ジャクソンホール会議前の調整局面 上昇した日本の株価指数は?

投資情報部 川上雅人
2023/09/04
ジャクソンホール会議前の調整局面 株価指数では?
2023年8月のマーケットは、24-26日に開催された日米欧の主要中央銀行トップが勢ぞろいした国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」での思惑に左右される展開となりました。
ジャクソンホール会議前は、FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が今後の利上げ見通しに関して積極的な発言が行われるのではないかという警戒感と、8月1日の米国債格下げや米財務省による国債発行増などの需給悪化の影響による米金利上昇によって、世界的に株式市場は調整局面となりました。
ジャクソンホール会議の講演でパウエル議長は、インフレ率がなお高過ぎるとして、適切と判断すれば追加利上げに動く用意があると述べましたが、発言内容は想定内だったとの受け止め方が拡がりました。これによって、ジャクソンホール会議後のマーケットはやや弱い米経済指標の発表もあって米長期金利が低下し、世界の株式市場は反発の動きとなりました(図表1)。
為替市場においては、ジャクソンホール会議までは米金利上昇やリスク回避の動きを受けて米ドル高円安が進みました。ジャクソンホール会議後は米ドル高がやや一服しています(図表2)。
こうした投資環境下で、2023年3月末からの日本の株価指数を比較したものが図表3になります。
7月上旬までの上昇局面では、日経平均先物への外国人買いなどを背景として日経平均の上昇が目立ちました。7月以降の調整局面のもみ合い相場では、好調だった日経平均が下落する一方で、TOPIXは底堅い動きとなりました。TOPIXの中では割安株で構成されるTOPIXバリュー指数が7月以降は堅調な動きとなる一方で、成長株で構成されるTOPIXグロース指数が低迷しました。成長株の低迷は世界的な金利上昇が要因といえます。また、日経平均構成銘柄のうち配当利回りの高い50銘柄から構成される日経平均高配当株50指数の上昇が際立っています。
7月以降の高配当株優位のマーケットを踏まえて、高配当日本株ファンドのパフォーマンスを確認します。2023年の日本株上昇局面を捉える運用ができたのかが確認できる7月末までの6ヵ月リターンに注目し、その上位ファンドは図表4となります。
図表1 主な株価指数の比較 (2022年末~2023年8月31日 2022年末=100)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成
図表2 主な為替レート(対円)の比較 (2022年末~2023年8月31日 2022年末=100)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成
図表3 日本の株価指数の比較 (2023年3月末~2023年8月31日 2023年3月末=100)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成
図表4 2023年好成績 高配当日本株ファンドの特徴と運用成績
順位 | ファンド名 | 特徴 (投資対象) |
6ヵ月 リターン |
1年 リターン |
3年リターン (年率) |
1年 標準偏差 |
1 | 日経平均高配当利回り株ファンド | 日経平均採用の予想配当利回り上位30銘柄に投資 | 25.07% | 42.12% | 34.15% | 15.26 |
2 | 好配当日本株式 オープン(愛称:好配当ニッポン) | 配当利回りに着目してトータル・リターンの追求をめざす | 23.64% | 28.81% | 23.31% | 12.43 |
3 | ニュー配当利回り株オープン(愛称:配当物語) | 予想配当利回りが市場平均比較で高いと判断される銘柄を中心に投資 | 23.03% | 27.88% | 22.24% | 12.65 |
4 | 日興ジャパン高配当株式ファンド | 配当成長が期待できる企業に厳選投資 | 22.72% | 28.77% | 20.19% | 11.40 |
5 | フィデリティ・日本配当成長株・ファンド(分配重視型) | 将来の配当成長が見込まれる銘柄を発掘 | 22.67% | 25.26% | 20.35% | 10.68 |
6 | SMT 日本株配当貴族インデックス・オープン | S&P/JPX配当貴族(連続増配)指数に連動する投資成果をめざす | 22.13% | 31.15% | 24.81% | 9.64 |
7 | 日本株配当オープン(愛称:四季の実り) | 相対的に配当利回りが高い銘柄を中心に増配期待銘柄にも投資 | 22.05% | 27.67% | 23.18% | 12.76 |
8 | 好配当優良株ジャパン・オープン | 連続増配銘柄のうち、好配当優良株を中心に投資 | 21.50% | 27.82% | 21.77% | 10.36 |
9 | 日本好配当リバランスオープン | 日経500採用銘柄で予想配当利回り上位の70銘柄程度に均等投資 | 21.38% | 32.48% | 30.31% | 10.92 |
参考 | 三井住友・日経225オープン | 日経平均インデックスファンド | 22.88% | 21.97% | 17.11% | 16.32 |
参考 | 東京海上セレクション・日本株TOPIX | TOPIXインデックスファンド | 19.18% | 22.99% | 18.54% | 12.73 |
※SBI証券取り扱い「国内株式」カテゴリーの中で、ファンド名を「配当」で検索した6ヵ月リターンランキング(7月末基準)
※参考として日経平均およびTOPIXインデックスファンドの6ヵ月リターン最上位ファンドを表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません
2023年好成績 高配当日本株ファンドの特徴は?
1位の日経平均高配当利回り株ファンドは、日経平均採用銘柄の中から予想配当利回り上位30銘柄に投資するファンドです。組入上位銘柄は川崎汽船、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループなどとなっています(※)。ファンドの予想配当利回りは4.3%で、業種別では銀行業、鉄鋼、海運業に偏っていることもあって値動きのブレを示す標準偏差はやや高くなっていますが、6ヵ月、1年、3年すべての期間において好成績を上げています。
2位の好配当日本株式 オープン(愛称:好配当ニッポン)は、配当利回りに着目しながらトータル・リターンの追求をめざすファンドです。組入上位銘柄はトヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、本田技研工業などとなっています(※)。組入銘柄数は120銘柄で、ファンドの予想配当利回りは2.9%となっています。
3位のニュー配当利回り株オープン(愛称:配当物語)は、予想配当利回りが市場平均比較で高いと判断される銘柄を中心に投資するファンドです。組入上位銘柄は三菱商事、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループなどとなっています(※)。組入銘柄数は58銘柄で、ファンドの予想配当利回りは3.04%となっています。
4位の日興ジャパン高配当株式ファンドは、配当成長が期待できる企業に厳選投資するファンドで、組入上位銘柄は、三菱UFJフィナンシャル・グループ、本田技研工業、トヨタ自動車などとなっています(※)。組入銘柄数は54銘柄で、ファンドの予想配当利回りは3.18%となっています。
5位のフィデリティ・日本配当成長株・ファンド(分配重視型)は、将来の配当成長が見込まれる銘柄を発掘することをめざすファンドで、組入上位銘柄は、伊藤忠商事、三井住友フィナンシャルグループ、三菱商事などとなっています(※)。組入銘柄数は69銘柄で、ファンドの予想配当利回りは3.1%となっています。
6位のSMT 日本株配当貴族インデックス・オープンは連続増配インデックスへの連動をめざすファンドです。組入上位銘柄はジャフコ グループ、大和工業、東ソーなどとなっています(※)。組入銘柄数は50銘柄で、ファンドの実績配当利回りは3.77%となっています。標準偏差が相対的に低くなっているが特徴です。
7位の日本株配当オープン(愛称:四季の実り)は、相対的に配当利回りが高い銘柄を中心に増配期待銘柄にも投資するファンドです。組入上位銘柄はトヨタ自動車、伊藤忠商事、三菱UFJフィナンシャル・グループなどとなっています(※)。組入銘柄数は78銘柄で、ファンドの予想配当利回りは2.72%となっています。
8位の好配当優良株ジャパン・オープンは、連続増配銘柄のうち、好配当優良株を中心に投資するファンドです。組入上位銘柄はふくおかフィナンシャルグループ、豊田通商、トヨタ自動車などとなっています(※)。組入銘柄数は69銘柄で、ファンドの予想配当利回りは3.6%となっています。。
9位の日本好配当リバランスオープンは、日経500種採用銘柄の中から予想配当利回り上位70銘柄程度に均等投資するファンドです。ファンドの予想配当利回りは4.29%となっています。6ヵ月リターンでは上位ファンドに劣後していますが、1年・3年では好成績を上げています。
上記9ファンドの傾向としては、連続増配や配当成長が期待できる企業、または高配当だけではなく、株価上昇によるトータル・リターンという視点で銘柄を選定しているファンドが多く見受けられます。直近8月末までのファンドのパフォーマンス比較は図表5となります。
9ファンドの中では、8位の好配当優良株ジャパン・オープン以外は、新NISAの成長投資枠対象ファンドとなっています(9月1日現在)。また、SMT 日本株配当貴族インデックス・オープン以外は、年4回や年2回といったタイミングで定期的に分配金を支払っているファンドになります。
高配当日本株ファンドは、定期的に分配金を受けることができる商品として、新NISAの成長投資枠における分配ニーズに対応した選択肢として注目を集めることが予想されます。投資信託の場合は金額指定で購入できることもポイントといえます。こうした意味でも今後も好パフォーマンスを実現する高配当日本株ファンドが数多く出てくることが期待されます。
(※)個別銘柄の取引を推奨するものではありません。各ファンドの組入上位銘柄の情報は2023年7月末基準(日本好配当リバランスオープンのみ2023年8月7日基準)。
図表5 高配当日本株ファンド(1年リターン上位5本)のパフォーマンス比較 (2022年8月31日~2023年8月31日 2022年8月31日=100)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成 (ファンド名は一部愛称または略称)
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