来年の投資テーマとして"賃上げ"に脚光!その理由とは?
投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実
2023/12/19
年内最後のFOMC通過後、市場のハト派期待高まる。グロース株好調!
12月第2週(12/11-15)末の日経平均は、前週末比662円69銭高(+2.05%)と週足ベースで反発。米債券利回りの低下を受け、日米の株式市場は堅調な株価推移となりました。
年内最後のFOMC(連邦公開市場委員会)が12/12-13に開催され、市場予想通り3会合連続で政策金利の据え置きが決定されました。注目されていたFOMC参加者による政策金利予想(ドット・プロット )で、2024年に3回(計0.75%pt)の利下げが示唆されたことが株式市場に楽観ムードを呼び込んだ格好です。
今会合で示された政策金利予想は、9月会合時より早い利下げペースとなり、市場では、FRB(連邦準備制度理事会)がハト派的との見方が強まりました。また、会合後の議長会見でパウエルFRB議長は、市場を牽制するような発言もしつつ、インフレ緩和と利下げが視野に入り始めていることを述べています。政策金利の動向を反映しやすい2年債を中心に米債券利回りは大幅低下となり、グロース株や住宅関連株が牽引する形で株高となった形です。NYダウやナスダック100指数は連騰し、12/18(月)も上場来高値を更新しています。
東京市場でもグロース株優位の展開が続きました。期中のパフォーマンスは、TOPIXグロース指数の+1.5%対し、TOPIXバリュー指数は▲0.8%と大きく差が開きました。
米SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)の上昇を受け、主力の半導体関連株などを中心に買いが入った格好です。日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(12/8~15・図表7)でも、首位のアドバンテスト(6857)を筆頭に、シリコンウエハの世界的大手である信越化学工業(4063)・SUMCO(3436)、製造装置大手の東京エレクトロン(8035)といった顔ぶれとなりました。
反面、米長期金利の低下は銀行株にとって向かい風となり、日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(12/8~15・図表8)では、りそなホールディングス(8308)や千葉銀行(8331)、三井住友フィナンシャルグループ(8316)がランクインしました。首位の東宝(9602)は、11日(月)に米映画スタジオに2億2,500万ドルの大型出資を発表したことが嫌気された形です。同社は海外ビジネスの強化を掲げており、12/1(金)に北米で公開された「ゴジラ-1.0」は全米歴代実写邦画で興行収入1位を34年ぶりに更新するなど躍進の最中です。
図表1 日経平均・NYダウの動き
- 日経平均株価・NYダウ等各種株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図表2 日経平均株価
図表3 NYダウ
図表4 ドル・円相場
図表5 主な予定
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(12/8~12/15)
図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(12/8~12/15)
来年の投資テーマとして“賃上げ”に脚光!その理由とは?
12/14に与党は2024年度税制改正大綱を公表しました。デフレ脱却と賃金上昇を定着させるべく、1人当たり4万円の所得税などの定額減税、企業に賃上げを促す税制強化などが柱となっています。このうち、賃上げに関しては、大企業は7%の賃上げで、増加分の25%を税額控除できる制度などが盛り込まれています。
毎年春頃(2~3月)、全国の労働組合と経営側が賃上げなどで交渉する春闘(春季生活闘争)が行われます。2023年度の春闘では、平均賃金上昇率は+3.58%と約30年ぶりの高い伸びとなりました。12/1に連合が公表した2024年春闘の方針では、5%以上の賃上げを求めていく方針(昨年と同水準)が示されました。税制改正による政策面の後押しもあり、高い賃金上昇が維持されるか注目したいところです。
図表9 春闘における平均賃金上昇率
もっとも、今年(2023年)は賃上げにより収入が増えたものの、それ以上に支出が膨らんでしまったため、実際の生活は厳しくなったという方が少なくないと思います。図表10は厚生労働省「毎月勤労統計」で発表されている賃金の推移を見ると、給料の額面に相当する名目賃金は前年同月比で増加(プラス)で推移しているものの、インフレ(消費者物価)の影響を考慮した実質賃金は減少(マイナス)が続いています。つまり、賃金の上昇が物価高に追いついていないということになります。
図表10 名目・実質賃金とインフレ率
では、来年(2024年)はどうなるのでしょうか?春闘などを通じて引き続き高い賃金の上昇が続くことが大事であることはいうまでもありませんが、その上で来年はインフレの影響が緩和されることが期待できます。
図表11は円相場と商品市況、輸入物価の推移を示したグラフです。コロナショック後、主要国において経済がリオープンしたことなどに伴い、2021年から2022年にかけて円安、商品市況高が進行しました。こうした動きに併せて輸入物価が上昇し、タイムラグをおいて私たちにとってもっとも身近な消費者物価を押し上げるに至りました。しかし、現状、商品市況高や円安の動きは一巡し、輸入物価についても既にマイナスへ転換しているため、消費者物価の上昇についても今後は鈍化していくことが見込まれます。
今年は製造工程の短い食品などを中心に数多くの商品の値上げ報道が続きましたが、来年はこうした動きが減少していくのではないでしょうか。そうなれば、名目賃金だけではなく実質賃金についても上昇するでしょう。賃上げの好影響が色濃くなれば、個人消費の喚起などにつながることが期待できます。賃上げの動きは、2024年の株式市場を占う上でも注目テーマの1つと言えるでしょう。
12/19まで開催の日銀金融政策決定会合では、YCC(長短金利操作)が維持され、マイナス金利の解除も見送られました。今後も当面、日銀は、金融引き締めへの転換については慎重姿勢をとると予想されます。その理由は、これまでに述べてきた通りですが、円安と商品市況高が一巡してきたことと共に、輸入物価がマイナスとなっているため、今後の物価上昇ペースが鈍ると予想されるためです。おそらく、マイナス金利の解除などの大幅な政策変更が行われるのは、春闘などを通じて、しっかりとした賃上げ、および所得増加による個人消費の強さを確認してからになると思われます。
図表11 商品市況と円相場、輸入物価
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・日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。
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・日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。
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