トランプ関税ショック後の反発力に注目!? 6ヵ月好成績ファンドは?

投資情報部 川上雅人
2025/09/16
トランプ関税ショック後の反発力に注目!?
2025年のマーケットを振り返ると、3月下旬から4月上旬にかけて米国の関税政策に対する不透明感、いわゆるトランプ関税ショックなどから世界の株式市場は大幅下落となりましたが、その後は米関税政策に対する悲観論の後退や米利下げ観測の高まりなどから回復基調となっています。米国の代表的な株価指数であるS&P500は6月下旬に史上最高値を更新しました。日本の株式市場の全体の値動きを表すTOPIXについても7月下旬に史上最高値を更新し、8月は多くの国の株価指数が上昇基調を継続する展開となりました。
年初来の代表的な株価指数や為替レートの値動きを比較したものが図表1となります。
トランプ関税ショックで年初からの下落が大きかった日米の株価指数は反発力が継続しました。一方で投資信託の基準価額の計算に使われるドル円TTMは、トランプ関税ショックによる下落後の反発は限定的だったことが分かります。
こうした投資環境を踏まえて、今回は2025年の2月末から8月末までの6ヵ月リターンに着目して、大きく上昇したファンドをチェックします。マーケットに大きなショックが起こった直後は、金融市場全体が混乱し、ほぼ全ての株式が大幅下落となりますが、その後の反発局面は今後の業績拡大期待が大きい銘柄ほど大幅に上昇する傾向があります。こうした点を踏まえると、直近の6ヵ月好成績ファンドは業績拡大期待が大きい銘柄を組み入れているファンドとして注目に値すると考えます。
SBI証券取り扱いのNISA・成長投資枠で買える6ヵ月好成績ファンドの一覧が図表2となります。以下、6ヵ月好成績ファンド11本の特徴についてコメントします。
図表1 年初来の株価指数、為替レートの比較 (2024年12月末~2025年9月10日 2024年12月末=100)

- ※QUICKデータをもとにSBI証券作成
図表2 NISAで買える トランプ関税ショック後に大きく上昇した 6ヵ月好成績ファンド
順位 | ファンド名 | 特徴 (投資対象) |
6ヵ月 リターン |
1年 リターン |
3年 リターン (年率) |
3年 標準偏差 (年率) |
1 | カレラ 日本小型株式ファンド | 日本の小型株式を投資対象とし、事業内容、成長性、収益性、財務健全性などを勘案して銘柄を厳選 | 47.09% | 43.74% | 25.09% | 16.42 |
2 | ブラックロック・ゴールド・ファンド | 南アフリカ・オーストラリア・カナダ・アメリカ等の金鉱企業の株式を中心に投資 | 46.43% | 59.33% | 38.65% | 25.95 |
3 | インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド(愛称:世カエル) | 日本を含む世界各国のブロックチェーン関連株式に投資するインデックスファンド | 43.28% | 60.08% | 29.18% | 36.13 |
4 | 厳選ジャパン | 今後高い利益成長が期待できる20銘柄程度の国内株式に厳選して投資 | 38.79% | 44.89% | 17.51% | 12.35 |
5 | SBI日本小型成長株選抜ファンド(愛称:センバツ) | 「次代を拓く革新高成長企業」に厳選投資 | 38.59% | 24.39% | 2.61% | 19.25 |
6 | グローバル・メタバース株式ファンド | 世界の上場株式の中からメタバースに関連するビジネスを行う企業の株式に投資 | 35.99% | 84.70% | 44.21% | 29.22 |
7 | グローバル・スペース株式ファンド(年2回決算型) | 日本を含む世界の株式の中から宇宙関連ビジネスを行なう企業およびその恩恵を受ける企業の株式に投資 | 35.83% | 71.96% | 22.95% | 26.02 |
8 | デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド(愛称:ゼロ・コンタクト) | 今後の成長が期待されるゼロ・コンタクト・ビジネス(非接触型ビジネス)関連企業の株式に投資 | 35.00% | 89.71% | 43.01% | 36.49 |
9 | 日本新興株オープン | 新興企業の株式の中から、中長期的に成長が期待できる業績の回復が見込める企業の株式に投資 | 33.27% | 27.50% | 10.81% | 18.87 |
10 | 東京海上・宇宙関連株式ファンド(為替ヘッジなし) | 成長が期待される日本を含む世界の宇宙関連企業の株式等に投資 | 33.22% | 60.91% | 31.69% | 18.69 |
11 | eMAXIS Neo クリーンテック | 日本を含む世界各国のクリーンテクノロジー関連企業の株式に投資するインデックスファンド | 31.39% | 25.20% | -7.81% | 32.59 |
参考 | eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX) | TOPIXインデックスファンド | 16.12% | 16.07% | 18.91% | 11.10 |
参考 | eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(愛称:オルカン) | 全世界株式(日本を含む)インデックスファンド | 10.73% | 19.04% | 20.01% | 14.19 |
参考 | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | S&P500インデックスファンド | 9.42% | 19.23% | 21.48% | 16.80 |
- ※NISA・成長投資枠対象ファンド(SBI証券ネット取り扱い)を6ヵ月リターン順に表示(2025年8月末基準)
- ※同じ投資助言会社による同一運用方針のファンド、同じマザーファンドに投資しているファンドは6ヵ月リターンの最上位のみを表示
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません
6ヵ月好成績ファンドの特徴は?
1位のカレラ日本小型株式ファンドは、日本の小型株式を投資対象とし、事業内容、成長性、収益性、財務健全性などを勘案して銘柄を厳選しているファンドです。組入上位銘柄はダイハツインフィニアース、中北製作所、中国塗料、長野計器、寺崎電気産業などとなっており、組入銘柄数は30銘柄です(※)。成長シナリオに沿った小型株の銘柄選定が特徴のファンドです。
2位のブラックロック・ゴールド・ファンドは、南アフリカ・オーストラリア・カナダ・アメリカ等の金鉱企業の株式に投資を行うファンドです。金鉱株の株価と金価格は長期では同じ方向に動く傾向が見られ、金価格の上昇を受けて1年、3年でも好成績となっていますが、金価格との連動を目指すファンドと比べて、値動きの振れ幅を示す標準偏差が大きいのが特徴といえます。
3位のインベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド(愛称:世カエル)は、日本を含む世界各国のブロックチェーン関連株式に投資するファンドで、コインシェアーズ・ブロックチェーン・グローバル・エクイティ・インデックス(税引後配当込み、円換算ベース)の動きに連動する投資成果を目指しています。ブロックチェーンとはブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、鎖(チェーン)のように連結して保管する金融取引履歴などで利用される技術のことで、ほとんどの暗号資産でブロックチェーン技術が使われています。組入上位銘柄は、デジタル資産と暗号資産取引のインフラストラクチャを手掛けるギャラクシー・デジタル、大手暗号資産取引プラットフォーム企業のコインベース・グローバル、オーストラリアに拠点を置くビットコインマイニング企業のアイレン、北米最大級の規模を誇るビットコインマイニング企業のコア・サイエンティフィック、日本のメタプラネットなどとなっており、組入銘柄数は47銘柄です(※)。ビットコイン価格の上昇などから1年でも好成績ですが、標準偏差はかなり大きくなっています。
4位の厳選ジャパンは、優れた経営者の質・ビジョン、新しいビジネスモデル等により企業価値の増大が期待できる企業の中から、20銘柄程度に厳選して投資しているファンドです。組入上位銘柄はフジクラ、東宝、関電工、東京エレクトロン、日本電気などとなっており、組入銘柄数は20銘柄です(※)。国内株式ファンドの中で1年リターンはトップクラスの実績です。
5位のSBI日本小型成長株選抜ファンド(愛称:センバツ)は、エンジェルジャパン・アセットマネジメントによる企業調査力を活かして有望企業を厳選しているファンドです。組入上位銘柄は、守谷輸送機工業、ワンキャリア、スマートドライブ、INTLOOP、網屋などとなっており、組入銘柄数は47銘柄です(※)。成長性の高い新興企業が上場しているグロース市場を中心に小型株の組み入れが特徴のファンドです。2024年までは苦戦していましたが、直近6ヵ月で急速に巻き返しています。
6位のグローバル・メタバース株式ファンドは、世界の上場株式の中から、メタバースに関連するビジネス(バーチャル世界・インフラストラクチャ・次世代インターネットの基幹技術等)を行う企業の株式に投資するファンドです。メタバースとは、「メタ(超越)」と「ユニバース(宇宙)」を組み合わせた造語で、一般にデジタル上に構築された3次元のバーチャル世界および関連サービスを指します。組入上位銘柄は、オンライン・エンターテイメント・プラットフォームを展開するロブロックス、オンライン証券のロビンフッド・マーケッツ、コインベース・グローバル、メタ・プラットフォームズ、リアルタイム3Dコンテンツの開発・運営・収益化を支えるプラットフォームを提供するユニティ・ソフトウェアなどとなっており、組入銘柄数は39銘柄です(※)。1年リターンはNISA対象の全ファンドでトップクラスの実績ですが、標準偏差は大きくなっています。
7位のグローバル・スペース株式ファンド(年2回決算型)は、日本を含む世界の株式の中から宇宙関連ビジネスを行なう企業およびその恩恵を受ける企業の株式に投資しているファンドです。組入上位銘柄は、小型ドローンを米軍向けに提供しているクラトス・ディフェンス&セキュリティー、衛星打ち上げや軌道上での管理サービスなどを手掛けるロケット・ラブ、小型無人航空機大手のエアロバイロンメント、情報分析ソフトウェアを開発するパランティア・テクノロジーズ、米国の衛星通信会社のイリジウム・コミュニケーションズなどとなっており、組入銘柄数は30銘柄です(※)。
8位のデジタル・トランスフォーメーション株式ファンド(愛称:ゼロ・コンタクト)は、今後の成長が期待されるゼロ・コンタクト・ビジネス(非接触型ビジネス)関連企業の株式に投資しているファンドです。組入上位銘柄は、ロブロックス、パランティア・テクノロジーズ、ロビンフッド・マーケッツ、マルチチャネル・プラットフォームを提供しているショッピファイ、コインベース・グローバルなどとなっており、組入銘柄数は43銘柄です(※)。6位のファンドと組入上位銘柄は似ており、1年リターンはNISA対象の全ファンドでトップクラスの実績ですが、標準偏差はかなり大きくなっています。なお、6位、7位、8位のファンドは、銘柄選定において米アーク社の助言を受けています。
9位の日本新興株オープンは、グロース市場およびスタンダード市場等に上場されている新興企業の株式の中から、中長期的に成長が期待できる企業および業績の回復が見込める企業の株式に投資を行なうファンドです。組入上位銘柄は、グローバルセキュリティエキスパート、霞ヶ関キャピタル、精工技研、AIロボティクス、アズームなどとなっており、組入銘柄数は89銘柄です(※)。
10位の東京海上・宇宙関連株式ファンド(為替ヘッジなし)は、高い技術力や競争力等を持つ宇宙関連企業の株式等に投資しています。組入上位銘柄は、パランティア・テクノロジーズ、ロケット・ラブ、エヌビディア、レアアース生産企業のMPマテリアルズ、光通信と産業用レーザー製品が主力の米国企業であるルメンタム・ホールディングスなどとなっており、組入銘柄数は64銘柄です(※)。様々な業種の宇宙関連株式に投資していることから、7位の宇宙関連ファンドと比べると標準偏差は小さくなっています。
11位のeMAXIS Neo クリーンテックは、日本を含む世界各国のクリーンテクノロジー関連企業の株式に投資を行うファンドで、S&P Kensho Cleantech Index(配当込み、円換算ベース)の値動きに連動する投資成果を目指しています。組入上位銘柄は、米国の電力機器メーカーのブルーム・エナジー、中国・上海を拠点としてポリシリコンを手掛けるダクォ・ニュー・エナジー、発電設備を提供している米国のGEベルノバ、発電機の設計・製造を手掛ける米国のゼネラック・ホールディングス、カナダを拠点として燃料電池製品の製造等を手掛けるバラード・パワー・システムズなどとなっており、組入銘柄数は30銘柄です(※)。2024年までは苦戦していましたが、直近6ヵ月はAIの普及による電力需要が拡大していることから巻き返しています。標準偏差はかなり大きいファンドです。
上記11ファンドの投資対象は様々に見えますが、①国内株式ファンド(主に中小型成長株)、②成長性の高いテーマ型株式ファンド(メタバース、宇宙、クリーンテック)、③金やビットコインなどの価格上昇の恩恵を受けた株式ファンド、の3つに分類できると考えます。
株式市場の反発継続を期待するなら、図表2にある代表的なインデックスファンドとは値動きが異なるこれらの6ヵ月好成績ファンドを組み合わせて分散投資し、リターンの向上を狙う戦略も有効と考えます。ただし、値動きの振れ幅が大きいファンドが多いため、積立投資などによる時間分散がおすすめといえます。
(※)組入銘柄の情報は2025年7月末基準(5位と9位のファンドのみ8月末基準)。個別銘柄の取引を推奨するものではありません。
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