日本には今、5,800本を超える数の投資信託が存在します。
その中からご自身で投資するファンドを選ぶのは、特に投資を始めたばかりの方には難しいものです。
ファンドを選ぶ時の重要なポイントに、「大切なお金を安心、納得して運用を託すことができるか」という点があるとSBI証券では考えています。
今回は『ファンドマネージャー対談』企画をオンラインで実施!
レオス・キャピタルワークスのお二方と、3社のファンドマネージャーへの対談インタビューを行いました。
投資・運用に真摯に、そして熱い想いで向き合っておられる皆さまからの一言一言は、きっと投資家の皆さまにも届くのではないでしょうか。
ぜひ、投資を楽しんでいただくためのヒントとして、3回にわたる対談企画、じっくりご覧ください!
第1回は、三井住友DSアセットマネジメントで「三井住友・中小型株ファンド」や「配当フォーカスオープン」を運用する木村忠央さんと、レオス・キャピタルワークスで「ひふみプラス」などひふみ投信シリーズを運用する藤野英人さんの対談です!
レオス・キャピタルワークス
代表取締役社長・最高投資責任者(CIO)
藤野 英人 氏
三井住友DSアセットマネジメント
株式運用部 シニアマネージャー
木村 忠央 氏
「相場動向に合わせて運用方針をコロコロ変えるのは、失敗の元です」(木村さん)
「運用方針を守って長期で結果を出す投資は、まさにアクティブファンドの魅力ですね」(藤野さん)
藤野さん:「ひふみプラス」は主に日本株で運用していますが、世界株にも投資をしているのが少し特徴的かもしれません。小型株から中型株、大型株までバランスよく投資しますが、一般的な日本株ファンドと比べると圧倒的に中小型株の組み入れが多いのが特色の1つです。
中小型株ファンドの魅力は、それぞれが個性的なところにあると思っています。大型株ファンドの運用はTOPIX(東証株価指数)といった「ものさし」に対して勝ったか負けたかが大事で、実際のところ、時価総額に占める割合の高い銘柄をどう組み入れるかで運用成績が決まってしまう面があります。一方、中小型株にもいろいろな種類のインデックスはありますが、実質的にあまり関係なくて、中小型株のファンドのポートフォリオはファンドごとに相当違いますよね。その中身に、ファンドマネジャーや運用会社の個性や哲学が出る。どういう社会が素晴らしいと思っているのか、どういう会社が好きか、どういう会社が高くてどういう会社が割安なのかといったことについて、10人10とおりの意見があります。投資の世界には正解も不正解もなくて、それぞれの方針とやり方に個性があるということが大事だと思っています。
木村さん:僕の場合、アクティブファンドのファンドマネジャーとして強くこだわっているのは、明確な運用方針をきちんと持って、それを継続して行うということです。「三井住友・中小型株ファンド」の場合、絶対的な目標株価水準に基づいて運用する方針で、企業調査や分析によって個別銘柄ごとに目標株価を算出し、それより安ければ買い、高ければ売ります。
一番気をつけているのは、短期的な相場動向に左右されないようにしようということです。僕は1994年に当時の山一証券投資信託委託に入社して以来、ずっと日本株の運用をやっていますが、株式市場というのは強気になったり弱気になったり物色の動向が変化したりと本当にコロコロ変わります。そういう株式市場の中で僕らは運用していかなきゃいけないわけで、相場動向に合わせて運用方針をコロコロ変えるのは失敗の元なんです。でも大きい声じゃいえませんが、短期の運用成績を見てあれこれ言う人もいるんですよ。正直に言うと、一番うるさいのは社内(笑)。
藤野さん:分かります。だから僕、大手の会社から脱出しました(笑)。
木村さん:「パフォーマンスが悪い。どうやって改善しますか?」って聞かれるんですよ。すぐに改善してほしいと言われれば、答えは1つしかなくて、相場動向にそった運用するしかありません。でも、それをやりだすとコロコロ変わる相場に合わせて自分の運用方針も変えないといけなくなるんです。そうやって運用に失敗し、業界からいなくなったファンドマネジャーをたくさん見てきました。だから「このファンドはこういう運用方針で、こういう哲学があって、すみませんがそれしかやりません。でも、どんな環境下でもそれはやりつづけます。どんな抵抗があっても変えません」と一生懸命言い続け、やり続けることにこだわっています。
藤野さん:僕は木村さんと同じ世代だと思うのですが、相場を見て投資しているファンドマネジャーで、長く続く人はあまりいないんですよ。調子がいいときはいいんだけれど、マーケットには必ず浮き沈みがあるので、沈んだ時にマーケット以上に大きな打撃をうけて結果的にいなくなってしまう。お客さまのためにも、運用会社のためにもならないんですよね。
でも、運用方針に忠実に運用するというのは本当に難しいんですよ。それは、2つの圧力があるから。1つは社内からの圧力、そしてもう1つがお客さまからの圧力。
もちろん、お客さまに運用方針をよく理解していただければいいんだけれど、ファンドマネジャーは営業のすべてにコミットできるわけじゃないから、どういう背景で投資してもらったのかがわからないところもある。実際のところ、たとえば「中小型株に多く投資しているファンドだから値上がりするだろう」という期待だけで投資する人もたくさんいると思うんです。そういう人からすると、「今、値上がりしている銘柄をなんで買わないんだ」「値下がりした時にどうして売らないんだ」ということになる。
木村さん:むちゃくちゃ我儘を言われますよね(笑)。
藤野さん:運用会社もお客さまも、どうしても「短期的に収益を上げたい」っていう気持ちが働くから、「目先のマーケットに照準を合わせろ」というプレッシャーがすごくあるんですよね。それにどう対処するのかというと、たぶんコミュニケーションすることと運用の哲学を貫くことしか方法はない。結果的に生き残っているファンドマネジャーって、これをちゃんとやれた人だけだと思います。木村さんみたいに、運用方針を守って長期で結果を出す投資というのは、まさにアクティブファンドの魅力ですよね。
「相場に左右されないよう、仕組みを作って長期的に投資しています」(木村さん)
「中長期で投資すれば、銘柄選択の効果はきちんと現れるんですよ」(藤野さん)
木村さん:僕は短期的な売買をしません。1銘柄あたりの平均保有期間は5年以上です。こんなふうに言うと「本当に短期的な相場動向に左右されないんですね」と思われるかもしれませんが、僕も人間ですから、けっこうグラグラするんですよ(笑)。だから、なるべく相場に左右されないような仕組みを作って長期的に投資するようにしています。例えば、「三井住友・中小型株ファンド」は3年先まで業績予想を作って企業価値を計算し、それに基づいて算出した「目標株価」で売買の判断をします。この「3年先までの業績予想」を一生懸命考えると、景気動向や為替の変動などと関係なく、きちんと業績を出す会社が選べるようになってくるんです。
藤野さん:「長期投資」とは何かっていうのは、すごく大事。「長期で持てば株価は上がる」ということじゃないんですよね。だめな会社を長期で持っても、下がるだけですから。じゃあ長期投資の意味は何なのかというと、マーケットの動きが中立化するということだと思います。
マーケットは上がったり下がったりしますし、数ヶ月や半年、1年といった期間で見ると、株価は企業業績よりも市場動向の影響を強く受けます。でも、長期的に見れば株価はその会社の価値を反映するものですよね。だから3年、5年、10年単位で見れば、ファンドマネジャーの読みとそうブレることなく期待通りの株価に近づくんです。だから中長期投資がなぜいいのかというと、「中長期で保有すれば値上がりする」のではなく、「中長期で投資すると銘柄選択の効果がきちんと現れて、アクティブファンドのファンドマネジャーの実力が発揮できる」ということなんだと思います。
「中小型株は、超成熟社会の日本でこそ魅力があると思っています」(木村さん)
「未来を作ろうと頑張る人がわんさかいる、それが中小型株の世界です」(藤野さん)
木村さん:日本経済って、成熟しまくっているじゃないですか。だから僕はマクロ経済の成長はあまり期待できないと考えていて、そんな環境の中で魅力的なのが中小型株だと思っています。
政府は経済を活性化させようと、つねにさまざまな政策を打っています。過去にはいろいろな首相がいて、もちろん短命なケースもありましたけれど、経済政策は必ず打っている。その中身を見ると、すべて小粒な政策の集合体なんですよね。これは1996〜1998年の橋本龍太郎政権から変わらない方針で、「重厚長大産業を成長させよう」という政策なんてまったくなくて、「規制緩和によって新しい産業を生み、成長させましょう」という政策しかなかった。そして、実際に政府の経済政策に関連する企業が生まれ、成長してIPOに至るということが繰り返し起きているんです。相場の浮き沈みはあるけれども、その流れの中で中小型株はずっと高成長を続けて来ることができたと思います。だから高齢化が進んで超成熟している日本社会の中でこそ、中小型株は魅力があるんです。
一般に中小型株は「値動きが大きく、短期売買で儲けるもの」というイメージがありますが、魅力はそこだけじゃない。私はいつも「中小型株は短期でバリバリ売買するものじゃない」と一生懸命“布教”しているんです。政策にフォーカスすれば長期で投資できて、意外に面白いんですよね。
藤野さん:この10〜20年でいうと、僕は「日本の停滞」というより「大企業の停滞」だと思っているんですよね。大企業が官僚化しちゃって、官僚化をまぬがれた米国と官僚化してしまった日本の差が出てしまった。でも、日本にも官僚化していない人、「どんな未来を作ろうか」と頑張っている人はわんさかいます。そういう人が集まっているのが中小型株の世界であり、そこに中小型株ファンドの魅力があると思っています。
私は、これからの日本がどんどん楽しくなるということに関してすごく自信があるんです。「日本は未来がない、少子高齢化でもうダメだ。だから日本株もダメだ」と言う人は多いけれど、全然、そんなことはない。未来に向けて頑張っていて、能力も目線も高い人がどんどん起業し始めていて、そのパワーはむしろ増していると感じます。一昔前と比べれば起業のコストはかなり下がりましたし、この20年間でIPOした起業家の中からエンジェル投資家もたくさん出てきて、未来に向けて頑張る若者が出てくると多くのエンジェル投資家が支援する流れができています。あと10年も経てば、起業の世界はもっと熱くなるでしょう。
「安値で放置されていた、キラッと光る会社の株価が上昇しやすい局面になりそうです」(藤野さん)
「今後は物色が広がりそう。そうじゃないと、商売やってられません(笑)」(木村さん)
藤野さん:ここ1、2年間は「値上がりする株が上がる」という感じが強かったですが、モメンタムはいったん止まるんじゃないかという気がしています。足元では一部のIT銘柄とEV銘柄がバブル化していますが、「今後はもう少し腰を据えて、本当にいい会社に投資をしよう」ということになりつつありますよね。しっかりした日本の中小型株、今まで安値で放置されていたけれどキラッと光るところがある会社は、上昇しやすい局面になりそうです。きっと木村さんはそこを虎視眈々と狙っていると思うし、僕らも木村さんの考え方に近いところにポートフォリオをシフトしていく必要があるかなと思っています。
木村さん:僕が結構苦労したのがいつだったかを思い返すと、「そうだ、トランプ相場だ」と。トランプさんが選挙に勝って、「景気が良くなりそうだ」ということでインデックスにわーっとお金が入ったんですけれど、実際にトランプさんが大統領になってどうだったかというと、そこからずっとインデックスを中心に上昇が続いたわけではありませんでした。インデックスへの流入がいったん止まったあとで物色が広がってくるというのは、アベノミクスの時もそうだったんですよ。だから今回も、この後は物色が広がると思っていますし、そうじゃないと商売やってられませんから、「頼む!」という感じですね(笑)。
藤野さん:今まではトレンドをうまく追えるトレーダー的な感覚の人に非常に強い相場だったけれど、ここからは銘柄をしっかり選別できるストックピッカーが勝ちやすくなるでしょうね。地味で地道な銘柄がポツポツ拾われていく、そういうことを真面目にやる人たちが勝つ相場。木村さんを見習って頑張ります(笑)。
投資家の皆さんへメッセージ
木村さん:僕は運用方針や哲学を持ってそれに基づいて運用していますが、これはあくまでも1つのやり方。藤野さんが言う通り、投資に「正解」はないと思っています。ですから投資家の皆さんには、まずファンドマネジャーがどういうものさしを持ってどう銘柄を見て投資しているのかを知っていただきたいんです。その上で、運用方針に自分が共感できるのか、自分の感覚に合っているのかを考えてアクティブファンドを選んでほしいと思っています。僕の方針が合うと思ったら僕のファンドに投資してほしいし、藤野さんの考え方が合うなら藤野さんのファンドに投資してほしい。投信はパフォーマンスでランキングを作れますし、それも1つの選び方ですが、運用方針や哲学を確認して投資したほうが、少なくとも後悔はしないんじゃないかと思います。
藤野さん:株式投資を博打のようなものだと考えている方もいると思いますが、投資の本質は、企業を応援して新しい社会作りに手を差し伸べることにあります。消費者、投資家、従業員に受け入れられる会社は、長期的に時価総額が増大し、その結果として投資成果が出る。その大きな流れを信じてもらいたいですね。期待も込めて言えば、ここからは中小型株の本当の魅力がにじみ出る1年になるのではないかと思います。インデックスファンドもいいですが、ポートフォリオの一部を中小型株に投資するアクティブファンドに回すこともぜひ考えてみてください。