半導体株▲20%超の急落 1ヵ月で逆行高となったファンドは?

投資情報部 川上雅人
2026/07/27
半導体株、年初来の上昇一服 ― 日米で調整局面入り
今年、NISA成長投資枠で人気を集めてきたテーマの一つが半導体株です。年初来のリターンは他テーマを大きく上回る局面もありましたが、6/22の高値をピークに潮目が変わりました。一見すると半導体株の調整局面に見えますが、その裏では投資家の関心が別のテーマへ移り始める変化も起きていました。
図表1では、年初来の日米半導体株指数のパフォーマンス推移を示しました。
日経半導体株指数は、東京証券取引所に上場する半導体関連企業(製造装置・素材・電子部品メーカーなど)の値動きをまとめた指数です。一方、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は、エヌビディア、ブロードコム、マイクロン・テクノロジーなど米国上場の半導体大手30銘柄で構成される、世界の半導体セクターの体温計とも言える指数です。
両指数を2025年12月末=100として指数化すると、日経半導体株指数は6/22に275まで上昇した後、直近(7/21)では203まで下落し、高値からの下落率は▲26%に達しています。同期間のSOXも207→174と▲16%の下落率となっており、日米ともに半導体株が調整局面入りしていることがわかります。
下落の背景には、AI投資の過熱に対する警戒感や、中国メモリーメーカーの台頭懸念でマイクロン・テクノロジーなどが売られたこと、TSMCなどの好決算を機に利益確定売りが出たことなどが挙げられます。韓国でもサムスン電子やSKハイニックスが過去最高益を発表しながら株価が下落する場面があり、値動きの荒さが目立ちました。年初来急ピッチで上昇してきた反動が、日米韓の半導体株に共通して表れた格好です。
日本の半導体株指数の下落率が米国よりやや大きいのも同様の構図です。年初来、日経半導体株指数はSOXを上回るペースで上昇してきた分、反動もより大きく出ています。実際、日経半導体株インデックスに連動するファンドの騰落率を見ても、直近1ヵ月間で軒並み20%超の下落となっています。
半導体株がこれだけ大きく下落した1ヵ月間で、逆に上昇したファンドはどんな顔ぶれだったのでしょうか。SBI証券ホームページの1ヵ月騰落率(7/21基準)をもとに、NISA成長投資枠対象ファンドの中から上昇率が大きかったものを取り上げます。同じマザーファンドに投資する複数のファンドがある場合は、最上位の1本のみを掲載した一覧が図表2です。それぞれのファンドについて見ていきましょう。
図表1 年初来の日米半導体株指数のパフォーマンス推移 (2025年末=100、2026/7/21まで)
- ※QUICKデータをもとにSBI証券作成
図表2 半導体株調整局面での1ヵ月逆行高ファンドTOP8
| 順位 | ファンド名 | カテゴリー(イメージ) | 1ヵ月 リターン |
年初来 リターン |
1年 リターン |
3年 リターン (年率) |
5年 リターン (年率) |
3年 標準偏差 (年率) |
| 1 | eMAXIS Neo コミュニケーションDX | 通信・DX | 12.94% | 5.98% | 14.31% | 10.36% | - | 23.93% |
| 2 | フューチャー・バイオテック | バイオテック | 11.75% | 11.76% | 59.97% | 18.93% | 14.78% | 18.62% |
| 3 | 東京海上・グローバルヘルスケアREITオープン(年1回決算型) | ヘルスケアREIT | 11.60% | 17.53% | 37.20% | 17.17% | 9.04% | 14.23% |
| 4 | 世界シェールガス株ファンド | エネルギー(シェールガス) | 11.00% | 25.51% | 37.62% | 15.55% | 22.30% | 19.11% |
| 5 | サイバーセキュリティ株式オープン(為替ヘッジなし) | サイバーセキュリティ | 10.44% | 30.95% | 38.23% | 31.27% | 17.54% | 26.45% |
| 6 | グローバル・セキュリティ株式ファンド(年1回決算型) | セキュリティ全般 | 8.93% | 4.24% | 13.21% | 15.39% | 13.27% | 15.74% |
| 7 | たわらノーロード フォーカス フィンテック | フィンテック | 8.85% | -19.70% | -14.59% | 12.16% | 1.87% | 23.21% |
| 8 | シェール関連株オープン | エネルギー(シェール関連株) | 8.72% | 24.12% | 37.47% | 17.45% | 23.17% | 18.96% |
| 参考 | eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(愛称:オルカン) | 全世界株式インデックス | -0.80% | 13.94% | 38.24% | 24.55% | 19.72% | 14.13% |
- ※SBI証券ホームぺージ及びウエルスアドバイザーのデータをもとにSBI証券作成(1ヵ月リターンは2026年7月21日基準、それ以外のデータは2026年6月末基準)
- ※SBI証券で購入可能なNISA/成長投資枠対象ファンド(運用期間3年以上)を1ヵ月リターン順に表示
- ※カテゴリー(イメージ)はファンドの投資対象・特徴を踏まえた本コラム独自の分類であり、ウエルスアドバイザー等の公式なファンドカテゴリーとは異なります
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません
半導体株調整の裏で買われたテーマは?
図表2は、SBI証券で購入可能なNISA成長投資枠対象ファンドを対象に、一定の条件で直近1ヵ月のリターンが高かった順に8ファンドを並べたものです。半導体・テック株が調整する裏側で、様々なテーマのファンドが相対的に上昇したことが見て取れますが、その中身は単なる「出遅れの見直し買い」だけではありません。年初来から実績を積み上げてきた"好調継続組"も混じっており、単なる逆行高ランキングにとどまらない顔ぶれとなっています。
なお、参考として、NISA成長投資枠で人気の高い全世界株式インデックスファンド(オルカン、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))の同期間の1ヵ月リターンは▲0.80%でした。市場平均的な値動きがむしろマイナスとなる中、今回取り上げた8ファンドはいずれも二桁近いプラスとなっており、半導体株調整局面において相対的に堅調な値動きが見られました。
以下では、各ファンドの年初来リターンがこのオルカンを上回っていたか下回っていたかにも触れながら見ていきます。
1位のeMAXIS Neo コミュニケーションDX(+12.94%)は、日本を含む世界のコミュニケーションDX関連企業で構成されるS&P Kensho Enterprise Collaboration Index(配当込み、円換算ベース)への連動をめざして運用されるファンドです。企業コミュニケーションや共同作業支援関連など、デジタル社会を支える企業が投資対象で、サービスナウ、アサナ、アトラシアン、シスコシステムズなど、企業のDXを支えるソフトウェア・サービス企業が上位を占めています(※1)。半導体関連ほど値動きが注目されていなかった分野であり、AI関連銘柄への物色が一巡する中で見直された可能性があります。
2位のフューチャー・バイオテックと3位の東京海上・グローバルヘルスケアREITオープン(年1回決算型)は、創薬・遺伝子治療関連企業、ヘルスケア関連REITにそれぞれ投資するファンドです。金利・景気に左右されにくいディフェンシブ性が評価されました。フューチャー・バイオテックは1年リターンが8ファンド中最高です。
4位の世界シェールガス株ファンドは、米国を中心としたシェールガス関連企業が投資対象です。原油・天然ガス価格という、AI半導体とは異なる値動きの要因を持つため、分散先として意識された可能性があります。
5位のサイバーセキュリティ株式オープン(為替ヘッジなし)は、サイバーセキュリティ関連銘柄が投資対象で、年初来のリターンはオルカンを上回る好調継続組です。生成AIの普及に伴うサイバー攻撃の高度化を背景に、企業のセキュリティ投資需要は底堅いと見られています。3年リターンは8ファンド中最高な一方、3年標準偏差も最も大きく、値動きの振れ幅には留意が必要です。
6位のグローバル・セキュリティ株式ファンド(年1回決算型)は、年初来のリターンがオルカンを下回る出遅れ挽回組です。組入上位にはパロアルト・ネットワークスなどサイバー関連銘柄に加え、環境計測機器や検査・分析機器メーカーも並び、サイバー空間に限らず産業・環境・医療分野の"安全・検知・計測"まで幅広く捉えた「セキュリティ」がテーマです(※1)。5位とはテーマの捉え方が異なるため値動きにも差があり、この1ヵ月でその差が一部縮まった格好です。
7位のたわらノーロード フォーカス フィンテックは、フィンテック関連株指数(Solactive FinTech Index)に連動するファンドです。1年リターンは8ファンド中唯一のマイナス(▲14.59%)でしたが、直近1ヵ月は一転してプラスに転じており、出遅れ感の強さから、見直し買いが入った可能性があります。
8位のシェール関連株オープンは、米国・カナダ・メキシコのシェール関連企業が投資対象で、4位と同じくエネルギー・資源セクターへの関心の高さがうかがえます。
こうして見ると、半導体株の調整局面で買われたファンドは、通信・バイオ・ヘルスケア不動産・エネルギー・サイバーセキュリティ・セキュリティ全般・フィンテックと、投資対象も値動きの背景もそれぞれ異なる幅広いテーマにわたっています。ただし、その中身は一様ではありません。コミュニケーションDX、フューチャー・バイオテック、グローバル・セキュリティ、フィンテックは、年初来のリターンがオルカンを下回っており、出遅れていたテーマがこの1ヵ月で見直された格好です。一方、ヘルスケアREIT、世界シェールガスファンド、サイバーセキュリティ、シェール関連株オープンは、年初来ですでにオルカンを上回るリターンを上げており、もともと堅調だったテーマが、この1ヵ月も相対的に高いリターンを維持した形です。半導体株の調整局面では、"出遅れ挽回"と"好調継続"という異なる2つの流れが同時に起きていたと言えそうです。
※1 組入銘柄の情報は2026年6月末基準。個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
まとめ ― テーマ分散という視点
半導体株は年初来の上昇分を一部吐き出し、日米ともに調整局面入りしました。その裏側では、出遅れていたテーマの上昇と、もともと堅調だったテーマの上昇が並行して進む1ヵ月となりました。
こうしたテーマ間のパフォーマンスの違いは、AI半導体以外の幅広いテーマにも値上がりが広がった動きと読み取れます。ただし、出遅れ挽回組と好調継続組では性質が異なる点には注意が必要です。出遅れ挽回組は、半導体株の調整が一服し物色の重心が再びAI半導体に戻れば、勢いが弱まる可能性があります。一方の好調継続組は、年初来から評価されてきたテーマそのものの強さによるところが大きく、半導体株の動向とは別の要因で値動きが左右されやすいと考えられます。
中でも特に好調継続組として挙げられるのは、ヘルスケアREIT、シェールガス関連2本、サイバーセキュリティです。これらは半導体株の調整という一時的な追い風だけでなく、年初来を通じてテーマそのものが評価され続けてきた実績があります。半導体株が反発局面に転じた場合、出遅れ挽回組の勢いは弱まる可能性があります。一方、好調継続組はテーマ自体の成長性を背景に、半導体株とは異なる要因で値動きが左右される点も特徴といえそうです。
とはいえ、今回のように特定テーマが急上昇した後に急速な調整が生じた局面は、ポートフォリオ全体でテーマの分散を図っておくことの意味を改めて示したとも言えます。AI半導体一本足ではなく、値動きの背景が異なる複数のテーマを組み合わせておくことは、こうした調整局面での値動きの緩和につながる選択肢の一つと言えそうです。来月以降の騰落率でも、引き続きテーマの移り変わりを確認していきます。
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