7~9月期に好決算期待の中小型10銘柄

7~9月期に好決算期待の中小型10銘柄

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2022/10/26

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東証マザーズ指数は引き続き堅調

10/18(火)~10/25(火)の東証マザーズ指数は0.6%上昇しました。同期間における日経平均株価およびTOPIXのパフォーマンスはともに+0.3%で、それを若干上回りました。米10年国債利回りが10/21(金)に一時4.33%まで上昇しましたが、その後若干低下に転じたこともあり、東証マザーズ指数への影響は限定的でした。

東証マザーズ指数はグロース銘柄を多く組み入れていることもあり、現在の金利上昇・インフレ懸念は明らかに逆風であると考えられます。9月末に3.82%だった米10年国債利回りは上記したように一時4.33%まで上昇しており、本来であれば、東証マザーズ指数は日経平均株価およびTOPIXのパフォーマンスを下回っても不思議ではないです。ただ、昨年末から9月末までの騰落率をみると、日経平均株価の9.9%下落に対し、東証マザーズ指数は29.6%も下落していました。東証マザーズ指数はすでに、金利上昇に対する織り込みが十分進んでいたと考えることができそうです。

もっとも、10/18(火)~10/25(火)に限って言えば、株価の上昇幅は限定的であり、時価総額上位銘柄もマチマチの動きになりました。上昇が目立っていたのは、AI(人工知能)プラットフォームを手掛けるAppier Group(4180)で、徐々に商いを増やしながらの上昇となりました。特に大きな材料は見当たりませんが、チャート的には三角保ち合いを上放れるかのような展開になっています。

その他時価総額100億円超の銘柄の中では、スマホ向けにゲームを開発するバンク・オブ・イノベーション(4393)の上昇が目立ちました。新作大型RPG(ロールプレイングゲーム)の『メメントモリ』について、9/16(金)付で「10/18のリリース」を発表しています。その後、9/27(火)には同ゲームについて「事前登録者数100万人」を発表し、9/27~10/5の株価は7連騰となりました。続いて10/18(火)には同ゲームの「配信開始」を発表し、同リリースの中で「2023年9月期は営業黒字を見込んでいる」ことを明らかにしました。これを受け、10/19(水)以降の株価は10/25(火)時点まで連日ストップ高となっています。

図表1 日経平均株価と東証マザーズ指数の推移

図表2 主な東証マザーズ指数構成銘柄の値動き

図表3 10/18(火)~10/25(火)で株価上昇が大きかった東証マザーズ指数構成銘柄

7~9月期に好決算期待の中小型10銘柄

10/24(月)に日本電産(6594)や中外製薬(4519)など日経平均採用銘柄の決算発表が行われ、いよいよ東京株式市場も決算発表シーズンが本格化しました。中小型株の一角からも、決算発表を実施する企業が出始めています。今後11月中旬頃にかけては、2022年7~9月期の決算発表が発表されるはこびとなります。ちなみに、当該四半期は、

・2023/3期本決算の企業にとっては第2四半期に相当→通常は「2022/4~9期累計」として発表。

・2023/6期本決算の企業にとっては第1四半期に相当。

・2022/9期本決算の企業にとっては第4四半期→通常は「2022/9期本決算」として発表。

・2022/12期本決算の企業にとっては第3四半期→通常は「2022/1~9期累計」として発表。

となっています。

なお、東証プライム市場および同スタンダード市場では、3月、6月、9月、12月決算銘柄の合計銘柄数のうち、3月決算銘柄の比率が4分の3を超えていますので、極端に言えば、3月決算銘柄さえチェックしておけばこの時期の決算発表の大勢をとらえることが可能とみられます。

しかし、東証グロース市場に限っては、3月、6月、9月、12月決算銘柄の合計銘柄数のうち、3月決算銘柄の比率は約4割にとどまり、12月決算の銘柄も3分の1程度あったりします。したがって、東証グロース市場の銘柄も含めて考える場合は、3月決算銘柄以外も対象に分析する方が、より大勢がわかるとみられます。

今回の「新興株ウィークリー」では、2022/7~9月期に好決算を発表し、通期業績予想で上方修正も期待できるするような銘柄を発掘すべく、スクリーニングを行ってみました。

スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証スタンダード市場、または同グロース市場に上場

(2)時価総額100億円超1,000億円未満。広義の金融に属する企業は除く

(3)10/24(月)まで20営業日の1日当たり平均出来高が20,000株超

(4)3月決算または、6月、9月、12月決算銘柄

(5)直前四半期である2022/4~6期の営業利益が3億円超

(6)2022/4~6期の営業利益が黒字転換、または前年同期比100%超の営業増益

(7)2022/4~6期の営業利益の「進捗率」が25%超(図表4の脚注を参照)

図表4 7~9月期に好決算期待の中小型10銘柄

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価(10/25) 22/4~6期営業増益率 進捗率 今期会社予想営業増益率
7014 7014 7014 7014 (3)名村造船所  (11/11) 576 黒字転換 赤字縮小
6565 6565 6565 6565 (3)ABホテル  (10/31) 1,813 1266.7% 41.0% 25.1%
6777 6777 6777 6777 (3)santec  (11/11) 2,752 192.3% 41.2% 27.9%
9308 9308 9308 9308 (3)乾汽船  (11/11) 1,915 146.9% 44.0% -0.4%
7480 7480 7480 7480 (3)スズデン  (11/1) 2,368 111.8% 28.6% 8.5%
4031 4031 4031 4031 (3)片倉コープアグリ  (11/14) 1,214 110.7% 38.9% 24.6%
6030 6030 6030 6030 (6)アドベンチャー  (11/11) 10,560 黒字転換 30.1% 37.0%
3856 3856 3856 3856 (6)Abalance  (11/14) 1,945 777.5% 57.4% 70.8%
4235 4235 4235 4235 (12)ウルトラファブリックス・ホールディングス  (11/14) 4,985 333.2% 35.3% 82.3%
4579 4579 4579 4579 (12)ラクオリア創薬  (11/11) 1,112 306.1% 159.5% -40.6%
  • ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。業績数値は決算短信ベース。
  • ※銘柄名左のカッコ内数字は決算月。同右のカッコ内数字は決算発表予定日。ただし、決算発表予定日は変更されることもあります。
  • ※掲載の順番は、決算月順。同じ決算月の中では、22/4~6期の営業増益率が大きい順(ただし黒字転換が最上位)になっています。
  • ※進捗率は、4~6月の営業利益がその年度(通期)の会社予想営業利益の何%になっているかを示しています。ただし、6月決算銘柄については、2022/4~6期営業利益が、2022/6(通期)営業利益(実績)の何%になったのかを示しています。
  • 名村造船所は22/4~6期が営業黒字、23/3期予想営業利益が営業赤字のため、進捗率は計算できませんが、実質的にスクリーニング条件を満たしているとみなします。

以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。

名村造船(7014)~急速な円安が追い風に。一転して黒字の可能性

★週足チャート(1年)

  • ※データは2022/10/26(週足) 9:00 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■1911年設立の造船中堅。2017/3期以降低迷の時代に

当社は1911年に設立された造船業界の中堅企業で、世界に向け船舶を建造し、供給してきました。

売上高構成比(2022/3期・第1四半期)は新造船が81.1%、修繕船が11.3%、鉄構・機械が4.0%となっており、引き続き造船業が中心となっています。地域別売上高(2022/3期)は、日本向けが36%で、日本郵船等の海運会社が主要取引先です。海外売上高比率は64%で、マーシャル諸島、リベリア島での割合が高いです。

日本は中国、韓国と並ぶ造船大国で、2019年の世界シェアは3ヵ国で9割を超えています。その中でもかつては日本が世界首位でしたが、近年は第3位へと転落しています。外為市場で円が独歩高した時代も長く、価格競争力で後れをとるようになったためです。

そうした中、当社の業績も低迷を続けてきました。2016/3期までは営業黒字を計上してきましたが、2017/3期以降2022/3期まで営業赤字が継続していました。株価は2013年につけた高値1,560円から2020/8の145円まで90%超の下落となりました。当社株が安値を付けた2020年には、日本の造船所の手持ち工事量自体、ほぼ1年分の工事量と過去最低水準まで減少してしまいました。

■急速な円安を追い風に、第1四半期には黒字転換を実現

こうした中、本年1月にはいまだ182円の安値を付けるなど低迷していましたが、同月に日本郵船から「LNG燃料」の大型撒積運搬船の受注を決めるなど、明るい兆しがみえてきたことから、株価も上昇に転じました。

2022年4~6月期には、各国の海事産業の手持ち工事量が2~3年分まで回復するなど、好材料も加わりました。

当社が8/5に発表した2023/3期・第1四半期決算では、手持ち工事の増加に加え、円安にも恵まれ、鋼材価格の上昇を吸収することができました。当社の営業損益は78億円の黒字となり、前年同期の赤字58億円から急改善しました。不況時に受注した低価船の予想収益が円安で改善し、多額の工事損失引当金を取り崩すことができました。

会社側は、鋼材価格や為替相場、ウクライナ情勢等、変動要因が多いとして業績予想の上方修正を見送りました。これに対し市場参加者は保守的であると捉え、8/8以降株価上昇が加速し、8/15には760円まで株価が回復しました。

その後は現在に至るまで、やや押し戻される展開になっています。鋼材価格の上昇で、船価がコロナ前より3割上昇したとの指摘があり、海運会社が発注を手控えていることも影響しているようです。

もっとも、8/8には1ドル135円前後だった為替相場は10月に一時150円を超えるなど、円安・ドル高は想定外に加速しており、業績予想の上方修正要因になるとみられます。

なお、日本の造船業が競争力を失った背景には、一時期独歩高となった円高の影響も大きいため、円安は競争力の維持にも追い風になると思われます。問題は、長引いてきた造船不況で、建造能力をどこまで維持できていたかにありそうです。

片倉コープアグリ(4031)~国内最大手の肥料会社

★週足チャート(1年)

  • ※データは2022/10/26(週足) 09:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■肥料の製造・販売を行う丸紅の関連会社

1920年(大正9年)創業、日本最大の売上規模を誇る肥料会社です。

果樹・園芸用肥料を得意とする片倉チッカリンと、米麦向け肥料を得意とするコープケミカル、2社の合併により2015年10月に誕生しました。

全国に支店・工場を設置し、地域密着型の事業展開を行っています。日本列島は、気候や土壌の質等の環境、育てている農作物の種類が地域によって様々です。当社は全国津々浦々にある多様なニーズに応えるため、地域密着型で事業展開をしています。

主力の肥料事業の他に、化成品事業や飼料事業等、8つの事業を展開しています。化成品では、HALAL認証※を活かした東南アジア向け化粧品原料等の販売が近頃は好調であったりと、時代のニーズに対して事業の多角化で呼応してゆこうとする方針を掲げています。

※HALAL(ハラル)認証・・・ハラルは、イスラム教において「許されること」を意味する。同認証は、イスラム教の教義に沿った製法であることの証明。世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシアで、当社はIndonesia HALAL認証取得原料の拡充を次々と進めている。インドネシアでは2019年10月より取引される食品や化粧品にHALAL認証取得を義務付ける法律が施行され、目下、需要が増大中。

■第1四半期の利益は前年同期比2倍超

前期(2022/3期)末時点で売上高の約8割を肥料事業が占めており、そのほとんどが国内向けです。肥料需要は、世界的にみると人口増や新興国の経済発展を背景とした食糧需要増から拡大傾向にあります。一方で国内では、人口減や省力型肥料の普及で、肥料需要の減少に歯止めがかからない状況です。

頭打ちとなった国内での現状を打破するため、当社は2018年2月、上海に合弁会社を設立しています。中国国内における微生物資材の製造・販売と土壌診断及び指導事業を行っており、早期の収益化に取り組んでいる最中です。新型コロナによるロックダウンが中国での事業停滞要因になっていたため、当局による行動規制の緩和が行われれば、当社の業績にとってはプラス材料として寄与しそうです。

2022/8/15に発表された今期(2023/3期)第1四半期決算にあたる2022/4-6月は、政治的問題を背景とした世界的なコモディティ需要逼迫が起こり、原料・燃料価格・輸送運賃等の上昇が続きました。したがって、市場では6月以降の肥料価格値上りを見越した駆け込み需要が発生し、経常利益は前年同期の2倍超となる5.6億となりました。この数値は、今期見通しに対する進捗率の40%に当たります。11/14(月)に予定されている中間決算も、好調な内容が続けば通期見通しに対しての上昇修正に期待ができそうです。

ただ、ある程度好業績の要因が事前に株価に織り込み済みであることも考えられます。また、前期(2022/3期)は増収減益であり、減益の要因に原料と原油価格の高騰をあげています。世界的に景気見通しが悪化し需給バランスが変化する中、ファンダメンタルズでも業績が左右される面がありそうです。

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