FRBが9ヵ月ぶりの利下げ再開! オルカンと組み合わせたい債券ファンドは?

FRBが9ヵ月ぶりの利下げ再開! オルカンと組み合わせたい債券ファンドは?

投資情報部 川上雅人

2025/09/22

FRBが9ヵ月ぶりの利下げ再開!

米連邦準備制度理事会(FRB)は9月17日、連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.00~4.25%とし、9ヵ月ぶり(6会合ぶり)の利下げを決定しました。FOMCは同日発表した経済見通しで年内にさらに2回の利下げを見込んでいます。
FRB議長のパウエル氏はこれまで、トランプ氏の関税政策が物価高(インフレ)をもたらすことを警戒し、利下げには慎重姿勢でしたが、米国の雇用情勢は減速が鮮明になっており、利下げを通じた景気の下支えを優先させることとなりました。
今回の利下げと今後の利下げ見通しは想定通りではありましたが、足元の米国債券市場では利下げ加速を織り込んでいたため、17日の米国長期金利(10年国債利回り)は上昇(債券価格は下落)となりました。

図表1では過去20年間の米政策金利と米国10年国債利回りの推移を示しました。関税政策によるインフレへの影響はまだ見通せないものの、中長期的な米政策金利の方向性としては、中立金利(緩和でも引き締めでもない政策金利の水準)と推定される3.0%~3.5%に近づくことが予想されます。こうした前提に立てば、米長期金利は現状水準からは大きくは上昇せず、落ち着いた動きとなることが期待されるため、米国債券投資の好機と考えられます。
そこで今回は、米国の金利上昇による債券価格の下落という逆風の3年間でも好成績を上げている海外債券ファンドに着目します。SBI証券取り扱いでNISAで買える3年好成績の債券ファンドは図表2となっています。

図表1 米政策金利と米国10年国債利回りの推移 (2005年9月~2025年9月* 月末値)

  • ※QUICKデータをもとにSBI証券作成
    * 2025年9月は17日のデータ

図表2 NISAで買える 3年好成績 債券ファンド

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
1年
リターン
3年
リターン
(年率)
5年
リターン
(年率)
3年
標準偏差
(年率)
1 欧州ハイ・イールド債券オープン(1年決算型)ユーロコース ユーロ建て高利回り社債(ハイ・イールド債券)等に投資、ユーロ建て資産について為替ヘッジを行わない 11.59% 13.57% 9.53% 8.50
2 My SMT 新興国債券インデックス(ノーロード) 新興国の現地通貨建て債券に投資を行ない、新興国の債券インデックスに連動する投資成果を目指す 10.51% 11.03% - 7.66
3 エマージング・ソブリン・オープン(1年決算型) エマージング・カントリーの米ドル建てソブリン債券および準ソブリン債券を投資対象 8.55% 10.03% 7.27% 9.46
4 フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド(資産成長型)D(為替ヘッジなし) 米ドル建て高利回り事業債(ハイ・イールド・ボンド)を中心に分散投資 9.47% 9.86% 12.54% 10.84
5 フランクリン・テンプルトン・ブラジル国債ファンド(年2回決算型) 主としてブラジル・レアル建てのブラジル国債に投資 15.39% 9.64% 13.52% 11.44
6 野村インデックスファンド・米国ハイ・イールド債券(愛称:Funds-i フォーカス 米国ハイ・イールド債券) 米ドル建てのハイ・イールド社債を投資対象、ハイ・イールド社債インデックスに連動する投資成果を目指す 7.86% 9.62% 10.19% 11.05
7 グローバル変動金利債券ファンド 円ヘッジなしコース(愛称:ヘンリー) 主に各国政府・企業等が発行する外貨建て(米ドル建て、ユーロ建て等)の変動金利債券等に分散投資 8.61% 9.53% 10.21% 9.90
参考 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(愛称:オルカン) 日本を含む全世界株式インデックスファンド 19.04% 20.01% 19.81% 14.19
  • ※国際債券カテゴリーのNISA・成長投資枠対象ファンド(SBI証券ネット取り扱い)を3年リターン順に表示(2025年8月末基準)
  • ※同一の投資信託証券に投資しているファンド、同じ債券インデックスに連動を目指しているファンドは3年リターンの最上位のみを表示
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません

3年好成績 債券ファンドの特徴は?

1位の欧州ハイ・イールド債券オープン(1年決算型)ユーロコースは、ユーロ建て高利回り社債(ハイ・イールド債券)等に投資し、ユーロ建て資産について為替ヘッジを行わないファンドです。ハイイールド債券部分の実際の運用は、ドイツのDWSインベストメントGmbHが行うアクティブファンドです。ハイ・イールド債券は、債券を発行する企業の信用力が相対的に低いことから主要国の国債よりも相対的に高い利回りとなっており、ポートフォリオの最終利回りは6.2%、平均格付はBBとなっています(※)。信用力が相対的に低い債券はデフォルト(倒産)リスクが高くなりますが、組入銘柄数を増やして1銘柄当たりの組入比率を低くすることで(組入上位10銘柄の構成比は10%未満)、デフォルトによる影響を最小限に抑えて、長期で相対的に高いリターンを上げているファンドといえます。3年間では通貨ユーロの上昇も好パフォーマンスの要因となっています。ハイ・イールド債券に投資していますが、値動きのブレを示す標準偏差が小さくなっています。
2位のMy SMT 新興国債券インデックス(ノーロード)は、新興国の現地通貨建て債券に投資を行ない、JPモルガン・ガバメント・ボンド・インデックス−エマージング・マーケッツ・グローバル・ディバーシファイド(円換算ベース)に連動する投資成果を目指すファンドです。ポートフォリオの最終利回りは6.25%となっており、組入上位国はメキシコ、マレーシア、インドネシア、中国、インド、タイ、ポーランドなどとなっています(※)。各新興国通貨の価格変動の影響を受けますが、多くの国の通貨に分散投資されているため標準偏差が小さくなっています。
3位のエマージング・ソブリン・オープン(1年決算型)は、エマージング・カントリーの米ドル建てソブリン債券および準ソブリン債券を投資対象としているファンドです。2位のファンドとは米ドル建て新興国債券、アクティブファンドという2つの違いがあります。実質的な運用は米国の資産運用会社であるウエリントン・マネージメント・カンパニー・エルエルピーが行っています。ポートフォリオの最終利回りは7.1%で平均格付はBB+となっており、46ヵ国の新興国に分散投資されており、組入上位国はオマーン、ペルー、ルーマニア、メキシコ、ブルガリア、コスタリカ、アルゼンチンなどとなっています。
4位のフィデリティ・USハイ・イールド・ファンド(資産成長型)D(為替ヘッジなし)は、米ドル建て高利回り事業債(ハイ・イールド債券)を中心に投資するアクティブファンドです。ポートフォリオの最終利回りは7.2%、平均格付はBで、組入銘柄数714銘柄となっています。
5位のフランクリン・テンプルトン・ブラジル国債ファンド(年2回決算型)は、主としてブラジル・レアル建てのブラジル国債に投資しており、年2回決算時に収益分配を行っているファンドです。ポートフォリオの最終利回りは11.7%、平均格付はBB+で、組入銘柄数は7銘柄となっています。ブラジル国債は政策金利が高いことから新興国の中でも利回りが相対的に高いのが特徴です。
6位の野村インデックスファンド・米国ハイ・イールド債券(愛称:Funds-i フォーカス 米国ハイ・イールド債券)は、米ドル建てのハイ・イールド社債を投資対象とし、ハイ・イールド社債インデックスに連動する投資成果を目指すファンドです。ポートフォリオの最終利回りは6.5%、平均格付はBで、組入銘柄数は846銘柄です。3年リターンは4位の米国ハイイールド債券のアクティブファンドをやや下回る成績です。
7位のグローバル変動金利債券ファンド 円ヘッジなしコース(愛称:ヘンリー)は、主に各国政府・企業等が発行する外貨建て(米ドル建て、ユーロ建て等)の変動金利債券等に分散投資しているファンドです。変動利付債券とは市場金利に連動して利子が毎回変動する債券のことです。利子が変動することから金利上昇局面などは固定利付債券と比べて価格変動が小さくなる傾向があります。
ポートフォリオの直接利回りは5.1%、平均格付がA+で、組入銘柄数は108銘柄です。直近3年間は米国も欧州も金利上昇局面でしたが、変動利付債券に投資しているため、債券の価格下落を抑えることができた模様です。

上記7ファンドは、米国の金利上昇局面でも相対的に高い債券利回りの積み上げ効果によって良好なパフォーマンスを上げた債券ファンドといえます。また、ユーロ円やドル円、一部の新興国通貨の上昇も追い風となりました。米国の金利低下局面となった場合でも引き続き有望な債券ファンドと考えられます。リスクを抑えた運用を目指すなら、オルカンなどの株式ファンドにこれらの好成績債券ファンドを組み合わせて投資することも選択肢といえます。

なお、海外ETFへの分散投資を通じて、実質的に欧米のパブリック・クレジット投資、プライベート・クレジット投資を行う、SBI オルタナティブ・ハイインカム・セレクト・ファンド(年4回決算型)が2025年9月9日に設定されました。相対的に高い利回りを得ることが可能なファンドといえます。ファンドの詳細は特集ページをご参照ください。

(※)ポートフォリオの情報は1位と4位のファンドが2025年7月末基準、それ以外のファンドは2025年8月末基準。最終利回りおよび直接利回りはファンドの運用利回りを示すものではありません。

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