「米利上げ後」でも株高が続くとみる3つの理由

「米利上げ後」でも株高が続くとみる3つの理由

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2022/11/01

好調な企業決算とFRBによる利上げ減速期待から、株式市場は堅調に推移

10月第4週(10/24~28)の日経平均株価(週足)は、前週末比214円62銭高(+0.8%)と前第3週での下げ幅を打ち消す形で反発しました。週中にGAFAM(Google、Apple、Meta :旧Facebook、Amazon、Microsoft)と呼ばれる米国を代表する大型ハイテク株の決算発表があったため、それを横目にみながらの展開でした。

週初10/24(月)の日経平均株価は、前週末に米国市場がFRB(米連邦準備制度理事会)による金融引締め緩和観測が強まって大幅高したのを受け、上昇して始まりました。ただ、習氏側近で占められた中国新指導部への懸念から香港市場、特にハンセンテック指数が急落し、東京市場でも市場心理が悪化し下落圧力となりました。同日の夜からは米大型ハイテク株の決算発表が始まり、日米両市場ともそれを見極めたいとする空気が広がりました。

同週の米国市場では、NYダウが+5.7%となったのに対し、グロース株中心のナスダックは+2.2%となりました。両指数ともに、東京市場を上回るパフォーマンスでしたが、米主要株価指標の中ではナスダックのパフォーマンスが相対的に冴えない結果となりました。この週は、経済指標が軟調な結果となったり、各国・地域中銀が利上げペースの減速を示唆したことで、グロース株にとって追い風となりやすい米10年国債利回りの下落が続いていました。ナスダックにとって好条件下といえるような状況下で、大型ハイテク株(GAFAM)の多くが失望決算を示したことが、同指数の上値抑制の要因となりました。

市場の注目を集めた米大型ハイテク株(GAFAM)の決算発表では、Apple以外が軒並み軟調な結果を示し、株価は発表前に比べ大幅安となっています。特に、Meta(旧Facebook)は前年同期比で純利益が半減し、投資判断が相次いで引き下げられました。決算発表後の株価は24%超もの急落となりました。GAFAMの決算発表によると、グローバル展開の企業ゆえに、ドル高の影響が業績に重くのしかかっているようです。10-12月期に関して、現時点でドル相場は7-9月期から一段高しており、より深刻な業績悪化の要因となりそうです。一連の決算発表を受けてS&P500の2022年、2023年の予想EPS(1株当たり利益)は下方修正が続いています。

大型ハイテク株の多くが失望決算となる中、10月第4週最終営業日である10/28(金)の米国株式市場は、Apple等の好決算銘柄が相場をけん引する形で全面高商状となっています。米国では、7-9月期が前年同期比で減収・減益となった企業も多々見受けられました。これらの結果に関しては、年前半から事前予想として織り込み済みというパターンが多かったため、業績悪化の幅が予想を下回り好感された模様です。事前に悲観的な業績予想が織り込まれていため、7-9月期の企業決算は“予想よりダメージが少ない”として、好感される企業が多かったように思えます。

図表7-8「日経平均株価採用銘柄の上昇率・下落率上位(10/24~10/31)」でも、決算内容によって株価の明暗が分かれる傾向がありました。GAFAMにとってドル高が業績の痛手となった反面、日経平均上昇率上位銘柄にランクインした好決算の業績を押し上げた要因として、「円安による収益増」をアルプスアルパイン(6770)やジェイテクト(6473)、日立建機(6305)等が挙げています。一方で、日経平均下落率上位銘柄の業績不振要因として、中国需要の悪化や円安による原材料等のコスト増を挙げる企業が見受けられました。

11月第1週の東京市場は、10/28(金)の米国株が大幅高したのを受け、全面高スタートとなっています。7-9月期の決算発表も11/1(火)にはトヨタ(7203)、ソニーグループ(6758)、11/4(金)には郵船(9101)、ソフトバンク(9434)等、目白押しです。

加えて、同週には現地時間11/1(火)-2(水)に当面の最大注目ポイントの一つと考えられるFOMC(米連邦公開市場委員会)会合が予定されています。FRBがインフレ感を測る際に重要視しているPCE価格指数は未だ高水準を示し、依然としてインフレ進行中を示すような結果でした。しかし、最近は物価を大きく左右する住宅関連指標が軟化を示すことが多く、FRBによる米金融引締め緩和期待の材料として好感されています。また、週内最終営業日である11/4(金)に発表される米10月雇用統計も要チェックです。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(10/24~10/31)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(10/24~10/31)

「米利上げ後」でも株高が続くとみる3つの理由

前述したように11月第1週(10/31~11/4)は重要日程が目白押しとなっています。ただ、その中でもっとも市場へのインパクトが強いとみられるイベントをひとつだけ挙げるとすれば、FOMC(米連邦公開市場委員会)になるのではないでしょうか。

FOMCの後、日経平均株価は上昇基調を続けるのでしょうか、再び下落基調に転じてしまうでしょうか。筆者は3つの理由から、日経平均株価の上昇基調は当面続くと予想します。

(1)米国が政策金利を0.75%ペースで引き上げるのは今回、遅くとも次回で終わりになる可能性が大きいため。
(2)国内の決算発表が底堅く推移し、11/1(火)には質の面でひとつのピークアウト近くに達する予定であるため。
(3)テクニカル的には、10/31(月)の上昇でさらに強い形になったと見受けられるため。

(1)については、米東部時間11/2(水)(日本時間11/3早朝)に予定されているFOMCの結果発表において、現状で3.25%の政策金利(上限)は0.75%引き上げられて4.0%になるとの見方が支配的になっています。このため、市場の関心はそこでの利上げ幅云々よりむしろ、「米東部時間12/14(水)に結果発表のFOMCにおいて、利上げ幅を縮小することに関し議論があるか否か」という点に向かっているとみられます。

図表9は、金利先物市場が予想する米政策金利(上限)の推移を図にしたものです。市場予想は各々の会合につき複数ありますが、その予想が実現される確率で加重平均して数値化してみました。

たとえば、次回12/14のFOMCにおいて、
・政策金利(上限)が4.25%(11月に0.75%利上げの時、12月は0.25%利上げ)となる確率・・・8.9%
・同4.5%(同、12月は0.5%利上げ)の確率・・・45.6%
・同4.75%(同、12月は0.75%利上げ)の確率・・・45.4%

ですから、4.25×0.089+4.5×0.456+4.75×0.454=4.59%(小数第2位未満は四捨五入)より、
4.59%が市場予想の政策金利となります。図表9はこうした市場の予想をグラフ化したものになります。これによると、市場が織り込んでいるファンダメンタルズを前提とするならば、米政策金利は2023/3/22に結果発表のFOMCにおいて、5.0%もしくは5.25%ぐらいでピークをうち、2023/6/14に結果発表のFOMC頃まで天井状態になり、2023年後半には利下げが論議されるようになる、と予想されていることになります。

政策金利の引き上げ幅は通常0.25%であり、0.75%は「劇薬」に近く、連続で引き上げるには限界があると思います。米国の高インフレにつながってきた住宅市場等の動きにも変調の兆しが強まっており、仮に、市場が期待する「12月に利上げ幅縮小」の論議がなくとも、時間の問題ではないかと思います。

米利上げペースの緩和は米株式市場の上昇要因となり、日本株にも追い風になると思います。

(2)については、11/1(火)にトヨタ(7203)、ソニーG(6758)等の発表が終わり、質の面ではピークアウトに近くなり、発表後はリスクを取りやすくなる投資家が増えるとみられます。

(3)については、日経平均株価(日足)の25日移動平均線が10/28(金)にボトムを形成し、10/31(月)には上昇に転じました。今週、10/31終値近辺を維持できれば、一目均衡表の雲の上へ位置できるようになる形になっており、チャート上はさらに強い形になると見受けられます。

図表9  金利先物市場が予想する米政策金利(上限・加重平均)の推移

  • Fedウオッチ(日本時間10/31 10:00時点)をもとにSBI証券が作成。 金利先物市場が予想する米政策金利(上限)の予想を、実現確率で加重平均化し、グラフでつなげたもの。

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