高成長が続くベトナム NISA・投資信託でおすすめのベトナム株式ファンドは?

高成長が続くベトナム NISA・投資信託でおすすめのベトナム株式ファンドは?

投資情報部 川上雅人

2023/07/18

急落後の反発となっているベトナム株式

2023年5月以降、ベトナム株式が堅調な展開となっています(図表1)。ベトナムの代表的な株価指数であるベトナムVN指数(以下、ベトナムVN)は、1,165.42ポイント(7/13終値)となり、年初から15.7%の上昇率となっています。ベトナムVNの年初からの上昇率は日経平均の+24.2%やS&P500の+17.5%には及びませんが、7月に入って過去最高値を更新している好調なインド株式(SENSEX)の+7.8%を上回っています。

ベトナム株式の上昇要因については、チャイナプラスワン戦略による海外からの直接投資の増加による製造業の拡大や、所得の増加による内需の拡大などを背景としてベトナムの高成長が続くと見込まれること(2023年:5.8%、2024年:6.9%、2025年:6.8% 2023年4月のIMF経済成長率見通し)に加え、2022年の大幅下落後の反発という側面もあります。2022年のベトナムVNは、2021年の大幅上昇(+35.7%)の反動もあって年間で▲32.8%の大幅下落となりました。

2022年のベトナム株式の下落要因としては、米国の金融引き締めといった外部要因に加えて、ベトナム中銀による政策金利の大幅利上げ(4.0%→6.0%)や、社債発行関連での不動産企業の経営者逮捕による混乱拡大などがありました。

しかし2023年に入ってからは、市場の混乱は沈静化に向かい、政策金利については4月から6月まで3ヵ月連続での利下げにより、6.0%から4.5%へ低下しました(図表2)。利下げの背景としてはインフレ率(消費者物価指数の上昇率)の低下があります。4月のインフレ率は前年比+2.8%、5月は同+2.4%、6月は同+2.0%となり、低下傾向となっています(図表2)。諸外国と比べて低インフレの環境と緩和的な金融政策はベトナム株式には追い風になると考えられます。

ベトナムは新興国(エマージング市場)より更に小さいフロンティア市場に分類されます。ベトナムVNはホーチミン証券取引所上場の全銘柄からなる時価総額加重平均指数ですが、ホーチミン証券取引所は2002年3月1日より日次取引が開始された歴史が浅い取引所です。フロンティア市場はエマージング市場よりも流動性が低いため、過去の株式市場や為替市場は価格変動が大きくなっています。図表1で20年間のベトナムVNを示していますが、2007年から2008年の金融危機前後で大きく上昇した後に大幅下落に見舞われています。

通貨のベトナムドンについても2009年以降の下落局面では米ドルと比べて大きく劣後しています(図表3)。

図表4でベトナム株価指数(FTSEベトナム・インデックス)の配当込み・円ベースを示していますが、2007年からの株価指数は大幅下落となっています。ただし、2012年以降はインフレ率の低下や輸出の増加による経常収支の改善などによって、ベトナムドンは米ドルに対しての下落幅が限定的となっており、対円での上昇が目立っています。

こうした特徴となっているベトナム株式への投資ですが、世界的に景気の先行きや金融政策に対して不透明感が高まっている局面で、高成長が続くと予想されることに加えて、インフレを抑え込むことができた新興国としても注目します。将来的にはフロンティア市場からエマージング市場への格上げが予想され、投資対象国としてのプレゼンス向上も期待されます。

ベトナムVNは時価総額が約27兆円(7/12)と市場規模が小さいため、ベトナム株式の値動きは一方通行になりやすいという欠点はありますが、成長余地は大きい市場といえます。

年初からの株価上昇でもベトナムVNの予想PER(株価収益率)は11倍台(7/12)と比較的低水準となっていることも支援材料と考えます。

図表5でベトナム株式ファンドを一覧で表示しました。

図表1  ベトナムVN指数の推移 (2003年6月~2023年7月* 月末値)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230718_01_01.png

※QUICKデータをもとにSBI証券作成 (2023年7月は13日までのデータ)

図表2 ベトナムのインフレ率と政策金利の推移 (2008年6月~2023年6月 月末値)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230718_01_02.png

※BloombergデータをもとにSBI証券作成

図表3  ベトナムドンの対円レートの推移 (2009年2月~2023年7月* 月末値 2009年2月=100)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230718_01_03.png

※QUICKデータをもとにSBI証券作成 (2023年7月は13日までのデータ)

図表4  ベトナム株価指数(配当込み・円ベース)の推移 (2007年5月~2023年6月 月末値 2007年5月=100)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230718_02_01.png

※BloombergデータをもとにSBI証券作成 (ベトナム株価指数はFTSEベトナム・インデックス)

図表5  ベトナム株式ファンドの特徴と運用成績

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
6ヵ月
リターン
1年
リターン
3年リターン
(年率)
1年
標準偏差
1 ベトナム・ロータス・ファンド ベトナム株式およびべトナム関連企業の株式 22.24% -8.46% 30.19% 27.76
2 イーストスプリング・ベトナム株式ファンド(愛称:+αベトナム) ベトナム企業、ベトナムで事業展開を行っている企業等 20.95% (2022/7/29設定)
3 ベトナム株ファンド ベトナムのSSI証券による助言、ベトナム株式等へ投資 19.84% -4.37% 22.87% 24.21
4 DIAMベトナム株式ファンド(愛称:ベトナムでフォー) 今後の成長が期待されるベトナム株式 18.53% -7.36% 23.45% 24.33
5 ベトナム株式ファンド ベトナムの上場株式、ベトナム企業の株式 18.15% -0.03% 26.18% 21.50
6 CAMベトナムファンド 成長性の高いベトナム株式への投資 17.94% -8.70% 19.00% 25.78
7 ベトナム成長株インカムファンド 成長性の高いベトナム株式への投資 17.72% -8.12% 23.25% 25.15
8 T&D ベトナム株式ファンド(愛称:V-Star) ベトナム株式およびべトナム関連企業の株式 16.26% -4.87% 25.98% 21.52

※SBI証券取り扱い「国際株式」カテゴリーでベトナム株式を主要投資対象するファンドの6ヵ月リターンランキング(6月末基準)
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません

好成績のベトナム株式ファンドは?

ベトナム株価指数が上昇した2023年前半(6ヵ月)におけるベトナム株式ファンドのリターンランキングを表示しました(図表5)。SBI証券取り扱いのベトナム株式ファンド(主にベトナム株式を投資対象とするファンド)は、8ファンドとなっています。

ここでは、6ヵ月リターン1位のベトナム・ロータス・ファンド、同2位のイーストスプリング・ベトナム株式ファンド(愛称:+αベトナム)、同5位のベトナム株式ファンドを取り上げます。

1位のベトナム・ロータス・ファンドは、3年リターンでも1位となっています。値動きのブレを示す標準偏差(1年)は相対的に高くなっているため、リスクを取ってリターンを上げているファンドといえます。組入上位銘柄は、ベトナム外商銀行、サイゴン商信株式商業銀行、ベトナム投資開発銀行などとなっています(※)。他のファンドと比べて、金融株と不動産株のウエイトが高いのが特徴といえます。

2位のイーストスプリング・ベトナム株式ファンド(愛称:+αベトナム)は、2022年7月29日に設定された1年未満の運用実績のファンドです。2023年の7月末で1年を迎えますが、1年リターンはこのままいけば、8ファンド中で2位になると予想されます。銘柄選定力に加えて、信託報酬が年率0.989%程度と相対的に低いことが好パフォーマンスにつながっていると考えられます。組入上位銘柄は、サコムバンク、鉄鋼・農業・不動産などの事業に従事するホアファットグループ、ベトナム産業貿易商業銀行などとなっています(※)。

5位のベトナム株式ファンドは、1年以上の運用実績がある7ファンド中で1年リターンが最も良く、下落局面に強かったファンドといえます。1年標準偏差では最も低くなっており、相対的にリスクを抑えた運用が特徴です。下落局面に強かったため、3年リターンでは2位となっています。組入上位銘柄は、ベトコムバンク、ベトナム投資開発銀行、ベトナムIT最大手のFPTなどとなっています(※)。

ベトナム株式ファンドへの投資は、基準価額の値動きが大きいため、毎月一定額を定期的に購入するなどの積立投資に加えて、基準価額が下がったときに追加購入を行うことが特に有効といえます。

ベトナム株式は大きく成長する可能性があるものの、投資情報が入手しにくいことや未成熟な投資環境という課題があり、中上級者向けの資産(ファンド)と考えます。投資を行う場合は、これらの特徴をおさえた上で、一定比率内での分散投資をおすすめします。

(※)個別銘柄の取引を推奨するものではありません。各ファンドの組入上位銘柄の情報は2023年5月末基準。

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