急落相場で投資チャンス?「2024年問題」関連銘柄を探る

急落相場で投資チャンス?「2024年問題」関連銘柄を探る

投資情報部 鈴木英之/栗本奈緒実

2023/12/08

急落相場で投資チャンス?「2024年問題」関連銘柄を探る

12月第1週の東京株式市場は乱高下を繰り返す不安定な展開になっています。日経平均株価は11月下旬以降、終値ベースで「33年ぶり高値」となる33,753円突破をトライする場面が何度かありましたが、ことごとく跳ね返され、上値の重さを意識させられる状況となっています。

ただ、米インフレ・金利上昇懸念が後退していることや、日本の上場企業の利益が総じて過去最高水準にあること、東証のPBR1倍以下の企業等に対する対策実施要請を受け、企業の対応等が進んでいること等が追い風になっています。12月第1週は、後半にかけ荒れた相場になりましたが、市場が世界的な金利低下や円高等をベースにした株式相場に慣れるまでの過渡期的状態とみられます。日経平均株価が年末に向けて再上昇する展開に期待したい所です。

ただ今後の日本経済が安定して発展していくために、避けることができない「課題」もいくつかあります。そのうち、代表的なもののひとつが「2024年問題」であるとみられています。

「2024年問題」は、「働き方改革」の一環として、来年4月以降、自動車運転業務の年間時間外労働の上限が960時間に制限されることで起こり得る様々な問題を指しています。この政策により、輸送能力の減少が予想されます。

経済産業省の「持続可能な物流の実現に向けた検討会(23年8月 最終取りまとめ)によると、もしも何の対策も施さなければ、輸送能力は2024年度に14.2%、2030年度に34.1%減少すると予想されています。また、営業用トラックが不足する輸送量は、同じ時期にそれぞれ4.0億トン、9.4億トンに達すると見込まれています。

これら輸送能力の減少により、輸送業者、荷主、消費者にそれぞれ以下のような問題点が発生する危険性が高まります。

★輸送業者・・・今まで通り輸送できない。人材が確保できない
★荷主‥・・・・必要な時に荷物を届けられない。輸送を業者に断られる場合も
★消費者・・・・宅配サービスの利便性低下。新鮮なものが手に入らない。

これらを克服するには、物流システムのDX、配送ルートの最適化、自動車・トラック以外の輸送手段への転換(モーダルシフト)等の対策が必要とみられます。そこで、今回の「日本株投資戦略」では、2024年問題への対応に取り組む物流業界や、物流DXに関連する銘柄を抽出すべく、以下のスクリーングを行ってみました。

(1)東証上場銘柄
(2)各種資料・報道等から、「2024年問題」や「物流DX」と関連性があるとみられること。
(3)12/6(水)までの20営業日で1日当たり平均出来高が2万株以上
(4)前期・今期計画・直近四半期累計の最終損益が赤字ではない
(5)信用取引規制の対象になっていない

図表の銘柄は、上記(1)~(5)の条件をすべて満たしています。なお、掲載各社が「2024年問題」や「物流DX」とどう関係しているかについては、図表に記載しています。

■図表 急落相場で投資チャンス?「2024年問題」関連銘柄を探る

(1)値上げで恩恵?輸送関連銘柄

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名 株価(12/7) ポイント
6178 6178 6178 6178 日本郵政 1,289.5 ヤマトHD(9064)と提携し、効率化を目指す
9064 9064 9064 9064 ヤマトホールディングス 2,651 日本郵政(6178)と提携し、効率化を目指す
9075 9075 9075 9075 福山通運 3,715 業務効率化のための組織改善DXツールを導入
9076 9076 9076 9076 セイノーホールディングス 2,101 企業間物流の最大手。中継輸送専門店を開設し、同業他社の受け入れも可能に
9143 9143 9143 9143 SGホールディングス 2,090.5 配送拠点の集約や、専用車両の活用等。運賃も値上げを実施予定

(2)物流システム・DX関連銘柄

2354 2354 2354 2354 YE DIGITAL 858 安川電機由来の製造現場の経験とAIが融合。倉庫実行システムで物流DXに展開
2678 2678 2678 2678 アスクル 2,117 共同での幹線輸送網構築や、独自AIを用いた発注量の平準化等
4384 4384 4384 4384 ラクスル 1,333 荷主と運送業者のマッチングサービス「ハコベル」を、セイノーHDと共同で運営
4391 4391 4391 4391 ロジザード 1,522 クラウド在庫管理のリーディングカンパニー。2024年問題に関するウェビナーや資料公開等も積極的に行う
4492 4492 4492 4492 ゼネテック 1,470 物流業・製造業向けに、生産性を向上させる3Dシミュレーションソフトウェアを展開
4722 4722 4722 4722 フューチャー 1,750 事業の一角で、物流分野でのDXコンサルティングを展開
6319 6319 6319 6319 シンニッタン 252 オーダーメイドで物流容器を作成。作業効率の向上や、コスト削減に効果あり
6369 6369 6369 6369 トーヨーカネツ 3,855 1955年から物流ソリューション事業を展開。空港や生協等の配送センター向けで高シェア
6383 6383 6383 6383 ダイフク 2,713 マテハン業界最大手。7年連続売上世界1位
7911 7911 7911 7911 TOPPANホールディングス 4,011 デジタルピッキングシステム国内最大手の子会社を擁し、物流DX市場へ本格参入。VCへの出資・参画も
9232 9232 9232 9232 パスコ 1,673 現場のノウハウを反映した配車システムを提供。10年以上にわたり、100社以上の企業に導入実績あり
9325 9325 9325 9325 ファイズホールディングス 1,042 「配車プラットフォーム事業」や庫内運営機能である「オペレーションサービス」を提供
9326 9326 9326 9326 関通 566 物流支援や代行サービス等を展開。倉庫管理システムの提供も
9830 9830 9830 9830 トラスコ中山 2,403 国内物流拠点を28ヵ所所有。荷物詰合わせやユーザー直送サービスを展開

(3)モーダルシフト関連銘柄

9171 9171 9171 9171 栗林商船 777 内航船社。大型船や国内最大規模となる3,000台以上のトレーラーも保有し、海運一貫輸送サービスを展開
  • ※各社株価データ、会社公表データ、Bloombergデータ等をもとにSBI証券が作成。
  • ※各項目とも、銘柄はコード順。

一部掲載銘柄を解説

■YE DIGITAL(2354)~製造現場の経験を生かせる強み

工場の自動化(FA)に取り組む安川電機(23.2末の持株比率は38%)の情報処理部門が源流です。同社のAI(人工知能)はAI技術と安川電機由来の製造現場における経験が融合したものです。装置の故障を予知したり、機器の異常を感知したり、製品の良/不良品を判定したり、熟練者のノウハウを継承することが可能です。
同社は倉庫実行システムも展開。トラック等の運転手は1運行で平均12時間26分拘束され、うち6時間43分は「運転」、約3時間は「荷役および荷待ち」で拘束されていますが、物流倉庫の効率化は、「荷役および荷待ち」の時間削減に役立つと期待されます。



■ラクスル(4384)~伝統的な産業界で活躍する変革者。物流業界の効率化にも着手

伝統的な産業にインターネットを活用することで、産業構造の変革を目指す企業です。
ユーザーと印刷会社のシェアリングプラットフォームを提供したのが祖業。多重下請け構造が長きにわたっていた印刷業界で、同社サービスを活用することで、工程のスリム化等が可能に。「早い・安い・ラク」な商業印刷ができる仕組みを築き上げました。

物流分野では、今回の紹介銘柄のひとつである企業向け物流で最大手のセイノーホールディングス(9076)と共同で、荷主と運送業者のマッチングサービス「ハコベル」を運営しています。現在は業績を支えるまでの事業ではないものの、今後の成長性余力がある分野です。過去にも「多重下請け構造」を解消してきた同社のノウハウ活用が期待されます。



■ダイフク(6383)~自動倉庫システムで多くの企業の生産性向上に寄与

工場・倉庫等でモノの運搬を行う「マテハン機器」で世界トップ。半導体・液晶パネルの製造に欠かせないクリーンルーム向けにも提供しています。北米、アジアを中心に売上高の69%が海外というグローバル企業です。
たとえば、掲載企業であるトラスコ中山(9830)でも、一部倉庫でダイフクの自動倉庫システムを展開。トラスコ中山はマテハンシステムの導入や、それらを活用した業務プロセス改善を実施。見込んでいた16%以上の生産性向上を実現できたようで、ダイフクのピッキング(出荷指示に対し保管商品を集める作業)方式を全国の物流センターへ横展開を図っていく方針です。



■ファイズホールディングス(9325)~「アマゾン」の物流の一翼を担う黒子的存在

AZ-COM丸和ホールディングス(9090)の連結子会社(持株比率は23.9末時点で58.39%)です。ECサイト運営企業、メーカー、配送会社に対し、物流拠点における入荷から出荷に至るまでの作業プロセスを同社が包括的に管理し、あるいはコンサルティングしています。また、実運送や配車プラットフォームのサービスも行います。22.3期までは営業利益が5億円台止まりでしたが、23.3期に売上高236億円と前期比で56億円増え(うち、アマゾンジャパン向けがが43億円増)、営業利益も11億円台に増えました。

増加分の多くが「アマゾンジャパン」向けで、同社への売上比率は55%に達しています。24.3期2Qも売上高126億円(前期比11%増)、営業利益5.4億円(同7%増)と順調。今期会社計画営業利益は14億円で、中計では26.3期に営業利益20億円を目指します。自社運営倉庫を拡大する一方、2024年問題への対応強化も進める方針です。「アマゾンジャパン」による2024年問題への対応と連動した成長に期待です。




■トラスコ中山(9830)~「ニアワセとユーチョク」は「2024年問題」克服に向けたひとつの解?

機械工具等を中心とする専門商社です。メーカーから機械工具等を仕入れ、得意先(機械工具商、ネット通販他)を通じ、最終的に、製造業や建設現場、一般消費者等の手に渡ることになります。

物流効率化に関する興味深い取り組みとしては「ニアワセとユーチョク」があげられます。一般的にネット通販では、商品ごとにユーザー(顧客)への配送が行われます。その結果、ユーザーは荷受けやダンボール処理の負担が重く、また、通販業者の物流コストも重くなりやすくなります。しかし、このシステムでは、ユーザーごとに荷物がまとめられ(荷合わせされ)、ユーザーに直送(ユーチョク)されることになります。それにより、「納期」「梱包資材」「配送運賃」「環境負荷」「作業負荷」等の半減が期待できることになります。



■栗林商船(9171)~大型船で、トラックを荷物ごとまるごと運ぶ!豊富な物流資産で、海陸一貫輸送サービスを提供

明治27年(1894)創立、内航海運を中心とした老舗物流サービス企業。RORO船(ロールオン・ロールオフ船)と呼ばれる大型船や、国内最大規模となる3,000台以上のトレーラーも保有し、海運一貫輸送サービスを展開しています。RORO船は、貨物を積んだままのトラックやトレーラを運ぶことができます。豊富な海陸の物流資産を活かし、機動力とコスト競争力に優れているのが特徴です。


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