猛暑の7月 上昇が大きかったファンドは? 投資テーマは?

猛暑の7月 上昇が大きかったファンドは? 投資テーマは?

投資情報部 川上雅人

2023/08/07

猛暑の7月 上昇が大きかったファンドは? 投資テーマは?

2023年7月は日本各地で記録的な猛暑となり、東京都心では7月の猛暑日が過去最多の計13日を記録しました。猛暑は世界各地に広がっており、米国や中国においても50度を超える記録的な暑さに見舞われました。今回は猛暑となった7月の世界のマーケットを振り返って、上昇が大きかった株価指数や投資テーマ、ファンドをご紹介します。

7月の世界株式は米国の金融引き締め長期化への懸念などからは前半は下落したものの、その後は米国のインフレ率が低水準となったことや欧米の企業決算や中国の景気刺激策への期待などから上昇しました。

主な株価指数(図表1)を見ると、7月はこれまで低迷していた香港ハンセンが6.1%上昇となりました。米国ではNASDAQ総合が+4.1%、S&P500が+3.1%となり、年初からのNASDAQ優位が続きました。インドSENSEXは7月20日に過去最高値をつけましたが、その後は調整となって2.8%の上昇でした。ユーロ圏11カ国50銘柄の指数であるユーロ・ストックス50は+1.6%、日本についてはTOPIXが1.5%上昇したものの、これまで上昇が大きかった日経平均は▲0.1%とほぼ横ばいとなりました。

一方、7月の為替市場(対円レート)では、2023年は対米ドルで下落していた中国元が0.1%上昇となりました。欧州通貨では英ポンドが▲0.3%、ユーロが▲0.6%と小幅下落となり、米ドルが▲1.4%、インドルピーが▲1.6%となりました(図表2)。

6月までは上昇基調にあった米ドルが対円で下落したことで、円建ての外国株式の投資収益が総じて伸び悩んだ月となりました。

こうした環境下で、SBI証券取り扱い「国際株式」カテゴリーで1ヵ月のパフォーマンスを確認します。1ヵ月基準価額騰落率ランキングは「投信」→「ランキング」にある「騰落率(上位)」の「前月比」で確認できます。(詳細は こちら

騰落率(上位)または騰落率(下位)はその期間に支払われた分配金が考慮されていないため、正確なリターンのランキングとはなっていませんが、日次で更新されるデータのため、短期的なファンドの値動きの傾向がつかみやすいツールといえます。

7月30日まで外国株式の評価が反映される8月1日を更新日とした1ヵ月基準価額騰落率(6/30~8/1)ランキングの上位10本が図表3になります。

7月好成績ファンドの特徴(投資テーマ)は、中国テック株式、トルコ株式、電気自動車(EV)関連株式、水素エコノミー関連株式、フィンテック関連株式、米国銀行株式などとなりました。一部を除いて、6月末までの1年リターンや3年リターンでは低迷していた投資テーマのファンドが巻き返して上位に入りました。

図表1  主な株価指数の比較 (2022年末~2023年8月3日 2022年末=100)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成

図表2 主な為替レート(対円)の比較 (2022年末~2023年8月3日 2022年末=100)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成

図表3  7月好成績ファンドの特徴と運用成績

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
*1ヵ月
基準価額
騰落率
1年
リターン
3年リターン
(年率)
1年
標準偏差
1 iFreeNEXT ATMX+ 香港上場の中国テック企業10銘柄 18.59% -22.30% - 47.72
2 トルコ株式オープン(愛称:メルハバ) 収益性、成長性、安定性などで選定したトルコ株式 16.87% 55.92% 20.45% 38.32
3 eMAXIS Neo 電気自動車 日本を含む世界各国の電気自動車関連企業の株式 16.09% -9.88% - 33.36
4 iFreeNEXT ムーンショットインデックス 次世代を担う製品・サービスを提供する革新的な企業 15.69% -6.30% - 40.97
5 eMAXIS Neo 水素エコノミー 日本を含む世界各国の水素エコノミー関連企業の株式 15.02% 13.06% - 37.08
6 グローバル・フィンテック株式ファンド(為替ヘッジあり) 世界の株式の中から主にフィンテック関連企業の株式 14.56% 19.61% -17.22% 32.48
7 グローバル・フィンテック株式ファンド(為替ヘッジあり・年2回決算型) 世界の株式の中から主にフィンテック関連企業の株式 14.53% 19.71% -17.34% 32.57
8 マニュライフ・米国銀行株式ファンド(愛称:アメリカン・バンク) 米国の銀行・金融機関の株式 13.65% -15.75% 19.49% 31.90
9 デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド(愛称:ゼロ・コンタクト) 非接触型ビジネス関連企業の株式 13.57% 24.25% - 38.06
10 eMAXIS Neo 自動運転 日本を含む世界各国の自動運転関連企業の株式 13.36% 3.30% 24.57% 38.81

※SBI証券取り扱い「国際株式」の1ヵ月基準価額騰落率ランキング(6/30~8/1、レバレッジ型・償還予定日が近いファンドは除く)
※1年・3年リターン、1年標準偏差は6月末基準
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません

7月好成績ファンドの特徴は?

1位のiFreeNEXT ATMX+は、香港上場の中国テック企業10銘柄のインデックスへの連動をめざすファンドです。組入銘柄はEVメーカーのリ・オートとニーオ、インターネット検索エンジンのバイドゥ、オンラインゲーム会社のテンセントとネットイース、旅行サービスのトリップ・ドットコム、EC企業のアリババとJDドット・コム、フードデリバリー大手のメイトゥワン、スマホ大手のシャオミの10銘柄です(※)。7月は香港株式市場が上昇しましたが、特に中国テック企業の株価上昇が目立ちました。

2位のトルコ株式オープン(愛称:メルハバ)は、トルコリラは対円で下落となっているものの、株価の大幅上昇が寄与しています。トルコの代表的な株式指数であるイスタンブール100 種指数は経済政策運営の正常化期待が継続し、段階的な利上げの実施が好感され7月は約25%の大幅上昇となっています。1年リターンで見てもトルコ株式の上昇によって好パフォーマンスです。

3位のeMAXIS Neo 電気自動車は組入れているEV関連メーカーは米国中心ですが、中国や日本などにも投資しています。7月はテスラの株価は伸び悩みましたが、米EVトラックメーカーのニコラや中国のEVメーカーのリ・オートとニーオの株価上昇がパフォーマンスに寄与しました(※)。

4位のiFreeNEXT ムーンショットインデックスは、次世代を担う製品・サービスを提供する革新的な企業にフォーカスし、独自のスコアリングを活用して成長初期~中期段階にある50の企業を選別しているインデックスファンドです。組入1位のニコラと組入3位の中国のドローン企業・イーハンホールディングスの株価上昇が好調の要因となっています(※)。

5位のeMAXIS Neo 水素エコノミーは日本を含む世界各国の水素エコノミー関連企業の株式に投資するファンドですが、組入1位が二コラでした。二コラは水素燃料バッテリー電気自動車ベースのセミトラックを開発と水素燃料ステーションも手掛けています(※)。

6位と7位のグローバル・フィンテック株式ファンド(為替ヘッジあり)グローバル・フィンテック株式ファンド(為替ヘッジあり・年2回決算型)は、同じマザーファンドに投資しているファンドです。為替ヘッジなしコースもありますが、7月は円高となったため為替ヘッジありが上位となりました。米アーク社の調査を活用して運用しており、モバイル決済サービスのブロックや暗号資産取引プラットフォームを運営するコインベース・グローバルの株価上昇が7月のパフォーマンス向上に寄与しています(※)。ただし、3年リータンでは低迷しています。

8位のマニュライフ・米国銀行株式ファンド(愛称:アメリカン・バンク)は、7月は業種別で金融が相対的に上昇したことや組入れている地方銀行の株価上昇が好調の要因です。

9位のデジタル・トランスフォーメーション株式ファンド(愛称:ゼロ・コンタクト)は、6・7位のファンドと同じ米アーク社の調査を活かした運用を行っているファンドです。コインベース・グローバル、スマートTV向けプラットフォームのロク、ブロックの株価上昇がパフォーマンスに寄与しています(※)。1年リターンでも好成績となっています。

10位のeMAXIS Neo 自動運転は、エヌビディア、ニーオの株価上昇が好調の要因といえます(※)。長期3年のリターンでも良好なファンドです。

1位から10位のファンドの組入銘柄を見ると、中国を含むEV関連株式、フィンテック(非接触型ビジネス)関連株式の急上昇の恩恵を受けたファンドが多くなりました。これらの投資テーマの株式はこれまで大幅下落した銘柄が多く、反発の持続性に注目です。8月に入って世界の株式市場は調整局面となっていますが、中国のEV関連株式などはしっかりの動きとなっています。

なお、7月好成績ファンドは、値動きのブレを示す標準偏差の数値が非常に高く、投資を行う際には、積立投資などによる時間分散が有効といえます。値動きが大きいため投資経験が豊富な中上級者の方が分散投資の候補として検討すべきファンド群といえます。

(※)個別銘柄の取引を推奨するものではありません。各ファンドの組入上位銘柄の情報は2023年6月末基準。

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