目指せテンバガー!~増益が続いている中小型株は?
投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実
2023/02/22
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証グロース市場・スタンダード市場の中小型株を中心に、好業績が期待される銘柄や、投資家の皆様が気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
新興株ウィークリー
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全般的には小動きも、好業績銘柄は物色される
2/14(火)~2/21(火)の東京株式市場では、日経平均株価が-0.5%、TOPIXが+0.2%、東証グロース市場指数が-0.7%と、総じて小動きになりました。2/14(火)発表の米1月CPI(消費者物価)、2/17(金)発表の同PPI(生産者物価)が米国のインフレが根強いことを示し、2/15(水)発表の米小売売上高は米国経済の強さを印象付けました。そうした中、米長期金利が再び上昇基調となり、グロース株には逆風となりましたが、その割には大型株を含め、底堅く推移しました。
時価総額上位の銘柄についても、決算発表が進捗しました。創薬ベンチャーのそーせい(4565)は、2022/12期の第3四半期までは営業赤字が残っていましたが、2/14(火)発表の本決算において通期ベースの黒字確保が確定し、15~16日には商いを膨らませながら大幅続伸しました。反対にクラウド会計システムのフリー(4478)は2023/6期の営業赤字が第1四半期の11.7億円から第2四半期14.5億円と拡大。2/14(火)の決算発表日の翌日以降下落基調が強まりました。
時価総額100億円超の幅広い銘柄の中で、値上がり率の大きかった10銘柄についてみると、うち9銘柄が2/13(月)または2/14(火)に決算発表を実施した銘柄で、決算発表を受けての評価が中心になりました。デジタル広告の基盤を提供しているマイクロアド(9553)は2/14(火)に2023/9期の第1四半期決算を発表し、営業利益は3.3億円であったことを明らかにしました。昨年新規上場したため前期との比較はありませんが、通期予想営業利益に対する進捗率が43%に達し、好感されました。
図表1 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移
図表2 主な東証グロース市場指数構成銘柄の値動き
図表3 2/14(火)~2/21(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄
目指せテンバガー!~増益が続いている中小型株は?
東京株式市場では、2022年10~12月期の決算発表がほぼ一巡しました。企業業績は厳しさを増しており、業績見通しを下方修正する企業が増えました。2023年3月決算企業の純利益は、12月末時点では前期比5%増益の見込みでしたが、2/17(金)時点では2%増益予想に減速しています。
もっとも、株価自体は堅調です。決算発表シーズンの開始に当たる1/20(金)以降、2/21(火)まで日経平均株価は3.5%上昇しました。再び金利上昇圧力という逆風が強まったにもかかわらず、東証グロース指数も2.0%の上昇を維持しました。株式市場は、投資家が感じている以上に強いのかもしれません。
そこで、今回の「新興株ウィークリー」では、東証グロース市場、同スタンダード市場から、過去3年高い利益成長を遂げてきた上に、2022年10~12月期も大幅増益を確保し、今期も増益予想を公表している銘柄を以下の条件でスクリーニングし、抽出してみました。
(1)東証グロース市場、または東証スタンダード市場に上場
(2)時価総額100億円超1,000億円未満(2/20時点)
(3)1営業日当たりの平均出来高が2万株超(2/20までの20営業日)
(4)2022年10~12月期の決算発表を終了
(5)決算月が3月、12月の銘柄
(6)前期まで過去3期がすべて10%超の営業増益で、平均増益率(単純平均)が20%超
(7)2022年10~12月期の営業利益が前年同期比20%超以上の増益
(8)今期会社予想営業利益が増益予想
(9)信用取引に関し、各種規制(日々公表、注意喚起も含む)が実施されていない
図表4は、上記の条件をすべて満たし、銘柄の掲載は(7)の増益率が高い順となっています。
中小型株において株価が中期的に上昇し、テンバガーに象徴されるような大幅高銘柄になるには、高い成長を続けていくことが必要な条件のひとつであると考えられます。図表4の銘柄は、テンバガーに挑戦する資格を備えた銘柄であるといえるかもしれません。
図表4 目指せテンバガー!~増益が続いている中小型株は?
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 株価 (2/21) |
過去3年平均営業増益率 | 10~12月期営業増益率 | 今期予想 営業増益率 |
6625 | 6625 | 6625 | 6625 | JALCOホールディングス | 262 | 38.3% | 231.1% | 93.2% |
4058 | 4058 | 4058 | 4058 | トヨクモ(12) | 1,426 | 91.6% | 159.0% | 12.7% |
6777 | 6777 | 6777 | 6777 | santec | 2,587 | 29.0% | 142.0% | 125.3% |
4482 | 4482 | 4482 | 4482 | ウィルズ(12) | 611 | 31.3% | 74.2% | 6.7% |
7094 | 7094 | 7094 | 7094 | NexTone | 3,875 | 58.5% | 29.4% | 25.6% |
4074 | 4074 | 4074 | 4074 | ラキール(12) | 1,675 | 66.5% | 25.4% | 16.7% |
4193 | 4193 | 4193 | 4193 | ファブリカコミュニケーションズ | 3,200 | 74.1% | 23.6% | 35.4% |
3969 | 3969 | 3969 | 3969 | エイトレッド | 1,498 | 21.1% | 22.5% | 10.7% |
- ※Bloombergデータ、会社公表データをもとに、SBI証券が作成。
- ※銘柄名右カッコ内の数字は決算月。記載のない銘柄は3月決算銘柄。
- ※「10~12月期営業増益率」は、2022年10~12月期の前年同期比営業増益率。
- ※「今期」は3月決算銘柄の場合「2023年3月期」、12月決算は「2023年12月期」。
- ※過去3年平均営業増益率は、前期を含む3期の営業増益率(前期比)の単純平均。
ここでは、図表4でご紹介した銘柄の一部について、やや詳細にご説明します。
■トヨクモ(4058)~4期連続で過去最高益を達成予定 株価は日の目を見るか!?
『簡単』で『低価格』な法人向けクラウドサービスの開発・販売を行う企業です。
「kintone連携サービス(トヨクモスケジューラ含む)」が売上高の約6割を占めます(22.12期)。kintoneとは、「誰でもかんたんに業務アプリが作成できるアプリ構築プラットフォームサービス(HPより)」で、サイボウズ(4776)が提供しています。同社は、kintoneの標準機能では足りないサービスを連携アプリとして提供しています。元々、同社は「サイボウズスタートアップス」という名で設立された子会社でした。※現在は連結の対象外。
残りの売上高の4割弱を占める事業は「安否確認サービス」で、企業や自治体向けにサービスを提供しています(同)。後発ながら順調にシェアを伸ばし、3100社・160万ユーザーと業界3位の導入社数を誇ります(同)。
同社の収益構造は99.9%がストック収入な上、粗利率97%、解約率は0.61%の低水準と非常に安定成長が見込めるものです。現に、7期連続売上高増、3期連続営業増益を達成しました。また、2期連続の増配も発表しています。今期(23.12期)もクラウドサービスの需要拡大に伴う有償契約者数の伸長を背景に、過去最高売上・利益を更新予定です。2/13(月)に発表した前期決算通過後、株価は上昇基調となっています。上場来の株価推移は軟調ですが、業績は着実に成長している印象です。
好業績が続いていますが、売上成長率は鈍化気味であるのが現状です。そこで、同社は今期から「kintone連携サービス」で、より『大規模』かつ『高価格帯』のビジネス領域でサービス提供開始をする予定です(エンタープライズ向けビジネス)。
*本稿の紹介銘柄の中でも、比較的出来高が少なめである点にはご留意ください。
■NexTone(7094)~攻めの著作権エージェントを志向。決算発表後の株価は下落も、10~12月期に増益率は回復
「著作権管理事業」を主業務(2023/3期・第3四半期累計売上高構成比率93.0%)としています。この業務はさらに、(1)「著作権管理」(同11%)と、(2)「DD」(デジタルコンテンツディストリビューション)(同82%)に分かれています。また(3)「キャスティング事業」(同6%)も展開しています。
各事業(上記番号で区分)の詳細は以下の通りです。
(1)音楽出版社等の「著作権者」から依頼を受け、レコードメーカーや放送局、音楽配信事業者に利用を許諾し、「著作権者」に著作権使用料を分配。
(2)YouTubeやApple Music等の音楽配信プラットフォームに原盤使用料を請求し、レコードメーカーやプロダクション等のコンテンツホルダーに還元。
(3)各種クライアントへ企画を提案し、コンテンツを提供しています。プロダクション等は提案に応じてコンテンツ製作や利用許諾を提供。
多くの著作権者は煩雑な著作権管理を専門業者に委託したいと考える一方で、より多くの利用者・利用機会を創出したいと考えています。一方、多くの著作権利用者は、著作権者との直接交渉の手間を省き、複数著作権の利用許諾獲得等といった煩雑な作業を避けたいと考えています。当社はこれらの間に立って、楽曲の利用促進を図っています。同社にとっては、使用料を取る楽曲の管理数と使用頻度を高めることで収益増へ繋がります。単純に著作権を管理するだけでなく、「DD」や「キャスティング事業」等の利用促進業務により、1曲当たりの著作権利用料増大を図る「攻めの著作権エージェント」と表現できそうです。
2/10(金)発表の2023/3期・第3四半期(累計)決算では、売上高64億円(前年同期比15.3%増)、営業利益5.2億円(同15.5%増)となりました。管理楽曲数、取扱原盤数が増え、売上高は順調に拡大しました。主力の「著作権管理事業」では、売上高が前年同期比19%増、営業利益が同24%増と増収増益になりました。ただ、第3四半期累計の営業利益が、通期会社計画(前期比25.6%増の8.9億円)に対する進捗率が59%にとどまり、「標準」の75%を下回ったことから、決算発表後の株価は冴えない状況です。
もっとも、営業増益率(前年同期比)は上半期8%増から10~12月期は29%増と回復。また無借金経営が継続していることに加え、現預金57億円を抱えており、財務体質は堅固と言えそうです。著作権徴収の市場は長く「JASRAC」(日本音楽著作権協会)が独占してきましたが、当社がようやく、シェア6.8%(前期時点)まで確保し、他の参入業者はほぼ撤退しています。当社は長期的に著作権徴収市場でのシェア50%を目指しています。中期計画では、2025/3期に売上高150.8億円、営業利益20.2億円、上記シェア13.8%に加え、東証プライム市場上場を目指しています。株価は2/8(水)高値4,950円から2/15(水)安値3,580円まで下げた後はやや持ち直しています。
■ラキール(4074)~法人向けDX支援。安定した顧客基盤を有しながら業績拡大中
2つのDX支援サービスを軸とする企業です。「LaKeel DX」というクラウド型の業務アプリケーション開発・運用基盤の提供を行うプロダクトサービス(売上構成比58.1%)、法人向けシステム開発・保守を行うプロフェッショナルサービス(同41.9%)を展開しています(22.12期)。新型コロナ流行以降、流れが加速した企業のIT投資を背景に、業績を拡大してきました。
前期(22.12期)は売上高68億円(前期比18%増)、営業利益7億円(同41%増)と2期連続増収、3期連続で増益を達成。今期(23.12期)に関しても更新予定です。売上高の伸び率も前々期(21.12期)から順調に増加傾向です。営業利益の伸び率は鈍化していますが、広告や人材関連への投資を重視している模様です。
株価は昨年末に上場来安値を付け、2023年に入り回復傾向にあります。2/14(火)前期決算発表の終了後はまた一段と上昇の流れが強まっています。
■エイトレッド(3969) ~ワークフローの可視化・電子化サービス。7期連続増収
ワークフローの専門家手段として活躍する企業です。
ワークフローを可視化・電子化するためのシステムを提供しています。大企業から中小企業まで、規模や業種問わずに、全事業会社が顧客対象です。テレワーク導入のハードルとなる「ハンコ問題」も同社サービスで課題解決が可能です。
同社資料によると、ワークフローシステム市場の規模は2025年度までに1年あたり平均12.0%の成長が見込まれる市場です。ビジネスモデル的には売上高の75%がストックビジネスで、25%がライセンス販売と安定的です(22.3期)。新型コロナの流行でテレワーク需要が増し、同社業績の拡大も勢いが増しました。
7期連続で増収、確認できる限りでは10期連続で増益を達成しています。今期(23.3期)も更新予定です。第3四半期時点での進捗率は売上高69%、営業利益72%と標準である75%を下回りました。これに関して会社側は、半導体不足等により大幅に導入が遅れていた製品の受注が見込めるため、過去最高売上・利益の通期予想に対し変更は行いませんでした。コロナによる急速な業績の拡大で株価が急騰し、2021年以降は株価は右肩下がりとなっています。ただ、業績に関しては着実に伸長していることや、コロナによる急騰前の水準に近いことから見直し買いも期待できそうな株価です。
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