《9月相場の展望》 日経平均株価は、買い場到来か!?

《9月相場の展望》 日経平均株価は、買い場到来か!?

投資情報部 栗本奈緒実

2022/09/06

米雇用統計が警戒され、日経平均は大幅安

8月第5週(8/29-9/2)の日経平均株価終値は27,650円84銭、前週末比990円54銭安(-3.5%)と米国市場に連れ安し、週足ベースで大幅続落となりました。同期間のNYダウは-3.0%でした。8月半ばにかけての反発局目を打ち消す形で大幅に下落しています。

8月第4週、ジャクソンホール会合においてFRB(米連邦準備制度理事会)パウエル議長が、インフレ抑制に向けタカ派姿勢の堅持を表明し、それを背景にした株安が翌第5週に持ち越された形です。株式市場にとって逆風となりやすい米金利の上昇も続き、特に政策金利と連動性の高い米2年国債利回りはおよそ15年ぶりの水準となる3.5%台となる場面もありました。
それに伴いドル円相場は1ドル140円台まで急速に円安が進行しました。景気後退感が先行する下での円安進行であったため、本年年明けからの円安進行時に幾度か発生していた、いわゆる円安恩恵期待銘柄への買いは部分的なものにとどまりました。その代わりに金融引締めの煽りを受けた経済悪化懸念から、景気敏感株売りの流れが顕著となっており、図表8 「日経平均株価採用銘柄の下落率上位」にも、海運株大手2社や半導体検査装置大手のアドバンテスト(6857)がランクインしています。一方、図表7「日経平均株価採用銘柄の上昇率上位」には経済再開期待の百貨店株や割安感が意識されてきたような銘柄のランクインが目立ちます。

また、8月第5週の最終営業日に当たる9/2(金)は、注目イベントである米8月雇用統計に対する警戒感が強まっていました。結果は、雇用者数が市場予想をわずかに上回ったものの、伸び率鈍化が確認され、数値発表後の米国市場は上昇スタートを切っています。しかし、その後ロシア国営企業のガスプロムが欧州向け天然ガス供給パイプラインの再開停止を発表し市場心理は急激に悪化。結局、同日のNYダウは1%超安で取引を終えました。欧州のエネルギー供給不足問題が再び相場の重しとなったことと、週明け9/5(月)は米市場が休場でポジションをとりづらかったことが下落の要因として考えられます。

9/5(月)の米祝日であるレイバー・デー(Labor day)は労働者の日といい、夏期休暇の最終連休で、米国では新年度に向けての区切りの日です。そのため、この日以降は相場の流れが急変するというアノマリーがあります。1929年世界大恐慌の下落相場の始まりや、2008年のリーマンショックはいずれもこのレイバー・デー明けでした。そのような新しいトレンドができ得る可能性がある今週(9月第1週)に、注目材料として確認していただきたいのが9/8(木)のECB(欧州中央銀行)の政策金利発表やパウエルFRB議長の経済会議での発言です。また、エネルギー動向についても引き続き要注意です。

そして、日経平均株価も現在“とある転換点”に位置していると考えられます。そちらに関しては次項にて詳細を述べさせていただきます。

欧米経済の動向が意識される中、9月第1週の東京株式市場は米国休場に伴い、東証プライム市場の売買代金が2兆円に満たない薄商いの小幅続落でスタートしました。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

  • ※日経平均株価・NYダウ等各種株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。

図表2 日経平均株価

  • ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年9月6日9:30時点。

図表3 NYダウ

  • ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年9月6日 09:30時点。

図表4 ドル・円相場

  • ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年9月6日 10:00時点。

図表5 主な予定

  • ※各種報道、WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

  • ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
    なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は現地時間を基準に記載しています。

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(8/29~9/5)

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
  • ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • ※9/5終値を8/29終値と比較し、値上がり率の大きい日経平均採用10銘柄を掲載。

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(8/29~9/5)

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
  • ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • ※9/5終値を8/29終値と比較し、値下がり率の大きい日経平均採用10銘柄を掲載。

日経平均株価の買い場到来か!?

9月に入り、日経平均には相場転換の合図ともいわれる「雲のねじれ」が発生しました。
現在の日経平均株価を「一目均衡表」で確認すると、2つの売りシグナル(下図表9参照)が点灯している状態です。

1つ目は、9/5(月)時点の日経平均株価が、基準線に対して転換線が下に突き抜けてデッドクロスを形成していることです。一目均衡表においてこれらは、相場の中期的なトレンドを表す指標とされています。移動平均線と同様に使用されており、短期移動平均が転換線(9日)、長期移動平均線が基準線(26日)となります。

著名な分析方法ですが、念のためご説明させていただきます。
*ゴールデンクロス(上昇トレンド):短期線が長期線を下から交差し、上抜く形状。直近の買い圧力が増している。
*デッドクロス(下落トレンド):短期戦が長期線を上から交差し、下抜く形状。直近の売り圧力が増している。

2つ目の売りシグナルは、9/5(月)時点で遅行スパンがローソク足を下回っていることです。これは、「遅行スパンの逆転」という下降トレンドが発生している状態です。

一方で、長めの上昇トレンド(下図表9参照)も同時に確認することができます。新しく形成された雲の形(下図表9)は、先行スパン1が上で先行スパン2が下となっています。先行スパン1は先行スパン2よりも計測される期間が短いため、上昇トレンドの発生とされています。また、一目均衡表で使用される各線は計測期間が異なります。その関係上で、前述した2つの売りシグナルより、同シグナルをより長い期間の観測と捉えることができます。

以上より、日経平均株価は中期的には新しい雲を下抜けさらに安くなるタイミングがあるかもしれませんが、中長期的にみると買い場到来のチャンスの可能性もはらんでいるといえるでしょう。

ただ、注意していただきたいのがあくまでも今回ご紹介させていただいた方法も見方の一つに過ぎないという点です。
今月もこれからECBやFRB当局者の発言、第2週には米8月CPIや波乱の起こりやすい米トリプルウィッチング(3つのSQ算出日が重なる日)、第3週にはFOMC(連邦公開市場委員会)や日銀金融政策会合と重要イベントが盛りだくさんです。そのような中で好悪材料が続き、相場の方向感がわからなくなった際、ぜひこちらをご活用していただければと思います。

図表9  9月相場は買い場到来か?

  • ※当社HPを基にSBI証券が作成。
    ※2022/9/5時点のデータ。

信用取引のご注意事項

信用取引に関するリスク

信用取引は、差し入れた委託保証金額の約3倍の取引を行うことができます。そのため、現物取引と比べて大きなリターンが期待できる反面、時として多額の損失が発生する可能性も含んでいます。また、信用取引の対象となっている株価の変動等により、その損失の額が、差し入れた委託保証金額を上回るおそれがあります。この場合は「追加保証金」を差し入れる必要があり状況が好転するか、あるいは建玉を決済しない限り損失が更に膨らむリスクを内包しています。
追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。

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・日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。

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・日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
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