効果が示されている「レタトルチド」(GLP-1、GIP、グルカゴンの3つの受容体に同時作用する次世代肥満治療薬)は、2027年第1四半期に米FDAへの承認申請を予定しています。 ・4-6月期決算は、売上で12%、EPSで40%、それぞれ市場予想を大幅に上回りました。糖尿病治療薬のマンジャロは前年同期比91%増、ゼップバウンドは同46%増でした。 | |
| 買付 | モデルナ(MRNA) | 218.01ドル | - | 【開発中のがんワクチンが前進】 ・8/19(水)にメッセンジャーRNA(mRNA)がんワクチンの後期臨床試験で、メラノーマ(悪性黒色腫)の再発と転移リスクを低減する有効性が示されたと発表して以降、株価は上昇基調を保っています。 ・同ワクチンは、がん細胞の特定の変異を標的とすることで、患者自身の免疫系に腫瘍を攻撃するよう訓練する仕組みです。キイトルーダ単独よりも、ワクチンを追加した方が効果が高いことが示されました。同社の業績は新型コロナワクチンの需要が落ち着いたことで、2023年から赤字決算が続いており、会社の存続にはがんワクチンの製品化が不可欠とみられます。 | |
| 買付 | iシェアーズ バイオテクノロジー ETF(IBB) | 201.99ドル | - | 【バイオテクノロジー株のETF】 ・ブラックロック社が提供する米国上場のバイオテクノロジー株のETFです。組み入れ上位銘柄は、アムジェン、バーテックス・ファーマシューティカルズ、ギリアドサイエンシズ、リジェネロンファーマシューティカルズなどです(10/16(金)時点)。 ・9月末時点の純資産額は112億ドル、分配利回りは0.16%、経費率は0.44%です。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、メドトロニックが2027年4月期、マッケソンコーポレーションが2027年3月期、イーライリリィ、モデルナが2027年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
| 経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
| 19(月) | ・中国実質GDP(7-9月期) ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(9月) ・NAHB住宅市場指数(10月) |
|
| 20(火) | ・米住宅着工・建設許可件数(9月) ・米中古住宅販売成約(9月) |
ネットフリックス、3M、GEエアロスペース ゼネラルモーターズ、RTX |
| 21(水) | ・米20年国債入札 | メタプラットフォームズ、テスラ、IBM、AT&T ラムリサーチ、テキサスインスツルメンツ アボットラボラトリーズ、キンダーモルガン |
| 22(木) | ・米新規失業保険申請件数(10月17日に終わる週) | P&G、ロッキードマーチン |
| 23(金) | ・S&Pグローバル日本製造業PMI(10月) ・S&Pグローバルユーロ圏製造業PMI(10月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(10月) ・ミシガン大学消費者信頼感(10月、確報値) |
・アップルの折りたたみiPhone「iPhone Duo」の発売 アメリカンエキスプレス |
| 26(月) | ・シカゴ連銀全米活動指数(9月) ・米2年国債入札 |
ベライゾンコミュニケーションズ |
| 27(火) | ・米耐久財受注(9月) ・S&PコタリティCS住宅価格(8月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感(10月) ・米新築住宅販売件数(9月) ・米5年国債入札 |
コカコーラ、ビザ、ソーファイテクノロジーズ ボーイング、コーニング、ロビンフッドマーケッツ |
| 28(水) | ・FOMC政策金利 | アルファベット、マイクロソフト、アンフェノール GEベルノバ、フェデックス |
| 29(木) | ・米個人所得・個人支出(9月) ・個人消費支出物価指数(9月) ・米実質GDP(7-9月期、速報値) ・ユーロ圏主要政策金利 ・米7年国債入札 |
アマゾン、インテル、アルトリアグループ、イーライリリィ コインベースグローバル、ストラテジー、サンディスク キャタピラー、メルク |
| 30(金) | ・中国製造業・非製造業PMI(10月) | アッヴィ、シェブロン |
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
免責事項・注意事項
・レポートおよびコラムの配信は、状況により遅延や中止、または中断させていただくことがございます。あらかじめご了承ください。
・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなさるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製または販売等を行うことは固く禁じます。
【手数料等及びリスク】
SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)、 店頭CFD取引(SBI CFD)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示または契約締結前交付書面等をご確認ください。