反発本格化?押し目買いを狙いたいグロース株を探る

反発本格化?押し目買いを狙いたいグロース株を探る

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/06/28

信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。

グロース市場が反落

6/20(火)~27(火)の東京株式市場では、日経平均株価が-2.5%、TOPIXが-1.3%、東証グロース市場指数が-6.4%と週足ベースで反落。東証グロース市場指数は、前週では他主要指数を大きく上振れ上昇していた分、反動で大幅安となった形です。

主要株式市場で、高PERのグロース株が軟調でした。米国市場(6/16~26)ではS&P500 が-1.8%なのに対し、構成銘柄の多くがグロース株のナスダックは-2.6%とアンダーパフォームする結果となりました。背景には、グロース株にとって向かい風である米金融引締めへの見方が強まったことが挙げられます。期中では、パウエル議長が議会証言で利上げ実施の可能性が高いことを示唆した上、複数のFRBメンバーも同様の内容の発言をしたことが材料となりました。

時価総額上位銘柄では、M&A総研ホールディングス(9552)の下落が目立ちました。23.9期上半期の営業利益の通期会社予想に対する進捗率は57%あり、業績は順調で、5/26(金)~6/20(火)には株価が60.2%も上昇していました。しかし、6/21(水)から6/27(火)には自律調整となっています。ただ、6/27(火)取引終了後には、東証プライム市場への市場区分変更申請(4/12申請、現在も東証で審査中)、株式分割(7/12基準、1→3)、海外売出実施の発表を行っています。

上昇率上位の銘柄(時価総額100億円以上)では、第4位にジェイフロンティア(2934)がランクイン。医薬品や健康食品の通販を主軸とし、オンライン診療・薬宅配システムを成長事業とする会社です。6/7(水)にツルハドラックが、全調剤薬局にオンライン診療・服薬指導・処方薬配送サービス「SOKUYAKU(ソクヤク)」の導入を発表。続けざまに、6/21(水)アイセイ薬局がグループの調剤薬局全400店舗に同サービスの導入すると発表し、期待感から上昇相場が続いています。

図表1 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

図表2 主な東証グロース市場指数構成銘柄の値動き

図表3 6/20(火)~27(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

反発本格化?押し目買いを狙いたいグロース株を探る

【参考*】にもあるように、東証グロース市場指数は、5/26(金)を底に、6/21(水)まで一気に上昇しましたが、その後は上昇一服となっています。

記録的な外国人買いを伴い上昇してきた、これまでの日本株の上昇は、長期的かつ本格的な上昇の第一波なのかもしれません。国際的なサプライチェーンの再構築の中で、株式にとどまらず、日本への直接投資も増えつつあります。東証は、上場企業の「解散価値割れ」が多いことを問題視して企業に変革を迫り、国はNISA拡充等を通じ、株式市場を育てようとしています。来日観光客が増えることで、日本への理解も草の根で増えるでしょう。

市場心理の強弱を示す側面もある日経平均の予想PERは確かに上昇はしてきましたが、2015年には18倍近い水準にあったこともあります。また、今後企業業績の向上により、予想EPSが上昇してくれば、少なくとも3万円台後半に日経平均が上昇していくシナリオは、十分あると考えられます。

仮に、これまでの日本株の上昇が本格的な上昇の第一波なのだとしたら、現在の株価調整は「初押し」ということになります。株式市場の格言に「初押しは買い」というものがあります。日経平均株価はすでに25日移動平均線に接近し、第1の節目に来ていると考えることもできます。図表4にもあるように、東証グロース市場指数も節目の株価に到達してきました。今後、グロース市場が当面のボトムを付け、再び上昇に転じる可能性もありそうです。

そこで、今回の「新興株ウィークリー」では、押し目買いを狙いたいグロース株を探るべく、スクリーニングを行なってみました。

スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証グロース市場に上場

(2)5/26(金)~ 6/21(水)の株価上昇率が30%超

(3)6/21(水)~ 6/27(火)までの下落幅が、(2)の上昇幅の25%超

(4)広義の金融を除く

(5)今期予想営業利益が黒字

(6)信用取引上何らかの注意喚起、または取引規制措置等が取られていない。

(7)その他、業績が堅調で明確な売り材料がない

図表4の銘柄は、上記の条件をすべて満たしています。掲載の順番は、(3)にあるように、株価上昇分に対する下落幅の比率が大きい銘柄ほど上位としました。掲載している銘柄は備考に書かれたような評価ポイントがあり、調整完了後の反発を期待できると考えています。

【参考*】 当面の節目まで下がってきた東証グロース市場指数

図表4 反発本格化?押し目買いを狙いたいグロース株を探る

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価
(6/27)
株価上昇率
5/26→6/21
上昇分に対する打ち消し率 備考
3961 3961 3961 3961 シルバーエッグ・テクノロジー(注) 977 39.0% 59.3% AIを用いたマーケティング支援。23/12期の会社予想営業利益に対し1Qで進捗率56%と好調
9252 9252 9252 9252 ラストワンマイル 3,860 44.1% 53.7% ライフラインの契約代行サービス。23.8期は営業利益が黒字転換の会社予想。2Q進捗率73%
4075 4075 4075 4075 ブレインズテクノロジー 1,257 56.7% 53.5% 23.7期3Q累計営業利益は前年同期比33%減も、2~4月期だけみれば前年同期比2.2倍増
4194 4194 4194 4194 ビジョナル 7,740 36.7% 52.9% 大手証券によるレーティング格下げも影響?ただし、そこでの目標株価9,000円を下回る
5256 5256 5256 5256 Fusic(注) 5,630 35.3% 42.4% AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)を利用してDXを支援。営業利益進捗率3Qで97%と順調
6580 6580 6580 6580 ライトアップ 1,204 48.7% 42.0% 中小企業向け経営支援ソフト。前期営業利益83%減益も、今期は同334%増と回復を狙う
3905 3905 3905 3905 データセクション 355 43.6% 38.5% 消費者の口コミを把握、分析。23.1~3期は営業損益が黒字転換。24.3期は通期で黒字目指す
4417 4417 4417 4417 グローバルセキュリティエキスパート 5,990 59.3% 36.1% 中堅・中小企業向けにサイバー・セキュリティサービス。19.3期以降増収・増益基調
3773 3773 3773 3773 アドバンスト・メディア 1,910 34.0% 31.5% 音声認識技術をコアとしたサービスを展開。今期も2桁増収・営業増益の会社予想
3491 3491 3491 3491 GAtechnologies 1,366 35.2% 29.6% AIを活用して業務を効率化。23.10期2Q累計純利益の通期会社計画に対する進捗率は87%
  • ※Bloombergデータ、会社公表データ、各種報道等をもとに、SBI証券が作成。
  • ※シルバーエッグ・テクノロジー(3961)とフュージック(5256)は6/28(水)が権利付最終日ですので、ご注意ください。
  • ※「上昇分に対する打ち消し率」は、株価上昇幅(5/26→6/21)に対し、株価下落幅(6/21→6/27)が何%かを示しています。

以下、図表4に掲載した銘柄について、詳細をコメントします。

■グローバルセキュリティエキスパート(4417)~高成長が続くサイバーセキュリティ専業企業

★日足チャート(1年)

  • ※データは2023/6/28(日足) 13:30時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■「サイバーセキュリティ教育カンパニー」を標榜

同社は、サイバーセキュリティに特化し、その教育に注力しています。大株主はビジネスブレイン太田昭和(9658・保有比率46%)と兼松エレクトロニクス(非上場・同20%)他となっています。

企業向けの「セキュリティ訓練サービス」やエンジニア向けの「セキュリティ教育講座」を展開する「教育事業」が売上高の18.6%(23.3期)を占めています。その他は、「脆弱性診断サービス」を含む「コンサルティング事業」が同25.0%、「セキュリティソリューション事業」が同32.8%、「ITソリューション事業」が同23.7%となっています。

サイバーセキュリティリスクが多様化・高度化する中、相対的にサイバーセキュリティ対策が遅れ気味の中堅・中小企業にも早急な対応が求められています。しかし、サイバーセキュリティ人材の多くは一部の大手専門企業に偏在しているのが実情です。そこで、中堅・中小企業の多くがサイバーセキュリティ業務を外部に委託することになりますが、専門企業のサービス提供能力にも限界があり、中堅・中小企業の多くは、サイバーセキュリティについて相談先もいないのが現状となっています。

同社は中堅・中小企業をメインターゲットにビジネスを展開しています。すべての企業のサイバーセキュリティに対する自衛力を引き上げることがミッションであるとしています。

■高い売上高・利益成長が継続中

同社の売上高や利益は高い成長を続けています。19.3期から23.3期にかけては、売上高が13億円→55億円(年平均44%成長)、営業利益が0.38億円→7.36億円(19倍)と拡大中。売上高営業利益率も同期間に3.0%→13.3%と向上しています。

会社資料によると、ネットワークセキュリティ市場は2018年度5,016億円から2022年度は6,344億円と年率6%のペースで成長していますが、同社の成長率(上記)はそれを大きく上回っています。ITエンジニアがセキュリティのスキルを取得することがデファクトスタンダード(市場競争によって業界標準と認められた規格)となりつつあることに加え、中堅・中小企業の対策ニーズも飛躍的に高まっています。

24.3期は売上高70億円(前期比25%増)、営業利益10億円(同47%増)が会社計画です。すべての事業においてまんべんなく増収が見込まれています。営業利益について中期計画では25.3期に営業利益15億円、26.3期に22億円が見込まれています。

今の所、高い成長イメージが続いており、株価も中長期的な上昇トレンドを描きやすくなっています。ただ、他のグロース市場銘柄同様、5月から6月にかけての株価上昇はピッチが速すぎたとみられ、6/19(月)以降の下げは自律調整であったと考えられます。6/27(火)に5/9(火)の高値5,990円を一時下回り、25日移動平均線が意識される水準まで下げたことで、値幅調整は相当進捗したと見受けられます。

■GA technologies(3491)~総合ネット不動産会社。不動産業のオンライン化が追い風。首都圏の中古マンション投資市場に強い

★週足チャート(3年)

  • ※データは2023/6/28(週足) 13:30時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■総合ネット不動産会社

総合ネット不動産会社です。従来の不動産取引は、多様な業者を挟み、対面による手続きが必須でした。対して、同社はオンライン上で不動産に関わるサービスを一気通貫で提供しています。

不動産取引の完全デジタル化が実現したのは、実はここ最近です。2021年のデジタル法改正に伴い、2022年から不動産取引時において、書面・対面が必須ではなくなり、電子化が全面解禁となりました。

デジタルとの親和性の高い投資用不動産の扱いを得意とし、需要の高い首都圏の中古マンションに注力しています。

RENOSYマーケットプレイス事業(投資・運用)

 ・・・売上構成比98%(22.10期)

同社はオンライン上で問合せ、WEB内見予約、契約、運用・管理などサービスを網羅的に自社展開しています。取引は同社運営のRENOSYマーケットプレイス上で完結する形です。買取業者や販売業者を挟む必要がないため、顧客が払う仲介手数料が不要等の利点があります。また、社内手続き等をDX化させることで、オペレーションコストを削減し、中間マージンも他社より低水準であることが特徴です。

ITANDI事業(管理及び賃貸)

 ・・・売上構成比2%(同)

賃貸領域において、不動産仲介会社及び管理会社向けにSaaSサービスの提供をしています。

中華圏最大級の日本不動産プラットフォームの神居秒算や、タイ駐在向け賃貸プラットフォームの運営も行っており、海外事業にも積極的にチャレンジしてゆく方針です。

■利益の回復基調が好感され一段高

前々期(21.10期)に事業利益が赤字となり、22年春ごろまでは株価の低迷が続いてきました。RENOSYマーケットプレイスでの取引量増のため、不動産の自社買取を行っており、不動産の仕入れ価格高騰が痛手となりました。しかし、22.10期は黒字転換となり、株価も落ち着きを取り戻しました。

6/12(月)に発表された今期(23.10期)中間決算では、売上収益634億円(前年同期比29%増)、事業利益9億円(同43%増)と大幅増収増益を確保。今期の通期事業利益予想16億円に対しての進捗率は56%と順調でした。株価はそれを好感して急騰し、6/19(月)には一時1,693円まで上昇、その後やや一服となっています。

売上高は高い成長率を維持していることから、これからも利益成長が継続的に確認することができれば、株価の回復にも期待感が持てそうです。

おすすめ記事(2023/06/28 更新)

口座開設・管理料は
無料!

信用取引口座開設

信用取引を行うには、信用取引口座の開設が必要になります。 WEBサイト上でのお手続きだけで「最短翌日」口座開設完了!

※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。

ご注意事項

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。詳細はこちら

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。