「生成AI」 「EV」 物色の1ヵ月で上昇したファンドは? 意外な国とテーマ!?

「生成AI」 「EV」 物色の1ヵ月で上昇したファンドは? 意外な国とテーマ!?

投資情報部 川上雅人

2023/06/26

「生成AI」 「EV」 物色の1ヵ月で上昇したファンドは? 

直近1ヵ月の株式市場の出来事としては、5月23日に米半導体大手・エヌビディアが決算発表で、生成人工知能(AI)関連投資が急拡大したことによって市場予想を大幅に上回る業績見通しを発表して、株価が急騰しました。エヌビディアの決算以降、半導体やソフトウェアなどのAI関連株への物色が広がりました(※)。

また、電気自動車(EV)最大手のテスラの株価が直近1ヵ月、好調に推移しています。米大手自動車メーカーのフォード・モーターとゼネラル・モーターズ、および新興EVメーカーのリビアン・オートモーティブが相次いでテスラの急速充電設備「スーパーチャージャー」を利用すると発表したためです。これによって、5月25日から6月13日までテスラ株は13連騰を記録し、世界的なEV普及への期待からEV関連株への物色が広がりました(※)。

直近1ヵ月はAI関連株とEV関連株が好調だったマーケットだったといえます。その1ヵ月の値動きが確認できる主な株価指数の年初来の推移は図表1になります。年初からNASDAQ総合指数は好調でしたが、直近1ヵ月でも急騰した日経平均と同様に上昇していることが分かります。

こうした投資環境の中で、「国際株式」カテゴリーにおいて1ヵ月リターンが好調だったファンドを確認します。レバレッジ型ファンドを除く、1ヵ月リターンのランキング(10ファンド)は図表2になります。

SBI証券のホームページでは、「投信」→「ランキング」ページで「騰落率(上位)ランキング」(前日比、前週比、前月比)をカテゴリー毎に確認できます(ランキングページはこちら)。

予想通り、EV関連株が含まれる自動運転をテーマとするファンドが1位に、3位、5位、8位にはAI関連株(半導体株)といえるファンドが入りました。なお、1位の自動運転のファンドは半導体株の構成比も高くなっています。

4位のFANG+インデックスは、米国大手IT企業10銘柄に集中投資するファンドで、エヌビディアとテスラで約2割です(※)。5月末までの1年間では、10ファンドの中で首位のパフォーマンスです。

それ以外では、2位に韓国株ファンドが入りました。6位には次世代のイノベーション企業に投資しているムーンショットインデックスが、7位にはアジア次世代通信関連企業に投資しているファンドが、9位には日本を含む世界各国のコミュニケーションDX関連企業のファンドが、10位にはブラジル株ファンドが入りました。

韓国株、アジア株、ブラジル株は意外でした。また、テーマではムーンショット(次世代を担う製品・サービスを提供する革新的な企業)とコミュニケーションDXも意外でした。それぞれのファンドが直近好パフォーマンスになった要因とファンドの中身を確認します。

(※)個別銘柄の取引を推奨するものではありません。

図表1 年初来からの主な株価指数の比較 (2022年末~2023年6月21日 2022年12月末=100)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230626_01_01.png

※QUICKデータをもとにSBI証券作成

図表2 直近1ヵ月好成績ファンドの特徴と運用成績

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
*1ヵ月
リターン
1年
リターン
3年リターン
(年率)
1年
標準偏差
1 eMAXIS Neo 自動運転 日本を含む世界各国の自動運転関連企業 17.59% -13.85% 23.44% 37.60
2 スパークス・韓国株ファンド(愛称:韓国厳選投資) 将来の成長期待機会に対応できる優良な韓国企業 16.98% -0.53% 13.00% 30.33
3 eMAXIS Neo バーチャルリアリティ 日本を含む世界各国の拡張現実・仮想現実関連企業 16.92% 21.81% 41.61% 31.61
4 iFreeNEXT FANG+インデックス NYSE FANG+指数 16.83% 50.00% 34.89% 31.82
5 グローバルAIファンド AIの進化、応用により高い成長が期待される企業 16.44% 10.21% 20.74% 31.15
6 iFreeNEXT ムーンショットインデックス 次世代のイノベーション企業 16.19% -16.99% - 40.14
7 次世代通信関連 アジア株式戦略ファンド(愛称:THE ASIA 5G) アジア次世代通信関連企業 15.90% 13.81% 13.86% 22.77
8 <購入・換金手数料なし>ニッセイSOX指数インデックスファンド(米国半導体株) フィラデルフィア半導体株(SOX)指数 15.75% (2023/3/31設定)
9 eMAXIS Neo コミュニケーションDX 日本を含む世界各国のコミュニケーションDX関連企業 15.16% -10.55% - 26.82
10 HSBC ブラジル オープン ブラジル連邦共和国の証券取引所に上場する株式 14.81% -3.62% 10.60% 28.92

※SBI証券取り扱い「国際株式」カテゴリーの1ヵ月(5/19~6/21)リターンランキング。レバレッジ型ファンドは除く。同一マザーファンドはリターン上位1本のみを表示。
※1年・3年リターン、1年標準偏差は5月末基準。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

意外な直近1ヵ月好成績ファンドの特徴は?

2位のスパークス・韓国株ファンド(愛称:韓国厳選投資)は、韓国の構造的変化を捉え、将来の成長期待機会に対応できる優良な韓国企業に投資しています。5月末の組入上位銘柄はメモリー半導体を製造するSKハイニックス、総合エンターテインメント会社のJYPエンタテインメント、半導体向け原子間力顕微鏡(AFM)に強みを持つパークシステムズなどとなっています(※)。半導体関連株の組入比率が26.9%となっており、韓国のAI関連株ファンドといえそうです。韓国株は過去3年間では苦戦していましたが、2023年に入ってからは、新興国の中では堅調な株価推移となっています(図表3)。通貨・韓国ウォンは年初から4月頃までは、弱い日本円に対しても下落し低迷していましたが、直近1ヵ月は急回復しています(図表4)。

6位のiFreeNEXT ムーンショットインデックスは、イノベーション志向が高く、革新的な商品やサービスを生み出す可能性を秘めた次世代のイノベーション企業に投資しています。5月末の組入上位銘柄は、人工知能を専門とする米テクノロジー企業であるC3・AI、米クラウドコンピューティングサービス会社のファストリー、プロジェクトとタスクを一元管理できるワークマネジメントツールを提供している米アサナなどとなっています(※)。ムーンショットというファンド名称ですが、AI関連株ファンドといえそうです。5月末までの1年では組入銘柄の一部が大幅下落していたため低迷していました。

7位の次世代通信関連 アジア株式戦略ファンド(愛称:THE ASIA 5G)は、アジア次世代通信関連企業に投資しています。5月末の組入上位銘柄は、SKハイニックス、産業用ロボット向けなどに使用される減速機を製造する日本企業・ハーモニック・ドライブ・システムズ、ルーター等の通信機器メーカーで、データセンター向けスイッチ等に強みを持つ台湾のアクトン・テクノロジーなどとなっています(※)。国別構成比では台湾が27.68%、日本が26.14%と多くなっており、株価好調な台湾と日本のウエイトが高いことも直近の好パフォーマンスにつながっているようです(図表3)。

9位のeMAXIS Neo コミュニケーションDXは、日本を含む世界各国のコミュニケーションDX関連企業に投資しています。5月末の組入上位銘柄は、クラウドコミュニケーションプラットフォームサービスを提供する米国のトゥイリオ、ビジネス管理ツールを提供するイスラエルのマンデードットコムやアサナなどとなっています(※)。ソフトウェアサービスの組入比率が75.1%となっており、6月12日の週はオラクル、アドビなどソフトウェア企業の好決算がAI関連への物色を一段と強めたこともファンドの好パフォーマンスにつながったようです。このファンドも5月末までの1年では低迷していました。

10位のHSBC ブラジル オープンは、ブラジル連邦共和国の証券取引所に上場する株式に投資するファンドです。5月末の組入上位銘柄は、ブラジルの4大銀行の1つであるブラデスコ銀行、石油・天然ガスの開発、生産、販売を手がけるペトロプラス、電動モーター、発電機などの産業機械メーカーのウェグなどとなっています(※)。ブラジルの代表的な株価指数ボベスパは国内インフレ圧力の緩和による利下げ期待、底堅く推移する鉄鉱石価格などにより、5月からの上昇が目立ちます(図表3)。通貨・ブラジルレアルもインフレ率低下による実質金利の上昇などで4月から上昇ピッチが強まっています(図表4)。

10位のブラジル株ファンド以外は、広くAI関連物色による恩恵を受けたファンドといえそうです。足元ではAI関連株はやや調整局面となっていますが、それぞれのファンドの特徴をおさえた上で、分散投資することが有効と考えます。また、ファンドの1ヵ月リターンランキングは投資のヒントを探す上で参考となるツールといえます。

(※)個別銘柄の取引を推奨するものではありません。

図表3 年初来からの主な新興国株価指数の比較 (2022年末~2023年6月21日 2022年末=100)

※QUICKデータをもとにSBI証券作成

図表4 ブラジルレアル・韓国ウォンなどの為替レートの比較(対円) (2022年末~2023年6月21日 2022年末=100)

※QUICKデータをもとにSBI証券作成

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