日経平均の方向性を左右!~採用銘柄の業績は?

日経平均の方向性を左右!~採用銘柄の業績は?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2022/10/25

株式市場は、米の積極的金融引締め緩和と決算発表に期待増

10月第3週(10/17~21)の日経平均株価(週足)は、前週末比200円18銭安(-0.7%)と週足ベースで下落しました。
10/17(月)は、前週末の10/14(金)に米国株が期待インフレ率の上昇等を受け大幅安した影響で、下落スタート。その後も週末まで、基本的には米国市場に連動する展開でした。

同期間の米国市場は、NYダウは+4.9%、NASDAQは+5.2%となりました。東京市場より一足早く、本格的な決算発表シーズン突入となり、内容が好感された銘柄に買いが集まりました。

10/14(金)の引け後から週初(10/17-18)にかけての米国市場では、ゴールドマンサックス等の金融株や動画配信大手ネットフリックスの決算発表が先駆けて行われました。前年同期比で減益となる企業が多かったものの、事前の業績見通しが慎重であったため、実際の数値が上振れとなったことが好感された模様です。7-9月期の決算に関しては、世界的景気見通しの悪化から、事前の下方修正や悪材料の織り込みが進んでいたこともあり、予想を上回る企業が多かった面があるようにも考えられます。金融株の決算発表後、市場はリスクオンムードをまとい始めました。同様のムードは東京市場にも影響をもたらしています。同週の市場の動きを振り返ると、週序盤から市場参加者の目線がマクロから企業決算というミクロの視線にかわり始めたことが想定されます。なお、好決算銘柄への物色は、当レポート執筆時(10/25時点)でも続いています。

10/19(水)-20(木)の週半ばは、経済指標へ反応し、株式相場は軟調な推移となりました。英9月消費者物価(CPI)が約40年ぶりの高水準となり、景気後退深刻化の懸念が強まったためです。この影響で、米長期金利は14年ぶりとなる水準まで上昇し、株安の大きな要因のひとつになっています。ただ、好決算銘柄に下支えされ、下げ幅自体はあまり大きくはありませんでした。

10/21(金)は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが11月FOMCにおいて、12月会合で利上げペース緩和をする場合どのように市場にシグナルを発するのかが議論の焦点になるであろうと報じました。これに加え、サンフランシスコ連銀総裁やシカゴ連銀総裁等のFRBメンバーが過度な金融引締めに対し警戒感を示しており、金利上昇が一服し、株式市場は全面高商状となりました。

同週では株式市場がリスクオンムードになったためか、年初来から下げ幅の大きかった半導体関連に買戻しが入っています。週中、米SOX(フィラデルフィア半導体)指数は5営業日続伸しており、8%超もの上昇となりました。日本の半導体関連株にも影響がもたらされ、図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(10/17~10/24)では東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)がランクインしています。反面、図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(10/17~10/24)では食用品や医薬品といった、いわゆるディフェンシブセクターに属する銘柄がランクインしています。

10月第4週の始まりである10/24(月)の東京市場は、前週末10/21(金)の米国株高を受け大幅高でのスタートとなると思いきや、香港株の急落を受け、寄り付き後の大幅高を縮小し取引を終えました。香港市場では、中国共産党大会で習近平総書記の3期目続投や、習氏の側近で占められた新体制が懸念されて大幅安となっています。同日夜の米国市場でも同様の警戒感から中国への売上比率が高い企業や中国ADRの下落が目立ちました。

10月第4週は、東京市場でも7-9月期の決算発表がいよいよ本格化する週です。好決算企業が相場全体を押し上げてゆくことにも期待したいところです。米国の大型ハイテク株(GAFAM)も集中的に決算発表予定となっています。

なお、為替に関しては10/21(金)に1ドル152円付近で日銀による為替介入とみられる動きがあり、一時1ドル146円台まで円高が進みました。しかし、すぐに1ドル150円台の円安水準に戻っています。10/24(月)にも円買い為替介入とみられる動きがありましたが、同日も21(金)同様に一時的な効果でした。ドル円相場に関しては、大きな政策変更等がない限り、為替介入は「焼け石に水」のようにも思われます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(10/17~10/24)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(10/17~10/24)

日経平均の方向性を左右!~採用銘柄の業績は?

10/24(月)に日本電産(6594)が2023年3月期・第2四半期(累計)の決算発表を行いました。円安効果で4~9月期としては営業利益が最高益となり、市場予想をも上回りました。同じ日、中外製薬(4519)は2022年12月期・第3四半期(累計)を発表し、こちらも純利益が33%増加しました。

この2社により、日経平均採用銘柄の2022年7~9月期決算発表がスタートを切ったことになります。上場企業全体の発表社数は10月28日187社(以下10/24時点の予定数)、31日299社と最初のヤマ場を迎え、11/4~14は連日で3桁社数の発表が予定されています。おもな企業の予定日としてはトヨタ(7203)、ソニーグループ(6758)が11/1(火)、ソフトバンクグループ(9984)が11/11(金)等となっています。

図9は日経平均株価と予想PERの関係(2017/1/4~2022/10/21)を示したものです。新型コロナによるパンデミックが宣言された2020年春頃を除き、日経平均株価は近年おおむね予想PER12~15倍のレンジ内で推移してきました。10/21(金)時点では予想PERが12.41倍になっています。ちなみに、

 ★ 2019年9月12日 予想EPS(1,753.39円)×PER(12.41倍)=日経平均株価(21,759.61)
 ★ 2022年10月21日 予想EPS(2,166.85円)×PER(12.41倍)=日経平均株価(26,890.58)

この2時点では、市場心理を示す予想PERは変わりませんでしたが、予想EPSが23%上昇したことを反映し、株価は23%上がったと考えることができます。今後も、日経平均株価の純利益が増え、それにつれてその予想EPSが増えれば、株価は上昇しやすくなると考えられます。

日経平均株価の予想EPSは2022/8/16に2,229.25円で過去最高を付けました。現在はそこから少し下がった位置にあり、大勢としては横ばい傾向となっています。日経平均株価が冴えないのも、日経平均株価の予想EPSが伸び悩んでいることが大きな理由かもしれません。

ちなみに、10/21(金)時点の予想EPS2,166.85円に対し、同日時点の実績EPSは2,068.50円ですから、前者を後者で割り、現在の市場は、日経平均採用銘柄で4.8%程度の増益を予想しているといえそうです。ただ、市場予想ベースでは日経平均採用銘柄の今期予想純利益は前期比で14.4%増(ソフトバンクグループを除くと6.7%増)の見込みであり、もしその通りになれば、日経平均株価の予想EPSは上方修正され、日経平均株価の上昇を手助けする要因になるかもしれません。

なお、図表10は日経平均採用銘柄を東証33業種に分類し、年度ベース、四半期ベースでの予想増益率をみたものです。経済再開を反映し、陸運や空運がけん引役になりそうです。情報・通信については、前期(2022/3期)が1兆7,080億円最終赤字のソフトバンクグループ(9984)が今期は8,281億円の最終黒字に転換する市場予想が大きく影響しており、注意が必要です。

また、輸送用機器やゴム製品は来期にかけて増益率が改善する予想になっています。日本の「お家芸」である自動車やそれに影響されるタイヤなどは来期、サプライチェーン回復の本格化と円安の恩恵が期待できそうです。

図表9  日経平均株価(日足)と予想PER四半期

  • 日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。

図表10  業種別予想増益率

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。利益は純利益ベース。
  • ※「四半期予想増益率」は、2022年7~9月期、6~8月期、5~7月期事前の純利益・市場コンセンサスを合計したもの。今期および来期の増益率も市場予想純利益を合計したものを基準として計算。
  • ※予想EPS4週変化率は予想EPSの市場コンセンサスを平均したもの。
  • ※掲載の順番は「四半期予想増益率」の高い順。ただし、黒転を最上位、赤転を最下位としました。

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