5月は生成AI関連銘柄が急上昇! AI関連ファンドの運用成績は?
投資情報部 川上雅人
2023/06/05
5月は生成AI関連銘柄が急上昇! AI関連ファンドの運用成績は?
5月24日に米半導体大手・エヌビディアが決算を発表、5‐7月の売上高の会社予想は生成人工知能(AI)関連投資が急拡大したことによって市場予想を約5割上回る見通しとなりました。市場予想を上回る好決算を受けて、25日以降のエヌビディア株は急上昇し、生成AI関連株への物色が広がりました。
エヌビディアの決算によって、生成AIを自社の事業に取り込もうとする企業の熱い意欲が明らかとなりました。生成AIの普及は、2000年にITバブルを生んだインターネットの普及に匹敵するとの見方もあります。このような見方からすると、AI利用によってテクノロジー業界が活性化し、さらに幅広い産業での生産性の上昇につながることも期待されます。
また、エヌビディアは世界最大の半導体受託製造メーカーの台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)に製造を委託しており、TSMCは2024年に熊本工場を稼働させる予定です。この熊本工場では最先端の半導体が製造されることはないようですが、日本の半導体関連企業への波及効果が期待されています。
こうした中で、今回はAI関連ファンドの運用成績と中身を確認します。
2023年に入ってからの米国株式市場の代表的な株価指数の推移は図表1となっています。
5ヵ月間の米国株は、景気敏感株のウエイトが高いNYダウは1%の下落、S&P500は9%の上昇です。一方で、IT株のウエイトが高いNASDAQ100は30%の上昇、さらにはフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は36%の上昇となっています。
生成AI関連銘柄への物色を背景として5月下旬からSOXとNASDAQ100が急上昇しているのが分かります。
SBI証券取り扱いのAI関連ファンド(AIを活用して運用しているファンドは除く)は、「AI」のファンド名で絞ると5ファンドになります(同一マザーファンドへ投資するファンドは1本としてカウント、図表2参照)。厳密にはAI関連株に投資しているファンドは他にも存在しますが、ここでは図表2の5ファンドに絞ってコメントします。
4月末までの3年リターン1位は、イノベーション・インデックス・AIでした。STOXX グローバル AI インデックスへの連動を目指すファンドです。3年リターンと1年リターンではNASDAQ100インデックスファンドに及びませんでしたが、5月の1ヵ月リターンは+19.75%と好調でした。
2位のグローバルAIファンドは、1年リターンでは▲12.43%と5ファンドの中は最も低迷しました。これは主に、組入れていた中小型株の下落が影響したと考えられます。しかし、5月の1ヵ月リターンは+20.26%と最も好成績でした。
3位のOne フォーカスAIはソラクティブ グローバル AI インデックスへの連動を目指すファンドで、1年リターンでは最も好成績でした。5月の1ヵ月リターンは19.19%と好調です。
4位はニッセイAI関連株式ファンド(年2回決算型・為替ヘッジなし)は4月末までの1年では低迷しましたが、5月の1ヵ月リターンでは回復しています。
5位はダイワ・グローバルIoT関連株ファンド-AI新時代-(為替ヘッジなし)で、IoT(モノのインターネット)を活用した製品・サービスの提供およびビジネスの創出・拡大を行う企業、IoTを支える通信インフラ(社会基盤)を管理、提供する企業、IoTに関連した技術を駆使し、AI(人工知能)に携わる企業等に投資しています。AI関連株への投資は一部といえます。
図表1 2023年 主な株価指数の推移 (2022年12月末~2023年5月31日 2022年12月末=100)
※QUICKデータをもとにSBI証券作成
図表2 AI関連ファンドの特徴と運用成績
順位 | ファンド名 | 特徴 (投資対象) |
*1年 リターン |
*3年リターン (年率) |
1ヵ月リターン (5月) |
1 | イノベーション・インデックス・AI | STOXX グローバル AI インデックス | 3.34% | 20.54% | 20.26% |
2 | グローバルAIファンド | AIの進化、応用により高成長が期待される企業の株式 | -12.43% | 17.29% | 19.75% |
3 | One フォーカス AI | ソラクティブ グローバル AI インデックス | 4.88% | 17.08% | 19.19% |
4 | ニッセイAI関連株式ファンド(年2回決算型・為替ヘッジなし) | 主にAI関連企業の株式 | -5.22% | 15.03% | 14.18% |
5 | ダイワ・グローバルIoT関連株ファンド-AI新時代-(為替ヘッジなし) | 世界のIoT関連企業(AIに携わる企業等)の株式 | 4.29% | 14.54% | 10.99% |
参考 | iFreeNEXT NASDAQ100インデックス | NASDAQ100 インデックス | 5.64% | 22.69% | 13.72% |
※SBI証券取り扱い「国際株式」カテゴリーのAI関連ファンドの3年リターンランキング(1年・3年リターンは2023年4月末基準、1ヵ月リターンは5月末基準)。
※AIで検索し、AI運用のファンドは除く、同一マザーファンドはリターン上位の1本のみ表示。参考として残高上位のNASDAQ100インデックスファンドを表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
AI関連ファンドの中身は? 生成AI相場で好調な日本株ファンドは?
AI関連ファンドの4月末基準の組入上位10銘柄は図表3となります。各ファンドともに半導体株の組入等が5月の上昇に寄与していますが、半導体株でもエヌビディア、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、マーベル・テクノロジーは株価が大幅に上昇している一方で、インテルは小幅上昇となっており、組入銘柄の選定やウエイトが重要といえます(※)。
イノベーション・インデックス・AIは、組入1位から4位までの構成比が計35%となっており、エヌビディア(8.7%)、AMD(7.8%)のウエイトが高いことが好パフォーマンスとなっています(※)。組入銘柄数は47銘柄となっているインデックスです。
グローバルAIファンドは、組入上位を見ると米巨大IT企業が目立ちますが、中小型株への投資が26%とそこそこの比率です。5月は中小型株にはやや逆風のマーケットでしたが、好パフォーマンスとなっています。4月はヘルスケア株のウエイトを高めており、64銘柄に投資しています。アクティブファンドとしての銘柄選定力に注目です。
Oneフォーカス AIは、組入上位では半導体株がエヌビディアのみとなっており、ソフトウェア・サービスの構成比が高いインデックスファンドです(※)。生成AIの恩恵は半導体からソフトウェアに波及することも予想されており、そうなれば注目のファンドといえます。
ニッセイAI関連株式ファンド(年2回決算型・為替ヘッジなし)は、米巨大IT企業や半導体株に加えて、サイバーセキュリティ企業などにも投資しているアクティブファンドです。
ダイワ・グローバルIoT関連株ファンド-AI新時代-(為替ヘッジなし)は、業種別ではヘルスケア機器や電子部品が多くなっているのが特徴で、日立製作所やソニーグループが組入上位となっています(※)。また、中小型株の組入比率が61%と高いのが特徴で、前述のようにIoTがテーマとなっているため、生成AI関連の企業は少ない印象です。
AI関連ファンドの選び方としては、インデックスファンドでは半導体や電気通信サービスなどで生成AIの恩恵を期待するならイノベーション・インデックス・AI、ソフトウェア企業などでの生成AIの恩恵を期待するならOneフォーカス AIが選択肢と考えます。
また、AI関連のアクティブファンドでは、生成AIの恩恵が半導体に加えて、ヘルスケアや一般消費財への幅広い波及を期待するならグローバルAIファンド、半導体やソフトウェア企業に期待するならニッセイAI関連株式ファンド(年2回決算型・為替ヘッジなし)と考えます。
ただし、アクティブファンドは銘柄入替の頻度が比較的高いため、今後の特徴が異なる場合がある点にはご注意ください。
生成AI相場の5月に上昇した日本株ファンドを図表4に表示しました。情報エレクトロニクスファンド、日本ニューテクノロジー・オープン(愛称:地球視点)、フィデリティ・テクノロジー厳選株式ファンド(愛称:Jテック+)が上位となっており、3ファンドともに1ヵ月リターンは5月好調だった日経平均インデックスファンドを上回りました。
3ファンドの組入上位10銘柄を図表5で示しましたが、半導体投資で恩恵を受けると考えられる日本企業が多く並んでいます。これらの3ファンドは4月末までの1年間では、割安株が強かったマーケットで相対的に苦戦しましたので、5月の価格上昇を考慮しても、まだ出遅れていると考えることもできます。
以上のことから、好成績のAI関連ファンドと生成AI相場で上昇した日本株ファンドにそれぞれ注目します。
なお、AI関連ファンドへの投資においては、価格の値動きが大きい傾向があるため、毎月一定額による積立投資が有効と考えます。
(※)個別銘柄の取引を推奨するものではありません。
図表3 AI関連ファンドの組入上位10銘柄
イノベーション・ インデックス・AI |
グローバルAI ファンド |
Oneフォーカス AI |
ニッセイAI関連 株式ファンド |
ダイワ・グローバルIoT 関連株ファンド |
|
1 | メタ・プラットフォームズ | マイクロソフト | メタ・プラットフォームズ | エヌビディア | アメテック |
2 | アルファベット(C) | アマゾン・ドット・コム | SAP | マイクロソフト | 日立製作所 |
3 | エヌビディア | メタ・プラットフォームズ | アマゾン・ドット・コム | メタ・プラットフォームズ | インテュイティブサージカル |
4 | アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | テスラ | スノーフレイク | アリスタ・ネットワークス | ソニーグループ |
5 | インテル | オン・セミコンダクター | エヌビディア | パロアルトネットワークス | アンシス |
6 | ピンタレスト | マーベル・テクノロジー | ローパー・テクノロジーズ | アルファベット(A) | シュナイダーエレクトリック |
7 | スノーフレイク | エレバンスヘルス | ナスパーズ | モトローラ・ソリューションズ | PTC |
8 | エクイニクス | エヌビディア | セールスフォース | マイクロン・テクノロジー | トレイン・テクノロジーズ |
9 | デジタル・リアルティー・トラスト | エンフェーズ・エナジー | プロサス | アップル | アプライド・マテリアルズ |
10 | ネットアップ | モンゴDB | コンステレーション・ソフトウェア | ASMLホールディング | ハベル |
※各ファンドの組入上位銘柄の情報は2023年4月末基準。網掛けは半導体株。
※個別銘柄の取引を推奨するものではありません。
図表4 2023年5月 好成績日本株ファンドの特徴と運用成績
順位 | ファンド名 | 特徴 (投資対象) |
*1年 リターン |
*3年リターン (年率) |
1ヵ月リターン (5月) |
1 | 情報エレクトロニクスファンド | エレクトロニクス関連株(電機、機械、情報通信など) | 4.85% | 17.61% | 12.55% |
2 | 日本ニューテクノロジー・オープン(愛称:地球視点) | ニューテクノロジーにより収益の拡大が期待される銘柄 | -4.60% | 16.07% | 9.17% |
3 | フィデリティ・テクノロジー厳選株式ファンド(愛称:Jテック+) | 成長力が高いと判断されるテクノロジー関連企業 | 1.90% | 17.75% | 8.99% |
参考 | eMAXIS Slim 国内株式(日経平均) | 日経平均インデックス | 9.76% | 14.58% | 7.06% |
※SBI証券取り扱い「国内株式」カテゴリーの1ヵ月リターンランキング(1年・3年リターンは2023年4月末基準、1ヵ月リターンは5月末基準)。
※通貨選択型を除く上位3ファンドを表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表5 2023年5月 好成績日本株ファンドの組入上位10銘柄
情報エレクトロニクス ファンド |
日本ニューテクノロジー・ オープン |
フィデリティ・テクノロジー 厳選株式ファンド |
|
1 | ソニーグループ | 日本電信電話 | キーエンス |
2 | 日立製作所 | デンソー | 東京エレクトロン |
3 | ローム | ソニーグループ | ソニーグループ |
4 | ディスコ | ルネサスエレクトロニクス | 村田製作所 |
5 | 日本電信電話 | ソシオネクスト | 富士通 |
6 | 太陽誘電 | イビデン | オービック |
7 | 東京エレクトロン | クラレ | レーザーテック |
8 | ミネベアミツミ | キーエンス | 野村総合研究所 |
9 | アドバンテスト | 神戸製鋼所 | 三井ハイテック |
10 | キーエンス | 日立製作所 | 太陽誘電 |
※各ファンドの組入上位銘柄の情報は2023年4月末基準。
※個別銘柄の取引を推奨するものではありません。
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