日本株は本格的反発局面へ!?~その理由は?
投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実
2022/10/18
経済指標に一喜一憂する中、決算発表シーズンが幕開け
10月第2週(10/11~14)の日経平均株価(週足)は、前週末比25円35銭安(-0.09%)と週足ベースではほぼ横ばいでした。
週初10/11(火)は休場明けで、前週10/6(木)~7(金)の米国市場の大幅安を織り込む形で急落となりました。その後の10/12(水)~13(木)の東京株式市場は、米9月CPI(消費者物価指数)でインフレ鈍化の兆しを見定めるべく膠着状態が続き、主要株価指数は値幅の変動が少なかったです。
そして現地時間10/13(木)午前8時半、市場がいつも以上に注視する中、発表された米9月CPI(消費者物価指数)は市場予想を上振れ、前月比、前年同月比、コアほぼ全てでインフレ鈍化期待を打ち消す結果でした。FRB(米連邦準備制度理事会)による積極的金融引締めのペース減速期待は後退し、米国株式市場は大幅安スタートとなりました。
ところが、同日の米国株は引けにかけて下げ幅はみるみるうちに縮小。最終的には+2.83%の大幅高に転じています。この上昇に関し、市場ではファンダメンタル面で新たな買い材料が特段見当たらなかったため、CPI悪化を織り込んでいた売り方が「悪材料出尽くし」となり、買戻しを行った(ショートカバー)と指摘する声やテクニカル的な節目に達したとする声、様々な意見があるのが現状です。
翌10/14(金)の日経平均は、前述した10/13(木)米国市場の大幅上昇に大きく連れ高し、全面高商状で取引を終えています。しかし、同日10/14(金)夜の米国市場ではミシガン大学消費者態度指数の期待インフレ率が市場予想を上回り、長期金利が4%超まで上昇。米国市場は一転、金利上昇に弱いグロース株中心に全面安商状となりました。
同週では、小売を中心とした2.8月決算銘柄の決算発表はほぼ一巡しています。10/13(木)に本決算を発表した小売大手のファストリ(9983)は、2022/8期は為替差益の計上もあり過去最高益を達成。2023/8期も順調な見通しを示したことが好感され「図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(10/11~10/17)」でもトップとなっています。一方、「図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(10/11~10/17)」では10/11(火)に中間決算を発表した安川電機(6506)が、中国需要の一服から通期利益見通しを下方修正し、売られる結果となっています。
10月第3週初日、10/17(月)日経平均株価は、10/14(金)の米国市場の反落に連れ安し、下落スタートで幕を開けています。同週は日米両市場ともに7-9月期の決算発表シーズンが本格化となる週です。企業業績や各企業の景気見通し等に注目が集まる週となりそうです。
為替に関しては、ドル高・円安の進行は現時点で止まる兆しがありません。ドル円相場は約32年ぶりの円安水準となり、1ドル149円台に突入しています。日銀の黒田総裁は、訪米中の現地時間10/12(水)に金融緩和継続の意向を改めて示しており、市場では次の節目は1ドル150円と言われています。決算発表シーズンの本格化で一定数以上の東証上場企業は、円安による恩恵が期待できそうです。ただ、過度な円安によるコスト増が企業業績にとって悪材料となり得ます。これから始まる決算発表で、見定めてゆく必要がありそうです。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景
図表2 日経平均株価
図表3 NYダウ
図表4 ドル・円相場
図表5 主な予定
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(10/11~10/17)
図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(10/11~10/17)
日本株は本格的反発局面へ!?~その理由は?
株式市場の値動きが荒くなっています。10/13(木)の米国株式市場では、この日発表された米消費者物価指数(9月)が強い数字だったことを受け、NYダウが一時前日比549ドル安水準まで下落しました。しかし、売り一巡後は上昇に転じ、この日のNYダウ高値は957ドル高と、高低差1,507ドルの動きとなりました。
この動きを引き継いだ10/14(金)の東京株式市場では、寄り付き段階から買いが優勢となり、日経平均株価終値は前営業日比853円高の27,090円となりました。ただ、10/14(金)の米国市場、10/17(月)の東京市場は一転反落しています。これら一連の動きについてどうみるべきでしょうか。結論から申し上げれば、「米消費者物価指数が予想を上回ったにもかかわらず、直後の株価が急騰した」という事実は残るため、当面株価は下がりにくくなると考えられます。
ここで、米消費者物価の発表結果をまとめると以下のようになります。(8月実績→9月予想→9月実績、の順)
▼総合指数
前月比・・・0.1%→0.2%→0.4%
前年同月比・・・8.3%→8.1%→8.2%
▼コア指数
前月比・・・0.6%→0.4%→0.6%
前年同月比・・・6.3%→6.5%→6.6%
いずれの指標も市場予想(Bloombergコンセンサス)を上回ったという意味では「強い数字」であり、それゆえ米国株式市場では当初売りが先行する展開になりました。消費者物価指数算出時のウェイトが高い住居費の上昇が継続していることや、賃金の上昇が続き、消費が堅調を維持していることが背景とみられます。
これを受け、金利先物市場では次回FOMC(米連邦公開市場委員会)で0.75%利上げされる確率は99%(10/17時点)まで上昇しました。さらに10/14(金)の米国債券市場では、10年国債利回りが終値で4%台に乗せました。10/14(金)の米国株式市場・10/17(月)東京株式市場が反落したこともあり、改めてインフレ・金利上昇が長期化するとの考えを固めた人も多いかもしれません。
それでも、10/13(木)の米国市場、10/14(金)の東京市場の反騰劇を過小評価しない方がよいと、筆者は考えています。
米国株式市場では、消費者物価発表の前にプット・オプション(売る権利)の残高が積み上がっていた模様で、要は、消費者物価上昇のリスクをすでに市場が織り込んでいたため、消費者物価の発表により「悪材料出尽くし」になったと考えることができます。ただ、それよりも、米消費者物価発表直後に株価が上昇したことは、消費者物価に大きく影響する住居費が、近い将来ピークアウトする可能性を市場が織り込み始めたことを示していると考えられます。
住宅市場に大きく影響するのは、金利や雇用であると考えられます。雇用は今の所、強さを維持しているものの、住宅ローン金利の上昇で購入を控える消費者が増えている上、家賃の伸びも多くの民間統計で鈍化し始めているようです。消費者物価指数は統計の作成上、住居費の変化を反映するのに時間がかかるとみられます。消費者物価指数は「遅行指標」であるため、数値を鵜吞みにしない方がよいと考えられます。
なお、日本については、今後インバウンド需要の本格的な回復が見込まれ、内需は底堅く推移し、欧米と比べて経済全般の相対的強さが評価される可能性は大きいとみられます。日経平均株価は当面反発局面に入ると予想されますが、ネックラインである10/6(木)取引時間中の高値27,399円を上回れば、一層その確度が高くなるとみられます。
図表9 米10年国債利回りの推移(月足)
- 当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは、2022/10/18 11:00 時点。
おすすめ記事(2022/10/18 更新)
国内株式
決算発表で好決算・株価上昇に期待したい銘柄は?
10月の東京株式市場は荒っぽい展開となっています。世界的にインフレ・金利上昇の進行に加え、景気・企業業績の悪化が警戒されるスタグフレーションの到来が懸念されていることが大きな要因です。さらに、米国では雇用統計や消費者物価指数等、重要指標の発...
投資情報部 鈴木 英之
2022/10/14
国内株式
好業績が見込まれ、割安感の強い銘柄を探る
10/4(火)~10/11(火)の東証マザーズ指数は1.0%下落しました。同期間における日経平均株価のパフォーマンスは-2.2%およびTOPIXのパフォーマンスは-1.9%でした。株式市場全般が反落に転じる中、引き続き、東証マザーズ指数のパ...
投資情報部 鈴木 英之/栗本 奈緒実
2022/10/12
少ない資金で大きな利益が狙える先物・オプション取引って何?
相場が大きく動いたら?SBI証券なら多彩な商品群で取引チャンスを逃がしません!
- 国内株式 レパレッジ型ETFを活用すれば、日経平均の急な動きにも対応可能!
- 外国株式 米国株式、中国株式を含めた9ヵ国に投資!海外ETFで分散投資も可能です!
- 投資信託 日本の株式市場の動きを予測して短期でハイリターンを狙えるファンドがあります!
- FX 約5,000円から取引できる!ほぼ24時間取引&手数料はもちろん0円!
- 先物・オプション 日経平均に少ない資金で投資できる!レバレッジを効かせて、大きな利益を狙え!
- CFD 先進諸国の株価指数がほぼ24時間取引可能!特徴を理解することが勝利への道!
- ワラント ダイナミックな値動きがeワラントの特徴!商品の魅力を知るなら必見!
- 金・プラチナ 有事の際の金・プラチナでリスクヘッジも!ほぼ24時間リアルタイムで取引可能!
信用取引のご注意事項
信用取引に関するリスク
信用取引は、差し入れた委託保証金額の約3倍の取引を行うことができます。そのため、現物取引と比べて大きなリターンが期待できる反面、時として多額の損失が発生する可能性も含んでいます。また、信用取引の対象となっている株価の変動等により、その損失の額が、差し入れた委託保証金額を上回るおそれがあります。この場合は「追加保証金」を差し入れる必要があり状況が好転するか、あるいは建玉を決済しない限り損失が更に膨らむリスクを内包しています。
追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。
信用取引の「二階建て」に関するご注意
委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられます。よって、二階建てのお取引については、十分ご注意ください。
ご注意事項
・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社、および情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製、または販売等を行うことは固く禁じます。
・必要証拠金額は当社SPAN証拠金(発注済の注文等を加味したSPAN証拠金×100%)-ネット・オプション価値(Net Option Value)の総額となります。
・当社SPAN証拠金、およびネット・オプション価値(Net Option Value)の総額は発注・約定ごとに再計算されます。
・SPAN証拠金に対する掛け目は、指数・有価証券価格の変動状況などを考慮のうえ、与信管理の観点から、当社の独自の判断により一律、またはお客さまごとに変更することがあります。
・「HYPER先物コース」選択時の取引における建玉保有期限は原則新規建てしたセッションに限定されます。なお、各種設定においてセッション跨ぎ設定を「あり」とした場合には、プレクロージング開始時点の証拠金維持率(お客さま毎のSPAN掛目およびロスカット率設定に関わらず必要証拠金額はSPAN証拠金×100%で計算)が100%を上回っていれば、翌セッションに建玉を持ち越せます。「HYPER先物コース」選択時は必要証拠金額はSPAN証拠金×50%~90%の範囲で任意に設定が可能であり、また、自動的に決済を行う「ロスカット」機能が働く取引となります。
・先物・オプションのSPAN証拠金についてはこちら(日本証券クリアリング機構のWEBサイト)
・指数先物の価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、比較的短期間のうちに証拠金の大部分、またはそのすべてを失うこともあります。その損失は証拠金の額だけに限定されません。また、指数先物取引は、少額の証拠金で多額の取引を行うことができることから、時として多額の損失を被る危険性を有しています。
・日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。
・日経平均VIは、相場の下落時に急上昇するという特徴があります。
・日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。
・指数オプションの価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。買方が期日までに権利行使又は転売を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。売方は、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。また、指数オプション取引は、市場価格が現実の指数に応じて変動しますので、その変動率は現実の指数に比べて大きくなる傾向があり、場合によっては大きな損失を被る危険性を有しています。
・未成年口座のお客さまは先物・オプション取引口座の開設は受付いたしておりません。
・「J-NETクロス取引」で取引所 立会市場の最良気配と同値でマッチングする場合、本サービスをご利用いただくお客さまには金銭的利益は生じないものの、SBI証券は委託手数料を機関投資家から受け取ります。
・J-NETクロス取引の詳細は適宜修正される可能性がありますのでご留意ください。