上値抵抗線突破!日経平均株価は3万円へ!?(2)

上値抵抗線突破!日経平均株価は3万円へ!?(2)

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2022/08/23

日経平均は7ヶ月半ぶりに29,000円台

8月第3週(8/15-19)の日経平均株価終値は28,930円33銭、前週末比383円35銭高(+1.3%)と週足ベースで3連騰しました。

特に8/17(水)の日経平均株価は、本年初頭以来の高値で心理的節目でもある29,000円台を上回りました。前日に米小売大手が予想を上回る好調な決算を示したことで、景気後退懸念が和らぎ、米株高の流れが東京市場に引き継がれた形です。

ただ、同期間の米国主要株価指数は軒並みマイナスでした。8/18(木)までのNYダウは前週末比ほぼ変わらずでしたが、8/19(金)に大きく売られた形です。年初来から半値戻し水準まで上昇していたこともあり、利益確定で売られた面が強そうです。8月第4週にはジャクソンホール会合を控えており、その前週に当たる第3週はFRB(米連邦準備制度理事会)メンバー達のインフレ抑制に対してタカ派的な発言が続いたことも、市場の警戒感を強めた要因と考えられます。

8月第4週の日経平均株価は、前週末からの米株安の流れを引き継いだことに加え、週足ベースで上昇が続いていた反動で、下落スタートとなっています。現在日経平均株価が行ったり来たりしている29,000円近辺は、新型コロナウィルス感染拡大以降の3年と直近1年、両期間とも最も売買代金のボリュームがあるゾーンとなっています。そのため、戻り売り圧力としてはかなり強いものとなっており、ここを抜けられると一足飛びに上昇できる可能性も十分に考えられます。

今週の注目イベントであるジャクソンホール会合(8/25-27開催)ではFRBパウエル議長の会見が予定(8/26)されています。8/22(月)14時点では、9月会合で予想される利上げ幅は50bpと75bpがほぼ半々の状態です。それゆえ、議長発言には大きな注目が集まりそうです。ここで注目したいのが、議長会見の1時間半前である日本時間8/26(金)21時半に米7月個人消費支出(PCE)が発表予定となっていることです。PCEはFRBがインフレ進行度を計る際に最も重視している経済指標であるため、恐らくパウエル議長の発言内容も当該数値を一定以上織り込んでくる可能性が高いでしょう。したがって、PCE数値がどれだけインフレ鈍化を示せるのかが、パウエルFRB議長の会見発言を占う上では要確認となってきます。

8月第3週は国内主要企業の決算発表がおおむね前週に終わっていたため、個別企業やセクターごとの材料で株価が上下した傾向です。

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(8/15~8/22)には、天然ガスの値段が急騰したのを受け、2位に東京ガス(9531)、9位に大阪ガス(9532)がランクインしました。東京ガスはサハリン2の契約更新も好感されているようです。

図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(8/15~8/22)には、医薬品セクターが米国のインフラ抑制法成立を受け、1位エーザイ(4523)と他2社がランクインしています。3社とも北米への売上高割合が一定数以上あることから、米国での高齢者向け薬価引き下げが組み込まれた同法律の成立が売り材料になりました。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

  日経平均(終値) 前日比 NYダウ(終値) 前日比 国内株式市場の動き 米国株式市場の動き
8/15(月) 28,871.78 +324.80 33,912.44 +151.39 続伸。
・前週末の米国市場に連れ高。
・4-6月期GDPは市場予想を下回った。
・第一三共(4568)が14%超の大幅高。米製薬会社と争っていた抗がん剤技術の知的財産権の帰属が、米仲裁にて同社にあると認められた。
・インフレピークアウト観測からコモディティ関連株が安い。
悪材料出る中でも、4営業日続伸。
・NY連銀製造業景況指数が大幅悪化。
・大型ハイテク株への買いが入った。
・中国の予想に反した利下げを受け、需要悪化懸念が広がる。
16(火) 28,868.91 -2.87 34,152.01 +239.57 もみ合いの中、わずかに反落。マザーズは大幅高。
・時価総額上位且つ好決算であったマザーズ指数構成銘柄に買いが入った。
・米経済指標の悪化を受け、景気敏感株が下落。
続伸。NASDAQは小幅反落。
・7月住宅着工件数が市場予想を下回った。
・ウォルマートやホーム・デポ等の好調な小売決算を受け、消費関連株が買われた。
・S&P500が200日移動平均線に触れ、高値警戒感が生じた。
17(水) 29,222.77 +353.86 33,980.32 -171.69 反発。7ヵ月半ぶりの29,000円台。
・米市場の株高が好感され、景気敏感株中心に買いが入った。
・円安恩恵セクターが物色された傾向。
・半年以上ぶりに心理的節目29,000円を突破し、利益確定売りが上昇抑制要因に。
反落。
・7月FOMC議事要旨では、想定よりハト派寄りな内容が示された。
・原油在庫の前週比大幅減が発表され、原油と関連株が高い。
・欧州のインフレ高進と株安が嫌気された。同日に発表されていた英7月CPIは10%超の急上昇。
・金利上昇を受け、グロースの下げが大きい。
18(木) 28,942.14 -280.63 33,999.04 +18.72 反落。
・前17日の心理的高値突破を受け、反動売りか。
・手がかり材料が乏しかった。
・米グロース株安を受け、精密機器が大幅下落。
もみ合いの中で小幅反発。
・セントルイス地区連銀総裁は9月会合での75bp利上げの支持を表明。
・経済指標は強弱混在。
・シスコシテムズが大幅高。半導体不足解消を理由に強気な業績見通しを示した。
19(金) 28,930.33 -11.81 33,706.74 -292.30 ほぼ横ばい。
・久方ぶりの高値水準まで回復した後の週末で警戒感も。
・値がさ株であるファストリ・SBGの下落が相場の重しになった。
・米SOX指数上昇を受け、半導体関連株が上昇。
グロース中心に反落。
・FRBメンバー等のタカ派発言を受け利上げ加速観測が進行。長短金利とドル指数が上昇。
・ドイツPPI(生産者指数)が前年同期比で統計開始初の伸び率を見せ、インフレ警戒感が意識される。
・SQでボラティリティが高い。
22(月) 28,794.50 -135.83 33,063.61 -643.13 3営業日続落。
・米長期金利上昇を受け、グロース株が売られる。特に、中小型高PER株が大幅安。
・取引時間中に行われた中国の利下げと円安の進行が、相場を下支えた。
大きく続落。
・ジャクソンホール会合への警戒感から大幅安。
・長期金利が再び3%台まで上昇し、嫌気された。
・不安感が広まりVIX指数が15%超上昇。
  • ※日経平均株価・NYダウ等各種株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。

図表2 日経平均株価

  • ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年8月23日10:00時点。

図表3 NYダウ

  • ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年8月23日 10:00時点。

図表4 ドル・円相場

  • ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年8月23日10:30時点。

図表5 主な予定

  • ※各種報道、WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

  • ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。 なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は現地時間を基準に記載しています。

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(8/15~8/22)

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
  • ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • ※8/22終値を8/15終値と比較し、値上がり率の大きい日経平均採用10銘柄を掲載。

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(8/15~8/22)

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
  • ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • ※8/22終値を8/15終値と比較し、値下がり率の大きい日経平均採用10銘柄を掲載。

上値抵抗線突破!日経平均株価は3万円へ!?(2)

日経平均株価は8/17(水)に29,222円77銭まで上昇し、年初来高値を付けた1/5(水)以来の高値水準を回復しました。その後は、テクニカル指標で一部過熱感が強まったことや、米長期金利の上昇を背景に米国株が反落したこともあり、8/18(木)以降は下落基調になりました。

しかし、日経平均株価は近い将来、上昇トレンドを回復し、3万円を目指す展開になると期待されます。その理由は、日経平均株価の予想EPS(1株利益)(※下記参照)が過去最高水準まで上昇しているからです。

8月第3週(8/15~19)末現在、

「8/19(金)日経平均株価」(28,930円)=予想EPS(1株利益)(2,218.58)×PER(株価収益率)(13.04)

となっています。

ここで、日経平均株価の予想EPS(週足ベース)は、決算発表本格化直前の7月第2週(7/11~15)末時点では2,084円でしたが、決算発表が一巡した8月第3週(8/15~19)末には2,218円まで上昇しました。決算発表期間中に上昇したことに加え、昨年9月第3週(9/13~17)末の2,172円を上回り、過去最高水準まで上昇しました。企業業績の方向感を示す、日経平均株価の予想EPSが過去最高水準になったということは、株価にとっては強い追い風になると考えられます。

仮に、日経平均予想EPSが5%(約110円)上乗せされ2,329円に増えれば、予想PERが13倍にとどまっても、日経平均株価は3万円を超える計算であり、あまり無理のないシナリオであると考えられます。

※上場企業の純利益は2022/4~6期に減益となり、日経平均株価の予想EPS増加に違和感を感じる向きも多そうですが、企業業績全体の減益には、ソフトバンクグループ(9984)の大幅赤字(純損失3.1兆円)の影響が大きかったようです。ただ、同社はアリババ株の売却等を通じ、7~9月期に4.6兆円の再評価益等を計上する見込みで、通期では黒字になるというのが市場予想になっています。ソフトバンクグループは日経平均の高寄与度銘柄ですが現時点では、日経平均採用銘柄全体の業績には、黒字として織り込まれていると考えられます。

図表9 日経平均株価予想EPS(1株利益)は過去最高水準へ上昇

  • 当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは8/19 時点。

なお、企業利益の多くは、税金・配当支払い後に内部留保され、「純資産」として蓄積されることになります。「純資産」を発行済み株式数で割った数字を「BPS(1株純資産)」といい、株価が「純資産」の何倍まで買われているのかを示す指標を「PBR(株価純資産倍率)」といい、重要な投資指標のひとつになっています。

「純資産」は、企業の「総資産」をすべて売却し、「負債」を返済した後に残った部分、式としては「総資産-負債」と定義され、別名「解散価値」と呼ばれています。それを発行済み株式数で割ったBPSは、「1株当たりの解散価値」を意味しており、株価下落局面において、「PBR1倍割れ(解散価値割れ)」は重要な下値抵抗ラインになります。

ちなみに、8月第3週(8/15~19)末時点では、

「8/19(金)日経平均株価終値」(28,930円)=BPS(1株純資産)(24,517)×PBR(株価純資産倍率)(1.18)

となっています。

最近、日経平均株価はおおむね、PBR1.15~1.3倍近辺の水準で推移しています。8/19(金)時点の日経平均株価のPBRは1.18倍ですので、レンジの下限近辺となっており、割安感は強いと思われます。さらに、BPSは8/19(金)時点で24,517円となっており、昨年末からだと22,850円から着実に上昇して過去最高水準になっています。

仮に、日経平均株価のBPSが年末から8/19(金)までの増加分の半分(833円)増えた場合、日経平均のBPSは25,350円に増える計算であり、PBRが1.19倍程度までわずかに上昇してくれれば、株価は3万円を超えてくる計算です。こちらも、決して難しいシナリオではないと考えられます。

図表10 日経平均BPS(1株純資産)も過去最高水準へ上昇

  • 日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。データは8/19時点。

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