米長期金利は2007年以来の高水準 新NISAで買える10年好成績の債券ファンドは?

米長期金利は2007年以来の高水準 新NISAで買える10年好成績の債券ファンドは?

投資情報部 川上雅人

2024/03/18

米長期金利は2007年以来の高水準へ

12日に発表された2月の米消費者物価指数は前年同月比で3.2%の上昇となり、市場予想の同+3.1%を上回りました。14日に発表された2月の米生産者物価指数も市場予想を上回る伸びを示し、インフレの鎮静化には時間がかかるとの見方が強まりました。市場では米連邦準備理事会(FRB)による利下げ開始は早くても6月という見方が大勢となり、一部では利下げ開始は7月以降になるとの見方も出ています。

今年の利下げ開始時期や今後の利下げの回数を巡る思惑などで米長期金利は足元上昇していますが、金融政策の方向性としては、当面は米政策金利の横ばいが続き、いずれは利下げが始まる見通しです。米長期金利は他国と比べて下がりにくい(債券価格は上がりにくい)環境ですが、欧州よりも金利が高くインカム面で魅力があると考えられ、米国を中心とした外国債券への投資は、中長期の視点からリスクを抑えた運用手法として有効と考えます。

図表1で過去約20年間の米政策金利と米10年国債利回り(長期金利)を示しました。3月14日時点の長期金利(4.29%)は2007年以来の高水準となっており、低金利が続く日本の投資家にとっては魅力的な投資対象といえます。

このような環境から、今回は2021年以降の金利上昇による債券価格の下落という逆風を経験しながら長期10年で好成績を上げている債券ファンドに着目します。SBI証券取り扱いで新NISAで買える10年好成績の債券ファンドは図表2となっています。

10年リターンで1位から3位までは、米国ハイイールド債券のファンドです。ハイイールド債券とは利回りが高く信用格付が低い(BB以下の)債券のことです。4位と5位は同じマザーファンドに投資している米ドル建ての新興国債券ファンドで、6位は様々な種類の債券に投資しているマルチセクターの債券ファンドとなりました。特に直近3年間で円安ドル高が進んだため、米ドル建て債券のウエイトが高いファンドが上位となりました。

図表1 米政策金利と米長期金利の推移 (2004年1月~2024年3月* 月末値)

図表2 新NISAで買える10年好成績の債券ファンド

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
1年
リターン
3年
リターン
(年率)
5年
リターン
(年率)
10年
リターン
(年率)
ポート
フォリオ
最終利回り
10年
標準偏差
1 フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド(資産成長型)D(為替ヘッジなし) 米ドル建て高利回り事業債(ハイ・イールド債券)を中心に分散投資 19.75% 14.94% 10.31% 7.95% 7.3% 10.45
2 みずほUSハイイールド(年1回決算型)為替ヘッジなし 米国の米ドル建てのハイイールド債券を主要投資対象 20.72% 11.87% 9.36% 7.34% 7.83% 10.19
3 米国短期ハイ・イールド債券オープン 主に米国企業の発行する米ドル建ての短期ハイ・イールド債券に投資 21.35% 14.90% 9.42% 6.60% 9.0% 8.88
4 エマージング・ソブリン・オープン(資産成長型)(愛称:エマソブN) 米ドル建ての新興国のソブリン債券および準ソブリン債券を主要投資対象 20.47% 8.27% 6.04% 6.27% 11.1% 9.42
5 エマージング・ソブリン・オープン(1年決算型) 米ドル建ての新興国のソブリン債券および準ソブリン債券を主要投資対象 20.45% 8.26% 6.00% 6.22% 11.1% 9.42
6 フィデリティ・ストラテジック・インカム・ファンド(資産成長型)Dコース(為替ヘッジなし)(愛称:悠々債券) 米国国債・政府機関債、米国高利回り社債、先進国債券(除く米国)およびエマージング債券を主要な投資対象 16.90% 10.34% 6.91% 5.46% 5.60% 7.73
参考 <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国債券インデックスファンド FTSE世界国債インデックス(除く日本、円換算)に連動する投資成果をめざす 14.77% 5.40% 4.85% 3.28% 3.86% 6.48
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10年好成績の債券ファンドの特徴は?

1位のフィデリティ・USハイ・イールド・ファンド(資産成長型)D(為替ヘッジなし)は、米ドル建て高利回り事業債(ハイ・イールド債券)を中心に分散投資しているファンドです。ハイイールド債券は着実に積み上がる高利回りの金利収入によって、投資期間が長期になるほど良好な投資成果が期待できます。当ファンドはハイイールド債券を中心に634銘柄に分散投資することで信用リスク(デフォルトリスク)を分散し、ポートフォリオの最終利回りは7.3%となっています。SBI証券が厳選した「長期投資×好実績」ファンドのSBIセレクト(SBIプレミアムセレクト)のファンドとなっています(SBIセレクト・SBIプレミアムセレクトの詳細はこちら)。

2位のみずほUSハイイールド(年1回決算型)為替ヘッジなしは、主に米国の米ドル建てのハイイールド債券に投資するファンドで、運用会社はアセットマネジメントOneですが、運用の指図は米国の独立系運用会社であるロード・アベット社が行っています。外国債券620銘柄に分散投資しており、ポートフォリオの利回りは7.83%となっています。

3位の米国短期ハイ・イールド債券オープンは、主に米国企業の発行する米ドル建ての短期ハイ・イールド債券に投資しているファンドで、運用会社はSBI岡三アセットマネジメントですが、実際の運用は米国の資産運用会社であるヴォヤ・インベストメント・マネジメント・カンパニー・エルエルシーが行っています。組入銘柄数は85銘柄で、償還までの期間が短い短期のハイイールド債券の利回りが魅力的な水準にあることに加えて銘柄選定力により最終利回りは9.0%となっています。高利回りを背景として1年リターンでは6ファンドの中で最も好パフォーマンスとなっています。

4位と5位は、エマージング・ソブリン・オープン(資産成長型)(愛称:エマソブN)とエマージング・ソブリン・オープン(1年決算型)です。同じマザーファンドに投資しているファンドで決算も同じ年1回のファンドですが、前者が分配金実績がなく、後者が分配金実績のあるファンドとなっています。48ヵ国の米ドル建ての新興国債券に分散投資しており、最終利回りは11.1%となっています。最終利回りが高いのは、償還の近いスリランカ債券の利回りが極端に高くなっていることによる特殊要因であり、3月末の最終利回りは8%程度に低下するのではないかと予想されます。

6位のフィデリティ・ストラテジック・インカム・ファンド(資産成長型)Dコース(為替ヘッジなし)(愛称:悠々債券)は、米国国債・政府機関債、米国高利回り社債、先進国債券(除く米国)およびエマージング債券など860銘柄に分散投資しているSBIセレクトのファンドです。相対的に利回りの低い、先進国債券(除く米国)や米国国債・政府機関債の構成比が5割近くとなっていることから、他のファンドと比べて最終利回りが5.6%と低くなっていますが、値動きの振れ幅を示す標準偏差(10年)は6ファンドの中で最も小さくなっています。

これらの6ファンドは、図表2で参考として表示している先進国債券インデックスといえるFTSE世界国債インデックスに連動をめざすファンドと比較して、着実に積み上がる高利回りの金利収入で長期で高いリターンを上げています。外国債券ファンドへの投資はインデックスファンドだけでなく、相対的に高い利回りが期待できるアクティブファンドの活用も有効といえます。

債券ファンドの中でリスクを抑えた運用ならフィデリティ・ストラテジック・インカム・ファンド(資産成長型)Dコース(為替ヘッジなし)(愛称:悠々債券)が選択肢に、相対的に高い利回りの獲得を狙うならフィデリティ・USハイ・イールド・ファンド(資産成長型)D(為替ヘッジなし)、米国短期ハイ・イールド債券オープンが選択肢になると考えます。

(※)ファンドの組入情報は、1位、3位、6位のファンドが1月末基準、それ以外のファンドは2月末基準。

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