“最先端”vs“王道”
インデックス全盛時代を戦う、
アクティブファンドマネージャーに迫る!

諏訪部氏が運用に携わるのは、「ビッグデータ・ストラテジー(外国株式)」をはじめとした、AIやビッグデータといった、最新のテクノロジーを活用するファンド。一方の奥野氏は、詳細な企業分析を重ねながら投資する銘柄を厳選し、長期間保有するという、ある意味で原始的であると同時に投資の王道とも言えるスタイルをとっています。
そんな一見して、正反対の運用スタイルをとる、二人のファンドマネージャーの対談が実現!
二人の対決の行方とは?!

Part.2 プロフェッショナルが提供する、
アクティブファンドの“価値”とは?

Q.クオンツ運用におけるファンドマネージャーとしての具体的な業務について教えてください。

「株価に影響を与えるイベントを考慮しリスクヘッジを行う」(諏訪部)

Q.なぜ現在の運用スタイルを始めたのですか?

【諏訪部】 大きくは2つあります。一つは、運用モデルを作るリサーチ活動。目標設定をして、どういう分析手法を使うのかをチームメンバーと研究し運用モデルを改良していきます。こういうリサーチプロジェクトが何十も同時に進行していて、それらのプライオリティ付けを含め全体を統括しています。
二つ目は、ポートフォリオマネジメントです。運用モデルから得られた投資判断から、ある程度システマチックにポートフォリオを作りますが、それが本当に正しいかどうかをポートフォリオマネージャーとしてチェックしています。大事なのは、運用モデルが知らないリスク要因について、リスクヘッジを行うことです。過去には、英国のEU離脱問題(ブレグジット)がありました。国民投票の前に、ブレグジットが成立した場合と成立しなかった場合の影響を検証し、どちらに転んでもポートフォリオが悪くならないようリスクマネジメントを行いました。アメリカの大統領選などもそうですが、世の中で起こっている様々な出来事の中で、運用モデルが知っていることと知らないことを把握し、ポートフォリオマネージャーとしてリスクマネジメントを行っています。

Q.アメリカの大統領選の話が出ましたが、米国株式を運用する奥野さんは、その時ファンドマネージャーとしてどう動きましたか?

「イベントに左右されない価値ある企業しか買わない」(奥野)

【奥野】 大統領選は、はっきりいって全然関係ない。というか、関係ない企業しか買っていないのです。選挙によって確かに株価は動きます。また税率の変更によって税引き後の営業利益の数字にも大きく影響するでしょう。しかし本源的価値を有する企業であれば、長期的には株価は価値に収斂せざるを得ないと考えています。誰が大統領になっても、どんな外部環境になろうとも、それをコントロールできる経営者がいるかどうかは非常に大事な要素です。基本的にS&P500に入っているような企業は、外部環境の変化への対応がきちんとできる企業であり、それができなければS&P500から弾き飛ばされてしまいます。そこはアメリカのマーケットの信頼できるところです。

Q.投信業界ではコストの安いパッシブファンドの人気が高まっています。この点についてどのようにお考えですか?

「投資対象は何か、そしてそれは富を生むのかを考えるべき」(奥野)

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「ミスプライスを捉えるアクティブファンドには良い環境」(諏訪部)

【奥野】 インデックスであろうと、アクティブであろうと、投資という行為は一緒です。投資とはオーナーになることですから、何に投資しているのか、そしてその投資対象がどれだけの富を生み出すことができるのかを考えなければなりません。そういう観点で考えた時に、果たしてTOPIXが投資対象となり得るのか――米国のS&P500が93年から6~7倍になったのに対し、TOPIXはその間どれだけのリターンを生んだでしょうか。改めて考えてみる必要があるでしょう。投資対象としてきちんと富を生むものであれば、そこで初めて手数料という要素を考慮する余地が出てくると思います。

【諏訪部】 資産形成の中心的な役割として、コストの安いパッシブ運用を持つことはとても良い事だと思います。ただパッシブ運用とは、市場に存在する多くのミスプライスを捉えることを放棄しているわけです。市場のミスプライスの総量が同じで市場参加者が減れば、それはアクティブ運用にとっては良い市場環境。私はアクティブマネージャーとして、パッシブ運用が増えれば増えるほど、私たちのやり方のアドバンテージが高まると強く信じています。資産形成のコアとしてパッシブファンドを持ちつつ、ミスプライスを上手くとっていくアクティブファンドを味付けのように持つことで、ポートフォリオのバランスをとることができるのではないでしょうか。

Q.日本では様々なテーマに絞った「テーマ型ファンド」が人気ですが、この点についてはどうお考えですか?

「売上ではなく利益を上げる会社でなければ必ず衰退する」(奥野)

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「市場が注目する投資テーマのポートフォリオを自動生成」(諏訪部)

【奥野】 テーマ型ファンドは、投資家に対して訴求する際にわかりやすいという意味では、正しい戦略なのでしょう。しかし問題は、それらの企業が本当に価値を生むことができるのかということ。例えば中国関連で売上を伸ばしている企業を集める。しかし本当の価値は営業利益であり、売上から利益を生み出すのはそう簡単ではありません。参入障壁が築かれていない企業は、売上がどれだけ伸びても利益を上げることはできず、必ず儲からないものにならざるを得ません。さらに特定のテーマで儲かるのであればそこに事業家が殺到し、競争が激化することでより利益を生みにくくなる。そういったものを対象とする投資は、基本的にはマーケット以上のリターンは出ないと思いますね。

【諏訪部】 今のお話も納得できるところですが、私はまた違った切り口から。資産運用においては、投資家の方が自分が何に投資をしているかをちゃんと理解していることが大切です。テーマ型ファンドは、投資対象がわかりやすいという意味ではとても良いと思います。ですから理想的には、世の中に存在しうるテーマ型ファンドが最初から全て存在していて、その中から投資家が自分の意志で選ぶことができることです。しかしそれは現実的には難しく、実態はこれから注目が集まりそうなテーマを運用会社が商品として設計し、設定してお金を集めるというプロセスになるわけです。するとどうしてもそこにタイムラグが生じてしまいます。私たちの運用は、報道やアナリストレポートをコンピュータモデルが分析し、日々何千という潜在的投資テーマのポートフォリオを自動生成しています。さらにその中で市場のトレンドを判別して、市場が今注目しているテーマに乗り換えるということを自動的に行っています。

【奥野】 タイムラグなく、ホットなテーマに投資ができるということですね。それは良さそうですね。今まで人のファンドに投資したことはないのですが、投資します(笑)。

Q.奥野さんが運用する「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね」は、なぜ米国株式のみを投資対象としているのですか?

「もともとアドバンテージがある米国マーケットでベスト・オブ・ベストの企業を厳選し投資する」(奥野)

【奥野】 アメリカでビジネスをすることは、もともと下駄をはいているのと同じ。3億2千万人の人口が増え続け、世界のGDPの1/4を占めるアメリカでちゃんとブランディングができれば、世界中の70億人に対して訴求ができるわけです。ただ必ず米国株に投資したいというわけではありません。重要なのは、どこに上場しているかではなく、どこでビジネスをしているか。米国株がアメリカでビジネスをしている確率が高いというだけのことです。ならばS&P500に投資すれば良いという話ですが、私たちはS&P500の会社よりも強い会社を厳選し、投資しています。そのために3カ月に一度はアメリカを訪問し、一つ一つの企業を調査し、アメリカのマーケットの中のベスト・オブ・ベストの会社を選んでいます。

【諏訪部】 私は普段ニューヨークに居ますが、おっしゃる通りアメリカでビジネスを展開する企業はいろんな意味でアドバンテージがあると思います。いま世の中を捉えようとすれば、サプライチェーンはグローバルに全てリンクしているので、日本株の評価をするにも、アメリカ株からエマージングまでグローバルに全てを見なければなりません。アメリカはそのグローバルネットワークの中心にいることが多いので、一つの効率的なアプローチだと思いますね。

Q.諏訪部さんが運用する「GSビッグデータ・ストラテジー(外国株式)」は、なぜ日本を除く先進国の株式を投資対象としているのですか?

「外国株式への投資ニーズに応える
資産形成の一つの選択肢として」(諏訪部)

【諏訪部】 私たちは、エマージングから先進国も含めて、基本的には全ての上場企業を分析対象としています。そこから投資家の方の資産形成のニーズに合わせて、望ましいポートフォリオをご提案している中で、一つの選択肢として先進国を投資対象とする「GSビッグデータ・ストラテジー」(外国株式)があります。特に日本株にすでに投資している方にとっては、先進国(日本を除く)の幅広い銘柄に投資し、アクティブファンドの中ではコストも抑えられている同ファンドは、日本株以外の資産運用のコアとなるポートフォリオとしてご提案しています。

【奥野】 私のファンドについていえば、投資家のニーズに応えるというよりも、私が買いたいファンドなのです(笑)。私はオーナーとして強い企業を買いたい。だからそういうファンドを立ち上げ、運用しているのです。おそらくオーナーの発想で長期投資を実践するファンドは他にあまりないでしょう。またそういったファンドを志向する投資家の方も日本ではまだ少ないのが現状ですが、今後増えてくると期待しています。その時に、私たちのファンドが競争優位をもったものとなる。最終的に投資家の方に対して、他とは違う価値を提供できるという自信を持っています。

Q.最後に投資家の方へのメッセージをお願いします。

【諏訪部】 私たちはクオンツモデルに基づいた運用を行う中で、どうすれば最も安定的にα(超過収益)を生むことができるかと考え続けてきました。そしてたどり着いた答えは、世界中に存在する事象をいかに広く、深く知るかが大切だということ。そのために、より多くのデータを集め、より優れた分析方法で投資行動に結び付けることが、運用成績を上げるために最も重要だと考えています。データ革命が進行し、どんな産業であってもデータテクノロジーをいかに活用するかが企業の競争をより有利にしていく中で、資産運用業界についてもそれは同じと言えるでしょう。投資家の皆さんにデータ活用型運用の妙味を感じていただき、運用成果としてご提供していきたいと考えています。

【奥野】 「オーナーになる」という発想で投資をする私たちの運用は、確かに一風変わっているかもしれません。ただその理念に共感していただき長期で投資してくださる投資家もいます。そういった投資家が最終的に求めているのは、リターンはもちろんですが、おそらくそれだけでは飽き足りない。例えばディズニーの本当の強みは何か、なぜお金をずっと張り付けることができるのかという「納得感」だと思うのです。それを提供するのがアカウンタビリティだと思っています。私たちはそれを手触り感のある形で提供していきたい。個別企業の情報について、月次報告書などを通じて発信し続けていきます。

【諏訪部】 投資家の方に納得した上で投資していただき、期待通りの投資を実現して満足していただくことが私たちの仕事。そこにミスマッチがないように透明性を確保して情報提供していくべきだと考えています。そういう意味で私たちは全く違う運用スタイルですが、最終的に目指している方向性は同じなのだと感じることができました。

【奥野】 そうですね。そして私と諏訪部さんでは、α(超過収益)の源泉が違います。本当の意味で分散投資ができる両極端なファンドかなと思います。上手くまとめることができました(笑)。

いかがでしたでしょうか?
その運用手法は全く異なる、諏訪部氏と奥野氏でしたが、“投資”というものにプロフェッショナルとして真摯に向き合い、投資家に良いファンドを提供したいという想いは同じです。

そんな二人が運用するファンドに興味がある、という方はぜひこちらもご覧ください!

プロフィール

  • 諏訪部 貴嗣
    (すわべたかし)

    ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社
    計量投資戦略グループ(ニューヨーク)
    リード・ポートフォリオ・マネージャー及びアクティブ・エクイティ・リサーチの共同責任者

    【経歴】
    1995年東京工業大学理学部卒、2011年総合研究大学院大学博士課程を修了。
    野村総合研究所および野村證券金融経済研究所に勤務後、2004年にゴールドマン・サックス証券グローバル投資調査部のジャパン・ポートフォリオ・ストラテジー・グループのメンバーとして入社。
    2009年にゴールドマン・サックス・アセットマネジメントにシニア・エクイティ・リサーチャーとして異動。

  • 奥野 一成(おくのかずしげ)氏

    奥野 一成
    (おくのかずしげ)

    農林中金バリューインベストメンツ株式会社
    常務取締役(最高運用責任者)

    【経歴】
    1992年京大法卒、日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て03年に農林中央金庫入庫。07年より、「長期集中投資自己運用ファンド」の運用を始める。14年から現職。

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  • 本情報は、2018/4/10の取材時点のものです。
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