新しいNISA 成長投資枠対象 好成績の債券ファンドは? 

新しいNISA 成長投資枠対象 好成績の債券ファンドは? 

投資情報部 川上雅人

2023/07/24

新しいNISA 成長投資枠対象 好成績の債券ファンドは?

2023年7月10日に一般社団法人投資信託協会(以下、投信協会)から、2024年からの新しいNISA制度における成長投資枠の対象商品リスト2回目が公表されました。1回目とあわせて国内籍の投資信託(非上場)に絞った対象商品は1,260本となっています。

投信協会による対象商品リストの公表は、8月1日、9月1日、10月2日、11月1日、12月1日、12月19日のあと6回を予定しているため、対象商品は今後も増える見込みですが、今回は7月10日時点の成長投資枠の対象商品1,260本のうち、SBI証券取り扱いの債券ファンドに絞ってご紹介します。

つみたてNISA(2024年からの新しいNISAではつみたて投資枠)においては、債券のみに投資するファンドは制度上、対象外となっています。そのため、つみたてNISAでは複数の資産に投資するバランスファンドを活用することのみで、債券への投資が可能となります。その意味で、2024年からの成長投資枠の対象となっている債券ファンドは、新しいNISAの非課税枠内でポートフォリオをバランス良く作りたい方にとっては、ニーズが高まるファンドと考えられるため注目します。

(つみたて投資枠と成長投資枠など新しいNISAの概要はこちら

新しいNISAでは非課税枠が大幅拡大となることから、成長投資枠などを活用しての株式以外の資産への分散投資ニーズが高まると予想します。ある程度まとまった資金で運用し、近い将来に資産の取り崩しを予定している方にとっては、できるだけ価格変動を抑えた運用を行うニーズがあるため、日本の年金基金(年金積立金管理運用独立行政法人=GPIF)の基本ポートフォリオ(図表1)のように、一定割合を債券で運用することも1つの方法と考えられます。

債券投資に関しては、コロナショック後の超低金利政策からの金利の急上昇によってパフォーマンスが悪化しました。世界主要国の国債の投資収益を示すFTSE世界国債インデックス(米ドルベース)は、2021年1月4日から2022年10月21日までの約1年10ヵ月では28.7%の下落に見舞われました(図表2)。これによって2019年末からの約3年半の投資収益は13.3%の下落となっています。なお、円建ての投資収益は、円安ドル高に助けられてプラスリターンを確保しています。

約1年10ヵ月の金利上昇によって債券価格は大幅下落となりましたが、足元では先進国の金利上昇はやや一服しており、2020年の後半と比較すると高い金利収入が期待できるため、中長期視点での債券投資は、低金利が続く日本を除いては好環境と考えられます(図表3)。

また、将来の日銀による緩和修正や米国の政策金利引き下げなどによって、円高外国通貨安が進む可能性もありますが、足元の米ドル円のヘッジコスト(主に日米の短期金利差が反映されたもの)は、米国短期金利の上昇によって年率5%を超える水準となっているため(図表4)、為替ヘッジをかけるコストによって、債券のリターンが相殺されてしまう懸念があります。そのため、外国債券投資においては為替ヘッジを行わないこと、または為替ヘッジを行う場合においては部分的または一時的に行うのが有効と考えられます。

7月10日時点の成長投資枠対象となっている債券ファンド(ウエルスアドバイザー分類の国内債券と国際債券)において、SBI証券での取り扱いは100本超となっています。

直近3年間でパフォーマンスが良好だった成長投資枠対象の債券ファンドを図表5で示しました。

図表1  日本の年金基金の基本ポートフォリオ (2020年4月1日から5ヵ年)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230724_01_01.png

※年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のホームぺージをもとにSBI証券作成

図表2 世界国債の投資収益(米ドル建て) (2019年末~2023年7月20日 2019年末=100)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230724_01_02.png

※BloombergデータをもとにSBI証券作成

図表3  先進国の10年国債利回りの推移 (2019年12月~2023年7月* 月末値)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230724_01_03.png

※QUICKデータをもとにSBI証券作成 (2023年7月は20日までのデータ)

図表4  米ドル円のヘッジコストの推移 (2019年12月末~2023年7月20日)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230724_02_01.png

※米ドル円の3ヵ月ヘッジコスト(年率)
※BloombergデータをもとにSBI証券作成

図表5  成長投資枠対象 好成績の債券ファンドの特徴と運用成績

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
1年
リターン
3年リターン
(年率)
1年
標準偏差
ポートフォリオ
最終利回り
1 フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド(資産成長型) 米ドル建て高利回り事業債を中心に投資 13.94% 15.04% 11.98 7.7%
2 イーストスプリング・インドネシア債券オープン(年2回決算型) インドネシアの国債、社債等に投資 12.76% 14.09% 10.01 6.4%
3 イーストスプリング・インド公益インフラ債券ファンド(年2回決算型) インドの公益インフラ債券(社債、金融機関債、国債等) 8.32% 12.79% 11.40 7.7%
4 野村インデックスファンド・米国ハイ・イールド債券(愛称:Funds-i フォーカス 米国ハイ・イールド債券) 米ドル建てのハイ・イールド債券インデックス 12.63% 11.15% 12.80 8.3%
5 フィデリティ・ストラテジック・インカム・ファンド(資産成長型)Dコース(為替ヘッジなし)(愛称:悠々債券) 米国国債、米国高利回り社債、先進国債券(除く米国)、エマージング債券に投資 9.04% 8.73% 9.40 5.6%
6 iFree 新興国債券インデックス 新興国現地通貨建て債券インデックス 16.73% 7.99% 8.65 6.8%
参考 eMAXIS Slim 先進国債券インデックス 日本を除く世界主要国の国債インデックス 4.21% 3.76% 8.73 3.9%

※SBI証券取り扱い「国際債券」「国内債券」の成長投資枠対象商品(7月10日時点)の3年リターンランキング(レーティング4つ星以上)(6月末基準)
※ポートフォリオ最終利回りは、1位と5位のファンドが5月末基準、その他ファンドは6月末基準
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません

好成績の債券ファンドの特徴は?

3年リターン1位のフィデリティ・USハイ・イールド・ファンド(資産成長型)は、米ドル建て高利回り事業債(ハイ・イールド債券)を中心に投資するファンドです。米国ハイ・イールド債券は、債券を発行する企業の信用力が相対的に低いことから主要国の国債よりも相対的に高い利回りとなっており、ポートフォリオの最終利回りは7.7%、平均格付けはBとなっています。信用力が相対的に低い債券はデフォルト(倒産)リスクが高くなりますが、組入銘柄を厳選して610銘柄に分散投資していることで、デフォルトによる影響を最小限に抑えて、長期で相対的に高いリターンを上げているファンドといえます。3年リターンで4位の米国ハイ・イールド債券のインデックスファンドを大きく上回る実績を上げています。

2位のイーストスプリング・インドネシア債券オープン(年2回決算型)は、インドネシアの国債、社債等に投資する単一新興国のファンドです。ポートフォリオの最終利回りは6.4%になっており、インドネシア国債の格付けはBBBです。単一の新興国ではありますが、値動きのブレを示す標準偏差はそれほど高くはありません。直近1年ではインドネシアのインフレ率低下による金利低下がパフォーマンス向上に寄与しています。

3位のイーストスプリング・インド公益インフラ債券ファンド(年2回決算型)は、インドの公益インフラ債券に投資するファンドで、社債の割合が高くなっており、ポートフォリオの最終利回りは7.7%、平均格付け(無格付けを除く)はBBBとなっています。

4位の野村インデックスファンド・米国ハイ・イールド債券はインデックスファンドですが、3年リターンで見ると対象インデックスに対してパフォーマンスのマイナス乖離が大きくなっています。ポートフォリオの最終利回りは8.3%、平均格付けはB、組入銘柄数949銘柄となっています。

5位のフィデリティ・ストラテジック・インカム・ファンド(資産成長型)Dコース(為替ヘッジなし)は、米国国債、米国高利回り社債、先進国債券(除く米国)、エマージング債券に幅広く分散投資しているファンドです。ポートフォリオの最終利回りは5.6%で、平均格付けはBBBとなっています。幅広い債券に分散投資(組入銘柄数は887銘柄)していることもあって1年の標準偏差が相対的に小さくなっています。

6位のiFree 新興国債券インデックスは新興国現地通貨建て債券インデックスに連動を目指すファンドです。通貨別ではブラジル・レアル、人民元、メキシコ・ペソ、インドネシア・ルピア、マレーシア・リンギットが上位となっています。ポートフォリオの最終利回りは6.8%で、近年では新興国の信用力は向上しているため月次レポートから推定される平均格付けはAとなっています。幅広い新興国に分散投資していることもあって1年の標準偏差は相対的に小さくなっています。1年リターンの好調は、メキシコ・ペソとブラジル・レアルの対円での上昇が寄与しています。

3年で好成績の債券ファンドは、主に米国ハイ・イールドや新興国の債券ファンド(単一国と複数国)となりました。これらのファンドは、直近3年では円安外国通貨高が基準価額のプラス要因となっていますが、それに加えて高い利回り水準がパフォーマンスに寄与していると考えられます。

参考として代表的な世界国債インデックスファンド(eMAXIS Slim 先進国債券インデックス)と比較しましたが、フィデリティ・ストラテジック・インカム・ファンド(資産成長型)Dコース(為替ヘッジなし)やiFree 新興国債券インデックスは、1年標準偏差では世界国債インデックスファンドとほとんど変わらずに高いリターンを上げています。

成長投資枠における債券ファンドの選択肢として、これらの2ファンドや長期のパフォーマンスが優秀なフィデリティ・USハイ・イールド・ファンド(資産成長型)を一部活用することが有効と考えます。

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【投資信託に関するご注意事項】

・投資信託は、主に国内外の株式や債券等を投資対象としています。投資信託の基準価額は、組み入れた株式や債券等の値動き、為替相場の変動等により上下しますので、これにより投資元本を割り込むおそれがあります。
・投資信託は、個別の投資信託毎にご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なります。ファンド・オブ・ファンズの場合は、他のファンドを投資対象としており、投資対象ファンドにおける所定の信託報酬を含めてお客さまが実質的に負担する信託報酬を算出しております(投資対象ファンドの変更等により、変動することがあります)。
・ご投資にあたっては、商品概要や目論見書(目論見書補完書面)をよくお読みください。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。