再び上昇基調?の中小型株~隠れた連続増益銘柄を探る

再び上昇基調?の中小型株~隠れた連続増益銘柄を探る

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/07/05

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再び上昇基調?の中小型株~隠れた連続増益銘柄を探る

東京株式市場では、日経平均株価が高値圏でもみ合う展開になっています。東証グロース市場指数も6/21(水)を高値に6/27(火)まで下げた後はやや持ち直す展開になっています。

一方、東証スタンダード指数は相対的に力強い展開です。6/23(金)の取引時間中高値から6/27(火)まで小さな押し目を形成した後は上昇基調となり年初来高値更新の動きになっています。市場別のPBR(7/4)を再吟味すると、東証プライム市場1.34倍、同グロース市場4.65倍に対し、同スタンダード市場は0.98倍と出遅れ感が顕著で、「解散価値」である1倍をも割れています。スタンダード市場の堅調は、割安銘柄の水準訂正をテーマとしている今の株式市場の動きを象徴しているのかもしれません。

ただ、東証スタンダード市場は割安感が強いだけの市場ではありません。実は成長中の企業も少なからずあるようです。

今回の「新興株ウィークリー」では、人気銘柄とは言い切れないものの、着実に成長を続けている中小型株を抽出すべく、以下のスクリーニングを行なってみました。

(1)東証グロース市場、または東証スタンダード市場に上場

(2)時価総額100億円以上1,000億円未満

(3)過去5期の年間平均売上高増加率(CAGR)が10%以上

(4)過去5期の年間平均営業利益増加率(CAGR)が10%以上

(5)過去3期連続で増収・営業増益

(6)今期会社予想業績が増収・営業増益

(7)7/3(月)まで20営業日の1営業日当たり平均出来高が2万株以上

図表の銘柄は、上記の条件をすべて満たしています。掲載の順番は、(4)の年平均営業増益率が大きい順としました。東証グロース市場銘柄が2,スタンダード市場銘柄が6銘柄であり、スタンダード市場にも成長中の銘柄が少なくないことご理解いただけると思います。にもかかわらず、PBRが相対的に低いということは、出遅れ感、割安感を一層強めることになると考えられます。

【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

【参考】 6/27(火)~7/4(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

■図表 再び上昇基調?の中小型株~隠れた連続増益銘柄を探る

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価
(7/4)
過去5年・年平均増益率 今期会社予想増益率 備考
7781 7781 7781 7781 平山ホールディングス 856 77.7% 30.0% 製造請負が中核的事業で、取引稼働社数698社(前期532社数)に上る。配当性向を前期に25%→30%に引き上げるなど株主還元に前向き
4482 4482 4482 4482 ウィルズ(G) 604 67.0% 6.7% 株主優待商品交換サイト「プレミアム優待倶楽部」を運営。上場企業は、(長期安定保有)株主増加や株主管理のDX化が期待できる
4107 4107 4107 4107 伊勢化学工業 7,980 56.0% 19.8% ヨウ素で国内45%、世界15%の生産シェア。近年は造影剤、偏光フィルム等に用途を拡大。次世代太陽電池「ペロブスカイト型太陽電池」向けも
2150 2150 2150 2150 ケアネット(G) 918 47.6% 5.2% 教育コンテンツを無料で提供し、医師等を会員として獲得。製薬会社は対価を払い、会員医師等に、医薬品の営業・普及活動を行うことができる
3969 3969 3969 3969 エイトレッド 1,434 25.3% 10.1% ワークフロー専業メーカー。ペーパーレス・業務効率化に貢献。8期連続増収、11期連続で過去最高益達成を見込
4174 4174 4174 4174 アピリッツ 1,079 23.7% 18.8% WEBシステム、スマホゲーム等の企画・開発、運用/保守。7期連続で2桁台の増収達成を見込む。24.1期1Q営業利益が前年同期比36%増と好調
4771 4771 4771 4771 エフアンドエム 2,609 17.8% 6.1% 中小企業のバックオフィス支援。業績は下期偏重。4期連続で過去最高益を達成予定
3798 3798 3798 3798 ULSグループ 3,895 14.2% 7.1% ITコンサルやクラウドソリューション事業を展開。12期連続で過去最高益を達成予定
  • ※Bloombergデータ、会社公表データ、各種報道等をもとに、SBI証券が作成。
  • ※銘柄名右横に(G)と記載された銘柄は東証グロース市場銘柄で、無印の銘柄は同スタンダード市場銘柄。
  • ※過去5年・年平均増益率は、前期までの5年間で営業利益が年平均、何%で成長したかを示しています。
  • ※ウィルズ(4482)は19.12期以前が単独決算で、20.12期以降が連結決算です。5年・年平均増益率は単純に単独決算と連結決算をつなげて計算しています。
  • ※アピリッツ(4174)は21.1期以前が単独決算で、22.1期以降が連結決算です。5年・年平均増益率は単純に単独決算と連結決算をつなげて計算しています。ただ、前期の5期前に相当する18.1期は営業利益の公表がないため、同社のみ経常利益で計算しています。

一部掲載銘柄を詳細に解説!

■平山ホールディングス(7781)~製造業を裏方で支える成長企業。12期連続で増収達成予定

★日足チャート(1年)

  • ※データは2023/7/5(日足) 9:30時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■製造業の請負がメイン事業。ノウハウや人材育成力に強みを持つ

“企業のものづくり”を支援する会社です。インソーシング(請負)をメインに、人材派遣やトヨタ生産方式を用いた現場改善などを行っています。

派遣業は時間で売上が変動します。一方、同社の主軸である請負業は完成品の生産量で売上高が変動する点が特徴です。

人材育成力や長年のノウハウ蓄積により、高い顧客対応力を有していることが強みです。厚生労働省が認定する『製造請負優良適正業者』の第1号でもあります。

インソーシング・派遣事業(売上高82%、22.6期)

→同社の基盤事業です。製造請負をメインに、取引稼働社数698社(前期532社数)に上ります。業種別売上構成比は、医療機器・医薬品21%、食品21%、自動車部品10%で顧客業種は多岐に亘ります。目下、円安進行などによる製造業の国内回帰が追い風です。

他には、成長事業と位置付けている技術者派遣事業(8%、同)や、海外事業(8%、同)等を展開しています。

近年、事業領域拡大を目的としたM&Aを積極的に実施中。関係会社の数は11に上ります。直近では、5/31(水)にブリヂストン(5108)傘下の構内請負会社を全株取得し子会社化しました。

■12期連続増収を達成予定。国内回帰やM&Aによる業容拡大に期待

5/15(月)に発表された今期(23.6期)3Q(22.7-23.3期)決算では、売上高235億円(前年同期比15%増)、経常利益8億円(同36%増)となりました。通期予想に対する進捗率は、売上高73%、経常利益91%と順調といえそうです。一部生産見送りがあったものの、コロナ禍後の生産回復需要の取り込みに奏功した模様です。

また、7/3(月)には4-6月期の日銀短観で大企業・製造業業況判断指数が7四半期ぶりに改善。同社にとっての支援材料になり得るでしょう。

株主還元策においては、22.6期に配当性向*の目途を25%から30%超に引き上げを実施。連結総還元性向**は50%以内を目途にしており、自社株買いを含めた積極的な利益還元をする方針を掲げています。6/20(火)の取締役会決議で、取得株数上限6.5万株、取得総額0.65億円、取得期間23/6/21~23/9/27で自社株買いを実施することを発表しています。

*利益に対して、配当金に使う割合。

**利益に対して、配当金+自社株買いに使う割合。

今期(23.6期)本決算の発表予定は8月中旬です(詳細日程は未定。7/4時点)。

■伊勢化学工業(4107)~ 主力製品の「ヨウ素」は日本が誇る「唯一」の輸出資源

★日足チャート(6ヵ月)

  • ※データは7/5(日足) 9:30時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■ヨウ素で国内45%、世界15%の生産シェア

「ヨウ素及び天然ガス事業」が売上高(23.12期1Q)の83%で、残りは塩化ニッケル等の金属化合物となっています。AGC(5201)が持株比率52.8%(22.12末)を占める親会社で、三菱商事(8058)も同11.3%の大株主です。

数百万年前の有機物からでき、地下深く眠っている古代海水の「かん水」は、くみ上げられるとヨウ素と天然ガスに分離されます。このうちヨウ素は、チリ(生産シェア6割)と日本(同3割)を中心に生産され、資源の乏しい日本にとって、産業化された唯一の輸出資源となっています。

ヨウ素は殺菌性が強いため、古くから消毒・殺菌剤に用いられてきましたが、現在はX線等の造影剤が中心で、その他液晶パネルに使われる偏光フィルム、自動車のシートベルト・エアバック用繊維の安定剤、甲状腺ホルモン剤等の医薬品等に用いられています。

ヨウ素の国内生産の約8割は千葉県産といわれ、同社も千葉県に複数の工場を有しています。

■ヨウ素需要は中長期的に拡大へ

4/27(木)に発表された23.12期1Q決算では、販売先の在庫調整を受け、売上高は51億円(前年同期比0.7%減)と若干の減少。しかし、造影剤、医薬品、偏光フォルム等へと用途が拡大しており、ヨウ素の市況は堅調に推移。営業利益は9.7億円(同70%超)と大幅増益になりました。

今期(2023.12期)は営業利益45億円(前期比19%増)が会社計画です。2年連続最高益更新の見込みで、順調な滑り出しと言えそうです。

ヨウ素剤は放射能を吸い込んだ時に癌を防ぐ役割もあります。このため、ロシアによる核兵器使用不安で、22年以降、欧州においてヨウ素剤の需要が急増。市況高騰や株価上昇に拍車をかけた可能性もありそうです。逆に、その反動等で、短期的に市況が緩む場面が訪れるリスクは残ります。

次世代太陽電池といわれるペロブスカイト型太陽電池にはヨウ素が使われています。ヨウ素の需要は中長期的に拡大が期待できそうで、中長期的には同社業績も成長が見込めそうです。

■ケアネット(2150)~ 製薬会社のDXを促進することで成長。7期連続で増収・2ケタ営業増益

★日足チャート(6ヵ月)

  • ※データは7/5(水) 9:30時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■「医薬DX事業」が売上高の9割超

「医薬DX事業」(前期売上構成比91%)が主力業務。医師・医療従事者に教育コンテンツを無料で提供する「CareNet.com」を運営し、20.9万人(22年末)の医師等を会員として獲得。製薬会社は同社に対価を払うことで、会員医師等に、医薬品の営業・普及活動等を行うことができます。

他に「メディカルプラットフォーム事業」では、医師に医学教育コンテンツを有料で提供したり、医師専門の転職情報プラットフォームを運営、病院に人材を紹介し、対価を得ています。

これまで、製薬会社の販促活動は自社MR(医薬情報担当者)によるものが中心でしたが、近年はMR業務を専門会社(CSO)にアウトソーシングすることや、ネット上での販促活動「eプロモーション」を取り入れることが増えています。同社は、CSOと「eプロモーション」の市場を統合した「医薬DX市場」への需要が増える中で、成長してきました。

過去5年の年平均成長率(CAGR)は売上高が27%、営業利益が48%と高く、かつ7期連続で増収・営業増益となっています。直近の22.12期も売上高93億円(前期比16%増)、営業利益28億円(同12%増)と増収・増益が続いています。

■2025年に売上高300億円、営業利益100億円を目指す(中期計画)

5/12(金)発表の23.12期1Q決算では、売上高25億円(前年同期比13%増)、営業利益7億円(同14%減)となりました。減益決算を受け、株価は低迷し、反発場面も短いものにとどまりました。

営業減益の理由は、新規事業開発に伴う販売管理費の増加によるもので、計画の範囲内であると会社側では説明しています。

中期計画では、2023年→2025年に、売上高110億円→300億円、営業利益30億円→100億円が目標です。既存事業での成長の他に、M&Aや業務提携、開発投資等を推進し、新規事業を拡大していきたいとしています。

高い成長実績に加え、ROEも約20%あり、投資利益率も高めです。中期計画で描かれたような成長軌道に現実味が増せば、現在の予想PER20倍は割安に映ってくるかもしれません。8/14(月)頃に発表予定の23.12期2Q決算に注目です。

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