つみたてNISA対象ファンド 2022年度の運用成績は? S&P500・オルカンに加えるなら?

つみたてNISA対象ファンド 2022年度の運用成績は? S&P500・オルカンに加えるなら?

投資情報部 川上雅人

2023/04/10

2022年度のマーケットを振り返る

新年度(2023年度)がスタートしました。今回は2022年度(2022年4月~2023年3月)のマーケットを振り返り、つみたてNISA対象ファンドの運用成績を確認し、コメントします。

まずはマーケットですが、株式市場においては、年度前半は主要国のインフレ対応による利上げ継続などで米国をはじめとした主要国の長期金利が上昇し、主要国・地域の株価指数は揃って下落となりました(図表1)。特に米国(NASDAQ100、S&P500、NYダウ)や中国(香港ハンセン)の下落が目立ちました。年度後半の10月からは2023年からの米国での利下げ観測が意識されて米長期金利が低下したことで、これらの株価指数は総じて回復傾向となりました。
年度を通しては、年度前半の下落が小さかった欧州(ユーロ・ストックス50)や日本(TOPIX)が上昇しました。インドSENSEXは11月頃までは好調でしたが、2023年に入って下落基調となったため、1年ではほぼ横ばいでした。米国では金利上昇の影響でハイテク株の比率が高いNASDAQ100が最も苦戦し、S&P500も低迷、割安株が相対的に堅調となったことから割安株比率の高いNYダウが米国株式の中では相対的に優位となりました。中国(香港ハンセン)は10月から1月にかけて急回復しましたが、2月以降の下落でマイナスリターンとなりました。

債券市場では、米国、ドイツ、日本の長期金利(10年国債利回り)はそれぞれ上昇となりましたが、政策金利の引き上げ幅が大きかった米国とドイツの金利上昇が目立ちました(図表2)。米長期金利については、2023年からの利下げ観測を織り込んで、2022年10月のピークからは低下基調となっています。

為替市場では、主要通貨の対円レートは10月までは日本と海外との金利差拡大を背景として円安へ、11月以降は逆に金利差縮小観測などで円高が進みました(図表3)。年度を通しては、米ドルとユーロが対円で上昇し、英ポンドとインドルピー、中国元はわずかに上昇、豪ドルは商品価格の下落などもあって低迷しました。米ドルは10月までは20%を超える上昇(円安ドル高)となりましたが、その後は下落した(円高ドル安となった)ため上昇幅を縮めました。

こうしたマーケットを受けて、2022年度のつみたてNISA対象ファンドの運用成績をチェックします。SBI証券では192ファンドがつみたてNISA対象ファンドとなっていますが(2023年4月7日現在)、2022年度の運用成績を示す1年リターンのランキングは図表4となります。

図表1 主要国・地域の株価指数の比較(2022年3月末~2023年3月末 2022年3月末=100)

※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表2 主要国の長期金利(10年国債利回り)の推移(2019年12月末~2023年3月末 月末値)

※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表3 主要通貨の対円レートの比較(2022年3月末~2023年3月末 2022年3月末=100)

※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表4 つみたてNISA対象ファンド 運用成績ランキング(2022年度)

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
1年リターン 3年リターン
(年率)
1年
標準偏差
1 フィデリティ・欧州株・ファンド 欧州株アクティブ(優良企業を選定) 9.48% 17.31% 18.26
2 ハッピーエイジング20(ハッピーエイジング・ファンド) 株式90%のバランスファンド 6.69% 17.59% 9.00
3 ニッセイ日本株ファンド 日本株アクティブ(大型バリュー) 6.52% 15.05% 13.24
4 東京海上セレクション・日本株TOPIX TOPIXインデックス 5.84% 15.14% 11.83
5 eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX) TOPIXインデックス 5.64% 15.16% 11.98
5 iFree JPX日経400インデックス JPX日経400インデックス 5.64% 15.39% 12.46
参考 SBI・V・S&P500インデックス・ファンド(愛称:SBI・V・S&P500) S&P500インデックス -2.61% 25.19% 16.67
参考 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 日本を含む全世界株式インデックス -1.19% 23.03% 14.31

※SBI証券取り扱いのつみたてNISA対象ファンドによる1年リターンランキング(データは2023年3月末基準、対象ファンドは2023年4月7日現在)
参考としてSBI証券の販売金額ランキング(2023年3月)の上位2ファンドを表示

つみたてNISA対象ファンド 運用成績ランキングを解説

まず、参考として示したSBI証券の販売金額ランキング上位のSBI・V・S&P500インデックス・ファンド(愛称:SBI・V・S&P500)(以下、V・S&P500)は、米ドルの上昇はプラス要因でしたが、S&P500の下落により、1年では-2.61%の小幅マイナスとなりました。同じくeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(以下、オルカン)についても、全世界株式インデックスの下落により、-1.19%の小幅マイナスとなりました。2022年度は米国株の下落が大きかったため、V・S&P500よりもオルカンの方がわずかに優位となりました。なお、上昇した3年では、V・S&P500の方が優位でした。

こうした中で、2022年度のリターン(1年リタ―ン)上位ファンドは、なんとフィデリティ・欧州株・ファンドです。欧州株について1年前は、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰の影響で欧州経済が深刻な状況となり、欧州企業の業績が厳しくなるのではないかという見方でしたが、予想よりもエネルギー価格は高騰せず、欧州経済がそれほど悪化しなかったために、欧州株は米国株よりも1年リターンが堅調でした。欧州通貨のユーロや英ポンドが対円で上昇したことも欧州株ファンドにはプラス要因となりました。

2位のハッピーエイジング20(ハッピーエイジング・ファンド)は、株式と債券に投資を行うバランスファンドです。基準組入比率が株式90%のため、かなり株式のウエイトが高いバランスファンドです。株式90%の内訳では、日本の大型バリュー(割安)株のアクティブファンドを26%組入れており、この部分が直近1年の割安株相場で好成績となったことから、1年リターンが堅調となりました。このファンドは、値動きのブレを示す標準偏差が小さいことから、運用効率を示すシャープレシオも良好です。

3位はニッセイ日本株ファンドです。TOPIXが上昇したことから日本株のアクティブファンドが上位に入りました。このファンドは、TOPIX構成銘柄のうち、割安度の高い銘柄を優先的に組み入れているようです。1年では配当込みTOPIXを上回る実績となりました。

4位と5位は、TOPIXへの連動を目指すファンドです。同率5位は、時価総額、売買代金、ROE等を基に選定した400銘柄で構成される株価指数であるJPX日経400インデックスへの連動を目指すファンドです。TOPIXとJPX日経400インデックスはこの1年ではほとんど差はありませんでした。

まとめますと2022年度は、欧州株ファンド、株式の組入比率が高く日本の割安株に投資しているバランスファンド、日本株(TOPIX)のアクティブファンドとインデックスファンドが、つみたてNISA対象ファンドの中では好調でした。2022年度のような米国株が下落した不透明な環境下では、こうしたファンドへの分散投資が有効だったといえます。

2022年度の運用成績上位ファンド3本は、つみたてNISAの指定インデックスではないファンドです。「指定インデックス投資信託以外の投資信託(アクティブ運用投資信託等)」(以下、「指定インデックス以外の投資信託」)に分類されます。【詳細はこちら(金融庁「つみたてNISAの対象商品」)へ】
つみたてNISA対象のインデックスファンドでもNYダウや米国連続増配株インデックス(S&P500配当貴族指数)、米国高配当株インデックスなどが指定インデックス以外の投資信託に分類されます。これらの3指数に連動を目指すファンドは2022年度ではプラスリターンとなりました。
指定インデックス以外の投資信託の一部が好成績となった2022年度を振り返ると、特色あるつみたてNISA対象ファンドが増えていくことが、長期の分散投資を考える上で有効になると考えます。
指定インデックス以外の投資信託として金融庁の承認を得るには、①運用期間が5年以上、②純資産額が50億円以上、③運用期間中の3分の2の期間で資金が流入している、などの条件がありますが、これらの条件をクリアするファンドが今後増えていくことが期待されます。
2023年度については、一例としてNASDAQ100インデックスファンドが指定インデックス以外の投資信託として、つみたてNISA対象ファンドとなることが予想されます。米国株については1年では割安株が堅調でしたが、2023年の年初からでみると成長株の比率が高いNASDAQ100が好調となっています。今後、金利低下が続けば成長株優位が続く可能性があります。

つみたてNISA対象ファンドは2024年からの新しいNISAにおけるつみたて投資枠の対象ファンドとなる予定です。2023年は新しいNISAのスタートに向けて、つみたてNISA対象ファンド拡充の動きに注目です。

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