物価上昇でも日経平均株価は上昇する?

物価上昇でも日経平均株価は上昇する?

投資情報部 鈴木英之

2022/09/13

物価・金利上昇への織り込みが進み、日米ともに反発

9月第1週(9/5-9/9)の日経平均株価(週足)は、3週間ぶりに反発し、前週末比563円91銭(2.0%)上昇しました。原油先物相場が下落基調となる中、米国でインフレや金利上昇に対する織り込みが進み、株価が反発に転じたことが追い風になりました。

米国において夏休みシーズンの終わりを告げるレーバーデーの休みが9/6(火)にあり、9/6(火)および9/7(水)の東京株式市場は様子見気分が強く、方向感に欠ける展開になりました。前週末の9/2(金)、ロシアが、欧州向けに天然ガス供給を行ってきた「ノルドストリーム1」の停止延長を決めたことも、株式相場の重石になりました。米10年国債利回りが6月中旬以来の高水準を付け、9/6(火)の米国株式市場が下げると、9/7(水)の東京株式市場では、日経平均株価が一時、前日比357円81銭安の27,268円70銭まで下げ、主要な下値支持線のひとつと考えられる200日移動平均(9/7時点で27,467円10銭)を割り込みました。

しかし、9/7(水)の米国株式市場で、原油先物相場(WTI)が1/11(火)以来の1バレル81ドル台まで下落し、10年国債利回りも低下し、NYダウが3営業日ぶりに反発。それを好感した9/8(木)の日経平均株価は大幅高となりました。テクニカル的には、200日移動平均線を1営業日だけ割り込んで反発したことで、下値抵抗線の強さを確認した形になったと見受けられます。9/8(木)にNYダウが続伸した流れを引き継いで9/9(金)の日経平均株価も続伸となり、結局、日経平均株価は週足ベースでも上昇を確保しました。またNYダウも9月第1週は2.7%高となり、週足ベースでは4週間ぶりの上昇となりました。

なお、「Fedウォッチ」によると、9/21(水)に結果発表予定のFOMC(米連邦公開市場委員会)において、政策金利が0.75%引き上げられる確率は、9/2(金)時点で57.0%でしたが、日本時間9/12(月)時点では90.0%まで上昇しています。大幅利上げ継続の可能性が強まったことで、米10年国債利回りは9/7(水)に3.36%まで上昇し、この日の外為市場では1ドル145円直前まで円安・ドル高が進むことになりました。しかし、その後は米長期金利上昇、円安・ドル高も一服し、日米で株価上昇となりました。

物色的には百貨店株の強さが目立ちました。三越伊勢丹ホールディングス(3099)、高島屋(8233)はともに9/6(火)から9/12(月)まで5営業日続伸となり、年初来高値を更新しています。政府は9/7(水)から1日当たりの入国者数を5万人に緩和していましたが、さらに10月までをメドに、入国者数上限の撤廃や、個人旅行客の受け入れ解禁、短期滞在でのビザ取得の免除などを進める方針と伝えられています。市場では百貨店株に加え、空運株やレジャー関連株の一角にも見直し買いが目立っています。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

  • ※日経平均株価・NYダウ等各種株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。

図表2 日経平均株価

  • ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年9月13日9:30時点。

図表3 NYダウ

  • ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年9月13日 09:30時点。

図表4 ドル・円相場

  • ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年9月13日10:40時点。

図表5 主な予定

  • ※各種報道、WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

  • ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
    なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は現地時間を基準に記載しています。

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(9/5~9/12)

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
  • ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • ※9/12終値を9/5終値と比較し、値上がり率の大きい日経平均採用10銘柄を掲載。

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(9/5~9/12)

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
  • ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • ※9/12終値を9/5終値と比較し、値下がり率の大きい日経平均採用10銘柄を掲載。

物価上昇でも日経平均株価は上昇する?

9/12(月)、日経平均株価は大幅高となり、9月第2週(9/12-16)の東京株式市場も順調なスタートになっています。日米ともに、足元のインフレ・金利上昇に対する懸念は織り込まれつつあるようです。

そうした中、当面は9/13(火)の米8月CPI(消費者物価指数)の発表、9/14(水)の米8月PPI(生産者物価指数)の発表の発表が重要なイベントとなります。このうち、CPIの市場コンセンサス、および前回数値は以下の通りです。

・米CPI
・前年同月比・・・・前回(7月)+8.5%→今回(8月)市場コンセンサス+8.1%
・前月比・・・・前回(7月)+0.0%→今回(8月)市場コンセンサス-0.1%

・米CPI(食品・エネルギーを除く「コア」指数)
・前年同月比・・・前回(7月)+5.9%→今回(8月)市場コンセンサス+6.1%
・前月比・・・前回(7月)+0.3%→今回(8月)市場コンセンサス+0.3%

米CPIが仮に市場コンセンサスを上回った場合、9/21(水)に結果発表のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、政策金利が1.0%引き上げられるとの見方が台頭し、株式市場が波乱になる可能性もありますので注意が必要です。前項でご説明した通り、日米株式市場は0.75%の利上げまでは織り込んでいるとみられますが、さすがに、米政策金利の1.0%引き上げまでは織り込んでいないと考えられます。このレポートを多くの方が読む、9/14(水)以降の株価が荒れている可能性もある訳です。

逆に、CPIが仮に市場コンセンサスを大きく下回り、PPIの発表も無難に終わった場合、株価上昇が続く可能性がありそうです。日経平均株価は再び29,000円前後に進んでくるかもしれません。

ここでズバリ、8月の米CPI、PPIを的確に予想できれば素晴らしいのですが、ここで重要なのは8月単月の数字を当てに行くよりも、今後のトレンドを先読みしておくことかもしれません。図表9は米CPIと原油価格、住宅価格の動きを比較したものですが、米CPIに強く影響するとみられる原油価格や住宅価格の伸び率はピークアウトの兆しをみせています。引き続き、食料やエネルギーを中心に世界的な供給制約は存在していますが、ウクライナ・ロシア間の戦争には進展の兆しも見えます。今後数ヵ月後に、CPIの伸びが落ち着いてくる可能性は大きいと考えられます。

そもそも、物価上昇というのはそれほど株価に悪いのでしょうか。日経平均株価はすでに現状で、前年度末(3月末)水準となる27,821円を上回っており、世界的に物価上昇に苦しんだこの半年間を「上昇」で乗り切っているという事実があります。

デフレにより多くの企業で資産価値が目減りし、バランスシートのスリム化が重視され、人への投資も減ってきたことが、日本経済に長期低迷をもたらしてきたと考えられます。やはり恐ろしいのはデフレだろうと思われます。日本の株式市場は、現状のインフレについては、制御可能であるし、デフレよりは良いと理解しているのかもしれません。先行きは米消費者物価指数の沈静化等を通じ、制御できる可能性がいっそう強まるものと予想されます。

したがって、米消費者物価指数(8月)発表後に、短期的株価が下落する場面があっても、その後は次第に上昇する展開になると、筆者は予想しています。

図表9  米CPIに影響する原油価格や住宅価格に、伸び鈍化の兆しも

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