「FOMC」を経て日経平均はどう動くのか?
投資情報部 鈴木英之
2022/09/20
「CPIショック」が響き、週間でも反落
9月第2週(9/12-16)の日経平均株価(週足)は、反落し、前週末比647円10銭安(-2.3%)となりました。9/13(火)の米国株式市場でNYダウが本年最大の下げとなったこと等が響きました。
9/13(火)の米国株式市場では、NYダウが前日比1,276ドル安と、本年最大の下げとなったのは、同日朝に発表された8月米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回った「CPIショック」がおもな要因と考えられます。
米消費者物価指数(前年同月比)は、前回(7月)は+8.5%で、今回(8月)の市場予想は+8.1%でした。しかし、結果は+8.3%と市場予想を上振れました。同様に、消費者物価指数の「食品・エネルギーを除くコア指数」(前年同月比)は、前回(7月)は+5.9%で、今回(8月)の市場予想+6.1%に対しての結果は+6.3%と上振れました。
こうした消費者物価指数の上振れを受け、9/21(水)に結果発表のFOMC(米連邦公開市場委員会)において、政策金利が1.0%引き上げられるという見方が新たに台頭しています。政策金利は年末にも4.25%まで上昇し、2023年にはそれ以上で推移するとの見方も出てきました。
ちなみに、米消費者物価指数の発表を経て、9/13(火)の米30年国債利回りは前日比0.02%低下、10年国債利回りは0.06%上昇、2年国債利回りは0.17%上昇(いずれも前日との利回り差)という反応をみせました。短めの金利は政策金利の予想と連動しやすい傾向がありますが、長めの金利にはインフレや経済成長の予想も織り込まれる傾向があります。市場は、FRB(米連邦準備制度理事会)による金融引き締めの向こうに景気の減速・悪化を予想しているといえそうです。
日経平均採用銘柄の物色方向(9/12~9/16)としては、東日本旅客鉄道(9020)や京成電鉄(9009)等に象徴される鉄道株やANAホールディングス(9202)等の空運株といった、インバウンド関連株が物色されました。新型コロナウイルスの感染拡大ペースが減速する中、政府は訪日外国人増加を目指し水際対策を緩和する方向で、それを好感する流れが本格化しています。また、米10年国債利回りの上昇を受け、銀行株の上昇も目立ちました。
反面、グローバル景気の悪化や半導体市況の悪化等を背景に電気機器の下落も目立ちました。日経平均株価への高寄与度が高い銘柄が多く、株式市場全体にも影響が波及しました。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景
- ※日経平均株価・NYダウ等各種株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図表2 日経平均株価
- ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年9月20日9:30時点。
図表3 NYダウ
- ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年9月20日 09:30時点。
図表4 ドル・円相場
- ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年9月20日11:00時点。
図表5 主な予定
- ※各種報道、WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
- ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。 なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は現地時間を基準に記載しています。
図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(9/12~9/16)
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
- ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- ※9/16終値を9/12終値と比較し、値上がり率の大きい日経平均採用10銘柄を掲載。
図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(9/12~9/16)
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
- ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- ※9/16終値を9/12終値と比較し、値上がり率の大きい日経平均採用10銘柄を掲載。
「FOMC」を経て日経平均はどう動くのか?
米国において、物価上昇圧力は続くでしょうか。
米消費者物価の内訳を見ると、エネルギー価格の上昇率は鈍ってきていますが、サービス価格の上昇が響いています。「インフレの慣性」から、コアの部分で上昇圧力の強い状態が続いていると考えられます。新型コロナウイルスの影響もあり、移民の増加が鈍ったことや、高齢者が労働市場から退出したことも響き、賃金上昇圧力が構造的に高止まりしやすい面も指摘されています。
金融引き締めの効果が期待できることや、グローバル景気の減速傾向を背景に、供給不足等を背景とするインフレ圧力は低下すると予想されます。反面、賃金やサービス価格の上昇等を背景とする需要サイドからのインフレ圧力はなかなか収まらないと予想されます。そもそも、FRBが物価の落ち着きを認めるまでも数ヵ月単位の時間が必要であり、FRBのタカ派的な姿勢は少なくとも年内は維持されそうです。
9/21(水)に結果発表のFOMC(米連邦公開市場委員会)はどうなるのでしょうか。「CPIショック」はあったものの、政策金利について引き続き0.75%の利上げが現時点でのメインシナリオとみられます。しかし問題はその後でしょう。金利先物市場ではすでに、2022年末の米政策金利は「最低で4%」とみており、2023年央には5%まで上昇する可能性もありそうです。
米10年国債利回りは、6月の3.49%を超えて本年最高水準まで上昇しているので当面は、利回り上昇が加速する可能性に注意が必要とみられます、ただ、FRBの金融引き締めが厳しくなればなるほど、将来の米国景気に減速懸念が高まるので、数ヵ月後には米10年国債利回りの上昇は鈍ってくるかもしれません。
日本株については引き続き、相対的に強さを維持すると予想します。理由は以下の諸点が考えられます。
(1)政府が水際対策の本格的な緩和を表明しており、日本ではインバウンド需要の回復が期待される。
(2)半導体等の供給制約が緩和される中、自動車・自動車部品の挽回生産が期待される。
(3)円安が定着した場合、日本の上場企業の経常増益率が上振れるとの見方が出ている。
(4)金融庁が要望するNISA拡充等を通じ、将来は東京株式市場への資金流入が期待される。
「株式相場は疑念の中で育つ」という相場格言を想起したい所です。
図表9 米政策金利(上限)は年内にも4%超か?
- 「Fedウォッチ」をもとにSBI証券が作成
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