23年に株価が大幅下落も、反発に期待したい中小型株

23年に株価が大幅下落も、反発に期待したい中小型株

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/12/27

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23年は東証グロース市場が「一人負け」状態・・・24年は投資環境が改善へ?

2023年も間もなく終わろうとしています。12/26(火)時点の年初来騰落率は、日経平均+27.6%、東証プライム市場指数+23.6%、米S&P500指数+23.8%など、世界的に主力株は堅調でした。年間を通じ、米金融政策や同国長期金利に振り回された印象があります。結局、米10年国債利回りは昨年末の3.87%とあまり変わらない水準に戻っており、株式市場は米金融引き締めの一巡を織り込んだ形になっています。

同期間、TOPIXバリュー指数は+26.8%、同グロース指数は+20.1%、東証グロース市場指数は-8.2%でした。秋まで米金利が上昇傾向で、バリュー株優位の展開となり、その後はグロース株優位の展開に変わりました。バリュー株は秋口までの相対的優位という「貯金」に加え、東証改革を背景に割安銘柄が物色されやすい展開が続いたことで、年間を通じては相対的に好パフォーマンスを維持しました。

グロース株は後半回復に転じました。中小型株の多い東証スタンダード市場指数や東証グロース市場指数も後半は落ち着きを取り戻した形です。うち、東証スタンダード市場指数のPBRは0.97倍と、市場自体がバリュー株的性質を帯びており、東証グロース市場に対して相対的優位となりました。中小型全般では、激しい値動きという「お株」を、東証プライム市場の半導体関連等に奪われた面もありそうです。

2024年はどのような年になるでしょうか。米金融政策は引き締めから緩和を模索する段階に移行したとみられ、米金利は下がりやすくなったと考えられるため、グロース株を取り巻く環境は、2023年よりは改善されるのではないでしょうか。ただ、米大統領選挙(11月)等、政治的な数多くのイベントが予定されており、市場のリスク許容度が低下した時は、波乱となる可能性も残るでしょう。

2024年はどのような中小型株が物色されるでしょうか。前回は、2023年に上昇した銘柄の中にヒントを求めてみました。
今回は、2023年に大きく下げた銘柄の中から、2024年に反発しそうな銘柄を抽出すべく、スクリーニング条件を考えてみました。

(1)東証グロース市場、または東証スタンダード市場に上場
(2)時価総額1,000億円未満
(3)12/25(月)まで過去20日間の1営業日当たり平均出来高が2万株超
(4)12/26(火)時点の年初来株価下落率が20%を超えていること
(5)8月、9月、10月決算銘柄は除く・・・次の決算発表が第1四半期で予想しにくいため
(6)直近四半期累計営業利益が1億円以上で前年同期比黒字転換、または増益率が通期会社予想営業増益率を超過
(7)直近四半期累計純利益、および通期会社予想純利益が黒字
(8)信用取引規制に該当しない、および継続企業の前提に疑義が生じていない

図表の銘柄は上記のすべての条件を満たしており、(4)の株価下落率が大きい順に並べてあります。

【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

【参考】 12/19(火)~26(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

■図表 23年に株価が大幅下落も、反発に期待したい中小型株

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価
(12/26・終値)
年初来株価騰落率
7094 7094 7094 7094 ネクストーン 1,207 -73.0%
9204 9204 9204 9204 スカイマーク 964 -33.0%
4235 4235 4235 4235 ウルトラファブリックス・ホールディングス(12) 1,152 -32.1%
8920 8920 8920 8920 東祥 769 -31.6%
2183 2183 2183 2183 リニカル※ 487 -29.4%
9726 9726 9726 9726 KNT-CTホールディングス 1,220 -26.7%
5244 5244 5244 5244 jig.Jp 314 -25.1%
5139 5139 5139 5139 オープンワーク(12) 810 -22.7%
7991 7991 7991 7991 マミヤ・オーピー 1,273 -21.1%
3652 3652 3652 3652 ディジタルメディアプロフェッショナル 2,506 -21.1%
  • ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成
  • ※年初来株価騰落率は2023/12/26終値を、2022年末の終値と比較した騰落率
  • ※銘柄名右横カッコ内の数値は決算月。無印の企業は3月決算
  • ※12月決算企業は、12/28(木)が権利落ち日
  • ※リニカル(2183)は、「総株主通知請求に係る株主確定日」につき、12/28(木)が権利落ち日

一部掲載銘柄を詳細に解説!

■ネクストーン(7094)~攻めの著作権エージェント。再び成長シナリオを描けるか?

「YouTube」や「Apple Music」等の音楽配信プラットフォームに原盤使用料を請求し、レコードメーカーやプロダクション等のコンテンツホルダーに還元する「DD」(デジタルコンテンツディストリビューション)(前期売上構成比80.4%)事業がメイン事業です。

株価は昨年末4,470円から12/26(火)には1,207円となり約73%の下落となりました。東証グロース市場の下落、23.3期の業績計画対比での未達、11月の業績予想下方修正等が響きました。特に競合の台頭による競争激化の兆しがある点は注意を要しそうです。ただ、11月の下方修正はおもに、音楽配信等を行う「レコチョク」、その子会社「エッグス」の連結子会社化によるものでした。両社の損益は今後回復に向かうと会社では予想。修正後中期計画では、営業利益について24.3期6億円、25.3期10億円、26.3期18.2億円を計画。成長シナリオの確度が再び高まれば、反発本格化のシナリオも描けそうです。


■スカイマーク(9204)~「ちょうどいい」を備えた中堅航空会社

日本3位の中堅航空会社(MCC*)。日本最大の羽田空港を中心として、茨城、神戸、宮古(下地島)などの独自路線を展開中です。
大型機導入のための巨額投資計画がとん挫し、2015年に経営破綻及び東証1部で上場廃止に至りました。2022年12月、東証グロース市場に再上場を果たしています。
再上場後、初の決算発表(23.3期)で、売上高、経常利益、最終利益が当初予定未達という結果になりました。最終利益は従来予想から37%の下振れでした。コロナ禍の影響が大きかった22.3期から黒転したものの、繰り延べ税金資産が計画通り積めなかった模様です。ガバナンス問題や燃料費の高騰なども加わり、株価は右肩下がりに推移。12/26(火)時点で、株価は964円と公開価格の1,170円を下回っています。

会社予想の今期(24.3期)営業利益の56億円に対し、市場予想は72億円です。順調な利益進捗を今後示すことができれば、反発の可能性も期待できると考えられます。

*ミドル・コスト・キャリア ▷ 中堅航空会社。LCCより高価だが、大手航空社と同等の高品質なサービスを、安価で提供している。羽田国内路線比率は、LCC0%(成田がメイン)、大手45~50%、同社54%。


■ウルトラファブリックス・ホールディングス(4235)~北米・欧米向けメインの合成皮革メーカー

合成皮革の製造・販売の専業メーカー。地域別売上構成比(22.12期)は北米74%、欧州7%、日本4%、その他地域が15%とアニマルフリー意識が高い欧米がメイン市場です。用途別売上構成比(同)では、自動車用41%、家具用28%、航空機用8%と多岐に分かれています。耐久性や品質の高さが求められる自動車用や航空機用は参入障壁が高く、全体の売上高に対する割合も徐々に増加傾向です。

多発する異常気象による環境意識の高まりや、EVシフトが業績を押し上げました。21.12期と22.12期の各利益項目で前期比3桁台での高い伸び率でした。販売先の在庫調整や、米マクロ環境の悪化で23.12期の計画は同1桁で、伸び率鈍化が嫌気され、売られたとみられます。
一方で、在庫調整の影響は、2Q(4-6月期)にピークを迎えたと述べています。また、UAWストライキの影響も想定されます。一過性の要因がなくなり、来期(24.12期)以降で高い回復力を示すことができれば株価も再上昇を目指す展開になりそうです。

■東祥(8920)~スポーツクラブの黒字化が課題

(1)スポーツクラブ、(2)ホテル、(3)不動産の各事業を展開しています。

(1)の売上構成比(23.3期)は52.5%で「ホリデイスポーツ」ブランドにより、全国100店舗(23.9末)を運営。
(2)の売上構成比(同)は39.0%で、子会社のABホテル(6565)が宿泊特化型シティホテルを中部地方中心に全国34店舗(23.9末)を運営。
(3)は愛知県内に賃貸マンションを45棟1,746室(23.9末)を保有。

24.3期2Q累計売上高は125億円(前年同期比15%増)、営業利益19億円(同30%増)と増収増益。インバウンド需要もあり好調なホテル事業(営業利益17億円・前年同期比49%増)がけん引役です。ただ、光熱費高騰もあり、スポーツクラブ事業(営業赤字1.21億円・前年同期は赤字0.51億円)が足を引っ張っています。24.3通期会社計画では営業利益40億円(前期比27%増)で当初計画には変化はありません。ただ、ABホテルの営業利益が当初計画比3億円強上振れており、下期全般に計画通りに進捗できれば、業績予想が上振れる可能性もありそうです。

12/26(火)の時価総額はABCホテルが297億円に対し、親会社の東祥は294億円と「親子逆転」状態です。東祥のスポーツクラブ事業の価値がゼロ状態になっているようです。逆に、スポーツクラブの収益改善が進捗すれば、株価反発も本格化しそうです。

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