年初から好調の半導体株 半導体関連ファンドの運用成績は?

年初から好調の半導体株 半導体関連ファンドの運用成績は?

投資情報部 川上雅人

2023/04/03

年初から好調の半導体株

2023年に入って世界の株式市場は強弱まちまちの動きとなっています。米長期金利の上昇が一服したことなどを背景として2022年に大きく下落した株価指数が上昇しています。その一例として前回は、NASDAQ100指数が好調であることをコメントしましたが、そのNASDAQ100指数を上回る上昇となっているのが、米国上場の主要な半導体関連銘柄(30銘柄)で構成されているフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)です(図表1)。

SOX指数はコロナショック(2020年3月)の安値から、2022年1月3日まで3.1倍となる「大相場」を形成しました(図表2)。その理由は以下の通りです。

①5G(第5世代移動通信サービス)、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)等の普及により、半導体に求められる能力や需要が拡大。
②自動車電装化の進展にとどまらず、半導体をより多く搭載するEV(電気自動車)の市場拡大で新たな半導体需要が拡大。
③2020年以降、新型コロナウイルスの世界的な流行で巣ごもり消費が拡大し、パソコンやゲーム機の需要が拡大。

2021年は世界半導体出荷額が前年比で毎月2桁を超える伸びとなり、半導体市場は循環的な「シリコン・サイクル」を繰り返すことなく「スーパーサイクル」という持続的、成長局面に突入したと考えられるようになりました。ただ、2022年になると出荷額の伸びが鈍り、SOX指数も下落に転じ、2022年1月の高値から2022年10月14日まで46%の大幅下落となりました(図表2)。その後は、米国株式の反発などをきっかけにSOX指数も上昇する展開となっています。

半導体市場拡大をもたらした上記3要因のうち、①と②については長期的な見通しといえ、半導体需要は中長期的に拡大傾向を続けるとみられます。しかし、③の部分は、新型コロナウイルスの流行が、半導体需要に「バブル」をもたらした可能性が大きく、足元では需要が縮小傾向となっています。③に関する需要の縮小は、NANDやDRAM等「メモリ」といわれる分野で強く出ており、他は強さを維持している分野もあるようです。このため、一口に半導体株といっても、需要先等により、業績見通しの強弱が分かれやすくなっている状況です。
SBI証券企業調査部では、2023年もすべての四半期で、半導体出荷額は前年比で減少すると予想しています。しかし、マイナス幅は1~3月期が最大となり、以降は縮小する予想です(図表3)。足元のSOX指数上昇は、こうした見通し(最悪期を脱すること)が一部反映されたものではないかと考えられます。

2022年は大幅下落となったSOX指数ですが、大幅調整となったことで2023年は中長期の視点で半導体株に投資する好機と捉えることもできます。半導体株に投資する場合、銘柄選定が難しいため、投資信託(ファンド)や上場投資信託(ETF)を活用して分散投資することが有効と考えます。
半導体株のETFとしては、マーケット・ベクトル米国上場半導体25インデックスへの連動をめざす海外ETF「ヴァンエック 半導体 ETF(SMH)」や日本の半導体株を構成銘柄とするFactSet Japan Semiconductor Indexへの連動をめざす国内ETF「グローバルX 半導体関連-日本株式 ETF(2644)」などがありますが、2023年3月31日にSOX指数の動きに連動する投資成果をめざすインデックスファンドが誕生しました。SOX指数をベンチマークとする国内公募インデックスファンドは初となり、信託報酬が年率0.1815%と低水準となっています。(詳細はこちら)
これまで世界の半導体株のみを投資対象とした投資信託はありましたが、特定の販売会社のみでの取り扱いとなっていました。したがって、半導体株だけを投資対象とするSBI証券取り扱いの投資信託(ETFを除く)は現時点では上記の1ファンドのみとなります。そのため、「国際株式」カテゴリーの3年リターン上位で半導体株の組入比率が高い投資信託をピックアップし、半導体関連ファンドとして一覧にしました(図表4)。これらの半導体関連ファンドの特徴と運用成績をチェックします。

図表1 SOX、NASDAQ100、S&P500の比較① (2022年12月末~2023年3月30日 2022年12月末=100)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230403_01_01.gif

※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表2 SOX、NASDAQ100、S&P500の比較② (2017年12月末~2023年3月30日 2017年12月末=100)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230403_01_02.gif

※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表3 世界半導体出荷金額推移 四半期伸び率(前年同期比)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230403_01_03.gif

※世界半導体市場統計(WSTS)のデータをもとにSBI証券が作成(予想はSBI証券企業調査部・2023年3月6日時点)

図表4 半導体関連ファンドの特徴と運用成績 

順位 ファンド名 特徴
(半導体株比率)
1年リターン 3年リターン
(年率)
5年リターン
(年率)
1年
標準偏差
1 eMAXIS Neo バーチャルリアリティ 半導体株38% -7.76% 34.71% - 30.88
2 iFreeActive EV 半導体株22%以上 0.00% 31.76% 11.37% 28.65
3 iFreeNEXT FANG+インデックス 半導体株21% 2.27% 26.24% 20.42% 33.41
4 カレラ 米国小型株式アクティブファンド 半導体株33% 7.11% 25.60% 15.19% 19.88
5 Oneフォーカス ロボット・テクノロジー 半導体株32% 10.26% 24.35% - 24.31
参考 【当社取り扱いなし】野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資) 株式組入の100%が半導体株 5.56% 30.82% 20.54% 35.21

※SBI証券取り扱いの「国際株式」カテゴリーの3年リターン上位で半導体株の組入比率が20%以上あるファンドをピックアップ(各データは2023年2月末基準)

半導体関連ファンドの運用成績は?

図表4で参考として示した「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は3年・5年の長期リターンがカテゴリー上位となっており好成績です。ただし、基準価額の値動きのブレを示す標準偏差(1年)は35.21と相対的に高く、SOX指数の過去の値動きに見られるように半導体株は総じて価格変動が大きい点に注意が必要です。そのため、半導体株のインデックスファンドや半導体関連ファンドへの投資は積立投資などによる時間分散が有効といえます。

当社取り扱いの半導体関連ファンドで3年リターン1位は、eMAXIS Neo バーチャルリアリティです。このファンドは日本を含む世界各国のバーチャルリアリティ(仮想現実)関連企業の株式に投資を行います。バーチャルリアリティを実現するためには多くの半導体技術が使われることから半導体株の組み入れが多くなっています。代表的な組入銘柄は米国のエヌビディア(NVDA)と台湾のハイマックス・テクノロジーズ(HIMX)です(※)。

2位のiFreeActive EVは、日本を含む世界のEV(電気自動車)関連株式に投資するファンドです。EVには多くのアナログ半導体が使われています。代表的な組入銘柄は米国のアナログ・デバイセズ(ADI)とオン・セミコンダクター(ON)です(※)。

3位のiFreeNEXT FANG+インデックスは、米国上場の大手IT企業10銘柄に集中投資するインデックスファンドです。10銘柄のうち2銘柄が半導体株となっており、エヌビディアとアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)です(※)。

4位のカレラ 米国小型株式アクティブファンドは、事業内容、成長性、収益性、財務健全性などを勘案して、成長が期待される米国上場の小型株式に投資しています。小型株式が投資対象のため、あまり知られていない複数の半導体株を組み入れています。

5位のOneフォーカス ロボット・テクノロジーは、国内外のロボティクス関連企業の株式に投資しています。ロボット制御技術には多くの半導体が使われているため、半導体株の組入比率が高くなっています。代表的な組入銘柄は、日本のルネサスエレクトロニクス(6723)、米国のマイクロチップ・テクノロジー(MCHP)です(※)。

あらゆる産業にさまざまな用途で使われている半導体。長期の資産形成において、半導体株のインデックスファンドや半導体関連ファンドを活用するのも有効と考えます。米国のインフレ懸念が後退し長期金利が低下基調となれば、2023年は半導体株が巻き返す年になると予想します。

(※)個別銘柄の取引推奨するものではありません。

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