高成長予想も、割安感残る中小型8銘柄
投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実
2024/12/25
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証グロース市場・スタンダード市場の中小型株を中心に、好業績が期待される銘柄や、投資家の皆様が気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
新興株ウィークリー
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高成長予想も、割安感残る中小型8銘柄
2024年も終わろうとしています。日経平均株価は2/22(木)に史上初めて39,000円台に乗せて当時の最高値を更新(終値ベース)し、7/11(木)終値は42,224円02銭と過去最高値を更新しました。生成AIブームに沸く米国株が過去最高値圏まで上昇したこと、上場企業の資本政策積極化への好評価、NISA(少額投資非課税制度)拡充による新規資金の流入、円安・ドル高などが日本株の上昇につながりました。
ただ、日銀が金融政策の正常化を指向する中で、8/5(月)には日経平均株価が1日の下げ幅としては過去最大の下げ(4,451円28銭安)を記録するなど、波乱含みの年でもありました。
そうした中、12/24(火)時点における主要株価指数の 年初来騰落率をみると、日経平均株価が16%上昇、TOPIXおよび東証プライム市場指数が15%上昇したのに対し、東証スタンダード指数は7%上昇にとどまり、東証グロース市場指数は10%下落と振るいませんでした。日米ともに長期金利が年初来で上昇し、PERやPBRが高いグロース銘柄に逆風となったことが影響したと考えられます。資本政策積極化への評価が大型株に偏り、中小型株の評価が高まりにくかった面もありました。
2025年はどうなるでしょうか。米国では12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)を経て2025年の利下げ期待はやや後退しました。ただ、利上げモードに転換した訳ではないとみられます。一方、日銀のスタンスもややハト派的に変わりつつあります。2025年は、2024年と比べると内外の金利上昇圧力は弱くなり、グロース銘柄を評価する余地が生ずる可能性がありそうです。またPBRで見た場合、東証プライム市場の1.35倍(12/24)に対し、東証スタンダード市場は1.01倍(同)にとどまっています。同市場の出遅れ修正に期待できるでしょう。
今回の「新興株ウィークリー」では、中小型やグロース市場に向かい風が吹いた24年でも高パフォーマンスをみせ、アナリストが来期以降も業績拡大を予想し、かつ割安感も強いと考えられる銘柄を抽出すべく、以下のスクリーニングを行ってみました。
(1)東証グロース市場またはスタンダード市場に上場
(2)12/23(月)まで20営業日の1営業日当たり平均出来高2万株以上
(3)23年末~24/12/24の株価上昇率が0%超100%未満
(4)業績予想を公表しているアナリストが2名以上
(5)今期・来期の市場予想(Bloombergコンセンサス)営業利益がともに10%超の増益予想
(6)時価総額が1,000億円未満で、来期市場予想営業利益の15倍未満
(7)取引所または日証金、当社による信用規制・注意喚起銘柄を除く
図表の銘柄は、上記条件をすべて満たしています。掲載は今期・来期予想営業利益の累計増益率(来期市場予想営業利益を前期営業利益実績で割った増加率)の高い順としました。
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【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移
【参考】 12/17(火)~12/24(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄
■図表 高成長予想も、割安感残る中小型8銘柄
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 株価 (12/23終値) |
株価上昇率 (23年末-24/12/23) |
来期/前期営業利益増益率 | 時価総額/来期営業利益 |
9554 | 9554 | 9554 | 9554 | AViC | 1,307 | 68.4% | 90.4% | 9.4 |
2469 | 2469 | 2469 | 2469 | ヒビノ | 2,945 | 42.0% | 66.1% | 6.5 |
6405 | 6405 | 6405 | 6405 | 鈴茂器工 | 1,895 | 89.9% | 59.3% | 10.5 |
6946 | 6946 | 6946 | 6946 | 日本アビオニクス | 2,424 | 47.8% | 58.0% | 11.8 |
7373 | 7373 | 7373 | 7373 | アイドマ・ホールディングス | 2,064 | 17.7% | 45.9% | 8.8 |
3900 | 3900 | 3900 | 3900 | クラウドワークス | 1,520 | 20.1% | 43.6% | 12.5 |
7806 | 7806 | 7806 | 7806 | MTG | 1,730 | 18.3% | 36.7% | 12.8 |
8929 | 8929 | 8929 | 8929 | 青山財産ネットワークス | 1,918 | 85.0% | 35.3% | 10.7 |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※今期・来期予想営業利益はBloombergコンセンサス。
一部掲載銘柄を詳細に解説!
■AViC(9554)~デジタルマーケティング領域で成長。大手と協業し、最高営業利益率が視野
★日足チャート(1年)
★業績推移(百万円)
■デジタルマーケティング業。大手との協業や、SEOコンサルも
デジタルマーケティング業を行う企業。GoogleやYahoo!などのメディア運営会社から広告枠を仕入れ、クライアント(広告主)に販売を行っています。
クライアントからの媒体費やコンサルティング手数料が同社の収益です。売上高構成比(24.9期)は、インターネット広告が41%、SEOコンサルティングが59%を占め、両サービスともに、堅調に推移しています。2018年以現在の事業を開始し、わずか4年で上場するに至りました。
定量的なデータに基づいた経営の徹底が強みです。業務や人材育成を属人化をせず、組織として安定して高品質サービスの提供する体制を構築しています。
また、大手総合広告代理店との協業も行っています。2024/5には元々協業していたADKと合弁会社を設立しました。大手との協業で、継続的かつスピーディなエンタープライズ顧客(マーケティング予算の大きい顧客)の獲得強化を目指しています。
■来期見通しが好感され、株価上昇!大口顧客も獲得順調
24年11月に前期(24.9期)本決算を発表。売上高19億円(前期比30%増)、営業利益4.4億円(同40%増)と大幅増収増益(*)となりました。
*前期(24.9期)から連結決算に移行。前期比数値は単独(23.9期)との単純比較
さらに、今期(25.9)期見通しが堅調で株価は上向きました。今期(25.9期)会社計画は、売上高25億円(前期比30%増)、営業利益6.7億円(同50%増)です。
収益性の高いエンタープライズ顧客の獲得が順調に増えそうで、大手との協業によるシナジー効果が反映する見込みです。今期の会社予想売上高営業利益率(25.9期)は26.7%で、同社創業以来最高かつ、業界最高水準となる見込みとしています。
トランプリスクの懸念も少ない、内需の非製造業、高水準の成長期待銘柄として、2025年も上昇基調が続くと予想されます。
■日本アビオニクス(6946)~自衛隊向けに防衛装備品。防衛費増額が追い風に
★日足チャート(1年)
★業績推移(百万円)
■自衛隊向けに防衛装備品を提供
1960年に米国ヒューズ・エアクラフト社(航空機製造)と日本電気(6701)の合弁会社として設立。ヒューズ・エアクラフト社から導入した高度な技術力と高い信頼性をもとに、事業を展開しています。
主力事業は「情報システム事業」で、売上高146.7億円(同18.7%増)、営業利益26.4億円(同62.0%増)と全社の収益をけん引しました。日本の安全を守る陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊の防衛装備品を提供。また、宇宙空間でも使用できる電子デバイスを開発・製造しています。
たとえば、現在運用中の海上自衛隊艦船は、護衛艦50艦、潜水艦22艦、掃海艦艇21艦があり、そのほとんどに同社の情報表示装置が搭載(24年3月時点)されています。
他は「電子機器事業」に展開しています。高機能化するスマートフォンやEVなどに最適な接合ソリューションを提供。また、赤外線サーモグラフィを軸に、産業保安、ヘルスケア、スマートファクトリーにセンシング(感知・測定)ソリューションを提供しています。
■防衛力の抜本的強化に対応し、業績は拡大傾向
業績は拡大傾向です。20.3期に営業損益の黒字転換を果たした後、24.3期まで5期連続で営業増益を実現しています。24.3期も防衛予算の増額を背景に、防衛力整備計画におけるスタンド・オフ防衛能力(離れた位置から侵入艦艇等に対応)強化に関わる複数の開発に関わり、主力の情報システム事業が伸長しました。
24.3期は売上高180.5億円(前期比1.7%増)、営業利益21.7億円(同11.6%増)でした。
25.3期は上半期時点で売上高91億円(前年同期比5%増)、営業利益11.4億円(同26.2%増)と順調です。主力の「情報システム事業」が防衛予算の増額に伴う需要増により、好調に推移しました。
25.3通期では売上高220億円(前期比21%増)、営業利益26億円(同19%増)、純利益19億円(同12%減)が会社計画です。純利益の減少予想は、前期比で法人税負担が増える見込みであることを反映しています。
中期計画では27.3期に売上高300億円、営業利益40億円を目指しています。防衛力の抜本的強化にあたって重視されている整備計画からターゲット分野を定めて展開する方針です。市場予想(Bloombergコンセンサス)営業利益は25.3期29.2億円(前期比34%増)、26.3期34.4億円(同17%増)となっています。
業績拡大が見込まれることに加え、2025年に米国でトランプ新政権が誕生し、日欧に防衛費増額圧力が強まる可能性があります。すでに「防衛関連株」の一角としても注目されているようです。
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