初級- 鵜呑みに注意?勘違いしやすい5つの投資格言

初級- 鵜呑みに注意?勘違いしやすい5つの投資格言

2026/05/28

「夜明け前が一番暗い」「節分天井、彼岸底」

■今回のポイント

投資を始めると、いろいろな「投資格言」を聞くことがあります。投資格言には、先人の経験や知恵がつまっていて、投資経験を積むと「なるほど」と感じることも多いでしょう。ただし、注意も必要です。なぜなら、投資格言の中には、本来とは違う意味で使われているものや、今の投資環境にはそのまま当てはめにくいものもあるからです。 そこで今回は、よく聞くけれど勘違いしやすい5つの投資格言を、初心者にも分かりやすく紹介します。

■その1「夜明け前が一番暗い」

この格言は、投資の世界ではよく次のような意味で使われます。 「もう世界経済はダメかもしれない」「投資なんてやめたほうがいいかもしれない」 このように多くの人が不安になっているときこそ、実は相場の底かもしれず、意外に早く良い流れが来ることもある、という意味です。たしかに、投資経験を重ねると、この考え方が当てはまる場面もありました。ただし、この言葉をそのまま自然現象として考えると、少し違います。

実際には、夜明け前にはすでに空が明るくなっています。緯度にもよりますが、日本では、おおむね日が沈んでから1~2時間ほどたったころに一番暗くなり、その暗さがしばらく続きます。実際には、月や街の明かりによっても、体感される暗さは変わります。例えば、新月の街中なら、街明かりが消える真夜中が最も暗く思えるでしょう。つまり、自然現象や体感では「夜明け前が一番暗い」ではないといえます。

この言葉の出典には諸説あるものの、「It's always darkest before the dawn.」(夜明け前はいつも一番暗い)という古い英語の格言と考えられているようです。 これは、科学的に正しい自然現象を表した言葉というよりも、「明けない夜はない」「つらい時期のあとには良い時期が来る」という文学的な表現と考えたほうがよいでしょう。

投資で使うときに大切なのは、「今が大変だから、すぐに良くなる」という意味ではない、ということです。今が本当に「夜明け前」なのか、それともまだ下落の途中なのかは、あとにならないと分かりません。大切なのは、株価が下がっていることそのものではありません。その会社や市場が、これから良くなる状況にあるかどうかです。例えば、次のような点を確認する必要があります。

・業績は回復しそうか

・悪いニュースは出尽くしたか

・金利や為替などの環境は変わりそうか

・この銘柄を買いたい投資家は増えそうか

「十分下がったから、もう安心」「安くなったから買おう」と考えるのではなく、なぜ回復すると考えられるのかを確認することが大切と思われます。

■その2「節分天井、彼岸底」

「節分天井、彼岸底」は、昔からある相場格言で、次のような意味で使われることが散見されます。

「2月の節分ごろに株価が高くなり、その後、3月のお彼岸ごろに安くなりやすい」

しかし、これは本来の意味とは違うのではないか、と私は考えています。投資格言の由来から考えれば、ここでいう「彼岸」は、春のお彼岸ではなく、秋のお彼岸を指すと考える方が自然です。つまり、もともとの意味は、

「2月の節分ごろに高値をつけ、9月の秋のお彼岸ごろに安値をつけることが多い」

というものであったと考えられます。この格言は、江戸時代から続く、米の先物取引で使われていたものとされています。米は収穫からしばらくたった2月ごろに価格が高くなり、新米が出てくる9月ごろに価格が下がる、という背景があり、これは米の需給から考えれば自然なことといえます。

株式市場でも、春先まで相場が強く、夏から9月にかけて相場が荒れやすいという半年アノマリーが知られています。これは米相場で使われていた「節分天井、(秋の)彼岸底」とも整合性があり、株式相場にも引き継がれたと考えられます。ところがどこかのタイミングで春の彼岸とする解釈が広まったと推測されます。普通に考えれば、2月に株価が高値をつけて、わずか1ヵ月後の3月のお彼岸に安値をつけるとしたら、かなり激しい値動きを示唆することになります。投資格言を聞いたときは、言葉だけを覚えるのではなく、なぜその言葉が生まれたのかという背景まで考えてみることが大切です。

「頭と尻尾は人にくれてやれ」「人の行く裏に道あり花の山」

■その3「頭と尻尾は人にくれてやれ」

この格言は、株価の一番安いところで買ったり、一番高いところで売ったりするのはとても難しい、という意味です。 魚にたとえると、頭から尻尾まで全部を取ろうとしなくても、真ん中のおいしい部分を取れれば十分、という考え方です。 実際、株価の底や天井は、あとになってからでないと分かりません。また、底値や高値が一瞬だけだったり、取引量がとても少なかったりすることもあります。そこで実際に売買できるとは限りません。そのため、完璧な売買を狙いすぎないことは、とても大切です。

ただし、この格言を「少しでも利益が出たら、すぐ売ったほうがよい」という意味で考えるのは間違いです。本来あきらめるべきなのは、大きな上昇の最初から最後までを全部取ることです。つまり、最初と最後の少しの部分まで無理に狙わなくてよい、という意味です。少し上がっただけですぐ売ってしまうと、その後の大きな上昇を逃してしまうかもしれません。その結果、投資成績が悪くなる一因になり得ます。

この投資格言の本来の考え方を実践するには、利益を伸ばすための投資ルールや売買の目安を持つことが役立ちます。

▶ 参考:ドイマサの投資レシピ「中級- 利益を伸ばしてパフォーマンス向上」

大切なのは、「完璧な売買は狙わない」ことと、「利益を伸ばす努力をしない」を分けて考えることです。

■その4「人の行く裏に道あり花の山」

この投資格言は、多くの人と同じ行動をするだけではなく、ほかの人がまだ気づいていないチャンスを探すことも大切、という意味です。一見すると、とても納得しやすい言葉ですが、この投資格言にも注意点があります。

1. 何でも逆をすればよいわけではない

「みんなが買っているから売る」「みんなが売っているから買う」というように、いつも多数派と反対の行動をすればよいわけではありません。市場であるテーマに注目が集まっているときは、その流れがしばらく続くことがあります。こうなると、特定の業界や銘柄群に投資資金が集まり、弱気を振り切って株価が上がり続ける場合もあります。そのようなときに、理由もなく流れに逆らうと、大きな損失につながる可能性が残ります。

2. 人気がない銘柄が、必ず良い投資先とは限らない

ほかの投資家が見向きもしない銘柄には、理由がある場合もあります。

例えば、

・業績が悪い

・将来性に不安がある

・大事な情報をほかの投資家は知っているのに、自分だけが見落としている

・売買が少なく、購入できても売りにくい

といった可能性があります。人と違う行動をすること自体が大切なのではなく、人と違う行動をするだけの理由があるかどうかを考えることが大切です。

3. タイミングも重要

この格言には、実は続きとして伝わる下の句があります。

「いずれを行くも 散らぬ間に行け」

これは、チャンスがあるなら、タイミングを逃さず行動することが大切だ、という意味です。流れに乗って投資する場合でも、ほかの人がまだ注目していない投資先を見つけた場合でも、行動しないまま時間がたつと、チャンスを逃してしまうことがあります。

つまり、「人の行く裏」に本当のチャンスがあるのは、根拠をしっかり確認し、比較検討したうえで、必要なタイミングで行動できた場合です。自分の考えが本当に正しいのか、冷静に確認し、素早く行動することが大切です。

「卵は一つのカゴに盛るな」

■その5「卵は一つのカゴに盛るな」

これは、分散投資の大切さを説明するときによく使われる有名な投資格言です。卵を一つのカゴに全部入れていると、そのカゴを落としたときに卵が全部割れてしまいます。投資でも、資金を一つの商品や一つの銘柄に集中させると、大きな損失につながることがあります。この投資格言は今でも役に立ちますが、2つの勘違いに注意が必要です。

1. 投資先の数を増やせばリスク分散できる、という勘違い

いろいろな銘柄を持っていても、それだけで分散できているとは限りません。例えば、持っている銘柄がすべてAI・半導体関連株だったり、特定の新興国株だけだったり、国は違っても鉱山株ばかりだったりすると、実はあまり分散になっていない可能性があります。また、リーマンショック、コロナショック、最近ではトランプ関税ショックなどのように、世界的な株価ショックが起きると、多くの国の株式市場が同じように大きく下がることがあります。 見た目はカゴがたくさんあるようでも、全部が同じトラックに積まれていたら、事故が起きたときに一緒に割れてしまいます。

本当の分散投資とは、単に数を増やすことではありません。値動きの理由が違うものを組み合わせることです。たとえば、 国内株式、外国株式、国内債券、外国債券、金・銀・プラチナ、REIT、不動産など、値動きの特徴が異なる資産を組み合わせることで、リスクを下げられる可能性があります。

2. 現在では、十分に分散されている金融商品もある

TOPIX、S&P 500、MSCI オール・カントリー・ワールド指数 (ACWI)などに連動する投資信託やETFが、日本の個人投資家に広く普及したのは比較的最近で、かつては現在ほど低コストで、誰でも買いやすい形では普及していませんでした。これらは、もともと多くの銘柄に分散して投資する仕組みになっています。

「卵は一つのカゴに盛るな」という言葉は、本来は投資だけの格言ではありません。何か行動を起こす際に、全財産や全エネルギーを一つのものに集中させずに、想定外の状況になっても大丈夫なように選択肢を広げておくことが大切だ、という意味です。

例えば、国内の個別株に投資する場合、1銘柄だけを持つより、複数の銘柄を持つほうが一般にリスクは下がりやすいといえます。さらに、米国株式や債券などを組み合わせると、多くの場合は全体のリスクが下がることが期待されます。ただし、すでにTOPIXやS&P 500に連動するETFを持っている方が、さらに個別株1銘柄に投資した場合、必ずしも全体のリスクが下がるとは限りません。むしろ、全体のリスクが増えることもあります。この格言が伝えようとしていることは、今でも大切です。大きな失敗で投資を続けられなくなるリスクを減らすべきという、本来の意味に立ち返って、投資判断に役立てましょう。

■まとめ

投資格言は、短くて覚えやすい言葉です。しかし、短いからこそ誤解されやすく、誤用を目にすることもあります。このため、投資格言を耳にしたときは、すぐに売買の判断に使うのではなく、次のように考えてみてはいかがでしょうか?

「これは、今すぐ買え・売れというサインなのか」

「それとも、自分の行動を見直すための注意なのか」

投資格言は、どんな場面でも当たる予言ではありません。うまくいったあとに見ると「やっぱり当たっていた」と思いやすく、失敗したあとに見ると「そういう意味だったのか」と納得しやすいものです。だからこそ、投資格言の意味を正しく理解し、自分なりの投資ルールを持つことが大切です。

投資で怖いのは、知識が足りないことだけではありません。「知っているつもり」の言葉を、自分に都合よく使ってしまうことも危険です。投資格言は、自分の思い込みに気づくためのヒントとして使うと効果的と考えられます。

図表1 ドイマサの投資レシピ 勘違いしやすい5つの投資格言

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