アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~2024年に最もあがった5銘柄~

投資情報部 榮 聡
2024/12/23
先週はFOMCのタカ派姿勢を受けて米10年国債利回りが一段と上昇、株価は大幅な下落となりました。今週の株価材料として、10年国債利回りの行方、サンタクロースラリーとなるか、ネットフリックスのNFL試合放送、などが注目されます。
今週はS&P500指数採用銘柄で年初来上昇率トップ5の、ビストラ(VST)、エヌビディア(NVDA)、アクソン エンタープライズ(AXON)、ユナイテッド エアラインズ(UAL)、テキサス パシフィック ランド トラスト(TPL)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

FRBのタカ派スタンスを受けた金利上昇により、大幅下落となりました。上昇トレンドを描く「雲」の上限辺りが意識された形になっており、これが下値支持となって反発に向かうか注目です。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
情報技術 | -0.7% | 2.7% | 7.9% |
公益事業 | -1.6% | -6.4% | -5.6% |
S&P500 | -2.0% | -0.6% | 3.7% |
金融 | -2.0% | -4.6% | 6.3% |
コミュニケーションサービス | -2.2% | 6.3% | 11.6% |
ヘルスケア | -2.2% | -4.5% | -11.0% |
生活必需品 | -2.5% | -2.5% | -2.9% |
一般消費財・サービス | -2.6% | 7.0% | 16.7% |
資本財・サービス | -2.6% | -6.3% | -0.3% |
素材 | -4.2% | -9.2% | -10.1% |
不動産 | -5.0% | -8.0% | -9.9% |
エネルギー | -5.6% | -13.5% | -6.8% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ボーイング | 4.5% |
ファイザー | 3.0% |
ブリストル マイヤーズ スクイブ | 2.8% |
アップル | 2.6% |
アクセンチュア | 2.1% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
CVSヘルス | -10.1% |
スターバックス | -9.7% |
チャーター・コミュニケーションズ | -7.4% |
シェブロン | -7.2% |
アメリカン・タワー | -6.8% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で2.0%、ダウ平均は2.3%、ナスダック指数は1.8%の下落でした。
12/18(水)に結果が発表されたFOMC(連邦公開市場委員)で、2025年の利下げ回数の見通しが9月時点の4回から2回に引き下げられたことを受けて米10年国債利回りが4.5%近くまで上昇、S&P500指数は2.9%の下落となりました。
前週に発表された物価指標がインフレの下がりにくさを示していたため、市場は利下げ回数が3回まで低下することは織り込んでいましたが、FOMCの経済予想がそれ以上に低下してショックとなりました。
また、パウエルFRB議長が会見で12月のFOMCの利下げも「close call(際どい判断だった)」として、利下げの停止が近いことが示唆されたことも大きな反応となった理由と考えられます。
一方、12/20(金)発表の11月個人消費支出物価指数は、総合指数、コア指数とも前月の伸びを上回ったものの、市場予想を下回って、株式は反発しました。
業種指数では、過去5日では全業種がマイナスでした。1ヵ月、3ヵ月では、マグニフィセント7銘柄が寄与したとみられる、一般消費財・サービス、コミュニケーションサービス、情報技術の3業種が上昇率上位を占めているのが目立ちます。
今週の米国株式市場
S&P500指数の一目均衡表をみると、先週の下落は上昇トレンドを描く「雲」の上限にとどまっていることから、中期的な上昇トレンドは維持されていると考えてよさそうです。
ファンダメンタルズでも、「経済の堅調」、「企業業績の好調」に関しては変わらず、相場下落の要因となった「インフレの下がりにくさ」と「金利上昇の可能性」についても、ここ数ヵ月市場で意識されていたとみられるため、株価の下げがどんどん拡大していく可能性は小さいとみられます。今週は戻りを試す展開と想定されます。
今週の株価材料として、10年国債利回りの行方、サンタクロースラリーとなるか、ネットフリックスのNFL試合放送、などが注目されます。
米10年国債利回りは、経済の堅調、インフレの下がりにくさを受けて、4.5%台まで上昇してきました。4月に付けた2024年高値の4.7%台、2023年10月に付けた5.0%などが意識されます。当面の材料出尽くしで上昇一服となる可能性が高いものの、上昇が続いてしまう場合には注意が必要でしょう。
12/24(火)はクリスマスイブで現地時間で午後1時までの短縮取引、12/25(水)はクリスマスで休場となります。米国市場にはクリスマス後から年末年始にかけて相場が上昇しやすいという「サンタクロースラリー」のアノマリーがあり、注目です。
クリスマスの日にネットフリックスが初めてNFLの2試合をストリーミングで放送します。同社は今年11月にはマイク・タイソンの試合をライブ配信し、また来年1月からはプロレスWWEの「RAW」を独占配信するなど、ライブイベントへの展開を明確にしています。今回の試みが成功するか、注目されます。
経済指標では、12/23(月)に12月コンファレンスボード消費者信頼感指数(前月の74.0から74.2に改善の予想)、12/24(火)に米国の11月耐久財受注(前月比-0.3%の予想)、米国の11月新築住宅販売件数(前月比+8.7%の予想(前月は同-17.3%))、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は2024年に大きく上昇した銘柄をご紹介します。
図表4にS&P500指数採用銘柄の年初来上昇率トップ10を示しています。抽出された銘柄には、AI関連、原子力発電関連、シェールオイル関連が複数ランクインしているのが目立ちます。
時価総額が大きい主要銘柄では、AI関連のエヌビディアとブロードコムが上昇率の1位と2位を占め、AI関連の年だったと言えるでしょう。これらは来年に向けても注目の投資テーマになると期待できるでしょう。
上位5銘柄のビストラ(VST)、エヌビディア(NVDA)、アクソン エンタープライズ(AXON)、ユナイテッド エアラインズ(UAL)、テキサス パシフィック ランド トラスト(TPL)を選んでご紹介いたします。
図表3 FOMCの経済予想(9月時点と12月時点の比較)

※FRB資料をもとにSBI証券作成
図表4 S&P500指数採用銘柄の年初来上昇率トップ10(12/18(水)時点)
順位 | コード | 銘柄名 | 事業内容 | 株価 上昇率 (%) |
時価 総額 (億ドル) |
1 | VST | ビストラ・コープ | 原子力発電の構成比が高い | 247.7 | 476 |
2 | NVDA | エヌビディア | AI向け半導体のトップ | 160.4 | 31,933 |
3 | AXON | アクソン・エンタープライズ | テーザー銃など警察装備品 | 136.1 | 485 |
4 | UAL | ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス | 航空大手の一角 | 121.7 | 312 |
5 | TPL | テキサス・パシフィック・ランド | シェール油田の地主 | 117.0 | 277 |
6 | AVGO | ブロードコム | 特定顧客向けAI半導体 | 102.5 | 11,220 |
7 | TRGP | タルガ・リソーシズ | シェール油田地帯のパイプライン網 | 102.4 | 395 |
8 | HWM | ハウメット・エアロスペース | 航空機部品(旧アルコアの下流部門) | 99.6 | 455 |
9 | CEG | コンステレーション・エナジー | 原子力発電で米国最大 | 94.5 | 738 |
10 | GDDY | ゴーダディ | 投資関連のITサービス | 88.5 | 291 |
※BloombergデータをもとにSBI証券作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (12/20) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | ビストラ(VST) | 139.95ドル | 19.7 | 【買収で原子力発電の比率を高めた】 ・テキサス州アーバインに本社を置く電力会社です。41.0ギガワットの電力供給能力を保有、テキサス中心に、カリフォルニア、メインなどでサービスを提供します。2023年3月に同業のエナジー・ハーバーと合併で合意、2024年3月に完了しています。同合併によって原子力発電能力は2.4ギガワットから6.4ギガワットに拡大して米国2位となり、原子力発電タックスクレジットの恩恵を受けます。 ・7-9月期の調整後EBITDA(利払い、税金、償却前利益)はテキサス州の夏季価格補正が前年同期ほどの水準に達せず、前年同期比10%減でした。通期の調整後EBITDAは、2023年12月期の41億ドルから、2024年12月期に50~52億ドル、2025年12月期に55~61億ドルへ増加のガイダンスです。 | |
買付 | エヌビディア(NVDA) | 134.70ドル | 30.5 | 【AIコンピュータの需要が急増】 ・生成AIの有用性が広く認識されたことで、これを活用するためのデータセンター投資が拡大、同社がその需要の大部分を賄うことで売上が急拡大してきました。11-1月期に投入された新製品「ブラックウェル」の需要についてフアンCEOは「常軌を逸している(insane)」と発言しており、引き続きAIコンピュータの需要は供給を大幅に上回っているとみられます。 ・11-1月期の売上ガイダンスは市場予想を1%上回るにとどまり、これが嫌気されて決算発表以降、株価は調整局面となっています。しかし、これはサプライチェーンの制約によるとみられ、需要の鈍化を示しているものではないと考えられます。制約が解消されるとともに売上モメンタムの回復が期待できるでしょう。 | |
買付 | アクソン エンタープライズ(AXON) | 631.69ドル | 100.4 | 【テーザー銃(スタンガン)の世界的メーカー】 ・テーザー銃の世界的メーカーで、法執行機関向けにボディカメラ、ドローン、記録管理ソフトウェアなども展開します。2024年5月にドローン防衛のDedroneの買収を発表しています。株価が大幅に上昇したことで、12月23日からナスダック100指数に組み入れられます。 ・株価の大幅な上昇は業績の好調によるものです。7-9月期決算は、売上が前年同期比32%増、調整後EPSは同42%増で、それぞれ市場予想を4%、21%と大幅に上回りました。主力のテーザー銃やボディカメラの需要が好調のほか、プレミアムバージョンのソフトウェアの採用が増えていることが業績好調の要因です。 | |
買付 | ユナイテッド エアラインズ(UAL) | 97.40ドル | 7.7 | 【航空大手】 ・世界有数の航空持ち株会社。売上の6割が米国、4割が海外。スターアライアンスの創設メンバーで、日本のANAと親密。2023年秋にボーイングに50機、エアバスに60機を発注して2028年から順次納入予定。 ・株価の上昇は予想以上の業績改善によります。7-9月期決算は市場予想を上回り、新型コロナ後初の自社株買いを行うと発表、10-12月期の調整後EPSは市場予想を大きく上回りました。旅客需要が強い中、燃料費が低下する一方、運賃の低下が落ち着くと見込まれていることから業績の改善が期待されています。 | |
買付 | テキサス パシフィック ランド トラスト(TPL) | 1133.12ドル | - | 【シェール油田の大地主】 ・シェール油田があるパーミアン盆地の大地主で87.3万エーカーの土地を所有しています。売上の7割が土地・資源管理、3割が用水サービスによります。トランプ次期大統領が原油生産を拡大すると唱えていることから、恩恵を受けることが期待されて株価が上昇したとみられます。 ・7-9月期決算は売上が前年同期比10%増、EPSは同1%でした。なお、同社をカバーして投資判断を公表しているアナリストはいません。このため、アナリストによる業績予想の数字がなく、予想PERが計算できません。2023年12月期実績EPS17.59ドルに基づく実績PERは、64.4倍です。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディアは2026年1月期、その他は2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
23(月) | ・シカゴ連銀全米活動指数(11月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感指数(12月) ・2年国債入札 |
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24(火) | ・米国市場短縮取引(クリスマスイブ) ・米耐久財受注(11月) ・米新築住宅販売件数(11月) ・5年国債入札 |
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25(水) | ・米国市場休場(クリスマスデー) | |
26(木) | ・米新規失業保険申請件数(12月21日に終わる週) ・7年国債入札 |
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27(金) | ・日本鉱工業生産(11月) ・中国工業部門利益(11月) |
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30(月) | ・米中古住宅販売成約(11月) | |
31(火) | ・中国製造業・非製造業PMI(12月) ・米S&PコアロジックCS住宅価格(10月) |
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1月 1(水) |
・米国市場休場(ニューイヤーズデー) | |
2(木) | ・米新規失業保険申請件数(12月28日に終わる週) | |
3(金) | ・米ISM製造業景気指数(12月) ・リッチモンド連銀のバーキン総裁が基調講演 |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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