海外が不透明でも日本株は相対的に堅調!?その理由とは?

海外が不透明でも日本株は相対的に堅調!?その理由とは?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/06/27

日経平均は11週ぶりの反落。上昇相場が一服。米追加利上げ実施見通しが重しに

6月第3週(6/19-23)の日経平均は前週末比924円54銭安(▲2.7%)と11週ぶりに反落。4月から始まっていた連騰が一服した形です。同期間は米国市場でも、S&P500 とナスダックが▲1.4%と上昇相場がひと息ついた状態となりました。

市場を動かす材料自体が少ない中、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が議会証言で追加利上げ実施の可能性が高いことを示唆し、市場では景気後退への懸念が強まりました。さらに、英中銀が予想外に、0.5%の利上げを実施したことで、米国での追加利上げ実施観測を高める形となりました。金利先物市場では、FRBの年内利下げ開始予想は5/26・28%→6/26・5.3%と大きく後退しています。

他にも、日本では6月末にかけてのGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のリバランスや、ETFの分配金捻出等に伴う機関投資家からの売りが出たことが相場の重しとなったとする声があります。年度始めからの日本株のパフォーマンスが堅調であった分、大きな売りが伴うことが警戒されます。

日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(6/19~26・図表7)では、川崎汽船(9107)が首位です。6/16(金)の引け後、日本経済新聞社が選ぶ「日経高配当株50」に新規採用されました。2位にはイオン(8267)がランクインしました。6/16(金)にS&Pグローバル・レーディングが格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に変更を発表。総合スーパー事業の構造改革や、キャッシュフロー関連指標の改善等が評価されています。また、決算発表が7/12(水)に予定され、期待感から買われた面もありそうです。

日経平均株価採用銘柄の下落率上位(6/19~26・図表8)では、リクルートホールディングス(6098)が首位です。5/18~6/14で、発行済み株式数の11%強にあたる約1882万株の自社株買いを実施。期中株価は年初来高値を更新していたため、その反動があったとみられます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(6/19~26)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(6/19~26)

海外が不透明でも日本株は相対的に堅調!?その理由とは?

6月26日(月)の日経平均は、前週末比82円73銭安の3万2,698円81銭と3営業日続落となりました。取引開始後に2週間ぶりとなる3万2,400円割れとなる場面もありましたが、先週後半以降に円相場が1ドル=143円台へと円安・ドル高が進んでおり、外需株の一角が買い戻されたため、日経平均は下げ幅を縮小しました。

このところ、外為市場では再び円安・ドル高基調が強まっています。そして、円相場(円/ドル)との相関が強いのが日米間の金利差なのですが、最近は10年国債利回り差よりも、2年国債利回り差との相関が強いと思われます(図表9)。

教科書的な話となりますが、通常、長期金利である10年国債利回りは経済成長見通しが反映されると言われています。成長期待が高まれば(低下すれば)10年国債利回りが上昇(低下)する、といった具合です。一方、比較的に年限が短い2年国債利回りは、金融政策の見通しが反映されると言われています。つまり、現状の円相場について2年国債利回り差との相関が強まっているということは、市場参加者が円相場の方向性を占う上で、米国金融政策の方向性をより重要視している、ということが言えます。

ちなみに、日本については、日銀のイールドカーブコントロール政策により、日本国債の利回りは変動が限定されています。そのため、当面、日米金利差の動向を決めるのは米国国債の動きになると考えられます。

図表9 円相場と日米金利差(2年国債利回り差)のマトリクス

  • ※BloombergをもとにSBI証券作成

図表10 米2年国債利回りと政策金利(FFレート誘導目標)

  • ※BloombergをもとにSBI証券が作成

日米金利差の観点から見れば、円相場は一段の円安・ドル高の余地がありますが、過去3ヵ月程度で10円強の円安が進行しており、その変化の速さに対し、為替介入などへの警戒が高まっているようです。実際、6/26(月)には、神田真人財務官が、円安進行について「足元は急速で一方的だと見られる。行き過ぎた動きには適切に対応したい」と円安をけん制する発言を行っています。今後も円安が続けば、為替介入(円買い、ドル売り)が行われる可能性が否定できません。

もっとも、現状の円相場は、水準はともかく、円安のスピードはそれほど急ピッチではありません。政府と日銀は、昨年9月から10月にかけて、1998年以来となる円買い、ドル売り介入に踏み切りました。そのころの円相場は、52週前比(前年同週比)で30%前後の早いペースで円安が進んでいましたが、現状はそれほどのペースではありません(図表11)。

また、昨年は円安進行時に、日本経済への悪影響として輸入物価の上昇を通じたインフレがクローズアップされていました。確かに、円安が進めば輸入物価の上昇を通じてインフレを促すことになりますが、昨年のそれは、円安よりも商品市況高の方が大きく影響しておりました。現状は、円安のスピードが急ではなく、かつ、商品市況の上昇が一服しており、モノやサービス価格への影響は限定的と考えられます。したがって、為替介入が行われる可能性は今のところ低く、当面は口先介入に留まると考えられます。

現状、欧米の株式市場は、金融引き締めへの警戒が再び高まっていることなどが嫌気されて軟調な展開となっています。これまで海外投資家の買いを背景に順調に上昇しきていた日本株についても、利益確定の売りに押される展開となっています。欧米の先行き不透明感は、日本株にとっても逆風になりますが、金利差拡大による円安を手掛かりに輸出株を物色する動きが強まれば、日経平均の下値は限定的に留まる可能性があるでしょう。

図表11 円相場と商品指数の推移

  • ※日本銀行、BloombergをもとにSBI証券が作成

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