アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~直近四半期決算の好調銘柄、ネットフリックス、デルタ、JPモルガンほか~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~直近四半期決算の好調銘柄、ネットフリックス、デルタ、JPモルガンほか~

投資情報部 榮 聡

2023/01/23

先週は景気指標の悪化に金融当局者のタカ派発言が重なって軟調な展開となりましたが、1/20(金)には急激な相場下落に対する反動も出ました。今週の株価材料として、10-12月期決算発表、米10-12月期実質GDP、金融当局者の沈黙、などが注目されます。

今回は直近の四半期決算が好調な銘柄から、ネットフリックス(NFLX)デルタ エアーラインズ(DAL)JPモルガン チェース(JPM)モルガン スタンレー(MS)ラム ウェストン ホールディングス(LW) を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数のローソク足(日足、3ヵ月)

200日移動平均線が相場の頭を抑えていることがわかります。一方、上向きの50日移動平均線が200日移動平均線に近づいて煮詰まりつつあり、この先に上または下に放れる可能性を示唆していそうです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は1/12(木)終値~1/20(金)終値によります)

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
コミュニケーションサービス 3.5% 11.0% 4.5%
情報技術 1.0% 5.4% 5.2%
エネルギー 0.9% 4.0% 4.2%
一般消費財・サービス 0.5% 7.3% -3.8%
S&P500 -0.3% 3.3% 5.9%
素材 -0.5% 5.3% 14.7%
ヘルスケア -0.7% -1.7% 5.9%
不動産 -1.4% 5.5% 13.5%
金融 -1.4% 3.9% 10.0%
生活必需品 -2.4% -3.4% 5.7%
公益事業 -3.4% -2.4% 9.5%
資本財・サービス -3.5% 0.6% 11.7%
騰落率上位(5日) 騰落率
エヌビディア 8.0%
テスラ 8.0%
アルファベット 7.6%
モルガン・スタンレー 6.3%
シティグループ 4.1%
騰落率下位(5日) 騰落率
エマソン・エレクトリック -10.9%
オールステート -8.3%
ゼネラル・モーターズ(GM) -7.8%
フォード・モーター -7.7%
ゴールドマン・サックス・グループ -7.6%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.7%、NYダウは2.7%の下落、一方ナスダック指数は0.6%の上昇と、主要3指数で方向が異なりました。

1/17(火)はS&P500指数が5日ぶりに小幅反落。ゴールドマンサックスの決算が市場予想を大きく下回って大幅安となったことが相場を圧迫した一方、テスラは中国の1月販売台数が増加して7%以上の上昇となり、NYダウとナスダック指数の差が開きました。

1/18(水)は12月小売売上高が前月比1.1%減(予想は同0.9%減)、鉱工業生産が同0.7%減(予想は同0.1%減)となって景気悪化懸念が台頭、さらに金融当局者のタカ派発言が重なって大幅下落につながりました。

1/19(木)は週間の新規失業保険申請件数が市場予想を下回ったことで労働市場のひっ迫を示唆、利上げの継続が懸念されて株価は続落。ボストン地区連銀のコリンズ総裁のタカ派発言も圧迫しました。一方、午後にはブレイナードFRB副議長が、FRBはインフレ抑制に十分な金利水準を模索しているとして安値から持ち直しました。

1/20(金)は、直近相場の反動が出たとみられ、株価、長期金利とも上昇しました。決算を発表したネットフリックスの加入者純増が市場予想を上回って急伸、全従業員の6%を削減するとしたアルファベットが株式相場をけん引しました。また、FRBのウォラー理事が「政策金利はインフレを抑制するために十分に制約的な水準にかなり近づいている」という認識を示したことも相場を押し上げました。

業種指数(1/12(木)終値~1/20(金)終値によります)では、アルファベット、ネットフリックス、ウォルトディズニーなどが上昇した「コミュニケーションサービス」の上昇が目立ちました。個別では、エヌビディア(NVDA)が上昇トップでした。バンク・オブ・アメリカが「今年前半までに消費者向けの半導体の在庫調整は完了し、半導体市場はソフトランディングしそうだ」と指摘するリポートを出し、中でもエヌビディアを高く評価しました。上昇3位のテスラ(TSLA)は、値下げが効いて中国での1月9日~15日の販売急増が伝えられました。

経済指標では、12月小売売上高は前月比1.1%減と、11月の同1.0%減に続いて2ヵ月連続でのマイナスで、市場予想の同0.9%減も下回りました。同統計は価格変動の影響を含むため、ここ数ヵ月のモノの価格の落ち着きが影響したほか、年末商戦が10月に前倒しになった影響もあるとみられますが、個人消費が鈍化しつつあるとの印象は免れません。

今週の米国株式市場

米国市場では、10-12月期決算の発表が進むにつれ、企業業績見通しが下方修正されることへの警戒が高まっています。一方、インフレピークアウトを織り込む動きが続いているため、これは相場を支える要因になると期待されます。

今週の株価材料として、10-12月期決算発表、米10-12月期実質GDP、金融当局者の沈黙、などが注目されます。

今週は、マイクロソフト、テスラ、IBM、ボーイング、インテル、ビザなどの決算発表が予定されています。GAFAMのうち、アップル、アルファベット、メタプラットフォームズ、アマゾンドットコムの決算発表は来週の2月1日(水)以降の予定で、10-12月期決算のすう勢が決するのは、まだ先のタイミングとなるとみられます。

1/26(木)に発表される米10-12月期実質GDP(速報値)は前期比年率2.7%増の予想です。アトランタ連銀の「GDPNow」は、1/20(金)時点で同3.5%増と市場予想に対して上振れの可能性を示しています。最近の株式市場では、景気悪化を懸念して下落する場面も増えているため、上振れなら相場にポジティブとなりそうです。

金融当局者は1/31(火)~2/1(水)に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)を控えて「沈黙期間」に入ります。先週の金融当局者の発言はタカ派、ハト派両面がありましたが、相場にはややタカ派によるマイナスの影響が大きかったとみられるため、沈黙期間入りは相場にややプラスと考えられるでしょう。

経済指標では上記のほか、1/26(木)に米国の12月耐久財受注(前月比2.5%増の予想)、12月新築住宅販売件数(前月比4.7%減の予想)、1/27(金)に米国の12月個人消費支出物価指(総合指数は前年比5.0%増の予想、前月は同5.5%増、コア指数は同4.4%増の予想、前月は同4.7%増)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は年初来発表された直近の四半期決算で、好調と考えられる銘柄から、ネットフリックス(NFLX)、デルタ エアーラインズ(DAL)、JPモルガン チェース(JPM)、モルガン スタンレー(MS)、ラム ウェストン ホールディングス(LW)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表3 直近四半期決算の好調銘柄(S&P500指数採用銘柄対象、年初から1/19(木)までの発表銘柄)

銘柄名(コード) 売上
予想比
(%)
EPS
予想比
(%)
売上
前年同期比
(%)
EPS
前年同期比
(%)
ネットフリックス(NFLX) -0.1 -71.6 1.9 -91.0
デルタ エアーラインズ(DAL) 0.6 13.8 45.8 572.7
JPモルガンチェース(JPM) 4.2 15.3 17.2 7.2
モルガンスタンレー(MS) 2.6 6.4 -12.2 -37.0
ラム ウェストン ホールディングス(LW) 10.9 72.3 26.8 156.0

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(1/20)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートネットフリックス(NFLX)342.50ドル29.6

【加入者純増が予想以上】

・10-12月期の加入者純増が、配信コンテンツの強さを背景にガイダンスの450万人に対して766万人と大幅に上回って好感されました。なお、前回決算時に予告された通り、加入者純増のガイダンスは発表されていません。また、市場が注目している広告付プランの導入に関する具体的なデータは提供されませんでした。

・10-12月期の売上は市場予想並みで、前年同期比2%増、ドル高の影響を除くと同10%増と堅調な伸びを確保しています。営業利益は5.5億ドルと前年同期の6.3億ドルから減少ながら、3.3億ドルのガイダンスを上回りました。売上が予想以上だったことに加え、人員採用を想定よりも抑制したことがガイダンスを上回った要因です。1-3月期は、売上が前年同期比4%増、営業利益は同18%減のガイダンスです。

買付チャートデルタ エアーラインズ(DAL)39.03ドル7.7

【航空需要の回復傾向が続く】

・航空需要は順調に回復しているようです。10-12月期の売上は新型コロナ発生前の2019年10-12月期を8%上回り、回復が遅れているビジネス客の売上も同比較で80%の水準まできています。調整後の営業利益率は2019年10-12月期の12.5%に対して11.6%まで回復しました。同業のユナイテッドエアラインズの決算も市場予想を上回る回復を示しています。

・会社は航空需要の回復傾向が続く見通しとコメントしています。米国企業の96%がビジネストラベルは1-3月期は10-12月期に比べて、同レベルか増加すると答えているとの最近の調査結果を引用しています。2023年12月期については、売上は前年比15~20%増、費用(有効座席マイル当たり費用)は前年比で改善、EPSは5~6ドルへ増加の見通しで、2024年12月期のEPSは7ドル以上となる軌道に乗っているとコメントしています。

買付チャートJPモルガン チェース(JPM)135.08ドル10.4

【金利上昇の恩恵を受けて増収・増益】

・1/13(金)の決算発表から株価は下落していますが、10-12月期の営業収益は前年同期比17%増、EPSは同7%増と増収増益で、市場予想も上回って良好でした。株価は昨年10月の安値から30%以上上昇していたため、利食いが出ているとみられます。

・営業収益の増加は、金利上昇を受けて前年同期比48%増となった純金利収入がけん引しました。非金利収入は同8%減でした。貸倒引当金繰入は、市場予想の10.9億ドルに対して14.0億ドルと上回りました。マイルドなリセッションを中心シナリオとする、同社のマクロ経済見通しの下方修正を反映しています。部門別の売上は、コンシューマー&コミュニティバンキングが前年同期比29%増、コーポレート&インベストメントバンクが同9%減、コマーシャルバンクが同30%増、アセット&ウェルスマネジメントが同3%増です。金利収入の比率が高い部門の伸びが高い傾向がはっきりとでています。

買付チャートモルガン スタンレー(MS)96.24ドル13.3

【減収減益ながら市場予想を上回った】

・投資銀行業界はパンデミック時に大規模な金融緩和で盛り上がった反動が出ており、業界全体で不振が続いています。同社の10-12月期も減収・減益ですが、市場予想は上回りました。株式・債券のトレーディング収入は市場予想を下回ったものの、投資銀行手数料、株式引受手数料、資産運用収入が市場予想を上回りました。同業のゴールドマンサックスは、人件費が市場予想を14%上回って、EPSが市場予想を大きく下回りましたが、同社はそのようなことはありませんでした。

・10-12月期の営業収益は前年同期比12%減、EPSは同37%減でした。主要分野別の収入は、投資銀行業務は助言、株式引き受け、債券引き受けとも不振で同49%減でした。機関投資家取引は、株式業務が同24%減、債券業務は同15%増でした。ウェルスマネジメントは運用収入は減少したものの、金利収入の増加がカバーして全体では同6%の増収となりました。同社は現在のゴーマンCEOの元で資産運用業務への注力してきましたが、これが奏功した形です。

買付チャートラム ウェストン ホールディングス(LW)96.56ドル24.3

【価格引き上げで大幅増収増益】

・冷凍ポテトに特化したグローバル展開により成長している企業です。1/5(木)に発表された9-11月期決算では、原材料、輸送コストの上昇に対応した価格引き上げが効いて大幅な増収増益となりました。価格/ミックスの要因が前年同期比+30%ポイント、数量が同-3%ポイントでした。数量減は、米国でインフレ高進が波及したとみられるレスランへの来店客減少の影響が出ています。

・9-11月期の部門別売上は、グローバルセグメント(米国のファーストフードチェーンとトップレストラン向けおよび海外事業)が前年同期比34%増、フードサービス(卸売りと米国の中小レストラン向け)が同14%増、小売(食料品店など向け)が同34%増でした。2023年5月期ガイダンスは、売上が前年比17~20%増相当の48~49億ドル、純利益は同2.9~3.0倍相当の5.8~5.9億ドルです。欧州で合弁企業の持ち分引き上げを進めており、経済的利益を受け始めているとコメントしています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、ラムウェストンホールディングスは2023年5月期、その他は2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
23(月)    
24(火) ・auじぶん銀行日本製造業PMI(1月)
・S&Pグローバルユーロ圏製造業PMI(1月)
・S&Pグローバル米国製造業PMI(1月)
マイクロソフトジョンソン&ジョンソン3M
ベライゾンコミュニケーションズ
、ロッキードマーチン
テキサスインスツルメンツ、DRホートン
25(水) ・ドイツIFO企業景況感(1月) テスラIBMボーイングAT&T、サービスナウ
ASMLホールディングス、USバンコープ、ネクステラエナジー
26(木) ・シカゴ連銀全米活動指数(12月)
・米実質GDP(10-12月期、速報値)
・米耐久財受注(12月)

・米新規失業保険申請件数(1月21日に終わる週)
・米新築住宅販売件数(12月)
インテルビザ、マスターカード、ダウ
シャーウィンウィリアムズ、アメリカン航空
27(金) ・米個人所得・個人支出(12月)
・米個人消費支出物価指数(12月)
・米中古住宅販売成約(12月)
・ミシガン大学消費者信頼感(1月、確報値)
シェブロンアルトリアグループアメリカンエキスプレス
30(月) ・ユーロ圏景況感(1月)  
31(火) ・日本鉱工業生産(12月)
・中国製造業・非製造業PMI(1月)
・中国工業部門利益(12月)
・ユーロ圏実質GDP(10-12月期)
・米S&PコアロジックCS住宅価格(11月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感(1月)
AMDファイザーエクソンモービルマクドナルド
キャタピラー、ゼネラルモーターズ
2月
1(水)
・米ADP雇用統計(1月)
・米ISM製造業景気指数(1月)
・米求人労働異動調査(12月)
・米FOMC政策金利
メタプラットフォームズ
2(木) ・米チャレンジャー人員削減(1月)
・ECB主要政策金利
・米新規失業保険申請件数(1月28日に終わる週)
・米製造業受注(12月)
アップルアルファベットメルクスターバックス
イーライリリィ、クアルコム、
3(金) ・米雇用統計(1月)
・米ISM非製造業景気指数(1月)
アマゾンドットコム

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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