新NISA 成長投資枠 新興国株式ファンド 申請が多い国は?

新NISA 成長投資枠 新興国株式ファンド 申請が多い国は?

投資情報部 川上雅人

2023/10/30

成長投資枠 新興国株式ファンド 申請が多い国は?

2024年から始まる新NISA、SBI証券では11月18日(土)から投信積立の受付を開始します。投信積立ですのでつみたてNISAの後継となるつみたて投資枠はもちろん、成長投資枠での投信積立も受付開始となります。(詳しくはこちら

今回は10月2日時点での国内籍の投資信託(非上場)に絞った成長投資枠の対象商品1,682本のうち、単一国の新興国株式を投資対象としているファンド数をチェックします。ウエルスアドバイザーのNISA成長投資枠対象一覧とファンド分類を参考にすると、単一国の新興国株式ファンドの申請本数は図表1となっています。

成長投資枠対象ファンドの更新スケジュールはとあと3回(11月1日、12月1日、12月19日)となっているため、今後も増える見込みですが、10月2日時点では、インドが28本でトップ、続いて中国21本、ベトナム11本、ブラジル5本、フィリピンとインドネシアが3本、メキシコとトルコが1本の順となりました。

新興国株式ファンド(単一国)への投資は、以前は値動きのブレを示す標準偏差(リスク)が大きいイメージがありましたが、近年、一部の国では株価指数や通貨の安定化などから標準偏差が以前よりも小さくなってきています。また、米国株インデックスファンドなどと比べても期間によってはリターンの高い国のファンドも見られるようになっており、分散投資の1つの方法として資産の一部を投資するという方法は有効と考えます。加えて、図表2で示したように2023年から2024年にかけては米国や日本では経済成長率の伸びが鈍化することが予想されているのに対して、新興国の一部の国においては経済成長率が加速または高い成長率が維持されるなど経済状況が良好な見通しです。米長期金利上昇への警戒感が強まっているマーケットですが、この警戒感が一服すれば、一部の新興国については投資妙味が高まっていく局面と考えます。

図表1で取り上げた新興国の株価指数を比較したものが、図表3になります。コロナショック前の2019年末から直近までの比較では、トルコの株価指数が経済・金融政策の正常化などを背景に大幅上昇し、続いてインド、ベトナム、メキシコ、インドネシアの順に上昇となりました。一方で、ブラジルは小幅下落となり、フィリピンや中国(香港ハンセン)は下落が大きくなりました。約3年10ヵ月間では新興国株式は国によって二極化の動きとなりました。

新興国通貨(対円レート)を示したものが図表4になります。株価大幅上昇となったトルコは、通貨リラは高水準のインフレ率などから大幅下落となりましたが、その他の国は日本との金利差拡大などを背景として上昇しました。実質金利の上昇を背景にメキシコペソの上昇率がトップとなり、中国人民元やベトナムドンなどアジア通貨が総じて堅調となりました。

こうしたマーケットを受けて、各単一国の3年リターントップファンド(SBI証券取り扱い)の運用成績を示したのが図表5になります。1位がインドのファンドとなり、2位以下はトルコ、メキシコ、ベトナム、インドネシア、ブラジル、フィリピン、中国の順となりました。参考としてS&P500インデックスファンドを表示しました。

図表1 成長投資枠対象 新興国株式ファンド(単一国)の申請本数 (10月2日時点)

※ウエルスアドバイザーのNISA成長投資枠対象ファンド一覧をもとにSBI証券作成

図表2 新興国の経済成長率見通し (実質GDP、年間の変化率、%)

※IMF(国際通貨基金)の2023年10月見通しをもとにSBI証券作成

図表3 新興国株価指数の比較 (2019年末~2023年10月26日 2019年末=100)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成

図表4 新興国通貨(対円レート)の比較 (2019年末~2023年10月26日 2019年末=100)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成

図表5 成長投資枠対象 新興国株式ファンド(単一国)の特徴と運用成績

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
1年リターン 3年リターン
(年率)
1年
標準偏差
1 HSBC インド・インフラ株式オープン インドのインフラ関連株式の中から銘柄を厳選 32.49% 46.27% 17.30
2 トルコ株式オープン(愛称:メルハバ) 収益性、成長性、安定性などを総合的に勘案して、トルコ株式を選別 77.64% 40.70% 33.79
3 メキシコ株式ファンド メキシコの上場企業または同国で主な事業を展開する企業の株式 35.68% 35.71% 22.81
4 ベトナム・ロータス・ファンド(愛称:ロータス) ベトナム株式、世界各国の取引所に上場しているベトナム関連企業の株式 5.34% 27.47% 23.62
5 イーストスプリング・インドネシア株式オープン インドネシアの企業の株式または株式関連証券 2.60% 23.50% 14.13
6 ダイワ・ブラジル株式ファンド ブラジル株式に投資し、ボベスパ指数(円換算)を上回る投資成果をめざす 12.21% 20.06% 26.38
7 フィリピン株式ファンド フィリピンの上場企業または同国において主な事業を展開する企業の株式 16.26% 12.19% 10.96
8 損保ジャパン拡大中国株投信 中国、香港及び台湾の株式に投資 4.02% 3.61% 21.07
参考 SBI・V・S&P500インデックスファンド(愛称:SBI・V・S&P500) S&P500インデックスファンド 23.54% 23.59% 17.24

※ウエルスアドバイザーのNISA成長投資枠対象一覧(10月2日発表時点)等をもとにSBI証券作成(データは9月末基準)
※国際株式の中国/インド/ブラジル/エマージング・単一国のカテゴリーから各単一国の3年リターン1位のファンドを表示(SBI証券取り扱い)
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません

各国 3年リターン上位ファンドの特徴は?

1位となったHSBC インド・インフラ株式オープンは、インドのインフラ関連株式に投資しています。組入上位銘柄は、建設エンジニアリング大手のラーセン・アンド・トゥブロ、インド国営火力発電公社、インド石油天然ガス公社などとなっており、組入銘柄数は45銘柄となっています(※)。インドのインフラ関連株式に投資しているファンドはモディ政権による大型インフラ投資計画の推進という追い風もあって3年で好成績を上げているファンドが多いですが、このファンドはインド株式ファンドの中でも3年で抜群の実績を上げています。なお、値動きのブレを示す標準偏差(1年)はS&P500インデックスファンドとほとんど変わりません。

2位のトルコ株式オープン(愛称:メルハバ)は、収益性、成長性、安定性などを総合的に勘案して、選別したトルコ株式に投資しています。組入上位銘柄は航空会社のターキッシュエアラインズ、トルコ石油精製所、鉄鋼会社のエレグリ・デミル・ベ・セリク・ファブリカラールなどとなっており、組入銘柄数は40銘柄です(※)。通貨トルコリラは高水準のインフレによって対円で大きく下落していますが、イスタンブール100指数は大幅上昇となっており、組入銘柄の株価大幅上昇が好成績につながっています。標準偏差が大きいのが特徴で、成長投資枠対象のトルコ株式ファンドはこのファンド1本のみとなっています。

3位のメキシコ株式ファンドは、メキシコの上場企業または同国で主な事業を展開する企業の株式に投資しています。組入上位銘柄は、大手セメントメーカーのセメックス、大手金融会社のグルポ・フィナンシエロ・バナメックス、鉱山会社のグルポ・メヒコなどとなってており、組入銘柄数は13銘柄です(※)。3年で好成績の要因は株式の上昇よりも通貨メキシコペソの上昇が大きかったと予想されます。成長投資枠対象のメキシコ株式ファンドはこのファンド1本のみとなっています。

4位のベトナム・ロータス・ファンド(愛称:ロータス)は、ベトナム株式および世界各国の取引所に上場しているベトナム関連企業の株式に投資しています。組入上位銘柄はサイゴン商信株式商業銀行、ソフトウェア企業のFPTコーポレーション、宝飾品大手のフーニュアン・ジュエリーなどとなっており、組入銘柄数は68銘柄です(※)。ベトナム株式ファンドの中で1年では低迷していますが、3年では好成績です。

5位のイーストスプリング・インドネシア株式オープンは、インドネシアの企業の株式または株式関連証券に投資しています。組入上位銘柄は、インドネシア最大級の国営商業銀行のバンク・マンディリ、最大手通信会社のテルコム・インドネシア、中小企業向け融資に強い商業銀行のバンク・ラヤット・インドネシアなどとなっており、組入銘柄数は26銘柄です(※)。3年以上実績のあるSBI証券取り扱いのインドネシア株式ファンドは1本のみとなっています。インドネシアの株価指数や通貨インドネシアルピアが相対的に安定していることから標準偏差(1年)はS&P500インデックスファンドよりも小さくなっています。

6位のダイワ・ブラジル株式ファンドは、ブラジル株式に投資し、ボベスパ指数(円換算)を上回る投資成果をめざすファンドです。組入上位銘柄は、総合資源開発企業のヴァーレ、個人、法人向けの総合金融サービスを提供しているイタウ・ウニバンコ・ホールディング、石油会社のペトロブラスなどとなっており、組入銘柄数は52銘柄となっています(※)。ブラジル株式ファンドは他にも3年好成績のファンドがありますが、これらは成長投資枠対象ファンドとなっていないため、このファンドが1位となっています。

7位のフィリピン株式ファンドは、フィリピンの上場企業または同国において主な事業を展開する企業の株式に投資しています。組入上位銘柄は港湾運営会社のインターナショナル・コンテナ・ターミナル・サービス、フィリピン最大のコングロマリットであるアヤラ・コーポレーション、大手不動産会社のSMプライム・ホールディングスなどとなっており、組入銘柄数は22銘柄です(※)。フィリピンの株価指数や通貨フィリピンペソが相対的に安定していることから標準偏差(1年)が最も小さいファンドになっています。

8位の損保ジャパン拡大中国株投信は、中国、香港及び台湾の株式に投資しています。組入上位銘柄は台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング、テンセント、アリババなどとなっており、組入銘柄数は49銘柄です(※)。直近3年間では中国株ファンドが揃って不振でしたが、このファンドは堅調だった台湾株の構成比が高かったことから中国株ファンドの中では相対的に好成績となったと考えられます。

単一国の新興国株式ファンドは、インドが人気と実績でトップといえますが、インドに続く候補としては、経済見通しからはフィリピン、インドネシア、ベトナムを取り上げます(図表2)。その中でもインドネシアが、①世界第4位の人口(約2.8億人)、②中間所得層の増加による消費拡大、③エネルギー・農産物などの資源が豊富な国、といった中長期的な経済成長の原動力を持つことから投資妙味が高いと考えます。インドネシア株式に投資をするなら、5位のファンドと同じ運用手法であるイーストスプリング-イーストスプリング・インドネシア株式ファンド(資産成長型)(愛称:+αインドネシア)もあり、このファンドも選択肢となります。SBI証券取り扱いの成長投資枠対象のインドネシア株式ファンドは2本に限定されます。

インド、中国、ベトナム以外の単一国の新興国株式ファンドは、直近時点では成長投資枠としての申請がまだ少ない印象です。より多くの単一国の新興国株式ファンドが成長投資枠対象として申請されることによって、新NISAでの分散投資の選択肢が広がっていくことが期待されます。

(※)個別銘柄の取引を推奨するものではありません。組入銘柄の情報は2023年9月末基準。

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