アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~ネットフリックス、IBM、AT&Tほか好決算銘柄~

投資情報部 榮 聡
2022/10/24
先週は7-9月期決算が懸念されたほど悪くないとの見方が広がる中、週末にはFRBによる利上げペースの緩和期待が高まり、大幅な反発となりました。今週の株価材料として、GAFAMの決算、ケースシラー住宅価格、個人消費支出物価指数、などが注目されます。
今回は先週および先々週の好決算銘柄から、ネットフリックス(NFLX)、インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)、AT&T(T)、ユナイテッド エアラインズ(UAL)、JPモルガン チェース(JPM)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

3,700ポイント以下の水準では機関投資家による押し目買いが入っている模様で、徐々に相場の底が堅くなっているとみられます。当面の上値目途として、一目均衡表の「雲」の下限、50日、100日移動平均線が集中する3,900ポイント辺りが考えられます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 8.1% | 23.0% | 22.9% |
情報技術 | 6.5% | 0.4% | -9.3% |
素材 | 6.1% | 5.6% | -3.6% |
一般消費財・サービス | 5.6% | -2.2% | -7.4% |
コミュニケーションサービス | 5.0% | 1.4% | -9.8% |
S&P500 | 4.7% | 1.6% | -5.3% |
資本財・サービス | 4.7% | 4.5% | -1.9% |
金融 | 3.9% | 3.5% | -1.7% |
不動産 | 2.8% | -7.6% | -17.9% |
ヘルスケア | 2.3% | 3.0% | -2.5% |
生活必需品 | 2.2% | -0.9% | -5.6% |
公益事業 | 2.0% | -11.8% | -8.9% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ネットフリックス | 25.9% |
シュルンベルジェ | 19.6% |
ロッキード・マーチン | 16.7% |
AT&T | 14.1% |
オラクル | 13.0% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
オールステート | -9.3% |
アボットラボラトリーズ | -5.8% |
USバンコープ | -5.3% |
ダナハー | -3.6% |
ロウズ | -3.5% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で4.7%、NYダウは4.9%、ナスダック指数は5.2%の大幅反発でした。
7-9月期決算の多くが市場予想を上回り、事前に懸念したほど悪くないとの見方が広がる中、10/20(木)までは米10年国債利回りが上昇を続けたことで株価が抑えられていました。しかし、10/21(金)に金融当局者からFRBによる利上げペースを緩めるべきとの発言が出て、一時4.33%に上昇していた米10年国債利回りが4.2%台に戻ったことから、株式は大幅な反発となりました。
10/21(金)にサンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は、過度な金融引き締めによる「自発的な景気低迷」を回避すべきとし、利上げペースを緩める時期に差し掛かりつつあるという認識を示しました。
また、シカゴ地区連銀のエバンス総裁も、FRBは成長を抑制して過度に高いインフレを低下させるために、来年初までに4.5%を「やや上回る」水準に政策金利を引き上げ、その水準を維持すべきとの見解を改めて示しました。
業種指数では、全業種が上昇となり、さらに景気敏感業種が上位、ディフェンシブ業種が下位を占め、物色傾向の転換を印象付けました。個別銘柄では、ロッキード マーチン(LMT)の上昇が目立ちました。業績は需要の端境期で2023年の売上は前年比横ばいとの見通しを表明しましたが、ロシア・ウクライナ戦争が長引いて事業環境は良く、市場には上方修正への期待が強いようです。
経済指標では、米国の9月中古住宅販売件数が前月比2.1%減(市場予想は同0.4%減)と8ヵ月連続の低下となり、住宅市場の低下トレンドを示しました。
今週の米国株式市場
今週も戻りを試す展開が想定できるでしょう。GAFAMの決算には事前に警戒が高まっているため、株価はポジティブに反応しやすいと考えられ、また、先行きのインフレ鈍化に対する期待も高まりやすいと考えられるためです。当面の上値目途として、一目均衡表の「雲」の下限、50日、100日移動平均線が集中する3,900ポイント辺りが考えられます。
今週の株価材料として、GAFAMの決算、ケースシラー住宅価格、個人消費支出物価指数、などが注目されます。
今週はGAFAM(アルファベット、アップル、メタプラットフォームズ、アマゾンドットコム、マイクロソフト)を含むS&P500指数採用銘柄の150社以上が決算を発表する予定です。
GAFAMについては、SNSのスナップの決算を受けて、同じくネット広告を収益の柱とするメタプラットフォームズ、アルファベットには警戒が高まっています。また、アップルには中国での売上が低調で「iPhone14」の生産削減を行っているとの話が先週出ています。全体的に警戒が高まっていることから、決算発表に対する株価の反応はポジティブになりやすいとみられます。
FactSet社の集計によるS&P500指数の予想EPS(発表済企業の結果と今後発表される企業の予想の混合によります)は前年同期比1.5%増の予想です(10/21(金)時点)。6月末時点の予想は同9.9%増でしたので、アナリストは3ヵ半の間に8.4%ポイントと通常よりもかなり大きい下方修正を行っています。
10/25(火)に発表のケースシラー住宅価格は4ヵ月連続で前年比伸び率が低下、過去1年間もみ合った水準を下振れてくると予想されています(図表3)。これが実現すれば、消費者物価指数の伸びが高止まりしている主因である住居費の伸び鈍化への期待が高まりやすいでしょう。
10/28(金)に発表の米国9月個人消費支出物価指数は総合指数は前年比6.3%増の予想(前月は同6.2%増)、コア指数は前年比5.2%増の予想(前月は同4.9%増)と、いずれも前月から伸び率が高まる予想です。10/13(木)に発表された消費者物価指数でも同様の傾向が示されていたため、改めてネガティブに捉えられる可能性は低いとみられます。ただ、市場はインフレ指標に敏感になっていますので、留意は必要でしょう。
経済指標では上記のほか、10/25(火)に米国の10月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の108.0から105.3へ悪化の予想)、10/26(水)に米国の9月新築住宅販売件数(前月比15.3%減の予想)、10/27(木)に米国の7-9月期実質GDP(前期比年率2.3%増の予想)、米国の9月耐久財受注(前月比0.6%増の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は先週および先々週の好決算銘柄をご紹介いたします。
個別に好決算だったと考えられる、ネットフリックス(NFLX)、インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)、AT&T(T)に加え、業界として市場予想を上回る決算が目立った航空からユナイテッド エアラインズ(UAL)、大手銀行からはJPモルガン チェース(JPM)を選んでご紹介いたします。
図表3 住宅価格は4ヵ月連続の伸び低下へ

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (10/21) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | ネットフリックス(NFLX) | 289.57ドル | 26.2 | 【加入者純増が回復】 ・7-9月期の売上は前年同期比6%増、EPSは同3%減、市場予想に対してはそれぞれ1%、46%上回りました。7-9月期の加入者純増が241万人で100万人の会社ガイダンスを大きく上回り、10-12月期のガイダンスも450万人と4-6月期の98万人減から回復傾向が続くことが示唆されました。加入者純増が1-3月期、4-6月期と2四半期連続でマイナスとなって「中期的な成長力を失ったのではないか」、との懸念が後退したとみられます。 ・次の注目点は、広告ありプランの導入です。広告ありプランは年内に主要10ヵ国以上で導入される予定で、同プランによる視聴者数(加入契約当たり複数人が視聴できるため、加入者数よりも多いと考えられます)は、2022年末に4.4百万人(うち米国が1.3百万人)、2023年7-9月期に40百万人(うち米国が13.3百万人)に達すると想定されています。詳しくは、10月5日付外国株式特集レポート「株価が大幅下落したネットフリックスに復活はあるのか!?」をご参照ください。 | |
買付 | インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM) | 129.90 | 13.4 | 【売上モメンタムの回復を示唆】 ・7-9月期の売上は前年同期比6%増(為替の影響を除いて同15%増)、調整後EPSは同2%減、市場予想に対してはそれぞれ4%、0.1%上回りました。部門別の増収率は、ソフトウェアが同7%(為替の影響を除いて同14%増)、コンサルティングが同5%増(同じく同16%増)、インフラストラクチャーが同15%増(同じく同23%増)と、いずれも好調です。 ・売上見通しについて、これまで「1桁台半ばの伸び」としていましたが、具体的な数字はあげなかったものの、これ以上の伸長を見込むとして好感されました。同社は昨年末に成長性の低い部門を切り離したことで売上成長の回復が期待されてきましたが、順調に推移しているとみられます。利益の回復は遅れていますが、売上の回復が続けばいずれついてくると期待されます。 | |
買付 | AT&T(T) | 17.10ドル | 6.8 | 【キャッシュフローが回復】 ・7-9月期の売上は前年同期比4%減、EPSは同25%増、市場予想比ではそれぞれ1%、13%上回りました。フリーキャッシュフローは1-3月期、4-6月期の低調から回復して、減配に対する懸念が後退しました。また、4-6月期にはインフレの影響で低所得者の料金未払いが増えているのではとの懸念が出ましたが、そのような傾向はみられないと会社は否定しました。ポストペイド契約者純増は70.8万人と好調でした。 ・メディア事業を切り離して、携帯電話とブロードバンドに集中するという事業戦略の転換が成果をあげつつあるとみられます。5Gネットワークのカバー人口は、9月末には1億人を超え、2022年末には1.3億人を目指しています。カバー人口でTモバイルとの格差を縮めることにより、契約者数の増加が維持されると期待されます。 | |
買付 | ユナイテッド エアラインズ(UAL) | 40.44ドル | 6.9 | 【パンデミックからの回復が順調】 ・7-9月期の売上は前年同期比66%増、EPSは-1.02ドルから2.81ドルに黒字転換、市場予想に対してそれぞれ1%、23%上回りました。売上は新型コロナ前の2019年の同期の水準を13%上回っています。10-12月期の調整後営業利益率は2019年の水準を上回る見通しで、業績回復が本格化していると言えるでしょう。 ・CEOは年末にかけての業績回復についても楽観しているとしました。現在進んでいる景気鈍化の影響を相殺する要因として、(1)新型コロナからの回復局面が継続している、(2)リモートワークの普及で旅行回数が増えている(休暇を柔軟に計画しやすくなった)、(3)サプライチェーン問題で業界の供給は今後数年間制約される見通し、の3つをあげています。 | |
買付 | JPモルガン チェース(JPM) | 122.23ドル | 9.6 | 【消費者向け事業が堅調】 ・7-9月期の収益は前年同期比10%増、EPSは同17%減、市場予想比ではそれぞれ4%、8%上回りました。EPSの減少は前年同期比の信用コストがマイナスとなっていた特殊要因の反動で、4-6月期比では13%増と堅調です。純金利収入は金利上昇の恩恵を受けて前年同期比34%増、非金利収入は同8%減でした。 ・足もとは平均預金残高が前年同期比9%増、デビット・クレジットカードの利用額が同13%増と消費者向け事業が堅調です。一方、先行きの景気動向については警戒的で、市場予想以上の貸倒引当金の積み増しを行っています。ダイモンCEOは、自己資本比率が十分に高まっていることから、来年のはじめには自社株買いを開始したいとの意向を表明しています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
24(月) | ・auじぶん銀行日本製造業PMI(10月) ・S&Pグローバルユーロ圏製造業PMI(10月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(10月) ・シカゴ連銀全米活動指数(9月) |
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25(火) | ・ドイツIFO企業景況感(10月) ・S&Pコアロジックケースシラー住宅価格(8月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感(10月) |
マクロソフト、ビザ、アルファベット、コカコーラ、3M エンフェーズエナジー、ゼネラルエレクトリック レイセオンテクノロジーズ、UPS、ムーディーズ |
26(水) | ・米新築住宅販売件数(9月) | メタプラットフォームズ、ボーイング、サービスナウ ツイッター |
27(木) | ・中国工業部門利益(9月) ・ECB主要政策金利 ・米実質GDP(7-9月期、速報値) ・米耐久財受注(9月) ・米新規失業保険申請件数(10月22日に終わる週) |
アップル、アマゾンドットコム、インテル、アルトリアグループ マクドナルド、メルク、ショッピファイ、キャタピラー フォードモーター、マスターカード |
28(金) | ・ユーロ圏景況感(10月) ・米個人所得・個人支出(9月) ・米個人消費支出物価指数(9月) ・米中古住宅販売成約(9月) ・ミシガン大学消費者信頼感(10月、確報値) |
アッヴィ、エクソンモービル、シェブロン |
30(日) | ・G20サミット(インドネシア・バリ島、~31日) | |
31(月) | ・日本鉱工業生産(9月) ・中国製造業・非製造業PMI(10月) ・ユーロ圏実質GDP(7-9月期) ・ユーロ圏消費者物価指数(10月) |
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11月 1(火) |
・財新中国製造業PMI(10月) ・米求人労働異動調査(9月) ・米ISM製造業景気指数(10月) |
アドバンストマイクロデバイセズ、ファイザー、イーライリリー シスコ |
2(水) | ・米FOMC政策金利 ・米ADP雇用統計(10月) |
クアルコム、アルベマール、エスティローダー フォーティネット |
3(木) | ・チャレンジャー人員削減数(10月) ・米新規失業保険申請件数(10月29日に終わる週) ・米製造業受注(9月) ・米ISM非製造業景気指数(10月) |
ワーナーブラザースディスカバリー、コインベースグローバル モデルナ、ペイパルホールディングス、バージンギャラクティック ブロック、スターバックス |
4(金) | ・ユーロ圏生産者物価指数(9月) ・米雇用統計(10月) |
デュークエナジー |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
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