「大正薬HD」「ベネッセHD」に続きそうな中小型株を探る

「大正薬HD」「ベネッセHD」に続きそうな中小型株を探る

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/11/29

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「大正薬HD」「ベネッセHD」に続きそうな中小型株を探る

11月相場もいよいよ終盤です。11/28(火)終値を10月末と比較したパフォーマンスは、日経平均が8.3%上昇したのに対し、東証グロース市場指数は8.5%の上昇、東証スタンダード市場指数は5.0%の上昇でした。

11月相場では、米10年国債利回りが10月末4.93%から11/27(月)には4.41%と低下し、金利低下に強いグロース銘柄が買われやすい展開でした。一方、バリュー銘柄が比較的多いスタンダード市場はやや出遅れる展開となりました。

もっとも、米10年国債利回りの低下は11/21(火)をボトムにやや足踏みの状況です。それを受けて、日経平均や東証グロース市場指数も足元はやや上値が重い状況で、逆に東証スタンダード市場指数は11/17(金)~11/28(火)に7連騰となっています。

こうした中、株式市場では上場企業によるMBO(Management Buyout=経営陣による買収)の発表が相次いでいます。MBOは、経営陣や投資ファンド等が、その会社の株式のすべて、または一部を買い取る行為です。多くの場合、100%買取り、非上場化に持ち込むケースが多くなっています。11/10(金)発表のベネッセホールディングス(9783)に続き、11/24(金)には大正製薬ホールディングス(4581)がMBOによる非上場化を決めました。

MBOによる非上場化により、経営者は自由に企業の方向性を定め、迅速に方針を決定し、中長期的な視点で経営することができるようになります。経営者以外の株主がいなくなるので、買収される危険性は後退し、企業経営の成果はすべて経営者に帰すことができます。非上場の間にゆっくり会社を立て直し、再上場することで、投資家の評価を高めることもできます。

MBOでは、多くの場合、時価に対して3割程度のプレミアムを付けて、株主から株式を買い取りますので、MBOが発表されると、その会社の株価は上昇する傾向があります。上記のベネッセホールディングスや大正製薬ホールディングスも、発表後に株価は急騰しています。

そこで今回の「新興株ウィークリー」では、MBOも選択肢になりそうな銘柄を抽出すべく、以下のスクリーニングを行ってみました。

(1)東証スタンダード市場に上場・・・市場のPBRは0.96倍、予想PERは14.2倍(11/27時点)で割安感の強い銘柄が多い市場です
(2)11/27(月)までの20営業日で1日当たり平均出来高が2万株超
(3)時価総額100億円以上1,000億円未満
(4)PBR(前期実績)が0.7倍未満・・・「解散価値」と称される1倍を3割超下回っている計算です
(5)会社予想ベースのPERが10倍未満・・・上記の市場予想PERを大きく下回ります
(6)ROE(前期実績)が7%未満・・・一般的に「標準」視されている8%を下回っています
(7)前期の営業利益・純利益がともに黒字
(8)今期の会社予想営業利益が10%超の増益かつ同純利益が増益予想。
(9)直近四半期累計営業利益が前年同期比で黒字転換、または増益率が今回会社予想営業増益率を超過
(10)ネットキャッシュ(現預金-長短借入金)がプラス、または自己資本比率が50%超

図表の銘柄は上記のすべての条件を満たしています。PBRの低い順となっています。

スクリーニング項目は多いですが「当面好業績が見込め、財務体質が比較的良好にもかかわらず、ROEが低く、市場からの評価が低い(割安感の強い)銘柄とまとめられそうです。PBRが低いので、買収やMBOの対象になりやすいと考えることも可能です。

無論、これらの企業にとり、自社株買いでROE改善を図ったり、IRの強化でPERを高めたるすることも有効な対策になりましょう。好業績・好財務とみられるため、当該企業が何らかのアクションを取ることで、市場の評価が高まることを期待できる銘柄が多いとみられます。

【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

【参考】 11/21(火)~28(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

■図表 「大正薬HD」「ベネッセHD」に続きそうな中小型株を探る

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価
(11/28・終値)
PBR 今期会社予想PER ROE
5161 5161 5161 5161 西川ゴム工業 1,569 0.37 9.0 2.79%
4231 4231 4231 4231 タイガースポリマー 880 0.47 7.4 2.21%
3611 3611 3611 3611 マツオカコーポレーション 1,590 0.49 8.0 5.19%
7971 7971 7971 7971 東リ 343 0.50 8.3 6.26%
4619 4619 4619 4619 日本特殊塗料 1,233 0.54 9.9 4.03%
8291 8291 8291 8291 日産東京販売ホールディングス 437 0.57 4.3 6.39%
9890 9890 9890 9890 マキヤ 1,066 0.60 7.6 6.68%
  • ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。時価総額はBloombergベース
  • ※PBR=時価総額/純資産、PER=時価総額/会社予想純利益、ROE=純利益/純資産 として計算
  • ※スクリーニングに使用した財務データは前期実績ベース

一部掲載銘柄を詳細に解説!

■西川ゴム工業(5161)~自動車用シールシェアトップ。今期大幅増益で回復見込み

★日足チャート(1年)

  • ※データは2023/11/29(日足)10:30時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■自動車用シールでシェアトップ。海外売上高が過半数

1934年創業、広島発の老舗ゴムメーカーです。

戦後、自動車用シール業界に進出。現在では国内シェア約半数と業界トップを誇ります(同社資料より)。主力製品は、自動車用シール材です。ウェザーストリップと呼ばれ、雨風や騒音等の侵入を防ぐ役割を担っています。

高度な技術力が求められる製品を扱っており、強みであるフォーム(発泡)技術とシール(密封)技術から“技術の西川”と評されているもようです。国内外の主要自動車メーカーと直接取引を行っています。中でも、マツダ(7261)が全売上高の10%超を占める主要取引先のひとつです。

自動車メーカーの海外進出に合わせ、米国、中国、タイ、インド等への進出。地域ごとの売上高比率(23.3期)は、日本46%、北米31%、東アジア13%、東南アジア10%と海外が過半数を占めるグローバル企業です。

■自動車生産台数の回復と円安で、大幅増益見込み

業績に関しては、増収増益と順調です。売上高は円安を主な背景に3期連続で増収を見込んでいます。前期(23.3期)は3Q(4-12月)まで原材料価格の高騰などで赤字でしたが、今期2Q(24.3期4-9月)時点では営業利益12億円(前年同期は10億円の赤字・事前予想1億円)と想定以上に好調なもようです。

自動車の生産台数の回復と円安を、好業績の主な材料として挙げています。通期についても、予想営業利益が34億円→49億円と上方修正も行われました。

堅調な業績発表を受け、直近決算(24.3期2Q)発表後、株価は一段高しています。今期の業績回復見通しを受け、年初来から株価も右肩上がりでしたが一段と弾みをつけた格好です。

自動車産業に関しての直近見通しが明るいことや円安傾向が10月以降も続いていることは好材料ですが、業績が自動車メーカーと一蓮托生気味であることには注意が必要そうです。値上げ実施等があれば、さらなる業績増の起爆剤として期待できるでしょう。

■タイガースポリマー(4231)~ゴムホース、工業ゴム製品でグローバル展開

★日足チャート(1年)

  • ※データは2023/11/29(日足)10:30時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■研究開発型で技術力が自慢

1938年(昭和13年)に創立され、ゴムホース、工業用ゴム製品を家電、自動車、土木建築、産業資材等の業界に提供しています。

長年蓄積された技術力に裏付けられた製品開発力が自慢。ニッチ市場でトップまたは高シェアの製品を数多く有しています。神戸に研究開発拠点を有し、全社員の20%程度が研究開発に携わっている研究開発型企業の側面を有しています。

アメリカ、タイ、中国、マレーシア、メキシコの5ヵ国に7工場を展開。地域別売上高(23.3期)は日本44%、米国40%、東南アジア6%、中国10%で、海外売上比率が56%に達するグローバル企業です。

ホンダ(7267)が売上高(23.3期)の40%に達するなど、自動車向けでは、大手自動車メーカーの主力部品サプライヤーとして、ハイブリッド車や燃料電池車にも部品を提供しています。

■今期は最高益が視野で強固な財務体質も、ROEに改善の余地

11/8(水)に24.3期2Q決算(累計)を発表。売上高240億円(前年同期比10%増)、営業利益18.2億円(前年同期は2.21億円の赤字)と増収増益。自動車部品の販売が中国を除く各地で増えたことや、円安が追い風になりました。

これを受け会社側は通期業績について売上高478億円→480億円、営業利益22億円→30億円、純利益14億円→24億円と上方修正し、予想年間1株配当も20円から35円に増額しました。純利益については過去最高益の見込みで、11/28(火)終値880円に対する予想配当利回りは3.9%と好配当利回りが予想されます。

24.3期2Q末の現金預金は138億円、それに対して長短借入金(1年以内に返済予定の長期借入金を含む)は30億円ですから、ネットキャッシュは100億円超の計算で、財務体質は強いといえそうです。

「営業上の取引関係の維持・強化」を目的に、41億円の投資有価証券も有しています。株価上昇や金利上昇はこの会社の財務に現状ではプラスの影響を与えているといえそうです。

反面、ROEは前期2.2%にとどまっています。PBRは「解散価値」の半分弱で、予想PERも1桁にとどまっています。資本政策やIR等に改善の余地があるかもしれません。

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