7月相場は試練の展開!?その理由は?

7月相場は試練の展開!?その理由は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/07/04

日経平均は6カ月連騰。市場心理は強気。テック株強く、ディフェンシブ株弱い

6月第4週(6/26-30)の日経平均は前週末比407円50銭高(+1.2%)と反発。月足ベースでは、6カ月連騰を達成し、年初来からのパフォーマンスは+27%と好調を維持しています。11週ぶりの連騰が一服した前週から、上昇基調に戻った格好です。米国株式市場が好調であったことや、円安ドル高等が追い風となりました。

同期間の米国市場は、S&P500が+2.3%と堅調でした。一部の大型テック株が上昇を主導しました。足元でのAI関連銘柄の上昇に追随し、アップル(AAPL)やマイクロソフト(MSFT)等が上場来高値を更新中です。同じテック株の中でも、直近で急騰したAI関連株銘柄と比べると、前述の2銘柄等の大型株は相対的買い安心感が強いようです。そのため、直近での大型株の上昇は、AI関連株が発端となった上昇相場のパフォーマンスについてゆくため、ハイテク株の中でのディフェンシブな面が選好されたと考えられます。

日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(6/26~7/3・図表7)では、1位に日産自動車(7201)がランクイン。9位の三菱自動車工業(7211)と仏ルノーとの企業連合会合で、日産によるルノーの新EV会社出資の協議がなされると報道がされました。協議進展への期待感から買いが入った形です。この週に円安・ドル高が進んだことも追い風になりました。半導体関連株の堅調さも続き、2位にルネサスエレクトロニクス(6723)の他、複数銘柄が名を連ねました。

日経平均株価採用銘柄の下落率上位(6/26~7/3)ではディフェンシブセクターの銘柄が多い顔ぶれです。同期間は日米両市場で、ヘルスケアや食料品、生活必需品などのセクターのパフォーマンスが軟調でした。TOPIX33業種の中で、ワーストは医薬品の▲2%で、次いで食料品の▲1.4%です(TOPIXは+1.1%)。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(6/26~7/3)

図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(6/26~7/3)

7月相場は試練の展開!?その理由は?

7月の国内株式市場は、日経平均が33,753円と約半月ぶりに年初来高値、および1990年以来の高値を更新するなど幸先の良いスタートを切りました。日経平均は6/16(金)に33,706円と高値を更新した後に上昇が一服していましたが、足元では再び上昇基調を強めており、改めて3万4,000円の大台到達が視野に入っています。

日経平均の上昇基調が再び強まってきた背景には、米国株式市場の堅調に加えて、国内経済の回復基調が強まっていることが挙げられます。7/3に日銀から発表された企業短期経済観測調査(日銀短観、6月調査)では、大企業・非製造業の業況判断DIが+23と12期連続で上昇(又は横ばい)となりました。また、大企業・製造業についても、業況判断DIは+5と前回(3月調査、+1)から上昇し、先行きも+9と一段の改善が示されました。世界的な半導体不足の影響が緩和したことなどが業況改善に貢献したと見られます。また、大企業・製造業の23年度設備投資計画は前期比+19.3%と前回調査(同+5.8%)から大幅に上方修正されました。為替市場において円安圏の推移が続く中、製造業を中心とする国内回帰の動きが一段と顕著となったと見られます。

図表9 日銀短観 業況判断DI

  • ※BloombergをもとにSBI証券作成

日経平均はこのまま3万4,000円台をクリアし、さらなる高値を目指す展開となるのでしょうか?国内経済の回復感が強まっていることや、海外投資家による日本株買いの動きなどを考慮すると、その期待は高まるばかりなのですが、実際は一筋縄にいかない可能性があります。

株式市場には“夏枯れ相場”という言葉があります。国内外の機関投資家が夏休みを取得することなどに伴って夏場、特にお盆の時期にかけて、株式市場の売買高が減少すると言われています。もっとも、過去10年間の出来高を見ると、出来高は7月から減少しており、”夏枯れ相場”と言いながらも、その期間はやや長めと感じられるかもしれません(図表10)。この時期は全体の出来高が減少する一方で、夏休み入りした個人投資家の動きが活発化するため、ボラティリティ(株価の値動き)が上昇する傾向があります。とは言え、市場のエネルギー自体は乏しいので相場を大きく押し上げるような展開は想定しがたく、日経平均が3万4,000円台を超えるような上昇トレンドを期待するのは難しいかもしれません。

図表10 東証株価指数の年間の出来高推移(週次)

  • ※BloombergをもとにSBI証券が作成

一方、米国でも日本と同様に、夏場に出来高が減少する傾向が見られます。ただ、米国、日本ともに米国で毎年FOMC(連邦公開市場委員会)が開催される8月初旬の週の出来高が膨らむ傾向があります(図表10の【A】)。例年、7月FOMCは、金融政策に関し大きな変更が行われることは少なく、(出来高が増えても)マーケットへの影響は軽微になりがちでした。しかし、今回のFOMCは、前回(6月)会合で一旦休止した政策金利の引き上げが、再開される可能性があり、今年については政策変更を伴って株式市場が大きく変動する可能性があります。

図表11は、エコノミック・サプライズ・インデックス(ESI)と米10年国債利回りの推移です。ESIは米国の経済指標が市場予想を上回ると上昇し、逆に下回ると低下する性質がある指標です。5月下旬以降、ESIは上昇傾向を辿っており、米国経済が市場予想を上回って改善していることがうかがえます。一方、景気見通しを反映すると言われている、10年国債利回りは、経済指標の堅調を受けて上昇しても不思議ではないのですが、現状は3%台後半でもみ合いが続いており、やや出遅れが感じられます。7/7(金)に発表される6月雇用統計などが市場予想を上回るような堅調な結果となれば、出遅れ感のある10年国債利回りが、7月FOMCに向けて上昇傾向を辿ることが想定されます。

5月以降、米国株式市場は良好な経済指標で景気後退観測が低下する一方で長期金利の上昇が抑制されるなか、AI関連銘柄など主力のグロース株(成長株)の上昇が相場を支えてきました。しかし、長期金利が上昇し始めると、グロース株には株価調整圧力が強まることが想定されます。また、良好な経済指標を背景に7月FOMCで利上げ感想が強まれば、それも相場を下押しすることにつながるでしょう。国内株式市場については、225の『ココがPOINT』「海外が不透明でも日本株は相対的に堅調!?その理由は?」でも指摘したように、たとえ米国株式市場が軟調に推移したとしても、円安進展によって日本株は相対的にしっかりとした推移が見込まれます。ただ、それでも日経平均が34,000円を超えて上昇基調をたどるのは、秋風が吹き始める頃になるのではないでしょうか。

図表11 米国エコノミック・サプライズ・インデックスと10年国債利回り

  • ※BloombergをもとにSBI証券が作成

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