過度な懸念は不要か~日経平均株価の下値メドは?

過度な懸念は不要か~日経平均株価の下値メドは?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2022/10/11

一時的な反発局面があったが、依然として雲行きは怪しい

10月第1週(10/3~7)の日経平均株価(週足)は、前週末比1,178円90銭(+4.5%)の大幅高となり、週足ベースでは4週ぶりの上昇でした。

同期間のNYダウは+2.0%と日経平均を下回るパフォーマンスでした。
日米株式市場のパフォーマンス差は、10/7(金)に米国株式市場が大きく下落したことによるものです。同週前半(10/3-4)に限ってはNYダウは2日で1590.81ドルもの大幅続伸をしています。米9月ISM製造業総合景況指数等の経済指標が低水準な結果となったり、豪州中銀が市場予想を下回る利上げを実施したりと、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ鈍化を期待させるような材料の発生が続いたためです。

しかし、その後FRBメンバー等が改めてタカ派発言を示したことや、10/7(金)に発表された米9月雇用統計が堅調な内容と捉えられたため、インフレピークアウト期待が後退。同指標の発表を受け、金利先物市場では11月FOMC(連邦公開市場委員会)での75bp利上げ確率が9割超となり、FRBによる積極的利上げ継続の懸念が再び意識されるようになりました。それに伴い年初から急上昇している米国債利回りは、週前半には一旦の落ち着きを取り戻していたかのような場面もありましたが、週半ばから週末にかけては再び上昇の流れとなり、株式市場にとっての逆風となっています。また、10/7(金)には米バイデン大統領が半導体技術の対中輸出規制の強化を行いました。これも相場にとって重石となり得る材料の一つです。

翌10月第2週の米国市場は大幅下落で始まりました。政策金利の動向を色濃く反映する2年国債利回りは4.3%台まで上昇しています。これを受け、構成銘柄のほとんどがグロース銘柄であるナスダック指数はことのほか金利上昇に弱いため、10/10(月)時点で年初来安値を更新しています。今後しばらくは、前月に米国株式大幅安の発端となった消費者物価指数(現地時間10/13発表予定)の動向や、本格的に幕開けとなる企業決算の発表に注視する展開が続きそうです。

なお、日経平均株価は10/10(月)がスポーツの日で休場であったことから、米株安の影響を未だ織り込んでいません。詳述した米国株安を背景に、10/11(火)の始値は前週末比約2%の大幅安でスタートしています。

株式市場にとってあまり思わしくない材料が続く中、図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(10/3~10/7)には景気敏感株の他に、インバウンド関連株と多々称される三越伊勢丹ホールディングス(3099)や資生堂(4911)がランクインしています。10/11(火)より開始の入国規制緩和へ期待が高まった形です。

日経平均株価採用銘柄の下落率上位(10/3~10/7)では、トップが三菱自動車工業 (7211)で2位がマツダ(7261)と自動車関連株でした。日本の自動車大手6社は2022/1-9月に供給制約が重しとなり米販売が前年同期比で大幅減となったことを発表しています。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(10/3~10/7)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(10/3~10/7)

過度な懸念は不要か~日経平均株価の下値メドは?

10/7(金)に発表された米雇用統計(9月)では、非農業者部門雇用者数が前月比26.3万人増と市場予想(25.0万人増)を上回り、失業率が3.5%と市場予想(3.7%)を下回りました。これらから、米国では引き続き労働市場が強いと解釈され、次回(現地時間11/2)開催予定のFOMC(米連邦公開市場委員会)でも0.75%の利上げが実施されるとの見方が、より優勢になってきました。結局、NYダウは10/5(水)~10/10(月)に4営業日続落して計1,113ドル下げ、米10年債利回りは再び3.9%台まで上昇し、ドル円相場は再び1ドル145円台に乗せてきました。

これを受けた3連休明けの東京株式市場では、日経平均株価は売り先行となりました。今後も短期的に波乱含みの展開になりそうです。しかし、筆者は想定される日経平均株価の下落は限定的にとどまると考えています。

米雇用統計(9月)について、非農業者部門雇用者数は昨年4月に並ぶ低水準で、趨勢的には減少傾向にあるとみられます。失業率の低下も、労働参加率が下がっている分は割引になりそうです。

原油価格や商品価格が一時に比べ落ち着いたことに加え、住宅価格のピークアウト、労働市場で求人の減少など変化の兆しが出ているため、近い将来で米インフレ率が減速に向かう可能性は徐々に大きくなっていると考えられます。ただ、米国経済にはまだ「余熱」があり、当面は「強い雇用統計」や、「高止まりする消費者物価」が残ることも想定されていました。総じて、雇用統計(9月)も驚くほど強い結果という訳ではなかったとみられます。

今週は10/13(木)に米消費者物価指数(9月)の発表が予定されており、市場の警戒は続くとみられますが、仮に強い数字が出ても、上記の「余熱」の存在を理解し、よほど上振れない限り過度に気にしない方がよいと思われます。今週は10/14(金)から米国で7~9月期の決算発表が本格的に始まる予定です。国内では6~8月期の決算が最終段階となり、来週以降は7~9月期の決算発表が始まってきます。市場の関心はマクロからミクロに移ってゆくのではないでしょうか。

なお、10/11(火)からは、新型コロナウイルスの水際対策がさらに緩和され、入国者上限の撤廃、個人旅行の解禁等が実施されます。全国旅行割・イベント割等、国内旅行やイベント等を促進する政策も実施されます。陸運や空運などを中心に、株価が「コロナ前」の水準を回復していない産業も多いとみられ、株式市場でこれらの関連株が物色されれば、日本株市場全般が下支えられると期待されます。

日経平均株価の下値メドとしては、以下の株価水準が想定されます。

(1)26,510円・・・一目均衡表(日足)上の転換線(10/11)
(2)26,223円・・・10/3(月)の取引時間中高値(チャート上の窓埋め)
(3)26,000円・・・心理的節目
(4)25,839円・・・予想PERが本年最低水準の11.94倍(3/8)
(5)25,621円・・・10/3(月)の取引時間中安値
(6)25,520円・・・6/20(月)の取引時間中安値

図表9  日経平均株価(一目均衡表・日足)と下値支持ライン

  • 当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。四角で囲まれた数字は、文中に示した下値支持ラインのどれに該当するかを示しています。図表中の数字は、文中の下値支持ラインの何番(一目均衡表上で表現できない「4」は除きます)に相当するかを示しています。

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