新しいNISAの成長投資枠 好成績の日本株ファンドは?

投資情報部 川上雅人
2023/07/31
新しいNISAの成長投資枠 5ツ星の日本株ファンドは?
2024年から始まる新NISAの成長投資枠において、7月10日時点での国内籍の投資信託(非上場)に絞った対象商品は1,260本となっています。年末までに6回の成長投資枠対象商品リストの更新を予定しているため、対象商品は今後増える見込みですが、SBI証券では成長投資枠の対象商品1,260本のうち856本を採用しています。詳細は こちら をご参照ください。今回はSBI証券取り扱いの日本株ファンドに絞ってご紹介します。
ファンド選びの一例としてファンドレーティングを活用する方法があります。投資信託の銘柄比較などができるSBI証券ホームページの 投資信託 パワーサーチ では、ファンドレーティングを条件にファンドを絞り込むことができます。ファンドレーティングとは、ファンドのリスクとリターンを勘案し、資産運用に関する投資情報の提供を行うウエルスアドバイザーが相対的に評価した結果のことです。★(星)の数が多いほど、評価が高いファンドになります。ファンドレーティングは直近月末までのデータを参考にして、原則毎月第4営業日夜間に更新されます。ファンドレーテイングの詳細については、ウエルスアドバイザーのホームページでは以下のように解説しています。
弊社では、3年以上の運用実績を有するファンド(注1)に対して、定量データに基づき5段階のファンドレーティングを付与している。具体的には、あるファンドが同じカテゴリー(「国内大型ブレンド」など)に属するファンド群と比較して、運用効率(シャープレシオ:注2)が高ければ星の数が多くなる仕組みで、最上位は5ツ星である。レーティングは、直近3年間、5年間、10年間のほか、それらのより長期のレーティングが重視されるよう加重平均した「総合」を公表している。
注1:国内公募追加型株式投信(確定拠出年金向けファンド及びラップ口座専用ファンド、ETF等を含む)が対象。
注2:リスク調整後のリターンを計る指標。2つのファンドが同じリターンであれば、リスク(リターンのブレ幅)が小さい方がシャープレシオの値が高くなる。同様に、同じリスク(〃)であれば、リターンが高い方がシャープレシオの値が高くなる。厳密には、弊社が独自に算出する「カテゴリー内リターン」と「カテゴリー内リスク」によってリスク調整後のリターンのスコアを測定し、レーティングを付与している。
シャープレシオとは、運用で取ったリスクに見合うリターンを上げたかどうかを測る指標で、リスク(標準偏差)1単位あたりの超過リターンを計測したものです。【(リターン-無リスク利子率)÷リスク】 で求められます。今は日本の無リスク利子率は短期金利がほぼ0%のため、【リターン÷リスク】 で簡易的に求められています。シャープレシオは一般的に、投資対象が同じ資産の商品を比較するのに有効とされています。
ファンドレーティングのポイントとしては、①同一カテゴリー内での相対評価であること、 ②評価はリターンではなく、リスク調整後のリターンであるシャープレシオが使われていること、の2点と考えます。
①については、カテゴリー毎にパフォーマンスが異なるため、ファンド選びにおいてはカテゴリー毎の特徴をある程度おさえることが有効と考えます。国内株式型のカテゴリーは、規模別とスタイル別に国内大型バリュー、国内大型ブレンド、国内大型グロース、国内中型バリュー、国内中型ブレンド、国内中型グロース、国内小型バリュー、国内小型ブレンド、国内小型グロースの計9つになります。
日本の主な株価指数の比較は図表1のようになっています。国内大型グロースと国内小型グロースで比較すると直近5年間では、小型株の指数よりも大型株の指数が優位だったため、国内大型グロースのファンドが相対的に優位となりました。
また、割安株で構成されるバリューの指数と成長株で構成されるグロースの指数は、5年間で見とるパフォーマンスにほとんど差がありませんでしたが、前半ではグロースが優位に、後半ではバリューが優位になっています。
時期によってカテゴリー毎のパフォーマンス優劣が異なることから、カテゴリーを考慮してある程度分散投資し、それぞれのカテゴリーでインデックスファンドと比較しながら相対評価が高いファンドを選ぶというのが有効と考えます。
②については、リスクを抑えてリターンを上げているファンドが上位となるためシャープレシオを使った評価は有効といえますが、相対的にリスクが高くてリターンが高いファンドなどが中位の3ツ星評価となってしまうことも考えられます。過去のリターンが高いファンドを選びたい方は、ファンドレーティングではなくリターンを見る必要があり、ファンドレーティングのみでは優劣が判断できないこともあるため注意が必要です。
成長投資枠対象(7月10日時点)の日本株ファンド(SBI証券取り扱い)において、5ツ星ファンド(2023年6月末基準)の特徴と運用成績を一覧にしたものが図表2になります。販売停止中のファンド1本を含めて計10本になっています。参考としてTOPIXのインデックスファンドも示しました。
図表1 日本の主な株価指数の比較 (2018年7月~2023年7月* 月末値 2018年7月=100)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成 (2023年7月は27日までのデータ)
図表2 成長投資枠対象の5ツ星 日本株ファンドの特徴と運用成績
順位 | ファンド名 | カテゴリー | 特徴 (投資対象) |
1年 リターン |
3年リターン (年率) |
5年リターン (年率) |
1年 標準偏差 |
1 | 情報エレクトロニクスファンド | 国内大型グロース | エレクトロニクスや情報通信に関連する企業群 | 35.87% | 21.58% | 17.06% | 21.88 |
2 | 小型ブルーチップオープン | 国内中型グロース | 中長期的視点に立った成長性などに着目した中小型株 | 32.74% | 20.93% | 12.69% | 13.60 |
3 | ニュー配当利回り株オープン(愛称:配当物語) | 国内大型バリュー | 予想配当利回りが市場平均と比較して高い銘柄 | 28.08% | 20.19% | 9.73% | 12.65 |
4 | フィデリティ・テクノロジー厳選株式ファンド(愛称:Jテック+) | 国内大型グロース | 成長力が高いと判断される日本のテクノロジー関連企業 | 24.44% | 19.43% | 13.61% | 22.06 |
5 | One国内株オープン(愛称:自由演技) | 国内大型ブレンド | マクロの投資環境の変化に応じて投資スタイルを適宜変更 | 29.12% | 18.89% | 10.18% | 14.20 |
6 | 新経済成長ジャパン | 国内大型ブレンド | 投資環境の変化に対し柔軟かつ機動的な運用を行う | 15.81% | 18.65% | 8.76% | 11.13 |
7 | 日本ニューテクノロジー・オープン(愛称:地球視点) | 国内大型グロース | ニューテクノロジーにより収益の拡大が期待される銘柄 | 16.19% | 18.10% | 11.16% | 17.89 |
8 | DIAM新興市場日本株ファンド 【販売停止中】 | 国内小型グロース | 新興市場の銘柄の成長力、競争力、収益力等を分析 | 35.89% | 12.96% | 12.65% | 21.11 |
9 | 企業価値成長小型株ファンド(愛称:眼力) | 国内小型グロース | 小型株および東証グロース市場などに上場している株式 | 17.37% | 12.58% | 15.55% | 13.38 |
10 | 三井住友・中小型株ファンド | 国内小型グロース | 徹底したリサーチにより推計した「企業価値」に着目 | 17.65% | 10.44% | 4.30% | 12.47 |
参考 | eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX) | 国内大型ブレンド | TOPIX(配当込み)と連動する投資成果をめざす | 25.49% | 16.25% | 8.19% | 12.97 |
※SBI証券取り扱い「国内株式」の成長投資枠対象商品(7月10日時点)の3年リターンランキング(レーティング5ツ星)(データは6月末基準)
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません
5ツ星 日本株ファンドの評価は?
5ツ星の日本株ファンド10本のうち、販売停止中のファンドを除く9本の1年・3年・5年・10年の運用効率(シャープレシオ)のカテゴリー内での相対評価をまとめたのが、図表3になります。%ランクとはカテゴリー内での相対的な水準を表しています。例えば、%ランクが10%ということは、カテゴリー内でシャープレシオが上位10%の位置にあることを示しています。
3年リタ-ン1位の情報エレクトロニクスファンドは、国内大型グロースのカテゴリーで、運用効率は5年・10年で上位5%以内となってます。1年では57%と中位となっていますが、長期の運用効率は優秀といえます。
2位の小型ブルーチップオープンは、国内大型グロースのカテゴリーで、1年から10年までの全ての年限において運用効率が15%未満と優秀です。
3位のニュー配当利回り株オープン(愛称:配当物語)は、国内大型バリューのカテゴリーで、運用効率が3年・5年・10年で15%未満と優秀です。1年でも27%とまずまずです。このファンドは標準偏差が低いことが高い運用効率となっています。
4位のフィデリティ・テクノロジー厳選株式ファンド(愛称:Jテック+)は、5年・10年の運用効率が優秀ですが、1年・3年では平均以下となっており苦戦しています。標準偏差が相対的に高いことが、1年・3年での苦戦の要因となっています。
5位のOne国内株オープン(愛称:自由演技)は、10年の運用効率がカテゴリー171本中で1位となっています。1年・3年・5年でも%ランクが20%前後と良好です。
6位の新経済成長ジャパンは3年・5年・10年のシャープレシオは良好ですが、1年では苦戦しています。7位の日本ニューテクノロジー・オープン(愛称:地球視点)も新経済成長ジャパンと同じような傾向となっています。2つのファンドはカテゴリーは異なりますが、同じ運用会社のファンドです。
8位の企業価値成長小型株ファンド(愛称:眼力)は、2016年の設定のため10年の実績はありません。5年の運用効率はカテゴリー73本中1位と優秀ですが、1年と3年の運用効率は中位程度となっています。
9位の三井住友・中小型株ファンドは、10年の運用効率ではカテゴリー42本中2位となっていますが、1年・3年・5年では10年ほどの優位性は発揮できていません。
過去のパフォーマンスは将来の実績を示唆するものではありませんが、相対的に高い運用効率を全ての年限で実現し、かつTOPIXのインデックスファンドを上回っているファンドは、今後も相対的に高い運用成績が期待される日本株ファンドの候補と考えられます。図表3では、2位の中型グロースの小型ブルーチップオープン、3位の国内大型バリューのニュー配当利回り株オープン(愛称:配当物語)、5位の国内大型ブレンドのOne国内株オープン(愛称:自由演技)に注目します。3つのファンドはそれぞれカテゴリーが異なっていることから、3ファンドへの分散投資はシャープレシオの%ランクを考慮したひとつの投資アイデアといえます。
なお、国内小型バリューのカテゴリーは、対象ファンドが9本しかないため、これらの9ファンドはウエルスアドバイザーのファンドレーティングが付与されていません。ファンドを選ぶ際にはご注意ください。
図表3 成長投資枠対象の5ツ星 日本株ファンドの運用効率(相対評価)
順位 | ファンド名 | カテゴリー | シャープレシオ %ランク | |||
1年 | 3年 | 5年 | 10年 | |||
1 | 情報エレクトロニクスファンド | 国内大型グロース | 57% | 16% | 3% | 2% |
2 | 小型ブルーチップオープン | 国内中型グロース | 4% | 3% | 2% | 13% |
3 | ニュー配当利回り株オープン(愛称:配当物語) | 国内大型バリュー | 27% | 11% | 11% | 3% |
4 | フィデリティ・テクノロジー厳選株式ファンド(愛称:Jテック+) | 国内大型グロース | 92% | 60% | 9% | 3% |
5 | One国内株オープン(愛称:自由演技) | 国内大型ブレンド | 15% | 21% | 19% | 1% |
6 | 新経済成長ジャパン | 国内大型ブレンド | 92% | 12% | 20% | 8% |
7 | 日本ニューテクノロジー・オープン(愛称:地球視点) | 国内大型グロース | 97% | 15% | 9% | 4% |
8 | 企業価値成長小型株ファンド(愛称:眼力) | 国内小型グロース | 41% | 31% | 2% | - |
9 | 三井住友・中小型株ファンド | 国内小型グロース | 32% | 19% | 29% | 5% |
※ウエルスアドバイザーのデータ(6月末基準)をもとにSBI証券作成
※順位は3年リターン順で、%ランクの上位20%以内は黄色枠で表示
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