植田新総裁が始動! 低迷が続く2023年のJ-REIT 投資視点は?

植田新総裁が始動! 低迷が続く2023年のJ-REIT 投資視点は?

投資情報部 川上雅人

2023/04/17

低迷が続く2023年のJ-REIT 3月は外国人投資家が買い越しへ

4月9日に就任した日銀の植田新総裁による就任後初の記者会見が10日に行われました。会見で植田新総裁は金融政策について、現在の大規模な金融緩和の継続が適当との考えを示しました。
植田新体制のもとでの初の金融政策決定会合が4月27、28日に開催される予定ですが、イールドカーブ・コントロール(YCC)についての早期修正は後ずれし、ゼロ金利からの脱却もさらに後ずれするのではないかという見方です。
まずは安全運転でのスタートとなりそうであり、2023年に入ってから高まっていた金融政策への不透明感はやや後退しています。

こうした金融環境を受けて年初からの日本の金利とドル円レートの推移は図表1となっています。将来的には金融政策変更などによる金利上昇が警戒されますが、足元の長期金利(10年国債利回り)や30年国債利回りは落ち着いた値動きとなっており、ドル円レートについても4月に入ってからは変動の小さい値動きとなっています。

こうした環境下で、東京証券取引所に上場している不動産投資信託(REIT)全銘柄を対象とした時価総額加重平均型の指数である東証REIT指数は、昨年秋頃から低下傾向となっています(図表2)。特に2023年に入ってから足元まで好調な株式(TOPIX)とは対照的な動きとなっており、日本のREIT(J-REIT)の低迷が目立っています。

J-REITが低迷している要因は、

①昨年10月から今年の2月まで外国人投資家による売り越しが続いていたこと(図表3)

②日銀金融政策への不透明感(金利上昇によるスプレッド(REITの予想分配金利回りー10年国債利回り)縮小懸念)

③米長期金利の高止まり

④利上げによる景気減速や欧米の金融不安などによる不動産市況悪化への懸念

などが考えられます。

①については、3月のJ-REIT主要主体別売買動向(4月12日発表)では、外国人投資家は6ヵ月ぶりの買い越しに転じました(図表3)。

②については、将来の金融政策変更は見込まれるものの、以前よりも金利先高観は後退しているといえます。

③については、米長期金利は年後半の利下げを織り込み低下傾向となっています。

④については、金融不安は後退しているものの、米国の銀行が保有する米商業用不動産ローンの借り換えへの懸念など不透明感が残っている状況といえます。

図表1 日本の国債利回りとドル円の推移(2022年12月末~2023年4月13日)

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※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表2 東証REIT指数とTOPIXの比較(2021年12月末~2023年4月13日 2021年12月末=100)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230417_01_02.gif

※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表3 東証上場REIT 外国人投資家の差引売買金額の推移(2021年1月~2023年3月 月次)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230417_01_03.gif

※東京証券取引所のデータをもとにSBI証券が作成

J-REITの投資視点は?

不安定要因が残るJ-REITですが、長期の値動きを確認します(図表4)。
長期15年でJーREIT(東証REIT指数(配当込み))とTOPIX(配当込み)を比較すると、わずかにJ-REITが優位となっています。年率換算で6.0%というリターンです。J-REITは2008年のリーマンショックによる大幅下落、2020年のコロナショックによる大幅下落を経験しましたが、長期のリターンは良好といえます。
長期リターンの主な源泉となっているのが、分配金利回りです。過去約15年平均の東証REIT指数の予想分配金利回りは4.56%です(図表5)。また、直近は長期金利が上昇しているもののスプレッド(利回り格差)は3.97%(3月末)となっています。過去約15年平均の4.07%よりもやや低い水準ではありますが、スプレッドはまずまずの水準となっています。
3月末のNAV倍率*は0.91倍と2月末の0.94倍から低下しました(図表6)。NAV倍率では過去との比較からも割安感がある状況といえ、不安定要因が後退すれば、J-REITは見直し買いが入る可能性があります。
長期の視点で国内株式や外国株式とは値動きが異なるJ-REITへの分散投資は有効と考えます。

*NAV倍率とは、REITの保有不動産の鑑定評価額の合計から負債を引くなどして算出する純資産価値(NAV:Net Asset Value)に対し、REITの時価総額が何倍かを算出したものです。

J-REITへの投資は、個別銘柄の調査(銘柄選定)が難しいため、分散投資された投資信託やETFを活用すべきと考えます。その中でも東証REIT指数への連動を目指すインデックスファンドよりも長期の運用成績な良好なアクティブファンドの活用がパフォーマンスを高める上で有効と判断します。J-REITは業種別での値動きが異なる傾向があることもアクティブファンドを推す理由です。実際に2023年の東証REIT指数の下落局面においては、オフィス空室率の高止まりで平均賃料が低下傾向にあることからオフィス指数の下落が目立つ一方で、事業環境が相対的に良好なREITが含まれる住宅指数はほぼ横ばいとなっています(図表7)。

SBI証券取り扱いのJ-REITファンドの3年リターンランキングは図表8となります。
1、2位は同種のファンドで、1年・3年リターンがいずれも参考のインデックスファンドを上回っています。値動きのブレを示す1年標準偏差はインデックスファンドよりも小さくなっています。東証REIT指数の業種別構成比との違いはそれほど大きくなく、25銘柄に厳選投資しています。参考のインデックスファンドは東証上場のREIT全銘柄(60銘柄)に投資しています。
3、4位は同種のファンドで、投資助言会社である野村不動産投資顧問が独自に開発した不動産価値評価モデルを用いて算出した各J-REITの割安・割高等の結果を踏まえた助言をもとに、ポートフォリオを構築し、41銘柄に投資しています。6ファンドの中では1年リターンの下落が小さくなっています。1年の標準偏差も小さいのが特徴です。
5位のファンドは、個別銘柄の流動性、収益性・成長性等を勘案して選定したJ-REIT59銘柄に投資しています。インデックスファンドと銘柄数はほとんど変わりませんが、各銘柄の構成比はインデックスファンドと大きく異なっており、このことが好リターンの源泉となっています。

図表4 東証REIT指数とTOPIXの比較(2008年3月~2023年3月 月末値 2008年3月末=100)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230417_01_04.gif

※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表5 東証上場REITの予想分配金利回り、10年国債利回り等の推移(2008年5月~2023年3月 月末値)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230417_01_05.gif

※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表6 東証REIT指数 NAV倍率の推移(2014年1月~2023年3月 月末値)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230417_01_06.gif

※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表7  東証REIT指数 業種別の比較 (2021年12月末~2023年4月13日 2021年12月末=100)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230417_01_07.gif

※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表8 J-REITファンド 運用成績ランキング

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
1年リターン 3年リターン
(年率)
1年
標準偏差
1 フィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンド J-REITアクティブ -5.67% 10.23% 7.97
2 フィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンド(資産成長型) J-REITアクティブ -5.80% 10.20% 8.05
3 J-REITバリューファンド(年2回決算型) J-REITアクティブ(バリュー視点) -4.59% 9.87% 7.30
4 J-REITバリューファンド(毎月分配型) J-REITアクティブ(バリュー視点) -4.71% 9.81% 7.35
5 野村Jリートファンド J-REITアクティブ -5.64% 9.00% 8.19
参考 三井住友・DC日本リートインデックスファンド J-REITインデックス -7.45% 7.83% 8.53

※ SBI証券取り扱い「国内REIT」カテゴリーの3年リターンランキング(通貨選択型を除く)(2023年3月末基準)
参考としてインデックスファンドの3年リターン上位ファンドを表示

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