海外勢の日本株買いが復活!?年末ラリーが早くもスタート?
投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実
2023/11/21
日経平均はバブル後の高値圏まで再浮上!7‐9月期決算発表シーズンは終了
11月第3週(11/13-17)末の日経平均は、前週末比1,017円9銭高(+3.12%)と3週続伸。10月末から11/17(金)にかけ8.8%超の大幅高となり、90年3月以来のバブル後高値圏まで再浮上した形です。
同期間には米インフレ鈍化が、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ終了観測に拍車をかけました。14日(火)の10月米CPI(消費者物価指数)、15日(水)の10月米PPI(生産者物価指数)が予想外の伸び率鈍化となったことで、債券利回りが低下。世界主要株式市場にとって大きなプラス材料となり、S&P500とNYダウは3週続伸、ナスダックは4週続伸と好調な流れに一段と弾みをつけた格好です。ただ、週半ばにかけての大幅高の反動で、後半は利益確定売りが発生し、上値が抑制。尻すぼみな相場展開となりました。
また、東京市場では7-9月期の決算発表シーズンがクライマックスを迎えました。13日(月)には359社、14日(火)は515社(発表社数ベースでは2番目に多い数値)が実施し、円安等を背景に業績が上向く企業も多くありました。日経平均の予想EPSは、11/17(金)時点で2,242円と過去最高水準に位置しています。
日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(11/10~17・図表7)の首位は出光興産(5019)で22%超高と、頭一つ抜けた格好です。14日(火)の決算発表では、今期(24.3期)業績の上方修正の他、ROE目標の引き上げ、年間配当の下限の設定、350億円を上限とする自社株買いの実施、1対5の株式分割の実施を発表。内容も盛沢山で、高い株主還元意欲を示したことが市場で好感されました。また、米SOX指数の上昇の影響もあり、アドバンテスト(6857)やルネサスエレクトロニクス(6723)などの半導体関連銘柄にも買いが入りました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(11/10~17・図表8)では、1位の日産化学(4021)と2位の資生堂(4911)が、中国での販売不振などを理由に、通期利益予想の下方修正を実施。7-9月期の決算発表は、中国景気の先行き不安が意識された場面が多くありました。
図表2 日経平均株価
図表3 NYダウ
図表4 ドル・円相場
図表5 主な予定
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(11/10~17)
図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(11/10~17)
海外勢の日本株買いが復活!?年末ラリーが早くもスタート?
日経平均は10/30(月)に付けた30,696円から11/17(金)の33,585円へ、3週間で3,000円近く上昇しました。週明け11/20(月)は反落したものの、一時は33,800円台へ上昇し、7/3(月)の年初来高値(33,753円)を上回る場面もありました。日経平均は17日時点で5週移動平均乖離率が5%に到達しており、急ピッチな相場上昇により、利益確定売りが出やすい状況だったと言えるでしょう。
もっとも、日経平均の騰落レシオ(=値上がり銘柄数÷値下がり銘柄数、25日平均)は103%程度、RSI(=値上がり幅÷値下がり幅、14日間合計)は52%と、いずれも買われ過ぎのサインである、120%と70%を下回っており、これらのテクニカル指標をみると、過熱感が強まっている訳ではなさそうです。ここから、12月に向けて株高基調(年末ラリー)が続くのか注目されます。
図表9 日経平均株価(日足)と5週移動平均乖離率
最近の日本株の上昇要因としては、海外の金利(特に米国長期金利)の低下が挙げられます。10/30・11/1に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)において、米長期金利が急上昇したことで追加利上げの必要性が低下しているとの認識が示されたことが、米長期金利が低下へ転じる大きなきっかけとなりました。
また、11/14(火)発表の米10月消費者物価において、食品・エネルギーを除くコア消費者物価の伸びが市場予想を下回り、インフレが抑制されているとの見方が広がったことも、米国債買いの材料となりました。米長期金利が低下したことで、ハイテク株などの成長株(グロース株)物色が強まりました。
また、需給面でいえば、4月から6月頃にかけての日経平均上昇局面で大きな買い手となった海外投資家が、再び日本株を買い始めていることが挙げられます。日本取引所グループ(JPX)公表の投資部門別売買動向によると、11月第2週(11/6-10)に海外投資家は1.1兆円の買い越しと6月第2週(6/5-9)以来の大幅買い越しとなりました。
今年春先に日経平均が大きく上昇した局面で、海外投資家の日本株買いが意識させられるきかっけとなったのは、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が来日し、割安な日本株の買い増しを検討していることを明らかにしたことでした。また、今回も11月に入り、バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイが、円建て社債の発行を準備していると報じられました。市場では調達資金で日本株を買い増しするのではとの見方が広がるとともに、改めて海外投資家による日本株買いの動きが意識されたと考えられます。
現状、海外投資家が日本株に注目する理由はいくつかありそうです。その1つは海外投資家が注目しているドル建ての日経平均が、円安が進んだことにより(円建ての日経平均に比べて)割安な水準にあることです。また、国内市場は、先週で決算発表シーズン(3月期決算企業にとっては中間決算発表シーズン)が一巡しましたが、日経平均構成銘柄の四半期経常増益率が前四半期に比べて拡大するなど、総じて堅調な決算でした。
(詳細は225の『ココがPOINT!』 決算・経済指標発表の先にある日本株の行方は?をご参照ください)
更に、最近は株主還元を強化する動きが強まっていることも、日本株買いの大きな手掛かりとなっているようです。11月の上場企業の自社株買い金額(11/17まで)は合計で約1.5兆円と、例年(2000-2022年平均)の約3倍程度へ急増しています。様々な要因を背景に、海外投資家による日本株買いの動きが強まっていると考えられます。
図表10 投資部門別売買(海外投資家、個人投資家)と日経平均株価
今週は米国で11/21(火)にAI(人工知能)向け半導体メーカーのエヌビディアの23年3Q(8-10月期)決算発表が予定されています。同社の1Q(2-4月期)決算発表時には、翌日の同社株は前日比で+24%と急騰し、その後も上昇基調を辿るとともに、AI相場の様相を呈する中で代表的なグロース株指数であるNASDAQ総合指数の上昇にもつながりました。
今回の決算では、総収入の実績や今後の見通しについて、市場の予想を上回れるかが焦点になるでしょう。同社の株価は10月下旬以降、今回の決算発表に向けて上昇基調を辿っており、11/20(月)には終値ベースで初めて500ドルの大台を突破しました。
決算を前にして株価が期待先行となっている可能性に注意する必要はありそうです。しかし、決算発表で市場の予想を上回る強気の見通しが示され、エヌビディア株価が大きく上昇するようであれば、投資家のセンチメントが改善するとともに、年末ラリーに向けた日経平均の追い風になることが期待されます。
図表11 エヌビディア業績推移
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