来年も活躍期待の2022年IPO銘柄は?

来年も活躍期待の2022年IPO銘柄は?

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2022/11/02

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2022年IPO銘柄が堅調で東証グロース市場を下支え

10/25(火)~11/1(火)の東証マザーズ指数は1.1%上昇しました。同期間における日経平均株価およびTOPIXのパフォーマンスはともに+1.6%で、それを若干下回りました。

米東部時間11/2(水)に結果発表のFOMC(米連邦公開市場委員会)において、「12月のFOMCで利上げ幅を縮小することが示唆される」との期待が強まり、内外の株式市場は堅調に推移しました。ただ、アップルを除くGAFAM等主要テック企業の決算が不調だったこともあり、米グロース銘柄が相対的に軟調となり、その影響で東証マザーズ指数の上昇幅が抑制されました。

時価総額上位銘柄の騰落率(10/25~11/1)では、M&A総合研究所(9552)の上昇が目立ちました。10/28(金)に今期(2023/9期)も営業利益が5割近い増益になるとの予想を発表しています。同社の株価は10/31(月)にはストップ高となり、11/1(火)も続伸となりました。

なお、同社は2022年に新規上場した銘柄ですが、東証マザーズ指数が堅調さを取り戻していることもあり、上値での戻り売りが少ないと期待される直近上場銘柄が物色されやすかったようです。株価上昇が大きかった東証マザーズ指数構成銘柄(10/25~11/1)では、上記のM&A総合研究所に加え、FPパートナー(7388)、メンタルヘルステクノロジーズ(9218)、サンウェルズ(9229)等も2022年に新規上場をした銘柄となっています。

引き続き圧倒的なパフォーマンスを残したのが、スマホ向けにゲームを開発するバンク・オブ・イノベーション(4393)でした。新作大型RPG(ロールプレイゲーム)の『メメントモリ』について、9/16(金)付で「10/18のリリース」を発表しています。その後、9/27(火)には同ゲームについて「事前登録者数100万人」を発表し、9/27~10/5の株価は7連騰となりました。続いて10/18(火)には同ゲームの「配信開始」を発表し、同リリースの中で「2023年9月期は営業黒字を見込んでいる」ことを明らかにしました。

10/26(水)取引時間中には、『メメントモリ』のリリースから6日間の課金高が18億円(1ドル148円で換算)に達したこと等が発表されました。結局、同社株は10/25(火)終値に対し、11/1(火)終値が121.3%も上昇する急騰劇となりました。

図表1 日経平均株価と東証マザーズ指数の推移

図表2 主な東証マザーズ指数構成銘柄の値動き

図表3 10/25(火)~11/1(火)で株価上昇が大きかった東証マザーズ指数構成銘柄

来年も活躍期待の2022年IPO銘柄は?

上記したように、足元の東証マザーズ指数を構成するグロース銘柄の中では、2022年のIPO銘柄の活躍が目立っています。しかし、2022年のIPO市場自体はやや波乱含みでした。ウクライナ戦争を経て、株価や商品相場が波乱になったり、東証再編があり、企業のIPOを巡る環境も大きく揺れた年になりました。

10月末時点で、2022年の東証における新規上場銘柄数(TOKYO PRO Market=を除く)は59社となっています。2020年同月末の67社、2019年の同64社に対して極端に見劣っている訳ではないですが、2021年同月末の92社を大きく下回っています。ただ、波乱色漂う株式市場に上場できたこと自体、2022年のIPO銘柄には「少数精鋭」が多かった可能性もあるのではないでしょうか。

2023年以降までも見据えた中長期のスタンスに立った場合、2022年のIPO銘柄ではどんな銘柄が有望なのでしょうか。そこで、今回の「新興株ウィークリー」では、以下のようなスクリーニングを行ってみました。

(1)2022年1~10月に東証グロース市場に上場
(2)公開価格に対して初値が上昇
(3)過去3期(データがない場合は最低2期)売上高が前期比10%超増加
(4)過去2期(データがない場合は最低1期)経常利益が増加
(5)今期の会社予想経常利益が増益(黒字転換含む)見通し
(6)直近決算が四半期決算の場合、経常利益(累計)の通期会社予想に対する進捗率が「標準」以上
(7)11/4(金)までに次回決算発表を予定している銘柄は除く

IPOしたばかり企業は、若い企業が相対的に多いと思いますが、その段階で売上高や利益が増えないようでは、高い成長は期待しにくいと思います。利益に関しては、企業が思い切った投資に踏み切る時に減益に陥ることもありますが、投資を回収できないケースも多くみられます。投資家が投資の中身を理解して、減益見通しの企業に投資し成果を上げていくのは、実際には難しいと思います。利益を確保しながら、投資を継続していく企業の方が、投資家には受け入れられやすいのが現実だと考えられます。

図表4の銘柄は上記の条件をすべて満たしています。掲載は、初値から直近値(11/1終値)までの上昇率が高い順に10銘柄までとなっています。

図表4 来年も活躍期待の2022年IPO銘柄10選

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  直近値(11/1) 公開価格→初値 騰落率 初値→直近値 騰落率 高値→直近値 騰落率
5032 5032 5032 5032 ANYCOLOR 12,010 214.4% 149.7% -12.9%
9218 9218 9218 9218 メンタルヘルステクノロジーズ (11/14) 1,814 39.7% 106.1% -0.1%
7794 7794 7794 7794 イーディーピー (11/11) 16,230 64.0% 97.9% -7.3%
5038 5038 5038 5038 eWeLL (11/11) 4,110 130.0% 5.1% -4.3%
9563 9563 9563 9563 Atlas Technologies 2,425 61.1% 4.5% -8.9%
9219 9219 9219 9219 ギックス 1,126 2.8% 2.4% -36.6%
7112 7112 7112 7112 キューブ (11/14) 1,802 2.3% -17.7% -20.8%
9561 9561 9561 9561 グラッドキューブ (11/14) 1,131 56.3% -24.6% -28.4%
7110 7110 7110 7110 クラシコム 1,022 7.0% -32.8% -47.9%
7140 7140 7140 7140 ペットゴー (11/9) 840 135.5% -35.1% -42.0%
  • ※BloombergデータもとにSBI証券が作成。
  • ※銘柄名右のカッコ内数字は決算発表予定日。ただし、11月に予定されている銘柄以外は記載していません。
  • ※高値は上場来高値を指します。

eWeLL(5038)~在宅医療・介護分野でDXを実現。新たなサービス追加で成長継続に期待

★日足チャート(2ヵ月)

  • ※データは2022/11/2(日足) 11:00 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■増加する訪問介護ステーションの業務を支援するサービスを提供

社会の高齢化が加速しつつあり、2060年には日本の人口の40%が高齢者(内閣府)になると予想されています。こうした中、現在は医療・介護の中心は病院や施設になっています。一方で、高齢化が加速すると、病院や施設の不足が深刻化してゆくと予想されます。

そうした中、2012年4月に「介護保険法」が改正され、高齢者が住み慣れた地域で自立して生活できるよう、医療・介護・予防・住まい生活支援サービスが切れ目なく提供されるシステムの構築が目指されることになりました。
地域の医療・介護については、訪問介護ステーションがその要になっていくと考えられます。このような経過から、日本の訪問介護ステーション数は2012年の6,300ヵ所弱から2022年は14,000ヵ所超へと急拡大しています。

当社は2012年に設立され、訪問介護ステーション向けに、業務全般にわたる課題の解決に対処するSaaS(クラウドで提供されるソフトウェア)の提供を行っています。

訪問介護ステーションは、高齢者等の看護を行うほか、国民保健連合会にレセプト(訪問看護療養費明細書)を提出する等の業務を行っています。当社は訪問介護ステーションに対し、訪問介護用電子カルテ、勤怠システム、保険システム等の業務を効率化させるクラウドサービスを提供しています。


■BPO(アウトソーシング)サービスにも展開

前述したように、医療・介護市場が成長し、訪問介護ステーションの増加が続く中、2017/12期から2021/12期にかけ、当社の契約数は年率56.3%で伸び、同期間の売上高も前期比64.0%のペースで拡大してきました。

これに対し、当社の経常利益は2019/12期までは赤字でしたが、20/12期に2.03億円、21/12期に4.03億円と急速に立ち上がり、今期も5.22億円と3割弱の成長が予想(会社側)されています。当社は四半期連結財務諸表を作成していませんが、上半期の経常利益は3.35億円で、通期計画に対する進捗率は64%と、「標準」である50%を上回っており、短期業績も好調であると考えられます。

国民保健連合会にレセプト(訪問看護療養費明細書)を提出する業務は、訪問介護ステーションには不可欠な業務でありながら、その作業は非常に煩雑で、関連する医療事務資格の試験の中でも難関であると言われています。当社は2021/1より、このレセプト作業を代行するBPO(業務の一部を他社にアウトソーシングすること)サービスの提供を開始し、新たな成長の材料となりつつあります。

当社は今後も、提供するサービスに追加機能をリリースすることで、契約の新規獲得を目指す方針です。

ペットゴー(7140)~自社ブランド拡大で順調に成長中

★日足チャート(1年)

  • ※データは2022/11/2(日足) 11:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■ペットヘルスケア製品をオンラインで販売

犬・猫向けのペットヘルスケア分野の中でも、Eコマースで活躍する企業です。当社は、“ネット上のペットヘルスケア市場”という新たな市場を創造したことで成長を遂げました。一部で実店舗の運営をしているものの、売上高の9割以上はEコマースによるものです。(2022/3期時点)

幼少期から犬と育ってきた当社代表には、現代社会に必要とされているペットに少しでも長生きしてほしいという思いがありました。
2004年の創業当時は、ペットショップ等で取り扱われているいわゆる普通のペット用品の販売から事業をスタートしています。その後、まもなくして現在のEコマースサイト展開の先駆けとなる自社オンラインサイトを開設し、2008年に現在の主要事業であるペットヘルスケアの分野へ進出しています。

元来、ペットの世界には医薬分業がないため、薬局やドラッグストアのような存在がありません。病気予防及び健康改善を目的としたフード・用品等のいわゆるペットヘルスケア商品の過半数は動物病院経由で購入されています。そのため、定価で販売されている商品代金のほかに診療費も必要となり、飼い主にとってコストがかさむ傾向があります。

その点に注目した当社はテクノロジーを駆使してペットに関するデータを蓄積し、ペットに最適化されたEコマース立ち上げ、動物病院からオンラインに飼い主をスイッチさせることで事業を発展させてきました。会社資料によると、“オンラインかつヘルスケア”という領域で当社同様の事業規模を有する競合はいないとしています。


■自社ブランドの拡大で成長加速
創業来から蓄えた膨大な量のペットデータとDXを活用した企画・開発力を兼ね備えた当社は、2020年より自社ブランド製品の販売を開始しました。これが功を奏し、当社業績は2021/3期に営業損益が黒字転換となり業績成長のきっかけとなりました。自社ブランドの更なる拡大を図るため、2022/4に新規上場をして調達資金を行っています。

自社ブランドの製品は、企画から製造、販売、宣伝に至るまで一貫して当社が担う方式で作られています。中間マージンが発生しないことに加え、工場を持たず他社に製造を委託するファブレス製造です。よって、自社ブランド製品の販売拡大が粗利率の向上へつながりやすくなっているとみられます。

直近決算にあたる2023/3期第1四半期の営業利益は、前年同期比24%超増、売上高に対しての割合を表す営業利益率も同0.3ポイントの上昇を示しました。当社は同決算発表において増益の要因として、自社ブランドの成長が貢献したことを挙げています。また、通期(2023/3期)の業績見通しに関しても、売上高・営業利益ともに順調な進捗率を示していました。次の決算は、中間決算にあたり、2022/11/9(水)に発表予定です。

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