S&P500の下落局面 大統領選 トランプ氏優勢で上昇したファンドは?

S&P500の下落局面 大統領選 トランプ氏優勢で上昇したファンドは?

投資情報部 川上雅人

2024/08/05

S&P500の下落局面 大統領選 トランプ氏優勢で上昇したファンドは?

トランプ前大統領への銃撃事件が起きた7月13日以降、大統領選でのトランプ氏優勢が報道されたことで、株式市場では「トランプ・トレード」といわれる取引が強まりました。
トランプ・トレードとは、トランプ氏が推進する業種が買われ、逆風が予想される業種が売られるという動きです。具体的には金融やエネルギー、ヘルスケアなどの業種に資金がシフトする一方、米国の半導体ビジネスを台湾が奪ったと発言していていることから、半導体関連株などのハイテク株が軒並み下落しました。
こうした動きにより、7月12日から7月26日までの2週間の米国株価指数の騰落率は、ハイテク株のウエイトが高いNASDAQ総合が▲5.66%の大幅下落、S&P500も▲2.78%となった一方で、金融やエネルギーのウエイトが相対的に高いNYダウは+1.47%となりました。
こうした環境下で7月の国際株式ファンドのパフォーマンスをチェックします。直近1ヵ月(6/28~7/31)のリターンでは、S&P500インデックスファンドはS&P500の下落に加えて、円高ドル安が進んだことでもあって▲6.13%となりました(図表1)。なお、投資信託の基準価額の計算に使われるドル円(TTM)は▲5.36%でした。トランプ氏はドル安志向のため円高ドル安傾向もトランプ・トレードの1つと考えられます。
そのような中で、1ヵ月リターン上位ファンドを見ると、1位のマニュライフ・米国銀行株式ファンド(愛称:アメリカン・バンク)は+14.76%の大幅上昇、2位のUSマイクロキャップ株式ファンドは+6.69%、3位のiTrustインカム株式(為替ヘッジあり)は+5.65%、4位のピクテ・バイオ医薬品ファンド(1年決算型)円コースは+4.85%、5位のeMAXIS Neo 遺伝子工学は+4.81%と堅調でした。円高ドル安の影響を受けにくい為替ヘッジありの2ファンドが上位となりましたが、為替ヘッジなしのファンドである1位、2位、5位のファンドは円高ドル安の逆風を乗り越えて上昇した金融株や小型株、ヘルスケア株のファンドです。
足元の米国株はもみ合い相場となってトランプ・トレードは一服しています。今後の大統領選挙は、バイデン大領領が撤退しハリス副大領領が後継となって、近日中に副大統領候補を指名する見通しであることから、今後の政策論戦次第で民主党の巻き返しも予想されます。仮にトランプ氏の大領領選勝利を予想するなら、7月上昇したファンドへの分散投資が今後も有効となるかもしれません。
以下、これらのファンドの特徴についてコメントします。

図表1 新NISA対象・国際株式ファンド 1ヵ月リターンランキング

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
*1ヵ月
リターン
1年
リターン
3年
リターン
(年率)
1年
標準偏差
1 マニュライフ・米国銀行株式ファンド(愛称:アメリカン・バンク) 米国の銀行・金融機関の株式に投資 14.76% 32.49% 8.38% 24.26
2 USマイクロキャップ株式ファンド 米国企業の中から高い業績成長が見込まれる超小型企業の株式 6.69% 22.87% 12.72% 16.17
3 iTrustインカム株式(為替ヘッジあり) 主に先進国の高配当公益企業の株式に投資、為替ヘッジあり 5.65% -4.19% -0.85% 13.94
4 ピクテ・バイオ医薬品ファンド(1年決算型)円コース 主に世界のバイオ医薬品関連企業の株式に投資、為替ヘッジあり 4.85% 0.68% -6.84% 18.94
5 eMAXIS Neo 遺伝子工学 日本を含む世界各国の遺伝子工学関連企業の株式 4.81% 10.99% -10.99% 34.62
参考 SBI・V・S&P500インデックス・ファンド(愛称:SBI・V・S&P500) S&P500インデックスファンド -6.13% 40.19% 24.47% 12.47
参考 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 日本を含む全世界株式インデックスファンド -5.35% 34.39% 19.60% 11.08
  • ※SBI証券取り扱い・新NISA対象の国際株式カテゴリーで1ヵ月リターン(6/28~7/31)上位ファンドを表示、1ヵ月リターン以外のデータは2024年6月末基準
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません

1ヵ月好成績ファンドの特徴と投資視点は?

1位のマニュライフ・米国銀行株式ファンド(愛称:アメリカン・バンク)は、米国の銀行・金融機関の株式に投資するファンドです。組入上位銘柄はM&Tバンク、JPモルガン・チェース、ハンチントン・バンクシェアーズ、バンク・オブ・アメリカなどとなっており、組入銘柄数は106銘柄です(※)。トランプ政権の掲げる減税や財政出動などの経済政策への期待と金融規制の緩和が予想されることから金融株が恩恵を受けるとみられています。また、将来の政策金利の引き下げとインフレによる長期金利の高止まりによる長短金利差の拡大(短期の金利が低下し、長期の金利が上昇すること)は金融株の収益を向上させることが期待されます。
2位のUSマイクロキャップ株式ファンドは米国企業の中から高い業績成長が見込まれる超小型企業(一般的に時価総額10億米ドル未満)の株式に投資するファンドです。組入上位銘柄は超小型企業のため名の知れた企業はなく、組入銘柄の業種は分散されており、組入銘柄数は120銘柄です(※)。大統領選が行われる年は超小型バリュー株は追い風を受けやすくなる傾向があることや、これまで注目されてきた大型ハイテク株に大きく出遅れ割安に放置されている超小型バリュー株へ投資資金が向かう可能性は十分にあると運用会社は考えているようです。また、米国の利下げ見通しも小型株には追い風といえます。
3位のiTrustインカム株式(為替ヘッジあり)は主に先進国の高配当公益企業の株式に投資する為替ヘッジありのファンドです。高配当公益企業の株式は景気動向に業績が左右されにくいため、足元の不透明な投資環境下で上昇しました。しかし、米国と日本の短期金利差または欧州と日本の短期金利差が為替ヘッジコストとしてかかることや先進国の高配当公益企業のパフォーマンスがそれほど良くなかったことから、3年ではほとんどリターンが獲得できていません。
4位のピクテ・バイオ医薬品ファンド(1年決算型)円コースは、主に世界のバイオ医薬品関連企業の株式に投資しており、為替ヘッジありのファンドです。バイオ医薬品株を含むヘルスケア株は足元では上昇していますが、3年間では株価が低迷していることに加えて、高水準の為替ヘッジコストなどからマイナスリターンとなっています。
5位のeMAXIS Neo 遺伝子工学は、日本を含む世界各国の遺伝子工学関連企業の株式に投資しているファンドで、4位のファンドと投資対象の業種は同じといえます。このファンドは小型株の割合が高いこともあって3年リターンではかなり苦戦しています。直近1ヵ月の上昇は小型株の巻き返しによるものと予想されます。
1ヵ月好成績ファンドは、インデックスファンドとの比較で長期で好成績となっているファンドはそれほど多くありません。
S&P500インデックスファンドなどからの分散投資の候補としては、マニュライフ・米国銀行株式ファンド(愛称:アメリカン・バンク)USマイクロキャップ株式ファンドの2ファンドと考えます。
これらの2ファンドはインデックスファンドと値動きが異なるため(図表2)、トランプ・トレードが強まる局面などで優位性を発揮することが期待されます。
(※)個別銘柄の取引を推奨するものではありません。組入銘柄の情報は2024年6月末基準。

図表2 1ヵ月好成績ファンドとインデックスファンドのパフォーマンス比較 (2023年7月末~2024年7月末 2023年7月末=100)

  • ※QUICKデータをもとにSBI証券作成(ファンド名は愛称または略称)
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません

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