日銀総裁交代 黒田総裁任期10年の好成績ファンドは?

日銀総裁交代 黒田総裁任期10年の好成績ファンドは?

投資情報部 川上雅人

2023/02/20

日銀総裁人事発表 黒田総裁任期10年のマーケットは?

政府は14日、新たな日銀総裁に経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を起用する案を衆参両院に示しました。
植田氏はマクロ経済学や金融論などを専門とする学者で黒田総裁が推し進めてきた金融緩和路線を維持する考えを示しています。副総裁候補には日銀理事の内田眞一氏と前金融庁長官の氷見野良三氏を挙げています。
今後、所信聴取と質疑が行われ衆参両院の議決を経て正式に決まる予定です。

そこで今回は、4月8日に任期が満了となる黒田日銀総裁の任期10年のマーケットを振り返ります。
異次元の金融緩和政策を推し進めた黒田日銀総裁が就任した2013年3月20日の前月末から直近(2月16日)までの10年間を確認します。

10年間の日米の株価指数(日経平均とNYダウ)は図表1となっています。
10年で日経平均が2.396倍、NYダウが2.398倍と株価は大幅に上昇しました。
世界経済の成長に加えて、日本はデフレからの脱却と富の拡大を目指したアベノミクスの初期で株価が低水準であったこと、米国は大手IT企業の株価本格上昇の前であったことが要因といえます。

次に10年の日米長期金利(10年国債利回り)の推移を示したものが図表2です。米国はインフレへの対応などでコロナショック前の水準よりも長期金利が上昇しているのに対して、異次元の金融緩和政策や金融市場調節によって長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」により日本は長期金利が低水準にとどまっていることが分かります。

こうした日米の金利差なども背景として、10年のドル円レートの推移(図表3)となります。ドル円レートは10年で45%も上昇しています。ユーロ円レートは18%の上昇にとどまっていますので、ここ10年ではドル円の上昇が目立つマーケットでした。

以上からこの10年間は日米ともに株式投資には好環境であったこと、特にドル円の上昇が享受できる日本の投資家にとっては、米国を中心とした海外への株式投資が特に好環境であったといえます。

図表1 日経平均とNYダウの推移 (2013年2月~2023年2月* 月末値)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成

図表2  日米長期金利の推移 (2013年2月~2023年2月* 月末値)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成

図表3 ドル円、ユーロ円の推移 (2013年2月~2023年2月* 月末値) 

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成

長期10年の好成績ファンドは?

好環境となった10年を投資信託(ファンド)で確認します。2023年1月末基準の長期10年の好成績ファンド(SBI証券取り扱い)は、国内株式型では図表4になっています。
1位のDIAM 新興市場日本株ファンドは10年ではなんと年率26.97%です。現在残念ながら販売停止中となっていますが、全てのカテゴリーで10年リターン1位です。年26%のリターンが10年続くと、複利効果で価格は10倍になる計算です。株価が10倍になることをテンバガーといいますが、同ファンドはまさに10年のテンバガーファンドです。
2位から6位のファンドも年率19%台から18%台と好成績です。この期間で最も好成績だったインデックスファンド(ニッセイ日経225インデックスファンド)を参考として示していますが、上位6ファンドはインデックスファンドを大きく上回る実績となりました。上位は5位まで小型グロースのファンドで、日本株の上昇局面で小型成長株が相対的に好調となったマーケットであったといえます。
一方で直近1年は小型成長株が苦戦するマーケットだったといえますが、その中でも1年リターンで10%を超える上昇となっている2位の日本新興株オープンに注目します。現在、SBI証券で購入できるファンドの中で10年リターン1位(年率19.73%)のファンドになります。同ファンドは新興企業の株式の中から中長期的に成長が期待できる企業および業績の回復が見込める企業の株式に投資しています。1月末の組入上位銘柄はアンビスホールディングス(7071)、ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)、日本マクドナルドホールディングス(2702)などとなっており、94銘柄に投資しています(※)。

次に同じ条件において国際株式型で見たのが図表5です。10年リターンではアライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 Bコース(為替ヘッジなし)が年率17.95%で1位でした。2位から5位までのファンドの10年リターンも年率17%台から16%台と好調でした。1位から5位まで全て米国株式を投資対象とするファンドでした。この期間で最も好成績だったインデックスファンド(SMTAMダウ・ジョーンズ インデックスファンド)を参考として示していますが、上位5ファンドは10年でNYダウインデックスファンドを上回る実績でした。
ただし、注意点として10年前の日本では、NASDAQ100やS&P500に連動を目指すインデックスファンドはありませんでした。10年で大きく上昇したNASDAQ100のインデックスファンドがあれば、おそらく10年でトップになったのではないかと予想されます。
上位5ファンドの中では、3位のファンドを除くと全て米国の成長株に投資するファンドのため直近1年は苦戦しました。今年に入ってからようなNASDAQ市場が好調なマーケットが続くと、これらの成長株ファンドの上昇が期待されます。
上位5ファンドの中では3位の米国製造業株式ファンド(愛称:USルネサンス)に注目します。同ファンドは米国の製造業に関連した株式に投資するファンドですが、成長株が苦戦した1年や3年でのパフォーマンスの安定感がポイントと考えています。1月末の組入上位銘柄はインガソール・ランド、アメテック、ダナハー、ハウメット・エアロスペース、キャリア・グローバルなどとなっており、39銘柄に投資しています(※)。中小型株もカバーしていることから馴染みのない好業績銘柄が組入れられている印象です。

この10年間は日米ともに一部のアクティブファンドが好調であったといえます。特に国内株式型のファンドで目立ちました。
次期日銀総裁は金融緩和政策の出口を探るという難しい局面での舵取りになりますが、次の5年、10年も世界経済の成長による長期の株価上昇とともにアクティブファンドの躍進に期待します。

※個別銘柄の取引を推奨するものではありません。

図表4 国内株式型 10年パフォーマンス ランキング

  ファンド名 カテゴリー 1年リターン 3年リターン
(年率)
10年リターン
(年率)
1 【販売停止中】 DIAM新興市場日本株ファンド 国内小型グロース 12.99% 20.55% 26.97%
2 日本新興株オープン 国内小型グロース 11.49% 10.72% 19.73%
3 SBI中小型成長株ファンド ジェイネスクト(愛称:jnext) 国内小型グロース 3.08% 7.25% 19.61%
4 MHAM新興成長株オープン(愛称:J-フロンティア) 国内小型グロース 8.33% 9.54% 19.14%
5 新成長株ファンド(愛称:グローイング・カバーズ) 国内小型グロース 3.00% 6.83% 18.95%
6 情報エレクトロニクスファンド 国内大型グロース -4.42% 12.97% 18.16%
参考 ニッセイ日経225インデックスファンド 国内大型グロース 3.12% 7.32% 11.12%
※ SBI証券取り扱いの国内株式型を10年リターンでランキング(2023年1月末基準、出所:ウエルスアドバイザー)

図表5 国際株式型 10年パフォーマンス ランキング

  ファンド名 カテゴリー 1年リターン 3年リターン
(年率)
10年リターン
(年率)
1 アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 Bコース(為替ヘッジなし) 国際株式・北米(F) -3.94% 13.88% 17.95%
2 米国NASDAQオープン Bコース 国際株式・北米(F) -7.26% 12.05% 17.06%
3 米国製造業株式ファンド(愛称:USルネサンス) 国際株式・北米(F) 13.85% 20.97% 17.01%
4 netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし) 国際株式・北米(F) -12.48% 9.25% 16.70%
5 三菱UFJ NASDAQオープン Bコース 国際株式・北米(F) -9.16% 12.30% 16.14%
参考 SMTAMダウ・ジョーンズ インデックスファンド 国際株式・北米(F) 10.99% 13.10% 14.91%
※ SBI証券取り扱いの国際株式型を10年リターンでランキング(2023年1月末基準、出所:ウエルスアドバイザー)

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【投資信託に関するご注意事項】

・投資信託は、主に国内外の株式や債券等を投資対象としています。投資信託の基準価額は、組み入れた株式や債券等の値動き、為替相場の変動等により上下しますので、これにより投資元本を割り込むおそれがあります。
・投資信託は、個別の投資信託毎にご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なります。ファンド・オブ・ファンズの場合は、他のファンドを投資対象としており、投資対象ファンドにおける所定の信託報酬を含めてお客さまが実質的に負担する信託報酬を算出しております(投資対象ファンドの変更等により、変動することがあります)。
・ご投資にあたっては、商品概要や目論見書(目論見書補完書面)をよくお読みください。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。