レポート・コラム

インフレ時代に備える~環境激変の中に潜むリスク~

インフレ時代に備える~環境激変の中に潜むリスク~

最近、「インフレ(物価が継続的に上昇する現象)」がニュース等で取り上げられる機会が増えています。日本ではバブル崩壊以降、デフレ(物価が継続的に下落していく現象)が続いていましたが、ここ最近はインフレが加速し、人々の生活にも大きな影響を与え始めています。身近なところでは、7月にiPhoneの日本円価格が最大で約19%値上がりし、8月の電気代(一般家庭平均)については前年同月比で約3割上昇しています。また、電気だけでなくガス、ガソリンの価格上昇はあらゆる商品やサービスのコスト増につながり、徐々に価格転嫁が進んでいる状況です。こうした環境の変化(デフレからインフレ時代への転換)から、自分の資産をインフレから守るために、資産運用を検討し始める人も増えています。本記事では、最近の環境変化と、それにより高まるグローバル投資の必要性について解説します。

目次

  • インフレが私たちの生活に与える影響
  • なぜ今、インフレが起きているのか?
  • 足元のインフレは続くのか?
  • 円安とインフレが長期化するリスクに備える

インフレが私たちの生活に与える影響

2022年になり、食品価格や電気料金などの値上げが相次ぎ、インフレの影響を感じる機会が増えています。日本はインフレに転じたばかりですが、それでもこれだけの影響が出始めています。仮に、インフレが長期的に続いた場合はどうなるのでしょうか?一例として、老後資金問題を挙げて考えてみたいと思います。「平均寿命が高くなっている昨今、高齢夫婦無職世帯の平均的な例で見ると、老後の資金として2,000万円が不足している」という趣旨が書かれた報告書が、令和元年に金融庁・金融審議会によって発表されました。これが「老後2,000万円問題」(※1)です。しかし、ここで触れられている「2,000万円」には、物価上昇は考慮されていません。そこで、仮に毎年物価が2%ずつ上昇することを加味してこれを再計算してみます。今仮に45歳の人が20年後の65歳の時に2,000万円必要だとすると、1年に2%の物価上昇を考慮に入れて計算し直すと、計算上は2,000万円ではなく約3,000万円必要(※2)である、という結果になります。
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このように、物価が上がると、同じ水準の生活をするにしても必要な資金が増えるため、インフレ下では、実質的に現金の価値が目減りしてしまうことになります。物価上昇に合わせて、給与や年金が今後増えていくという保証があればいいですが、現実的にはそうならない可能性も十分に考えられます。さらに物価が一年で2%上昇するというのは、日銀(日本銀行)が公式に「2%の物価安定の目標」を掲げています(※3)ので、現実に起こる可能性があります。つまり今後は、物価が上昇していく、ということも加味して資産形成をする必要性がありそうです。

(※1)老後資金問題:金融庁金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(2019年)における、「夫65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ 20~30 年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で 1,300 万円~2,000 万円になる。この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたもの」との記載を元にしています。

(※2)計算期間中において物価が継続的に2%上昇すると仮定し、年複利にて計算しています。税金等は考慮していません。

(※3)2%の「物価安定の目標」:日本銀行「金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について」(2013年1月22日)

なぜ今、インフレが起きているのか?

現在インフレが起きているのは、供給不足円安が主な原因です。

理由1) 供給不足によるインフレ

現在の供給不足の原因は主に3つが挙げられます。一つ目は、世界的に新型コロナウィルスの感染状況が落ち着き始め、それに伴い消費活動が急速に戻りつつある一方、工場や物流の稼働率の回復やサービス業などで従業員の職場復帰が遅れているためです。二つ目は、脱炭素を目指す機運が世界的に高まり、原油・天然ガス・石炭などに対する投資が手控えられている一方、それに対応するための代替エネルギーの整備は遅れがちで、需要と供給のバランスが崩れやすい(需要過多)状況になっているためです。三つ目は、ウクライナ問題を契機に、多くの国が脱ロシアの貿易構造を目指し始めているためです。特に、ヨーロッパは天然ガスの約40%をロシアに依存していたため、脱ロシア依存を進める過程で、エネルギー価格の上昇を引き起こしています。安価な天然ガスを世界に供給していたロシアからの調達をやめようとする動きによる影響が出始めています。

理由2) 円安によるインフレ

仮に1ドルが100円から130円になった場合、今まで1ドル=100円で輸入していた商品の日本円価格は130円となるので、日本で販売する際の価格は上げざるを得ません。円安が進行すると輸入品の販売価格が上昇し、それによって物価上昇(インフレ)が引き起こされやすくなります。 では、なぜ足元で円安トレンドになっているのでしょうか?原因は主に2つ考えられます。 まず一つ目の原因は、貿易収支が悪化している点にあります。海外から物を輸入する場合、円を外貨に換えてから代金を支払うのが普通です。よって輸入が多くなると円を売って外貨に換えることが多くなり、円安圧力となります。過去、日本は、車や電気機器などの輸出が多く、貿易黒字が常態化しており、円高圧力が強い状況でした。しかし、2010年代以降は、工場の海外移転の進展や、エネルギー・食料品の価格上昇による輸入金額の増加などにより、貿易収支構造が大きく変化しました。特にエネルギー価格が上昇する局面では、貿易赤字となることが多くなってきています。
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二つ目の原因は、日本とアメリカの金利差が拡大している点にあります。一般的に投資マネーは、金利が低い方から高い方に流れる傾向があります。米国債と日本債を比較して、米国債の方が金利が高い状況の場合、日本債を売却しドルで米国債を購入する傾向が強くなり、結果として円が売られてドルが買われ、円安ドル高になります。
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足元のインフレは続くのか?

日本では長らくデフレが続いたため、現在のインフレを一過性と考える人もいるかもしれません。ただ、ここ数年で起きた構造変化から、『円安ーインフレ』が続くとの見方が増えてきています。また、日本の場合は、「悪いインフレ(物価は上がるが賃金が上がらず生活が厳しくなる)」になる可能性もあり、政府も様々な対策を始めています。そして、下図のように「悪いインフレ」「負の連鎖」をもたらす可能性がある、とも言われています。
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  1. 現在の円安トレンドが加速することで、輸入物価が一段と上昇。
  2. 輸入物価の上昇により輸入金額が増加。輸出が増加しなければ、貿易収支が悪化。
  3. 貿易収支の悪化が円安圧力を強め、さらなる輸入物価の上昇を招く。

この連鎖を断ち切るには、「円安メリットを生かして輸出を増やす」のが手っ取り早いとも思われますが、ここ数十年で企業が工場の海外移転を進めたため、日本からの輸出が増えにくい構造になっている状況です。また、「円安で輸入価格が上がったから輸入量を少なくすればいい」とも考えられますが、生活必需品であり且つ日本での生産が難しい、食料品やエネルギー資源等について輸入に依存している割合が多く、削減は容易ではない状況です。もちろん、為替動向は、貿易収支以外の要因でも変動するため、貿易収支の見通しだけで円安が続くとは言い切れません。しかし、貿易収支構造が昔とは大きく変わっており、将来の資産形成を行ううえでは、こうした「円安-インフレ」が招く負の連鎖リスクが高まってきていることについて、念頭に入れておく必要性はありそうです。

円安とインフレが長期化するリスクに備える

2022年、円安とインフレが、国民生活のリスクになることの一端が見えました。特に、こうした傾向が長期化した場合、私たちの将来の資産形成にも大きな影響を与えることが想定されます。こうしたリスクに対して、政府の今後の対応に期待するところもありますが、個人でできる対策として「インフレに耐性のある資産」「外貨建ての資産」を持っておくことが大切です。そして、この二つを手軽に実行できる投資方法のひとつがSBIラップによるグローバル投資です。SBIラップは、AIを活用して相場を先読みしながら、8種類の専用の国内投資信託を通じて米ドル建ての資産に投資し、グローバルインデックスを上回るパフォーマンスを目指します。また、AIを活用して「3つの予測」を行うことで、あらゆる相場に対応することを目指しています。一例として、悪いインフレによって景気が後退しそうだ、或いはインフレを乗り越えて景気が良くなりそうだ、などという「景気循環の予測」を行っており、相場見通しに合わせて投資配分を変更しています。

インフレに弱い資産が「現金」や「日本の銀行預金」です。円安とインフレが長期化するリスクに備えるために、保有資産の一部をグローバル投資に振り向けることについて、その必要性を本格的に考える時期にきており、この機会にSBIラップのご利用を検討していただければと思います。
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*本グラフは、将来の運用成果等を示唆又は保証するものではありません。

*バックテストの期間は2012/1/4から2021/12/30とし、運用にかかる費用については、SBIラップは手数料および信託報酬として運用資産額の0.746%(年率・税抜)を、一般的なロボアドバイザーでは手数料として運用資産額の1%(年率・税抜)を徴収し、分配金は投資の拠出金銭に自動的に組み入れたものとして計算しています。なお、本テストにおける実績は、当該期間における実質的な投資対象となるETFの時価評価額を用いて計算を行っているため、当該ETFの経費率も考慮されています。分配金やリバランス時の譲渡益にかかる税金は考慮していません。小数点以下を切り捨てて表示しています。

*「一般的なロボアドバイザー」の運用実績は、一般的な運用アルゴリズム(ノーベル賞を受賞した理論に基づき、金融機関において広く使われている平均分散法を採用。平均分散法における期待リターンはCAPMを用いて算出しており、リスク許容度はやや高めとし、5%~40%の保有比率制限を設けて最適ポートフォリオを算出)を用いて、8種類の資産クラスのETFに分散投資を行ったと仮定したシミュレーション結果を示しています。

※本コラムについて

・投資環境に関する過去の事実等の情報提供や、作成時点での当社の見解をご紹介するために作成した資料です。

・記載内容は作成時点のものであり、将来の市場環境の変動や運用成果等を示唆又は保証するものではありません。

・信頼できると考えられる情報を用いて作成しておりますが、その正確性、完全性等について保証するものではありません。