2023年も検索上位のインド 調整局面をどう考える?

2023年も検索上位のインド 調整局面をどう考える?

投資情報部 川上雅人

2023/02/13

足元の業界動向と調整局面のインド株式

今回まずは短期的なファンド別での資金の動きの話です。

情報サービス会社のQUICKが日次で集計したファンド別の資金流入(購入-解約)によると2月8日の約定分は、これまで順調な資金流入が続いていた米国株式インデックスファンドからの資金流出が見られました。2月6日にETFを除く公募投資信託で残高首位となった「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」の3ファンドが揃って1億円から3億円程度の資金流出となりました。これらのファンドは積立投資などによる購入は順調ですが、今週はドル円レートが一時132円台まで上昇したことや1月からの米国株式の上昇が一服したことから、利益確定などの解約が増えたと予想されます。米国株式アクティブファンドの代表ともいえる「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」からの資金流出も目立ちました(4コース合計で14億円の資金流出)。

一方で、同日の資金流入では海外債券やバランス型、インド株式ファンドなどへの資金流入が見られました。

米国株式ファンドから他資産のファンドへ分散する動きが継続となるのか今後に注目です。

続いて、資金流入が見られたインド株式の話です。

1月31日にIMF(国際通貨基金)は、最新の世界経済見通しを発表しました。

世界経済のGDP成長率は、2022年の推定3.4%に続き、2023年にはインフレ対応による利上げの影響などで2.9%に減速する見込みですが、2024年はインフレが落ち着くことで3.1%とわずかながら成長加速が見込まれます。

その中で新興国に目を向けると2023年は推定3.9%から4.0%に成長加速となり、2024年も4.2%と成長加速という予測です。

新興国の成長を支えるのはインドです。インドは前年10月の見通しから変更はありませんが、2022年は推定6.8%の高成長となる模様で、2023年は減速するものの6.1%の高成長が続き、2024年は6.8%と成長加速となる見通しです(図表1)。

2月1日発表した2023年度のインド国家予算案は、歳出総額が前年度当初予算比で14%増、インフラ整備が軸の資本支出は同33%増と発表されました。中間所得者層への税制優遇や国内製造業振興、鉄道や道路などのインフラ整備を促進する内容との評価です。中間所得者層の消費の拡大やインフラ投資の拡大が高成長を支える見通しです。

高成長が継続する見通しで予算案発表を通過したインドですが、インドの代表的な株価指数であるSENSEX指数の値動きを見ると12月1日の過去最高値をつけてから調整局面が続いています。

昨年12月のインド株式は、世界的な景気減速懸念で世界株式と同様に下落しました。

1月はインドの財閥アダニ・グループに対する米投資会社による不正会計疑惑の指摘を受けて関連銘柄が急落し、インド株式全体にも売りが広がりました。そのため、1月以降の世界的な株価回復局面でインド株式は出遅れが鮮明となっています(図表2)。

インド株式投資においてポイントとなるインドルピーの対円レート(インドルピー円)については、米ドル円が高値をつけた10月中旬頃からほぼ米ドル並みに下落しているため、高値から約12%の下落となっています(図表3)。

図表1 IMFの世界経済見通し(実質GDP、年間の変化率、%)

  2022年
(推計)
2023年
(予測)
2024年
(予測)
世界 3.4% 2.9% 3.1%
先進国 2.7% 1.2% 1.4%
米国 2.0% 1.4% 1.0%
日本 1.4% 1.8% 0.9%
新興国 3.9% 4.0% 4.2%
インド 6.8% 6.1% 6.8%
中国 3.0% 5.2% 4.5%

出所:IMF(2023年1月発表)

図表2 インドSENSEX指数 (2022/9/30~2023/2/9)

※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表3 インドルピー円(2022/9/30~2023/2/9) 

※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

調整局面をどう考える? インド株式ファンドの運用状況は?

こうした状況を受けて、インド株式ファンドの足元の運用成績は低迷していますが、インドは2023年には世界の人口首位になる見込みです。さらにはGDPでは2030年までに世界第3位になると予測されています。

アダニ・グループのインド株式ファンドの組入れについては総じて限定的と考えられ、株価は足元の悪材料を織り込んで下落していることから、アダニ・グループへの懸念がこれ以上拡大しなければ、短期的な調整要因にどどまることも見込まれます。足元の悪材料に一喜一憂せずに長期の視点で見るべきだと考えます。

日本の投資家が参考となるインド株式への長期リターンを図表4で示しました。

15年間で見ると現地通貨建てであるインドSENSEX指数は絶好調といえますが、通貨インドルピーの下落により、円換算の株価指数はインドSENSEX指数よりも伸び悩みました。

それでも、円換算の株価指数は2008年の金融危機の影響で一時6割以上下落した局面もありましたが、15年間でぼぼ2倍(199)まで上昇しています。

過去大きな下落を何度か経験したインド株式ですが、調整局面は投資を開始する好機だったといえますので、インド株式の調整局面は積立投資などによる時間分散に留意した投資が有効と考えます。

図表5でインド株式ファンドの運用状況を示しました。ここではレーティング4つ星以上のファンドの中から決算頻度や信託期間を考慮して5ファンドを取り上げました(図表5)。

5ファンドともに6ヵ月リターンは低迷していますが、長期の3年や5年リターンは堅調となっています。

インド株式ファンドは6ヵ月および1年ではファンドによって運用成績に大きな差が出ています。

2022年のインド株式市場は、業種別ではIT(情報技術)や製薬が下落する一方で、銀行や消費関連の内需セクターが上昇となりました。こうした業種別での組入銘柄の違いなどで運用成績に差が出ているといえます。

インド株式ファンドはそれぞれ特徴が異なりますが、5ファンドの中では、より長期の視点で5年リターン上位のファンドが有望と考えています。

1位のイーストスプリング・インド消費関連株式ファンドは、消費拡大で恩恵を受ける企業の株式などに投資を行っており、長期のリターンではインド株式ファンドの中でトップクラスのファンドです。

2位の新生・UTIインドファンドは、5年では好調ですが、6ヵ月や1年では低迷しています。これは2022年に低迷したIT株のウエイトが高かったことが影響しているようです。アクティブファンドのため組入銘柄の変更もありえますが、IT株が上昇する局面では相対的に優位になるファンドと考えます。

図表4 インドSENSEX指数、インドルピー円の長期推移(2008年1月~2023年1月 2008年1月末=100) 

図表5 主なインド株式ファンドのパフォーマンス

ファンド名 6ヵ月リターン 1年リターン 3年リターン
(年率)
5年リターン
(年率)
イーストスプリング・インド消費関連ファンド -6.53% 5.74% 17.20% 9.30%
新生・UTIインドファンド -10.34% -7.47% 12.97% 8.52%
アムンディ・りそなインド・ファンド(愛称:マハラジャ) -1.80% 5.44% 12.63% 7.15%
イーストスプリング・インド株式ファンド(3ヵ月決算型) -3.27% 6.11% 15.57% 6.47%
高成長インド・中型株式ファンド -5.31% 0.50% 14.47% 6.38%

※ レーティング4つ星以上のインド株式ファンドを5年リターン順に表示(毎月決算型や信託期間の短いファンドは除外)
※ データはSBI証券ホームページより抜粋(2023年1月末基準)

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